地主向け土地等「資産」の「活かし方」について

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1. 当事務所について

(ア) 地主様向け土地等「資産」の「活かし方」について

(1)旧借地法時代の底地権

  a.地代の金額次第では「資産」どころか「負債」に←低廉な地代の年額よりも年間の固定資産税・都市計画税の負担の方が大きいことも珍しくない。

b.地代を値上げすることの困難性

  ☆判例が陥っている「スライド方式」→ 現状の地代の値上げ(増額)を求めても急には認められない(代わりに減額も急には無理ではありますが…)。

c.旧借地法時代の借地契約を解消できないか?

   旧借地法下においては、建物保護ニ関スル法律により、借地権の対抗力が認めら

れ、二度の借地法改正により、正当事由の要件が硬直化することで借地期間の更新が強制化されました。その結果として借地権の存続性が保障され、賃借権の物権化が進み、土地は一度貸してしまうと半永久的に返還されないという先入観が地主の間で生まれていました。人々は例えば高額の権利金の支払い等対価の高い借地権の設定を受けるくらいなら所有権を取得した方がよいと考え、既存の借地権についても、金銭の授受等における地主との関係の煩わしさを避けるために底地や借地権の売買により借地権を解消しようとしていったのです。こうして、新たな借地契約が設定されることが激減し、既存の借地契約も次第に解消され、借地権は減少の一途をたどっていきました。また、戦後すぐに成立した借地権は、昭和40年 代に 相続の時期にさしかかると所有権に切り替わり、昭和50年代の更新時期には、この傾向に一層の拍車がかかったものと考えられます。

     (2)定期借地法時代の底地権

      a.  土地の活用の手法としては、建物所有を目的とする借地権と建物所有を目的としない賃借権の2種類のみで、土地利用の多様化には適応できない状況になっていました。そのため、土地の利用そのものが固定化、沈滞化し、実際のニーズとの間に大きなギャップが生じるに至り、旧借地法の画一的な規制の問題点が指摘されるようになりました。そのため、典型的には、一定期間なら遊休地を貸したいと考える地主、そして軽い一時金負担で一定期間なら遊休地を借りたいという事業者等の要求が高まっていたのですが、従来の借地制度はこれに応えることができないものだったのです。土地の流動化すなわち土地の新たな供給を促して土地を有効利用するため、既存の借地借家の権利関係および正当事由制度の見直しを図る必要性が生じていました。

そこで、借地借家法の制定により一定の契約条件のもとに一定期間を過ぎれば借

地権が消滅して、土地が必ず返還されるという全く新しいタイプの定期借地権制度が

創設されたのです。定期借地権制度の創設により、借地の供給増加、公共事業等の

基盤整備等の利用の広がりが実際にも進んでいます。

b.理論上は旧借地法上の借地(普通借地)よりも地代は低額のはず。

    c.ところが地代の逆転(有料な定期借地なら普通借地よりもむしろ高い地代の場合もあり)もあり得る。

d.地主様、借地人双方にとっても「優良な」定期借地であること

e.定期借地権の類型

        定期借地権には、借地借家法上の一般定期借地権、事業用借地権等および建物譲渡特約付借地権の3種類があります。

これら3種類の定期借地権についてそれぞれの特色は、次のようになります。

       1 一般定期借地権

         一般定期借地権は、法22条に規定されています。①存続期間を50年以上とし、契約の更新がないこと、②建物の築造による存続期間の延長を認めないこと、③借地権者の建物買収請求権を排除することを要件とする借地権です。これらの要件が一つでも欠ければ、定期借地権は成立せず、普通借地権とみなされます。

         これらの特約は公正証書に限定されませんが、書面にしなければ定期借地権としての効力は生じません。

         書面によることとされる理由は、一般定期借地権であることの趣旨を明確にするためといわれています。

      2 事業用定期借地権等

         事業用定期借地権等は、法23条に規定されています。

         従来の事業用借地権(旧法24条)は、存続期間を10年以上20 年以下 としていましたが、社会経済情勢の変化に伴う土地利用形態の多様化に対応するため、存続期間の上限が引き上げられました(平成19年改正、平成20年1月1日施工)。

         具体的には、30年以上50年未満の期間については 、①契約の更新、②建物の築造による存続期間の延長、③借地人の建物買取請求権の規定を排除する特約を定め、もっぱら事業の用に供する建物の所有を目的として契約することにより成立する借地権が規定されました。(事業用定期借地権、法23条1項)。同様の期間で普通借地権が設定できるために、特約の有無で普通借地権と区別されます。

         また、10年以上30 年未満の期間については、 そもそも普通借地権は設定できませんので、普通借地権(法3条)と区別する必要はありません。これは、従来の事業用借地権(旧法24条)の期間が延長されたもので、①契約の更新、②建物の築造による存続期間の延長、③借地権者の建物買取請求権、の各規定が最初から排除されています。もっぱら、事業の用に供する建物の所有を目的として契約する点は、事業用定期借地権と同様です(事業用定期借地権、法23条2項)。

         上記の事業用定期借地権(法23条1項)と事業用借地権(同条2項)をあわせて、事業用定期借地権等という構造となっています。

         なお、法律上の構造はこのようになっていますが、従来から慣れている用語として、事業用定期借地権(法23条1項)と事業用借地権(同条2項)を併せて「事業用借地権」と用いることが多いです。

         契約の方式としては、(重要!!)いずれの場合にも必ず公正証書によらなければなりません。公正証書を作成しない場合には、 事業用定期借地権とはなりません。

3  建物譲渡特約付借地権

        建物譲渡特約付借地権は、法24条1項に規定されています。

        普通借地権あるいは一般定期借地権の設定契約で、存続期間が30年以上経過した期日に借地上の建物を相当の対価で地主に譲渡することを特約することによって成立する借地権です。

         上記の特約の効果により、建物の所有権が地主に譲渡された場合、借地権者および地主が同一人となりますので、混同の法理により借地契約は確定的に終了し、借地権は消滅することになります。

         なお、地主は建物の所有権の譲渡を受けうる自らの権利を第三者に対抗するためには、建物に所有権移転仮登記や所有権移転請求権仮登記等をしておく必要があると考えられます。この特約の方式は書面による必要がありませんが、後日の紛争を避けるために書面で行われることが望ましいでしょう。さらに、この特約は法律上は期限付売買、売買予約、代物弁済予約、交換等、広く譲渡特約と解されます。

(表1) 借地権の種類と差異

 

普通借地権

定期借地権

一般定期

借地権

事業用定期借地権等

建物譲渡

特約付借地権

事業用定期借地権

事業用借地権

条 文

法3

法22

法23Ⅰ

法23Ⅱ

法24

期 間

30年以上

50年以上

30年以上

50年未満

10年以上

30年未満

30年以上

利用目的

制限なし

制限なし

専ら事業の用に供する建物の所有を目的

同左

制限なし

契約形態

制限なし

公正証書等の

書面が必要

公正証書

(重要!!)

公正証書

(重要!!)

制限なし

(書面が望ましい)

      f.(参考)定期借家権

        定期借家権は、平成12年3月1日から施行された「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」により借地借家法が改正されて創設された新しいタイプの借家権で契約期間の満了により契約が更新されることなく終了することが大きな特徴です。

定期借家契約を締結する際には、賃貸人が書面により事前に、①契約の更新がない

こと、②期間の満了により賃貸借が終了することを説明しなければなりません(法38条

2項)。また、契約は公正証書等の書面で契約する必要がありますが、必ずしも公正証

書による必要はありません(法38条1項)。

  さらに、存続期間についても1年未満あるいは20年以上の存続期間を定めることも

可能です(法38条1項・29条)。

  また、(要注意!)居住用物件で、賃借人が転居・療養・親族の介護・その他やむを得

ない事由により生活の本拠を移転する必要がある場合には、賃借人からの解約申入れ

を認め、その場合には、契約の存続期間内であっても1ヵ月後に賃貸借は終了します

(法38条5項)。この規定は強行法規とされています。

        契約の終了については、上記のほかに、賃貸人が期間満了時の通知を行うことによ

り終了します。すなわち、1年以上の期間を定めた定期借家契約の場合は期間の満了

による終了を賃借人に通知期間((重要!!)期間満了の1年前から6ヵ月前まで)に通知

しなければならないとされています。(要注意!)ただし、通知期間が経過してしまった場

合には、通知をしたときから6ヵ月を経過すれば契約を終了することができます(法38

条4項)。

  定期借家契約の場合には、特約によって賃料の改定にかかる規定(賃料増減額請求権。法32条)を排除することもできます(法38条7項)。

  このような定期借家契約は、賃貸人の側からみると、契約の更新がありませんので、

契約の終了の際に立退料を払う必要がないというメリットがありますし、契約期間終了

後も新たに賃貸を望む賃借人との間では、新規契約になりますから、適正賃料をあらた

めて定めることが可能になります。

  上記のようなメリットがあるため、転勤の際に、所有物件を一定期間賃貸するなど、

従来は考えられなかった用法が可能となります。

  また、このようなメリットがあるために良質な賃貸物件の供給が増加して住居用およ

び業務用の賃貸建物市場が拡大することが期待されます。

  国土交通省が平成26年度に行った利用実態の調査では賃貸住宅に占める定期借

家契約の割合は三大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)の平均で3.2%との結果が出て

います。

  いわゆるテナント契約などの業務用賃貸借の場面では、実務上かなり多く利用され

始めています。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
事務所概要
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