PDF マンション再生

第6章 マンションの再生

| マンションの再生とは

(図15〉資金負担の基本的仕組み

I マンションの再生とは

1 はじめに

[建替え事業費

従前資産(1000万円×4)+建設費等(2億1600万円) = 2億5600 万円

(建替え後)

80 mを8戸(640 m)

分譲住宅 分譲住宅 2億1600万円で建設 (建替え前)

分譲住宅 分譲住宅

Aさん | Bさん

Aさん | Bさん

Cさん Dさん

長く住み続けるためには定期的な修繕が重要となりますが、マンションを 取り巻くさまざまな状況の変化により、修繕だけでは解決できないいろい ろな課題が生じてきます。国土交通省の調査によると、築40年超のマンシ ョン戸数は2016年時点で56万戸、2026年には162万戸、2036年には316万戸 と今後ますます増えることが見込まれており(国土交通省住宅局市街地建築課 マンション政策室「最近のマンション政策及びマンション標準管理規約の改正の背 景・ポイントについて」より)、修繕以外の方法でこれらのマンションの将来 像を描くことが必要となってきます。この章では、マンションの安心できる 将来像を築くための手法を「再生」と広く位置づけ、ご紹介したいと思います。

[床価格] 2億5600万円 -640 m p=40万円/m

Cさん | Dさん

土地は共同所有

土地は共同所有

※1戸 1000万円の評価額

※A~Dさんの資金負担 80 m ×40 万円/m-1000 万円

することが必要になりますが、その分大量の分譲住宅販売が必要となってき

350

2 建替えの現実

国土交通省の調査によると、平成27年4月時点で建替えが実現したマン ションは211件(約1万7000戸)となっています(国土交通省住宅局市街地建築 課マンション政策室・前掲資料より)。前述した2016年の築40年超のマンショ ン戸数56万戸と比較すると、わずか3%程度しかないのが実情です。

建替えには、老朽化や耐震化などの諸課題が一気に解決できるということ もあり、期待を寄せる声も多く聞きます。しかし、現実的には、ごく少数の 例外を除き極めて困難であるといわざるを得ません。

なぜ、建替えが思うように進まないのでしょうか。その要因にはさまざま なことが考えられますが、代表例として、組合員が合意できる資金条件が揃 わないことがあげられます。(図15〉は、建替えの資金負担の仕組みを模式 的に示したものです。建替えを成立させるには、区分所有者が資金負担でき ること、あわせて、新たに分譲販売する床面積(保留床)が売れることが条

件となってきます。資金負担を少なくするには容積率を上げて保留床を多く

ご承知のとおり、わが国は人口減少期を迎え、「造れば即完売」という売り 手市場の時代ではなくなりました。また、所得低下、非正規雇用の増加など、 住宅販売市況はますます厳しくなることが予測されます。それらの状況をみ ても全国至るところでマンションが建て替えられることは想像しづらく、建

替えはますます厳しくなると思われます。「建替え以外に道はない」という強 い思いを抱く前に、ご自分のマンションのおかれている状況を踏まえながら、 さまざまな選択肢を視野に入れて「再生」を構想することが必要になってく るでしょう。

3 再生に向けて

(1) 再生が必要となる要因 (A) 高齢化 〈図16〉のように年々高齢化が進み、平成25年度時点では、60歳以上の世 帯主の割合が全国平均で5割以上となっています。マンションでは2世帯住

210

211

 

第6章 マンションの再生

| マンションの再生とは

(図16》 世帯主の年齢

100%

132 1.2

11g 0.8

7.6

0.2

90%

19.2

18.9

80%

25.8

22.9

り管理組合の役員の担い手不足などの不安もあり、ソフト、ハード両面で課

題が出やすくなります。 (B) 空室化 (図18〉をみると、築年数の古いマンションほど空室割合が高いことがわ かります。空室を生むことで、防犯や治安、防災などの生活不安を感じやす くなります。

(C) 老朽化

27.9

口 30 歳未満

■ 30 歳代

40 歳代

■ 50 歳代

■ 60 歳代 日 70 歳以上

TAS

70% 60% 50% 40% 30% 20%

21

10%

28

31.1 26.4 21.5 1894 7.3

18.9 10.5

13.0 10.2 10.2.

0.9

平成11年度 平成 15 年度 平成 20 年度 平成25年度

E

10.3

0%

※国土交通省「平成25年度マンション総合調査結果」をもとに作成

定期的な修繕を怠ると、建物が全体的に古くなることで耐用年数への不安 を感じやすくなります。また、修繕を行っていても、建物や設備の機能が時 代に見合わないものになれば、日常生活に不便や不安を感じやすくなります。 (D) 地震への不安

建築基準法が改正されることにより、耐震性の基準が高められてきていま すが、旧耐震基準のマンションでは大地震への不安がつきまといます。

(E) the

再生を検討するには、マンション内にある再生を必要とする要因を十分に 把握し、全員で共有化することが大切です。

(図17》 築年次別エレベーター設置割合

あり口なし 不明 100%

20.3

27.8

80%

131.37

46.2

60%

12

(図18》 完成年次別空室割合

40%

20%

798

■20%超の管理組合

0%超~20%の管理組合

■0%の管理組合

昭和9年以前

~昭和9年

~昭和8年

~昭和8年

~平成元年

~平成6年

~平成1年

~平成9年

~平成3年

平成8年以降

ROSSO

EX ※国土交通省「平成25年度マンション総合調査結果」をもとに作成

|

昭 和

;

昭 和

宅として建て替えることが難しく、その結果、おのずと高齢化が進みやすい 傾向にあります。昭和59年以前のマンションでは、エレベーターがない場 合も多く、上下階の行き来などに苦心しているようです。また、高齢化によ

昭和9年以前

~昭和9年

6

59

~平成元年

~平成6年

~平成1年

~平成9年

~平成3年

平成8年以降

Et Ex

212

213

 

第6章 マンションの再生

| マンションの再生とは

(2) 再生方法の選択 再生の方法には、修繕や改修、建替えなどの方法があげられます。(表18]は、 各方法のメリット、デメリットをまとめたものです。修繕は新築時の性能が 低下した部分を新築時の性能まで回復することをいい、改修は新築時の性能 以上に機能を付加することをいいます。例として耐震化、バリアフリー化、 オートロック化などがあげられます。建替えは新たなマンションとして既存 建物を解体し新築することをいいます。

これらの方法を選択するうえで大切なことは、各自の将来への希望や不安

を十分に把握し、意向に見合った方法を選択することです。区分所有者の意

向に沿わない方法を選択し推し進めてしまうと、検討期間の長期化を招き、 修繕すら実施できずに老朽化を招く可能性もあります。再生の一番の目的は、 居住者が安心して快適に暮らせるマンションにしていくことです。どの方法 を選べばよいのか、管理組合内で十分に話し合うことが再生に向けた第一歩

to

4 再生方法

【表18] 再生方法の比較

改善度 手法

xunt

デメリット ・費用負担が少なくて済む |・耐震化やバリアフリー化な ・建物を長く使える=環境に 「どの問題解決に限界がある 「やさしい

・住戸面積を大きくできない TEATER

・既存管理組合を継続できる |・設備水準などのグレードは ・今のコミュニティを維持で 現状のままとなる

3 ・既存管理組合を継続できる |・共用部分の変更にあたる合 ・今のコミュニティを維持で 意形成が必要

(1) 修繕 「修繕を行うことですら再生として位置づけられるくらい朽廃化が危惧され るマンションもあります。本来、修繕を適切に行っていけば、建物としては 70年以上使うことは可能ですが、修繕はあくまでも原状回復です。居住者 の高齢化や社会変化に伴って発生するさまざまな問題を将来的にどうするの

か、新たな機能を付加する改修工事や建替えのことも考えていくことが重要 です。そこまで踏み込むことで、「安心で快適に住み続ける」ための修繕と位

置づけることができます。

(2) 改 修 近年、築年数の古いマンションが増えていることを背景に、エレベータ

ーの設置、オートロック化、外断

熱などの新たな機能を付加する技

[写真30] エレベーターと階段、廊下の増

築事例(ゆいま〜る多摩平の森) 術、また、共用部分に限らず専有 部分内のリフォームの技術が進歩 しています。また、平成26年には エレベーターの床面積を容積率の 算定から除外する法改正もあり、 既存ストック活用が積極的に取り

組まれています。

改修による再生のよいところ

改修 |・住戸面積や設備水準などを

改善できる(※1) ・耐震化やバリアフリー化が

実現できる(※1) ・すべてを一新できる

・新たに管理組合やコミュニ ・資金負担が少なくて済む場 | ティをつくる必要がある

合がある(※2)

・合意形成のハードルが高い ・実現までに時間がかかる

※1 建物の構造や設備の状況によって可能性に違いがあります。 ※2 立地条件や住宅市場性、容積率や条例などのさまざまな条件により違いが

あります。

214

 

第6章 マンションの再生

| | | 建替えの手続

3 立地条件がよく、マンションとして販売しやすい。 建替えを検討するうえでは、上記の点を踏まえて、大所で見極めることが 大切です。間違えてしまうと、建替え検討の時間と労力、コンサルタント費 用ばかりがかさみ、いつまで経っても建替えが進まず、管理組合内の対立、 修繕積立金の無駄遣いにつながることになってしまいます。建替えの基本的 な手続(進め方)については後記II で記述することとします。

5 生活サービスによる再生も有効

は、建物を長く使い続けられるこ「写真31] 外壁や外構を工夫してデザイン と以外に、現在の管理組合の人間

を一新した事例(AURA243 多摩

FO) 関係を継続しながら成熟していけ る点です。良好なマンション運営 には良好な管理組合運営が切って も切り離せず、成熟した管理組合 運営がなされるためには時間をか けて育てていくことが必要です。 その点からみても、居住者が末永 く住み続けられる改修という方法

には利点があります。

一方で、工事費の捻出や合意形 [写真32] 築54年の団地住戸をリフォーム

17:$ 151 成には課題もあります。一般的に 修繕積立金は修繕工事を前提にし ていますので、積立金では改修工

事の費用が賄えない場合もありま す。改修工事費の捻出については、 管理組合内で十分に議論しておく こと、できれば長期修繕計画書に

位置づけることが重要です。

※UR都市機構提供 また、エレベーターを設置する 場合は、建築基準法における増築となりますので、敷地の一部に建物を建て ることから、規約上は「共用部分の変更」として、区分所有者および議決権 の各4分の3以上の合意を得る必要があります。

(3) 建替え 建替えが実現しているマンションには以下の特徴があります。 0 余剰容積があり、建替え後に容積率を大きく増やせる。 2 小規模なことで合意形成のハードルが低い。

建物や設備に手を加えるハードによる再生はどうしてもお金が多くかかり ます。いきなり、ハードを考えずに、居住者同士の助け合い、場合によって はマンション内で生活サービス事業を導入するなどのソフトによる再生も有 効です。ソフトによる再生の場合、イニシャルコストが少なく済み、定年を 迎えた区分所有者がサービスする側に回れれば、マンション内で仕事を生み 出せ、生き甲斐にもつながるなど好循環を生むことができます。 「高齢者世帯への食事サービスや買い物サービス、子育て世帯への見守りや 食事サービスなど、居住者が快適に暮らせるように工夫していき、若い世代 の永住意識向上、マンションへの愛着を高めることが、長く住み続けられる マンションにもつながっていきます。

II 建替えの手続

1 建替え決議に至るまでの手続の流れ

(1) 建替えに向けた準備

マンションを建て替えようとする場合、通常は、建替えの必要性を感じた 区分所有者有志が、賛同者を募り、勉強会等を開催し、ある程度の案がまと まった段階で、理事会に対してマンションの建替えの検討を開始することが 提案されます。理事会としても建替えについて検討する必要性を認めた場合、 管理組合の事業として建替え問題を狙上に載せることとなります。

216

217

 

建替えの手続

第6章 マンションの再生

(図19) 建替え決議までの合意形成の基本プロセス

「ステップ」:準備段階 | ステップII:検討段階 ステップII:計画段階 有志による、「建替え提|管理組合による、「建替えを計画する|管理組合による、建替え 起」に向けての勉強段階 「ことの合意」に向けた建替え構想と建決議」に向けての建替え

替えの必要性の検討段階

計画の策定段階

(97

建替え発意 [1]

有志による 勉強会の発足

[5]

管理組合における検討組織の設置

管理組合にお ける計画組織

ON

A 検討組織の設置-B専門家の導入

[27

[6]

管理組合の中に、建替えについて検討を進める会議体を設置し(建替え検 討委員会)、その費用を管理組合の会計から支出することとします。なお、 建替えは区分所有者間での合意形成を慎重に進めていく必要性があることか ら、建替えに向けた重要な場面ごとに、管理組合総会において必要な決議を 重ねていくことが望ましいといえるでしょう。国土交通省のウェブサイトで は、建替えに関する注意事項をまとめ、手続の流れについて紹介した各種の マニュアルが公開されていますので、参考にするとよいでしょう。

(2) 建替えの検討 建替え検討委員会では、建替えの必要性、修繕・改修との比較、敷地に関 する法規制の有無やその内容、費用の見通しなどを検討し、計画策定に向け た情報収集、意見の集約を図ります。専門家のアドバイスを求めることも有

用でしょう。建替えに向けて区分所有者の多数の支持が得られる見通しがつ いてきた段階で、建替えの推進に向けて総会で議決しましょう。

(3) 建替え計画の策定 建替え推進決議を受けて、建替えに向けて具体的な計画の策定に入ります。 個々の区分所有者の意向の把握、事業遂行に向けたパートナーとなるべき事 業者の選択、資金面での準備状況の確認・検討、周辺地域の住民や行政との 調整など、検討すべき諸課題はたくさんあるでしょう。これらを1つひとつ クリアしていく中で、具体的な建築計画の内容を固めていきます。

建替え情報の

42

専門家の選定

[10]

専門家(および」 事業協力者)の

Xt

c検討・意見の調整

[11]

建替え計画の

et

111] 「意見交換によ

る計画の調整 [121

非資成者等へ Da

[7]

建替え構想の策定と 建替えか修繕・改修かの検討 の老朽度判定、不満や改善ニーズ

に基づく要求改善水準の設定 の修繕・改修の改善効果の把握と

* 3建替えの改善効果の把握と費用

[3]

建替えに関す る基礎的検討

[13]

E

の建替えか修繕・改修かの判断

関係団体および近 隣住民との協議

2 建替え決議

建替え計画の策定

[8]

[14]

(1) 集会の招集と決議 建替え計画が固まり、建替え決議について区分所有者および議決権の各5 分の4以上の賛成が得られる見通しが立ったら、いよいよ集会において建替 え決議をします。建替え決議は、事柄の重大性に鑑み、集会において、区分

所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要とされています(区分所 有法62条1項)。建替え決議を行うための集会の招集通知は、会日の少なく とも2カ月前に発する必要があります(同条4項)。集会を招集した者は、総

D当該段階の合意

[4]

管理組合として 建替えを検討す ることの合意

「修繕・改修の

実施へ

建替え推進決議 「建替えを計画 することの合意)

建替え決議 (建替え計画を前提 とした建替えの合意)

参考資料:国土交通省「マンションの建替えに向けた合意形成に関するマニュアル」3頁

219

218

 

第6章 マンションの再生

| || 建替えの手続

の売渡請求権は形成権であり、行使されることで売買契約が成立します。区分所

有法63条4項)。

3 建替えの実施一建替え等円滑化法

会の会日の少なくとも1カ月前までに、通知事項について区分所有者に説明 するための説明会を開催しなければなりません(同条6項)。 「招集通知には、会議の目的たる事項(「建替え決議について」)と議案の要領 (建替え決議で定めるべき事項の要約)のほか、の建替えを必要とする理由、2

建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持または回復 をするのに必要となる費用の額およびその内訳、の建物の修繕に関する計画 が定められているときは、当該計画の内容、の建物について積み立てられて いる修繕積立金の金額を記載します(区分所有法62条5項)。

記載すべき議案の要領としては、決議において定めなければならないとさ れている、新たに建築する建物の設計概要、の建物の取壊しおよび再建建 物の建築に関する費用の概算額、その費用の分担に関する事項、の再建建 物の区分所有権の帰属に関する事項(区分所有法62条2項)について、その要 約を記載することが必要です。このうち、3と4については、各区分所有者 の衡平を害しないようにしなければなりません(同条3項)。

建替え決議においては、決議成立後の建替え事業遂行を見据えて、事業実 施段階で具体的に決定しなければならない内容についても、可能な限り確認 しておくことが重要です。具体的には、事業の方式や実施段階における参加

組合員、専門家の参画や選定、建設会社の選定、建替え不参加者への売渡請 求の方法や内容などが考えられます。

(2) 建替え決議成立から建替え合意まで 建替え決議が成立した場合、集会の招集者は、遅滞なく、決議に賛成しな かった敷地共有者等に対し再建決議の内容により再建に参加するかどうかを 書面で回答するように催告をします(区分所有法63条1項)。決議不賛成者は、 この催告を受けた日から2カ月以内に、再建に参加するか否かを回答します

(回答しなかった場合には参加しない旨回答したものとみなされます)。 「これにより、建替えに参加しない区分所有者が確定しますので、建替えに 参加する区分所有者および買受指定者は建替え不参加者に対し、その区分所 有権および敷地利用権につき「時価」により売り渡すことを請求できます(こ

(1) 概 論 区分所有法上、建替え決議成立後の建替え事業遂行に関する規定がないこ とから、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が制定されました(法 律名は制定時のもの。平成14年6月19日公布)。これにより、建替組合の設立 を認めてこれを法人とし、権利変換手続によって権利関係の円滑な移行を実

現する制度が設けられました。

また、同法は、建替え事業の施行方式として、建替組合による施行と個人 による施行(建替え等円滑化法5条)と2種類を定めています。個人施行とは、 区分所有者またはその同意を得た者(デベロッパー等)が建替え事業を実施す るもので、全員合意により事業を進めるものです。

以下では、建替組合による施行について説明します。

(2) 建替組合の設立 建替え決議における建替え合意者は、5人以上が設立発起人となって、定 款および事業計画を定めたうえで、建替え合意者の4分の3以上の同意を得 て、都道府県知事等に建替組合設立の認可を申請します(建替え等円滑化法9

条)。認可された建替組合(同法12条)は、法人格が認められます(同法6条)。

この建替組合は、建替え決議のときにおける管理組合とは別の組織になり

35.

(3) 権利変換手続・売渡請求 建替え事業が円滑に遂行されるには、区分所有権、借家権、抵当権など各 種権利関係がスムーズに再建マンションに移行することが必要です。そのた めの手続が権利変換手続です。

施行者は、権利変換計画を定め都道府県知事等の認可を受けなければなり

ませんが(建替え等円滑化法57条1項)、この認可の申請をするに際しては、

220

221

 

第6章 マンションの再生

| 団地建替えの手続

方の申立てにより、建替組合が1賃借目的、の家賃の額、支払期日および支 払方法、敷金または借家権の設定の対価を支払うべきときは、その額、に ついて裁定します(建替え等円滑化法83条2項)。この建替組合の裁定に不服 がある場合、裁定があった日から起算して60日以内に、訴えをもってその

変更を請求することができます(同条6項)。

再建マンションの建築工事が完了したときは、建替組合は、速やかにその 旨を公告し、再建マンションについて権利を取得する者に通知するとともに (建替え等円滑化法81条)、遅滞なく、再建マンションおよびその権利につき

登記をしなければなりません(同法82条)。

I 団地建替えの手続

1 区分所有法の定め

(1) 棟ごとの建替えと一括建替え

建替組合の議決を経る必要があり、また、建替組合員以外の権利者の同意を

得る必要があります(同条2項)。この議決は、組合員の議決権および持分割 合の各5分の4以上の特別多数決議によります(同法30条3項、27条7号)。 「この決議がされると、建替組合は当該議決に賛成しなかった組合員に対し て、その区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することが でき(建替え等円滑化法64条1項)、一方で、権利変換計画に関する決議に賛 成しなかった組合員は、建替組合に対して、その区分所有権および敷地利用 権を時価で買い取るよう請求することができます(同法64条3項)。

この権利変換手続により、旧マンションについて区分所有権および敷地利 用権を有していた者は再建マンションの区分所有権および敷地利用権を取得 し、借家権を有していた者は再建マンションの借家権を与えられます。また、 旧マンションの区分所有権および敷地利用権について担保権を有していた者 は、再建マンションの区分所有権および敷地利用権につき担保権を設定でき ることとなります。

権利変換を希望しない者は、建替組合認可等の公告のあった日から起算し て30日以内に、施行者に対して権利変換を希望しない旨を申し出ることと され(建替え等円滑化法56条)、従前の権利の価額に相当する補償金を施行者 から給付されます。

(4) 建替え工事の実施と完了の公告等 「権利変換計画が決定することで最終的な建替え参加者が確定します。その

段階で、各住戸(専有部分)に関する個別的な設計作業を終え、建替え事業 本体の工事計画を詰めます。これに基づき、建替組合は建物の建築を請け負 う建設会社と契約を締結し、まだ旧建物の占有を継続している占有者に対し て明渡しを請求します(建替え等円滑化法80条1項)。すべての明渡し完了に より、いよいよ旧建物の取壊し・新建物の建築工事が開始されます。

工事完成までの間に、区分所有者(賃貸人)と借家人との間で、家賃その 他の借家条件について協議を行います。再建マンション完成後に行われる建 築工事完了の公告の日までに協議が成立しない場合、当事者の一方または双

団地の建替えは、棟ごとに建替えを行う場合と団地全体として建替えを行 う場合(これを一括建替えといいます)の2つがあります。

平成14年の区分所有法改正により区分所有法69条および70条の規定が新 設されたことにより、団地の建替えに関する規定が整備されました。

(2) 団地内建物の建替え まず、団地内の各棟については、区分所有法62条が適用されるため、こ れにより集会決議を行う必要があります。

各棟の建替えは、敷地に関しては、団地共用部分となるため、団地管理組 合における対応が必要となります(この点、平成14年改正以前は、特段の規定 が設けられていなかったため、共有物の変更であるとして、団地管理組合の区分 所有者全員の合意が必要となるのではないかとの議論があり、その実施が困難と なるのではないかという指摘がありました)。 「平成14年改正により新設された区分所有法69条1項は、団地内の特定の

区分所有建物の建替えについて、団地管理組合または団地管理組合法人の集

222

223