老朽化と管理組合~建て替えを考えるには~

  1. 建て替えのための資金
            1.  
            2. なぜ、建替えが思うように進まないのでしようか。その要因にはさまざまなことが考えられますが、代表例として、組合員が合意できる資金条件が揃わないことがあげられます。〔図15〕は、建替えの資金負担の仕組みを模式的に示したものです。建替えを成立させるには、区分所有者が資金負担できること、あわせて、新たに分譲販売する床面積(保留床)が売れることが条件となってきます。資金負担を少なくするには容積率を上げて保留床を多くすることが必要になりますが、その分大量の分譲住宅販売が必要となってきます。
            3. ご承知のとおり、わが国は人口減少期を迎え、「造れば即完売」という売り手市場の時代ではなくなりました。また、所得低下、非正規雇用の増加など、住宅販売市況はますます厳しくなることが予測されます。それらの状況をみても全国至るところでマンションが建て替えられることは想像しづらく、建替えはますます厳しくなると思われます。「建替え以外に道はない」という強い思いを抱く前に、ご自分のマンションのおかれている状況を踏まえながら、さまざまな選択肢を視野に入れて「再生」を構想することが必要になってくる。

〔図15〕

 

          1. 建て替えのメリット・デメリット
            1. 再生の方法には、修繕や改修、建替えなどの方法があげられます。〔表18〕は、各方法のメリット、デメリットをまとめたものです。修繕は新築時の性能が低下した部分を新築時の性能まで回復することをいい、改修は新築時の性能以上に機能を付加することをいいます。例として耐震化、バリアフリー化、オートロック化などがあげられます。建替えは新たなマンションとして既存建物を解体し新築することをいいます。
            2. これらの方法を選択する上で大切なことは、各自の将来への希望や不安を十分に把握し、意向に見合った方法を選択し、居住者が安心して快適に暮らせるマンションにしていくことです。どの方法を選べばよいのか、管理組合内で十分に話し合うことが再生に向けた第一歩となります。

〔表18〕再生方法の比較

改善度

手法

メリット

デメリット

修繕

・費用負担が少なくて済む

・建物を長く使える=環境にやさしい

・既存管理組合を継続できる

・今のコミュニティを維持できる

・耐震化やバリアフリー化などの問題解決に限界がある

・住戸面積を大きくできない

・設備水準などのグレードは現状のままとなる

 

改修

・既存管理組合を継続できる

・今のコミュニティを維持できる

・住戸面積や設備水準などを改善できる

・耐震化やバリアフリー化が実現できる

・共用部分の変更にあたる合意形成が必要

建替え

・すべてを一新できる

・資金負担が少なくて済む場合がある

・新たに管理組合やコミュニティをつくる必要がある

・合意形成のハードルが高い

・実現までに時間がかかる

 

          1. 再生の具体的方法
            1. 修繕
        1. 本来、修繕を適切に行っていけば、建物としては70年以上使うことは可能ですが、修繕はあくまでも原状回復です。居住者の高齢化や社会変化に伴って発生するさまざまな問題を将来的にどうするのか、新たな機能を付加する改修工事や建替えのことも考えていくことが重要です。
      1. 改修
        1. 近年、築年数の古いマンションが増えていることを背景に、エレベーターの設置、オートロック化、外断熱などの新たな機能を付加する技術、また、共用部分に限らず専有部分内のリフォームの技術が進歩しています。また、平成26年にはエレベーターの床面積を容積率の算定から除外する法改正もあり、既存ストック活用が積極的に取り組まれています。

改修による再生のよいところは、建物を長く使い続けられること以外に、現在の管理組合の人間関係を継続しながら成熟していける点です。良好なマンション運営には良好な管理組合運営が切っても切り離せず、成熟した管理組合運営がなされるためには時間をかけて育てていくことが必要です。
その点からみても、居住者が末永く住み続けられる改修という方法には利点があります。
一方で、工事費の捻出や合意形成には課題もあります。一般的に修繕積立金は修繕工事を前提にしていますので、積立金では改修工事の費用が賄えない場合もあります。改修工事費の捻出については、管理組合内で十分に議論しておくこと、できれば長期修繕計画書の中に位置づけることが重要です。
例えば、エレベーターを設置する場合は、建築基準法における増築となりますので、敷地の一部に建物を建てることから、規約上は「共用部分の変更」として、区分所有者および議決権の各4分の3以上の合意を得る必要があります。

      1. 建替え
        1. 建替えが実現しているマンションには以下の特徴があります。
          1. 余剰容積があり、建替え後に容積率を大きく増やせる。
          2. 小規模なために合意形成のハードルが低い。
          3. 立地条件がよく、マンションとして販売しやすい。
        2. 建替えを検討するうえでは、上記の点を踏まえて、建替え検討の時間と労力、コンサルタント費用を合理的な範囲内に収めて、管理組合内の対立を防止すること、修繕積立金の無駄遣いにならないことが肝要です。
      2. 生活サービスによる再生

建物や設備に手を加えるハードによる再生はどうしてもお金が多くかかるので、いきなりハードを考えずに、居住者同士の助け合い、場合によってはマンション内で生活サービス事業を導入するなどのソフトによる再生も有効。ソフトによる再生の場合、イニシャルコストが少なく済み、定年を迎えた区分所有者がサービスする側に回れれば、マンション内で仕事を生み出せ、生き甲斐にもつながるなど好循環を生むことができる。

例えば、高齢者世帯への食事サービスや買い物サービス、子育て世帯への見守りや食事サービスなど、若い世代の永住意識を向上させていき、マンションヘの愛着を高め居住者が快適に暮らせるように工夫していくことが、長く住み続けられるマンションにもつながっていく。

  1. 建て替えのための手続き意思決定のやり方
        1. 建替え決議に至るまでの手続の流れ
          1. 建替えに向けた準備
            マンションを建て替えようとする場合、通常は、建替えの必要性を感じた区分所有者有志が、賛同者を募り、勉強会等を開催し、ある程度の案がまとまった段階で、理事会に対してマンションの建替えの検討を開始することが提案されます。理事会としても建替えについて検討する必要性を認めた場合、管理組合の事業として建替え問題を俎上に載せることとなります。管理組合の中に、建替えについて検討を進める会議体を設置し(建替え検討委員会)、その運営費用を管理組合の会計から支出することとします。なお、建替えは区分所有者間での合意形成を慎重に進めていく必要性があることから、建替えに向けた重要な場面ごとに、管理組合総会において必要な決議を重ねていくことが望ましいといえるでしょう。国土交通省のウエブサイトでは、建替えに関する注意事項をまとめ、手続の流れについて紹介した各種のマニュアルが公開されていますので、参考にするとよいでしょう。
          2. 建替えの検討
            建替え検討委員会では、建替えの必要性、修繕、改修との比較、敷地に関する法規制の有無やその内容、費用の見通しなどを検討し、計画策定に向けた情報収集、意見の集約を図ります。専門家のアドバイスを求めることも有用でしょう。建替えに向けて区分所有者の多数の支持が得られる見通しがついてきた段階で、建替えの推進に向けて総会で議決しましょう。
          3. 建替え計画の策定
            建替え推進決議を受けて、建替えに向けて具体的な計画の策定に入ります。
            個々の区分所有者の意向の把握、事業遂行に向けたパートナーとなるべき事業者の選択、資金面での準備状況の確認・検討、周辺地域の住民や行政との調整など、検討すべき諸課題はたくさんあるでしょう。これらを1つひとつクリアしていく中で、具体的な建築計画の内容を固めていきます。

 

〔図19〕建替えまでの合意形成の基本プロセス

 

ステップⅠ

ステップⅡ

ステップⅢ

有志による、「建替え提起」に向けての勉強段階

管理組合による、「建替えを計画することの合意」に向けた建替え構想と建替えの必要性の検討段階

管理組合による、建替え決議Jに向けての建替え計画の策定段階

A検討組織の設置

 建替え発意

[1]

[5]   

[9]

B専門家の導入

[2]

[6]

[10]

C検討・意見の調整

[3]

[7]

[11]

[11]

[12]

[13]

D当該段階の合意

[4]

 

[14]

 

 

  1. 建替え決議
    1. 集会の招集と決議
            1. 建替え計画が固まり、建替え決議について区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が得られる見通しが立ったら、いよいよ集会において建替え決議をします。建替え決議は、事柄の重大性に鑑み、集会において、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要とされています(区分所有法62条1項)。建替え決議を行うための集会の招集通知は、会日の少なくとも2カ月前に発する必要があります(同条4項)。集会を招集した者は、総会の会日の少なくとも1カ月前までに、通知事項について区分所有者に説明するための説明会を開催しなければなりません(同条6項)。招集通知には、会議の目的たる事項(「建替え決議について」)と議案の要領(建替え決議で定めるべき事項の要約)のほか、①建替えを必要とする理由、②建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持または回復をするのに必要となる費用の額およびその内訳、③建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容、④建物について積み立てられている修繕積立金の金額を記載します(区分所有法62条5項)。記載すべき議案の要領としては、決議において定めなければならないとされている、①新たに建築する建物の設計概要、②建物の取壊しおよび再建建物の建築に関する費用の概算額、③その費用の分担に関する事項、④再建建物の区分所有権の帰属に関する事項(区分所有法62条2項)について、その要約を記載することが必要です。このうち、③と④については、各区分所有者の衡平を害しないようにしなければなりません(同条3項)。建替え決議においては、決議成立後の建替え事業遂行を見据えて、事業実施段階で具体的に決定しなければならない内容についても、可能な限り確認しておくことが重要です。具体的には、事業の方式や実施段階における参加組合員、専門家の参画や選定、建設会社の選定、建替え不参加者への売渡請求の方法や内容などが考えられます。(建替え決議提案から建替え合意まで建替え決議が成立した場合、集会の招集者は、遅滞なく、決議に賛成しなかった敷地共有者等に対し再建決議の内容により再建に参加するかどうかを書面で回答するように催告をします(区分所有法63条1項)。決議不賛成者は、この催告を受けた日から2カ月以内に、再建に参加するか否かを回答します(回答しなかった場合には参加しない旨回答したものとみなされます)。
            2. これにより、建替えに参加しない区分所有者が確定しますので、建替えに参加する区分所有者および買受指定者は建替え不参加者に対し、その区分所有権および敷地利用権につき「時価」により売り渡すことを請求できます(この売渡請求権は形成権であり、行使されることで売買契約が成立します。区分所有法63条4頂)。
          1. 建替えの実施―― 建替え等円滑化法
            1. 円滑化法の概要
              区分所有法上、建替え決議成立後の建替え事業遂行に関する規定がないことから、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が制定されました(法律名は制定時のもの。平成14年6月19日公布)。これにより、建替組合の設立を認めてこれを法人とし、権利変換手続によって権利関係の円滑な移行を実現する制度が設けられました。

また、同法は、建替え事業の施行方式として、建替組合による施行と個人による施行(建替え等円滑化法5条)と2種類を定めています。個人施行とは、区分所有者またはその同意を得た者(デベロッパー等)が建替え事業を実施するもので、全員合意により事業を進めるものです。以下では、建替組合による施行について説明します。

            1. 建替組合の設立

建替え決議における建替え合意者は、5人以上が設立発起人となって、定款および事業計画を定めたうえで、建替え合意者の4分の3以上の同意を得て、都道府県知事等に建替組合設立の認可を申請します(建替え等円滑化法9条)。認可された建替組合(同法12条)は、法人格が認められます(同法6条)。

この建替組合は、建替え決議のときにおける管理組合とは別の組織になります。

            1. 権利変換手続・売渡請求

建替え事業が円滑に遂行されるには、区分所有権、借家権、抵当権など各種権利関係がスムーズに再建マンションに移行することが必要です。そのための手続が権利変換手続です。

施行者は、権利変換計画を定め都道府県知事等の認可を受けなければなりませんが(建替え等円滑化法57条1項)、この認可の申請をするに際しては、建替組合の議決を経る必要があり、また、建替組合員以外の権利者の同意を得る必要があります(同条2項)。この議決は、組合員の議決権および持分割合の各5分の4以上の特別多数決議によります(同法30条3項、27条7号)。

この決議がされると、建替組合は当該議決に賛成しなかった組合員に対して、その区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができ(建替え等円滑化法64条1項)、一方で、権利変換計画に関する決議に賛成しなかった組合員は、建替組合に対して、その区分所有権および敷地利用権を時価で買い取るよう請求することができます(同法64条3項)。

この権利変換手続により、旧マンションについて区分所有権および敷地利用権を有していた者は再建マンションの区分所有権および敷地利用権を取得し、借家権を有していた者は再建マンションの借家権を与えられます。また、旧マンションの区分所有権および敷地利用権について担保権を有していた者は、再建マンションの区分所有権および敷地利用権につき担保権を設定できることとなります。

権利変換を希望しない者は、建替組合認可等の公告のあった日から起算して30日以内に、施行者に対して権利変換を希望しない旨を申し出ることとされ(建替え等円滑化法56条)、従前の権利の価額に相当する補償金を施行者から給付されます。

            1. 建替え工事の実施と完了の公告等

権利変換計画が決定することで最終的な建替え参加者が確定します。その段階で、各住戸(専有部分)に関する個別的な設計作業を終え、建替え事業本体の工事計画を詰めます。これに基づき、建替組合は建物の建築を請け負う建設会社と契約を締結し、まだ旧建物の占有を継続している占有者に対して明渡しを請求します(建替え等円滑化法80条1項)。すべての明渡し完了により、いよいよ旧建物の取壊し・新建物の建築工事が開始されます。

工事完成までの間に、区分所有者(賃貸人)と借家人との間で、家賃その他の借家条件について協議を行います。再建マンション完成後に行われる建築工事完了の公告の日までに協議が成立しない場合、当事者の一方または双方の申立てにより、建替組合が①賃借目的、②家賃の額、支払期日および支払方法、③敷金または借家権の設定の対価を支払うべきときは、その額、について裁定します(建替え等円滑化法83条2項)。この建替組合の裁定に不服がある場合、裁定があった日から起算して60日以内に、訴えをもってその変更を請求することができます(同条6項)。

            1. 再建マンションの建築工事が完了したときは、建替組合は、速やかにその旨を公告し、再建マンションについて権利を取得する者に通知するとともに(建替え等円滑化法81条)、遅滞なく、再建マンションおよびその権利につき登記をしなければなりません(同法82条)。
    1. 工事会社および予算の承認総会の実施

工事会社が内定したら、総会の準備に取りかかります。議案書の作成はパートナーに依頼するとよいでしょう。

工事会社の内定に至ったこれまでの経緯と、工事会社の概要。見積金額を提示し、工事会社への発注承認をとりますが、同時に大規模修繕工事の予算の承認もとります。これは、工事中に費用が変動する精算工事が含まれているためで、見積金額で総会承認を得てしまうと、1円でもこの金額をオーバーした場合、再度総会承認が必要になるためです。工事会社の見積金額にパートナーの工事監理費用を加え、工事見積金額の5%程度を「予備費」として加えた金額を大規模修繕工事の予算額(上限)として、また予備費の使途については理事会に一任してもらうことも併記して承認をとります。
◎総会議案書に記載しておく内容

・ここに至るまでの経緯

・工事の実施内容(すでに説明会を開催している場合は概略)

・工事予算額と収支に問題がないことの説明

・借入れを行う場合は借入先とその償還予定

・工事を発注する工事会社の概要と契約金額

    1. 工事の実施
      1. 請負契約の締結

工事契約には、以下の書類を添付することが一般的です。

        1. 工事請負契約書(鑑ほか)
        2. 工事請負契約約款
        3. 見積要項書
        4. 標準仕様書
        5. 質疑回答書
        6. 工事見積書
        7. 工程表

1と2は「民間(旧四会)連合協定 マンション修繕工事 工事契約書」を使用する場合がほとんど。

3~5はパートナーが作成した資料。6と7は請負者(工事会社)から提出される書類。

これらを確認し、工事着工前に契約を行います。

      1. 工事説明会の実施

工事が始まる2週間~1カ月前に居住者(賃貸居住者も含む)に対して、工事中の注意点などを説明する「工事説明会」を実施します。工事は居住者が住んでいる中で行われます。騒音・振動・臭い・埃などは、少なくすることはできてもなくすことはできません①また、ベランダの片づけ、②洗濯物の制限といった生活に密接に絡むことも必至のため、それらの協力も必要となります。
できるだけ多くの居住者に参加してもらえるよう、住戸数の多いマンションでは複数回実施したりする配慮を行うことも必要です。なお、説明資料は工事会社が作り、管理組合およびパートナーが事前に確認し、全居住者・所有者に配布します。

      1. 近隣あいさつ

 

新築工事とは異なり振動や騒音は少ないものの、ゼロではありません。また、足場の設置解体のときは大型車も通ります。そのため、近隣へのあいさつが必要になります。

一般的には、境界に面する建物、前面道路が通学路になっている小中学校、近くの幼稚園・保育園、町会長といったところにあいさつに回りますが、通常は工事会社のみであいさつに向かいます。

事前にどこに回るか、リストや地図を提出してもらい、確認をし、あいさつ実施の際に、あいさつした相手がどのような相手で、どのような会話がなされたかの報告を受けておくべきです。後に問題が生じたときの参考になるからです。

      1. 工事の実施
        1. 検査
          工事が始まってからは、仕様書どおりに施工されているか、工程表どおりに進んでいるか、特別な問題点はないかといったことをチェックし、打ち合わせる必要が生じます。設計監理方式の場合は、パートナーが工事内容や進捗状況などを確認・検査し、管理組合へ報告しますが、これを「監理業務」といいます(「管理」とは異なります)。よい仕様書があっても、この監理が適正に行われないと絵に描いた餅になってしまうため、パートナー(=「監理者」)はこれを厳しく行わなければなりません。
        2. 定例会議の実施

月に1、2回、管理組合・監理者・工事会社の三者が集まる合同会議が開かれます。この場で話し合われる主な内容は以下のとおりです。

◎主な会議の内容

・工事進捗状況報告

・居住者からの要望。指摘事項報告

・精算工事の対応方法

・追加工事の対応方法

・各所の色決め等の仕様決定

・その他問題点への対応ほか

なお、工事中最低1回(通常、足場解体直前)は、足場に登って確認することが一般的です。マンションを外側から見る機会はめったにないので、監理者や工事会社に同行して外から建物を確認してみましょう。その後に管理組合が検査するのは竣工検査の時になります。

        1. 竣工検査と完成引渡し

工事の終了は2つあり、「竣工」と「完成引渡し」です。「竣工」は、工事会社が完成しましたと発注者に申し入れた日で、これに基づいて発注者の竣工検査が執り行われます。「完成引渡し」とは、竣工検査後に必要な手直しが終わって再検査に合格し、借りていた鍵の返却その他工事に関係するものがすべて引き上げられた状態を示します。
一般的にいわれる「工期」とは「竣工」までを表し、「竣工から1カ月以内に引渡しを行う」等の文面が契約書に記載されます。

        1. 竣工図書

完成引渡し後、この工事の実施結果として「竣工図書」が工事会社より渡されます。この中には保証書や、工事中に行われた打合せ議事録、下地補修箇所を示した図面、工事写真等が綴られ、工事の記録として残ります。次回の大規模修繕工事までの間に活用されるため、大切に保管しましょう。

もし渡されなかった場合は必ず請求してください。パートナーが作成した仕様書にも、この竣工図書に含める内容が記載されているのが通常です。

3工事終了後に行うこと

(1)長期修繕計画の見直し

工事が終われば終了と思われがちですが、この時点で「長期修繕計画書」

の見直しを行っておきましょう。理由は以下のとおりです。

長期修繕計画を見直す理由

・大きな費用が動いた後であること

・補修した工事内容から、当該建物独自の劣化進行度合いがわかること(「この建物はタイルの浮きが多い」といったような特徴)

専門委員になった方は、工事の終わる頃には建物についての知識がそれなりに付いていると思われるので、この長期修繕計画の見直しまで担当することをお勧めします。

(2)アフターサービス実施確認

一般的には、大規模修繕工事には瑕疵保証が設けられており、その内容は工事請負契約書や引渡し時の竣工図書の中に記載されています。それは、たとえば屋上防水の漏水保証が一番長く10年間保証されるのに対し、廊下やバルコニーの防水保証が5年間だったり、外壁塗装が7年間だったり、鉄部塗装が2年間しか保証されなかったりと、工事内容ごとに決められています。工事会社はアフターサービスとして、上記保証に基づく自主点検を行いますが、多くの場合、この実施年や要領も工事請負契約書や竣工図書に記載されています。一般的に、実施年度は各種工事の保証が切れる年度に行われることが多く、上記の例の場合ですと工事実施後2年目にすべての工事箇所について、5年目には鉄部塗装を除く工事箇所について、7年目には外壁塗装と屋上防水について、10年目には屋上防水のみを点検することになります。

これらは工事請負契約の項目であるため、管理組合が何も言わなくても工事会社は実施しなければなりませんが、現状は残念ながらすべては実施されていない状況です。そのため、期限が来るたびに、工事会社から連絡がない場合は管理組合側から申し入れる必要があります。管理組合理事が変わっても、この引継ぎを忘れないようにすると同時に、管理会社にこの連絡および確認の実施を依頼しておくことも必要です。

なお、定期点検実施の際に工事監理を行ったパートナーに同行してもらうと、よりー層厳しい目で点検が実施されますし、発生した不具合が瑕疵に相当するかどうかの判断や工事会社への交渉も補助してもらえるため安心です。