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第3章 管理組合の会計と税務

| 管理組合の会計

I 管理組合の会計

賄うための「管理費会計」(委託業務費、損害保険料、公租公課等)と、建物修 繕のための計画的・将来的な支出に備えた、いわば貯金のような「修繕積立
金会計」(大規模修繕工事費、エレベーター改修費等)の2種類に分かれています。

1 管理組合の会計処理総論

この区分は、標準管理規約25条に明記されています。

2

(1) 管理費等とは 標準管理規約21条では、「敷地及び共用部分等の管理については、管理組
合がその責任と負担においてこれを行うものとする」と定められています。 管理組合には、敷地および共用部分の管理を行うことが求められ、その目的
の達成のために、区分所有者から管理費等を徴収します。

管理費、修繕積立金について、区分所有法は定義を定めていませんが、管 理費とは一般に、共用部分、敷地、附属施設の維持管理費用や管理組合の運
営費用など、管理組合がするマンションの管理全般に使われる費用をいい、 修繕積立金は、将来行われる計画的修繕や災害などの緊急の場合の修繕など

に備えるために積み立てられる金銭をいいます。

管理費、修繕積立金、専用使用料など、管理組合が区分所有者に請求し、月々 定期的に徴収する金銭のことをあわせて「管理費等」と呼ぶことがあります。

管理費の総額は、1年間に発生する管理委託費、保険料、電気代、ガス代 等の合算金額です。それを専有部分の床面積の割合に応じて月額に計算した
ものが、一般的な部屋別月額管理費となります。修繕積立金は、長期修繕計

画書 (25年以上の計画書)に基づいて計算された工事金額合計を1年単位に割 り、さらに専有部分の床面積の割合に応じて月額に計算したものが一般的な
部屋別月額修繕積立金となります。

区分所有法19条は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分 に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と
定めており、区分所有者である限り、当然に管理費支払義務を負うことにな

35.

(2) 管理費等の区分けと使途 管理組合の会計は、日常の建物の維持管理およびその他日常的な諸経費を

(3) 管理組合会計の種類 会計の種類は、一般的に営利会計と非営利会計に分かれます。営利を目的
とする団体の代表である株式会社などは、企業会計で会計処理をしています。 | マンション管理組合の場合、営利を目的とする団体ではないので、非営利

会計に準じて会計処理をすることになります。

(4) 管理組合会計の内容 マンション会計業務の主な内容は、次のようなものです。 0 短期、中期、長期の事業計画と予算化の立案

会計帳簿の作成、収支状況(月次)の確認

3 決算案の作成と報告

収益事業がある場合は、諸税の申告と納付 6 出納業務 (6) 滞納者督促

監査を受ける (5) 管理組合会計報告の基準 管理組合会計報告は、一般原則として次の4点が基準となります。 0 予算準拠主義の原則
予算に基づき収入、支出は行う。 2複式簿記の原則 3 真実性・明瞭性の原則 財産状況は真実の内容を明瞭に表示する。 の
継続性の原則計算書類の表示方法は、継続して行い、みだりに変

更しない。 (6) 計算書類の種類 管理組合会計の計算書類は、次の計算書類を作成することが望ましいとさ れています。

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第3章 管理組合の会計と税務

| 管理組合の会計

0 収支計算書 2 貸借対照表 (3) 財産目録

4 支払明細書

(7) 会計処理の方法 管理組合会計処理の方法では、現金主義(費用・収益の認識を現金の収支で
認識する損益計算方式)ではなく、発生主義(費用・収益の認識を現金収支にと らわれず、合理的期間の帰属を通じて反映させる損益計算方式)で行うことを原
則としています。すべての費用および収益はその支出および収入に基づいて 計上し、その発生した期間に正しく反映するように処理することが必要です。

管理組合にとって、注意すべき課題の1つです。

(3) 保証契約 管理会社に収納されている管理組合の管理費等について、保証契約があれ
ば、全額が保証されているような錯覚を覚えますが、そうではありません。 一般社団法人マンション管理業協会の管理費等保証委託契約約款1条によれ
ば、あくまでも「管理費等1か月分の額を限度として」保証するものとされ

(図2) 改正前後の分別管理方式の相違点

従前の分別管理方式

「改正後の分別管理方式 平成22年5月1日施行

1

EL

2 管理費等徴収方式

0 原則方式

管理業者無関与で、管理組合員から 直接、組合名義の口座に振込・振替を 行い収納する方法

PAL

整器想立 –

7912

「収納口座

「保管口座 一管理費用残額上

管理費収納 保管口座 「組合員一 | (管理組合名義)

※今月分としての収納を翌月末までに保

管口座へ資金移動。 ※収納口座の名義は問わない。

———————— 2 収納代行方式

各種支払完了後、残った管理費等を 1カ月以内に組合名義の保管口座へ収

納する方式

修繕積立費 「組合員) 管理費 管理組合名義」

「収納口座

「保管口座

GAR

「管理費等収納口座」、 「管理費等保管口座 (管理業者名義)」 (管理組合名義)|

(1) 管理費等の徴収方法 管理費等の徴収方法は、以下の3通りがあります。 (A) 現金集金

各住戸を周り、現金を集金する方法です。自力管理方式を採用している管 理組合以外では、最近ではほとんど実施されていません。

(B) 1つの金融機関に理事長名義の口座を開設し、同時に組合員も同機関

に預金口座を開設する方法 1つの金融機関に集約されるため、収納状況が早くわかります。 (C) 他銀行からの自動振替または集金代行会社を経由する方法

管理費等が引き落とされる金融機関の口座を各区分所有者が自由に選択で きる利点があります。

(2) 分別管理方式 マンション管理適正化法施行規則の平成22年改正で、従来あった分別管
理方式である原則方式、収納代行方式、支払一任代行方式が廃止され、イ・ロ・ ハ方式に変更されました((図2)参照)。

従来わかりやすかった原則方式が、よりわかりにくい形に変更されました。

※修繕積立金は保証措置の対象とならな

Vio ※今月分としての収納を翌月末までに保

管口座へ資金移動。 ※収納口座の名義は問わない。

3 支一任代行方式

「収納口座の印鑑と通帳は管理業者が

保管。各種支払い後、残りの管理費等 を1カ月以内に組合名義の保管口座に

収納する方式

管理費等収納口座管理費等保管口座 MAM

(管理組合名義) (管理組合名義)

5

HAT

修繕積立費

$

「収納保管口座

※収納と保管を分けず、1つの口座しか

認められていない。

023すべて廃止

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第3章 管理組合の会計と税務

管理費等滞納者への対応

ています。分別管理の方法として、翌月末日までに、管理会社の収納口座か ら管理組合の保管口座に資金移動するということは、収納口座に2ヵ月分は
収納されているため、全額保証というものではありません((図2)参照)。さ らにいえば、上限が1カ月分ということです。

これを考えると、旧原則方式であれば、収納口座が管理会社名義ではなく、 管理組合名義の収納口座であって、管理会社が印鑑を保有しないので、保証
契約をする必要はなく、安全な措置といえます。

3 管理費等の定め方

区分所有法18条1項は、「共用部分の管理に関する事項は、……集会の決 議で決する」と定めていますので、管理費は、総会の普通決議で定めること
ができます。ただし、原始規約で管理費の金額が定められているときは、そ れを改定するためには、区分所有者の数および議決権の各4分の3以上の賛
成が必要となり、管理費の値上げが困難になる状況が見受けられます。その ような場合には、まず、管理費の金額はそのままにして、管理費を規約事項
としている規定を削除することから始めるのがよいようです。 「区分所有法19条は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分
に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と

定めており、管理費の負担割合は、原則として共用部分の持分割合=専有部 分の床面積割合によります。ただし、規約で別段の定めをすることができま
す。修繕積立金についても同様に考えられています。 | 管理費等の負担の差異がどこまで許容されるかは、当該差異が合理的と評
価できるか否か、という観点から総合判断せざるを得ず、許容範囲を数値化 することは困難です。しかし、区分所有法19条の趣旨および規約の内容に
ついて区分所有者間の利害の衡平を図らなければならないとする同法30条 3項からすれば、たとえば専有部分の床面積割合による負担とされているに
もかかわらず、他と比較して2倍以上の格差がある場合には無効となるもの と考えられます。

なお、専有部分の用途別に管理費等に差を設けることは、合理的な理由が あれば2倍以上の格差も有効とした裁判例があります。住居部分と店舗部分
では、たとえば、不特定多数の人が出入りするなど、共用部分や敷地の利用 状況や態様が異なるなどの合理的な理由がある場合には、管理費の負担割合
に差を設けることも一般に許容されています(東京地裁昭和58年5月30日判決
(判時1094号57頁)は、店舗部分について、住居部分の2倍以上の管理費を定めた

規約を有効としています)。

どのくらいの差までが有効となるかはケースによります。ただし、使用頻 度の立証となるとなかなか困難な面もあり、判例の傾向としては使用頻度の
差は、管理費に差を設ける合理的理由とはならないとする傾向がありそうで す(東京高裁昭和59年11月29日判決(判時1139号44頁)。

また、法人と個人で、管理費に差を設ける総会決議の有効性が争われた事 案では、負担能力の差は、合理的な理由とならないとして、法人と個人1.72
対1、1.65対1の差異を設けた総会決議を無効としています(東京地裁平成2 年7月24日判決(判時1382号83頁)。

平成14年改正で新設された区分所有法30条3項は、「規約は、専有部分若 しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設……につき、これらの形状、
面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価そ の他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるよう
に定めなければならない」としていますので、今後、事例の集積が待たれる

ところです。

II 管理費等滞納者への対応

1

マンションの適切な管理のためには、区分所有者から、管理費等(管理費 や修繕積立金)がしっかりと支払われていることがとても重要です。しかし、
マンションというのは長年にわたって存続するため、その間、高齢や、病気、

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第3章 管理組合の会計と税務

| || 管理費等滞納者への対応

失業等で状況が変わることにより、区分所有者が管理費等を支払うことがで きないということが発生することがあります。また、マンションの管理方法
などに不満を抱いた区分所有者が管理費等の支払いを拒むこともあるかもし れません。

このような状況を放置すれば、管理不全マンションともなりかねないため、 早期かつ適切に対応する必要性がとても高いといえます。

本項では、管理費等の滞納問題について論じます。

2 管理費等の性質

(1) 時効 管理費等の消滅時効は、5年間と考えられています(最高裁平成16年4月
23日判決(民集58巻4号959頁))。ですので、管理組合としては、管理費等が

時効消滅しないように適切に管理する必要があります。

時効を中断するためには、裁判上の請求や差押えをしたり、滞納者に債務 を承認してもらう必要があります。
「たまに、「うちは定期的に通知文を送って請求しているから大丈夫」と言っ ている管理組合の方がいますが、こういった裁判外での催告は、そこから6
カ月以内に裁判上の請求などをして初めて時効の中断の効力を生じることに なります(民法153条)。通知文だけでは時効消滅を防ぐことはできませんの
で、注意が必要です。

(2) 特定承継人への請求 (A) 請求できる範囲

区分所有法上、規約に基づく債務については、マンションの特定承継人(買 い受けた人など)にも請求できることになります(同法8条)。特定承継人から
滞納管理費等を支払ってもらうことができるため、滞納問題に対処すること が可能となります。

特定承継人に対して請求できる範囲として、一括受給している場合の電気 料金や水道料金などまでを請求できるかという問題があります。名古屋高裁

平成25年2月22日判決(判時2188号62頁)などは、一括受給する必要性を考 慮し、特定承継人への請求を認めています。もっとも、必要性がある場合な
どに限定されますので、注意が必要です。

駐車料金については、契約に基づき発生するものであるため、当然には特 定承継人に請求できないとする考えが多いようですが、管理規約で規定して
いる場合には特定承継人に滞納駐車料金を請求できるとする考えもあります

ので(上記名古屋高裁判決も、管理規約に駐車場料金についての規定がある事案 において、駐車料金の特定承継人への請求を認めています)、管理組合としては

そのような対応が望ましいといえるでしょう。 (B) 特定承継人となる者

特定承継人とは、マンションを直接買い受けた者だけではなく、競売によ り取得した者や譲渡担保権者も含まれます(前者につき東京地裁平成9年6月
26日判決(判時1634号94頁)、後者につき、東京地裁平成6年3月29日判決(判時 1521号80頁))。

また、滞納者から買い受け、これを転売した後の中間取得者(たとえば、 転売して利益を上げる不動産業者など)も、近時の裁判例では、特定承継人に
あたるとされています(大阪地裁平成21年3月12日判決(判タ 1326号275頁)など)。

管理組合としては、区分所有者が変更した場合には、組合員名簿が適切に 更新されるように徹底したり、登記事項証明書を取得するなどして、区分所
有者が誰であるかを確認しておくとよいでしょう。

(3) 賃借人への請求 滞納管理費等を賃借人に請求できるかですが、これはできないと考えられ ます(東京地裁平成16年5月31日判決)。
もっとも、後で述べる強制執行として、滞納者の賃借人に対する賃料支払請 求権を差し押さえることにより、賃借人から滞納管理費等を回収するという
ことは可能と考えられます。

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第3章 管理組合の会計と税務

| || 管理費等滞納者への対応

(4) 自分が使う共用部分ではない(一部共用部分である)として管理

費等の支払いを拒むことができるか たとえば、1階の区分所有者は、通常はエレベーターを利用していません
ので、その分の管理費等の支払いを拒むことが考えられます。

しかし、一部共用部分となるためには、これが一部の区分所有者のみの共 用であることが明白であることが必要であるとされており、エレベーターは
これにあたらないと考えられます。そして、全体の共用部分である以上、そ れにかかる管理費等の支払いをする義務を免れることはできないとして、管
理費等の支払義務を争った主張を否定した判決があります(東京高裁昭和59 年11月29日判決(判タ566号155頁))。

3
滞納者への対応方法

(1) はじめに 滞納者への対応方法としては、以下に記載するような法的措置が考えられ
ます。しかし、これらはいずれも期間や費用がかかります。ですので、まず は、管理組合としては、滞納者との間でよく話合いの機会をもち、滞納の理

由を確認するとともに、支払いを促すことが重要です。

また、時間が経過すればするほど、対応が困難になってしまいますので、 滞納額が少ない早期の段階で対処することが必要です。

(2) 任意の話合い 滞納者には早期に対応することが望ましいので、まずは、管理組合として、
話合いの機会をもつなどして、滞納の理由を確認することがよいでしょう。 「たとえば、滞納の理由が、管理に対する不満などであれば、これについて
しっかりと説明をすることで、滞納が解消するかもしれませんし、「自分は 1階の区分所有者なので、全体に関する管理費等は支払う義務がない」など
と主張するのであれば、法律的な説明をすることで対応できるかもしれませ

払いなどの対応策を検討してもよいでしょう。 「しかし、話合いを拒否したり、話合いをしても支払う意思がないような場

合には、後記(3)のような措置を検討する必要があるでしょう。

(3) 訴訟などの法的措置 滞納者に対して行うことができる法的措置としては、以下のようなものが あります。

(A) 支払督促

裁判所に行くことなく、書面審理だけで滞納組合員に支払督促を出しても らうことができます。支払督促は判決と同じ効力がありますので、強制執行
をすることもできます。

この方法は、費用も安く、簡単に利用することができます。 もっとも、滞納組合員が支払督促に異議を出した場合には通常訴訟の手続
に移行することになってしまいますので、注意が必要です。

(B) 少額訴訟

少額(60万円まで)の請求をする場合に利用することができる制度です。 原則として1回の期日で審理を終え、判決を出してもらうことができますし、
通常訴訟よりも費用を抑えることができます。 「支払督促だと異議が出されることが予想される場合には、この少額訴訟を

利用することを検討してもよいでしょう。

(C) 訴訟 一般的に知られている裁判のことです。

前記(A)(B)の2つに比べて、時間と費用がかかりますが、滞納金が多額で ある、支払督促を出しても異議が出されそうというときは、最初から通常
訴訟を提起したほうがよい場合もあるでしょう。

なお、組合員が今後も支払いをしないと思われる場合、滞納分だけでは なく、今後発生する管理費等の支払いも命じさせることができる場合があ
り、滞納者への対応には有効な場合があります。

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支払う意思はあるが、現在事情があり支払えないというのであれば、分割


第3章 管理組合の会計と税務

管理費等滞納者への対応

(D) 強制執行 (ABXC)の3つの方法により判決など(これらを債務名義といいます)を取得
すると、滞納者の財産の差押えをすることができ、これにより管理費等を 回収することができます。
「もっとも、滞納者の財産を把握していないと強制執行により回収するこ とができません。たとえば、勤務先や預金口座の支店名までを把握してい
る必要があります。また、マンション自体を競売にかけることも可能ですが、

マンションに抵当権が設定されていたり、税金の滞納があって、売却金額 がこれらに満たないような場合には、競売自体を進めることができません
(剰余主義、民事執行法63条)。

現実には、以上のような問題から回収ができないという事態が少なくあ りません。

なお、平成28年改正標準管理規約および同コメントの別添3資料「滞納管 理費等回収のための管理組合による措置に係るフローチャート」には、管理
組合が「金融資産については、滞納者の同意書を携行し、銀行等から情報を 得るように努める」、「不動産については、……課税当局の固定資産税台帳を
調査するように努める」との記載がなされていますが、疑問です。滞納して いる区分所有者から「同意書」をとることはまず現実的とは思えません。仮
に「同意書」を得たとしても、それだけで金融機関や課税当局が個人の資産 内容という究極のプライバシーを簡単に他人に開示するとは思えません。

ちなみに、弁護士法23条の2は、弁護士が職務上の必要性がある場合に 各自の所属する弁護士会を通じて、官公庁や企業などに対して一定の事項の
照会を求める制度を規定していますが、金融機関に対する個人の預金口座の 情報照会については、ようやく昨年(平成28年)から今年初めにかけて、三
菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などの限られた銀行について、 東京、大阪などの一部の弁護士会からの照会を受け付ける運用が始まったば
かりです。その場合も、対象は債権差押命令申立事件に限られ、債務名義の

あることが必要となります。

(E) 先取特権による競売

マンションの管理費等については先取特権というものが認められており (区分所有法7条)、上記(A)~(C)の手続をすることなく、マンションを競売す

ることができます。 「しかし、この場合も、上記の剰余主義が適用されるため、必ずしも実効
的とはいいにくいと思われます。なお、抵当権が設定されているかは登記 事項証明書を見れば確認できます。

(F) 配当要求

前記D)と(B)は管理組合自身が競売を申し立てて競売を進めることになり ますが、他の債権者が競売を申し立てている場合には、配当要求の手続を
することにより、この競売手続で配当を受けられることがあります。

(4) 59条競売 以上のような方策が功を奏しない場合、その人の所有建物を区分所有法 59条に基づいて競売にかけることが可能です。

区分所有法59条は、「区分所有者の共同の利益に反する行為」がある場合、 マンションを競売できる旨規定しており、管理費の滞納もこれにあたると
考えられているため、滞納額が大きくなった場合には、競売にかけること も選択肢になり得ます。
「いくら滞納があれば競売が認められる程度となるのかということには明 確な基準はありませんので、実際に訴訟にするかどうかの決断は難しいで
すが、この方法によれば、滞納者自体を排除することができ、滞納問題を 根本的に解決することもできるため、最終手段としては検討に値するもの
と考えられます。

また、59条競売が認められるためには、「他の方法によってはその障害を 除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図
ることが困難であるとき」という要件を満たす必要があります。たとえば、 マンションを競売にかけたものの、無剰余取消しされてしまった場合などが
考えられますが、実際に競売にかけなくても、登記記録上抵当権が設定され

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第3章 管理組合の会計と税務

| 管理費等滞納者への対応

とが区分所有者の平穏な生活を侵害するものであるなどとして、不法行為で

あるとして管理組合に損害賠償を命じた裁判例があります。

水道や電気が生活において不可欠なものであることからすれば、管理費等 を滞納している人がいるとしても、これらを停止する措置を講じることは、
基本的には避けたほうがよいでしょう。

(7) 氏名公表 管理費等を滞納している人の氏名などを公表することで、事実上、支払い
を促そうという管理組合がしばしばありますが、これがプライバシー権の侵 害や名誉毀損であるとして、管理組合に対して慰謝料の請求を求めることが

考えられます。

東京地裁平成11年12月24日判決(判時1712号159頁)は、管理組合が、事前 に支払いの意思があるのであれば公表を控える旨を伝え、管理費等を一部で
も支払っていれば氏名を削除する措置を講じていたなどの点を考慮し、立看

板の設置による氏名の公表は不法行為にはあたらないとしました。

ていることなどの事情があれば、このような要件を満たすこともあります。

詳細は事案によりますので、59条競売を進める場合には、専門家に相談 するとよいでしょう。
「なお、競売を認める判決が出された後に組合員が部屋を他人に売ってしま うとそのマンションを競売することはできなくなってしまいます(最高裁平
成23年10月11日判決(集民238号1頁))ので、判決が認められた場合には迅速 な対応が必要になります。また、これを回避するために、59条競売を求め
る裁判を申し立てる前に、所有者を変更しないように仮処分を申し立てると いうことも考えられますが、最高裁は、これもできないとしました(最高裁
平成28年3月18日決定(民集70巻3号937頁)。ですので、59条競売をしよう とする場合には、判決後すぐに競売をできるようにするしか、現状ではない
といえるでしょう。

(5) 58条による使用禁止 区分所有法58条は、共同の利益に反する行為をしている場合、専有部分
の使用禁止を請求できるとしています。上記のとおり、管理費等の滞納は共 同の利益に反する行為といえますので、本条により専有部分の使用禁止を求
めるということが考えられます。 「しかし、専有部分の使用を禁止したからといって、滞納の解消には直結し
ないということから、裁判所は、現状においてはこれを認めていません(大

阪高裁平成14年5月16日判決(判タ 1109号253頁))。

最高裁判所の判例ではなく、結論が変わる可能性もありますが、現状にお いては上記の実務となっていますので、管理組合としては、他の方法を検討

することになると考えられます。

(6) 水道・電気等の供給停止 管理組合が水道や電気の料金を集金しているような場合、滞納者に対する
水道や電気等の供給を停止することで、事実上、支払いを促そうとすること が考えられます。

しかし、福岡地裁小倉支部平成9年5月7日判決など、供給停止をしたこ

しかし、個人情報の取扱いについて議論のある現在においてもこれと全く 同じように考えられるとは限らないことなどからすれば、管理組合としては、
安易な氏名の公表は差し控えたほうがよいでしょう。少なくとも、規約にお いて管理費等の回収に関して規定するに際して氏名の公表に関するルールを

定め、実際に公表をするにしても、事前に通知をし、対処の機会を設けてお くなどをしておく必要があるといえるでしょう。

4 法的措置をとる場合の注意点

(1) 決議 前記3で述べた法的措置を講じる場合には、その旨の決議を経る必要があ ります。基本的には総会決議によることになりますが、標準管理規約54条
7号、60条4項のような規定がある場合には、理事会決議で足りると考え

られます。

裁判所において手続をする際には、適切な内部手続をとっている資料とし

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第3章 管理組合の会計と税務

III マンション管理と保険

られます。

マンションを取り巻くリスクを考えた場合、マンションに損害保険をかけ ておかないと、事故が起こり、管理組合が責任を負う場合、管理組合の費用
負担で損害を補償することになりますので、保険を賢く利用することが重要

tt.

2
マンション総合保険の対象の範囲

て、管理規約のほか、これらの決議に関する議事録の提出を求められること が一般的です。

(2) 遅延損害金 滞納者に対しては、遅延損害金を請求することができます。 管理規約に遅延損害金の規定がある場合には、それに基づく利率の遅延損
害金を請求することになります(たとえば、標準管理規約60条2項は規定にお いて利率を決めることとしています)が、規約に定めがない場合には年5%の

割合となります。

また、遅延損害金は、各支払期日の翌日からとなりますので、法的措置を 講じる場合には、各支払期日からの遅延損害金を請求するようにしておく必
要があります。

(3) 弁護士費用 法的措置を講じる場合には、弁護士に費用を支出して依頼することがあり
ます。この弁護士費用については、管理規約に規定することで、滞納者に請

求することができます。 「たとえば、標準管理規約60条2項のように「違約金として」弁護士費用を
負担させるにようにしておくとよいでしょう。この場合、実際に支払った弁 護士費用を滞納者に請求できると考えられます(東京高裁平成26年4月16日判
決(判時226号26頁))。

上記のような管理規約の内容にしていない場合には、弁護士費用を負担し ても、これを滞納者に請求することができなくなってしまいます。

マンション総合保険は、建物の共用部分および共用部分に収容される区分 所有者共有の動産が対象となり、マンションの専有部分は、対象になりませ
ん。具体的には以下のとおりです。

0 専有部分以外の建物の部分 2 専有部分に属さない建物の附属物で建物に直接附属する設備 3 専有部分に属さない建物の附属物で建物に直接附属しない設備
4) 管理規約により共用部分となる建物の部分または附属の建物

G)

51~4までに掲げる部分にある畳、建具その他これらに類する物

6 0~5に収容される区分所有者共有の動産 なお、マンションの共用部分の範囲を決める基準として、上塗り基準と壁 芯基準があります。

「上塗り基準」とは、共用部分と専有部分の境界を天井、壁、床など部屋 の内側とする基準です。

(図3〉 壁芯基準と上塗り基準

I マンション管理と保険

[壁芯基準]

BOU

[上塗り基準]

1 マンションのリスクと保険

pl

火災、爆発、落雷、風災、雪災、水ぬれ、破損、汚損など、マンションの 賠償事故リスクは多様です。上記のような各種の事故による損害のほか、地
震による損害や電気的・機械的事故、個人の賠償責任となる事故などが考え

BORI

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第3章 管理組合の会計と税務

| | マンション管理と保険

「壁芯基準」とは、共用部分と専有部分の境界を天井、壁、床などの真ん

中(志)とするものです。 「共用部分と専有部分の区別については、管理規約に定められていますので、

確認しましょう。

損害額(免責1万円) 補償内容No.10で対応 補償内容No.10で対応 損害額(免責1万円) 損害額(免責1万円)

「損害額(免責1万円)

3 契約プラン

損害額(免責1万円) 損害額(免責1万円)※1事故300万円限度

契約プランは、各マンションの形態でさまざまな違いがありますので、代 表的な契約プランを紹介します。

3「破裂・爆発 4「建物外部からの物体の飛来・衝突 5 |騒じょう・集団行動 6|風災・ひょう災・雪災

7「盗難による盗取・き損・汚損 | 8 「水濡れ

9 KSE |10|上記以外の破損・汚損等

11「共用部付属機械設備補償 12 |ドアロック交換費用 13 |水道管修理費用(凍結) 14|臨時費用 15 |残存物取方付け費用
16「失火見舞い費用 17 「修理付帯費用 18 | 損害防止費用 「19 「地震火災費用

20 |水漏れ原因調査費用 21「個人賠償責任 22 「施設賠償責任 |23|地震保険

損害保険金×20%(3,000万円限度)

** 実費(被災世帯× 30万円限度、損害保険金× 30%限度) 実費(契約金×30%または1,000万円のいずれか低い額)

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【物件サンプル】

東京都荒川区所在 築18年、10階建て、住居数28戸 下記プランは、あくまでも一般的なマンション保険の一例です。
また、各マンションでの補償の相違点として、免責金額(保険使用の 際に管理組合が負担する金額)が異なっていたり、水災が不担保にされて
いる場合等々があります。

実費(1事故につき100万円限度)

4 地震保険

B 建物評価額 「保険金額 地震保険金額 個人賠償責任

施設賠償責任

BA Be*

平成○○年○月○○日

1億6,370万円 1億6,370万円

5,000万円 3,000万円 1 S

to 216,740円/年

平成28年(2016年)熊本地震が起き、いつ首都圏直下型地震や南海トラフ 地震が起きてもおかしくないという状況にあり、最近、地震保険に加入する
管理組合が増えています。

地震保険の補償内容としては、居住の用に供する建物および家財であり、 地震により建物が倒壊・破損した場合、津波により建物が流された場合、地
震により建物に火災が発生し炎上した場合、もしくは地震により火災が発生 し範囲が拡大・延焼したことによって建物が炎上した場合に保険金が支払わ
れることになります。 「ここでポイントとなるのが、地震による火災は通常の火災保険の補償対象

【現補償内容) No. 補償項目

1|火災 2|落雷

※黒塗り部分は不担保です。 お支払い保険金 損害額(免責1万円) 損害額(免責1万円)

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