管理組合の意思決定の諸問題、7大規模修繕を巡る諸問題【当事務所について】【管理組合様向け居住者間トラブル対策について】

1. 大規模修繕を巡る諸問題
(ア) 大規模修繕とは
定期的に下記の内容を伴う工事を、一般的に大規模修繕工事と称します。
① 建物を長持ちさせ資産を維持していくために行う計画修繕工事
② 通常は足場を架けて行う、複数のまとまった工事
③ 長期修繕計画では12年月期が多い(実質10~15年)
④ 対象は共用部分で、費用は修繕積立金を用いて行う工事(管理規約で修繕積立金の取り崩しの規定がある)。ただし、昨今は、給水管更生工事など施工上合理性があったり、劣化により他室に影響を及ぼす箇所の工事の場合は、総会決議を経て、専有部分を含む場合もある。
cf.建築基準法の中での工事の種類としては以下の定義がされていますが、「大規模の修繕」の概念は必ずしも一致しません。
①建築:建築物の新築、増築、改築、移転
②大規模の修繕:建築物の主要構造部を含む過半の修繕
③大規模の模様替え:建築物の主要構造部を含む過半の模様替え
(イ) 大規模修繕工事への流れ
① 大規模修繕工事は、思い立ったらすぐに取りかかれるわけではなく、いろいろと準備が必要になり、主な流れは〔表15〕のとおりとなります。多くの組合員に周知するように心がけることがポイントです。
2. 〔表15〕
(1)準備段階 ・大規模修繕工事専門委員会の設立
・パートナー決定(専門家の活用方法) (責任施工方式、設計監理方式等)※A
・大規模修繕工事の検討開始を告げる総会決議
・調査までのスケジュール検討
(2)建物調査診断(2~3カ月) ・不具合・劣化部分の調査(パイロット調査)
・組合員意識調査、居住者からの不具合箇所聴き取り(アンケート)
・調査結果報告会の開催
(3)修繕計画立案(3~4カ月) ・工事までのスケジュール、工事時期の検討
・組合員要望聴き取り
・工事範囲と修繕方法検討
・予算検討
・工事仕様書作成
・工事範囲説明会の実施
(4)工事会社選定(3~4カ月) ・公募条件検討
・公募(専門新聞、WEB)※B
・見積発注会社選定(第1次選定)
・見積発注
・選定会議開催(第2次選定)
・ヒアリング(第3次選定)
・工事会社および予算の承認総会の実施
(5)工事 ・工事実施状況の把握
・色決め等の検討
3.

※A表16パートナー方式比較
主な方式 責任施工方式 設計監理方式
概要 安心できそうな工事会社や管理会社に建物診断・補修計画・工事の施工をすべて委託する。 設計事務所や監理会社に、建物診断・補修計画・工事会社選定・監理を委託する。
工事会社選定は公募を行い、見積合わせを行う。
パートナー 工事会社または管理会社 設計事務所
メリット ・管理組合の手間がかからない。
・設計監理費用がかからない。 ・第三者による工事の厳正な品質チェックが入る。
・工事費用のコストダウンが図れる。
・何を行っているのかが透明に進む。
・建築木士資格者がかかわる。
デメリット ・内容が管理会社の思惑でどのようにも進められる。
・競争がないため工事価格は割高になる。
・第三者がいないため品質チェックが甘くなる。
・工事品質や状況などが管理組合から見えにくい。 ・設計監理費用が発生する。ただし、工事費は安くなるため、トータルとしては安くつく。
・打合せが多くなる。

※B◎公募提出書類の例
・会社案内
・会社経歴書
・工事実績経歴書
・直近3年間の財務諸表
・法人税納税証明書
・経営事項審査結果通知書
・帝国データバンク企業情報

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
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