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IV 大規模修繕工事の進め方

第4章 共用部分の維持管理

V 大規模修繕工事の進め方

1 大規模修繕工事とは

建物は手入れを怠ると劣化してしまい、寿命が短くなります。鉄筋コンク リートの建物は、適切に手入れをしていれば60年以上使用できます。

定期的に下記の内容を伴う工事を、一般的に大規模修繕工事と称します。

(2) 不具合の発生現象・要因と日常のチェックポイント (A) 自走式駐車場

自走式駐車場は、経年で塗装や仕上げの劣化が生じます。これは、建物の 日常点検や大規模修繕を行う際の建物調査時に確認を行います。

屋根がない場合は、最上階の防水劣化状況の確認が必要になります。また、 周囲の落下防止手すりや車止めなども固定部分の緩み等を確認する必要があ

. (B) 機械式駐車場

機械式駐車場は、エレベーターと同様に、保守契約を結んで運用します。 ただし、エレベーターのような点検の義務づけはありませんが、附属設備と
して設置してある消火設備は消防法による点検の対象です。

(3) 修繕の時期と方法 (A) 自走式駐車場

自走式駐車場は、大規模修繕工事などとあわせて塗装や防水などの補修を 行いながら、長期的には建替えを想定しておくことが必要です。

なお、改修工事を行う際は、車の通行が絡むため、防水等の使用材料の選 定のほか、工事中の車の移動方法の検討が必要になります。 (B) 機械式駐車場

機械式駐車場の修繕周期は、設置されている装置や環境によって幅があり ます。駐車装置の全面更新は、屋外設置の場合、20 ~ 25年程度で行われます。
部分補修箇所としては、駆動部分等の昇降装置は10年程度で取替え、安全 装置は5年程度で修繕・取替え、ピット式の場合に設置されている排水ポン
プは10年程度で取替え、塗装部分は4~5年で再塗装とされています。

なお、近年は駐車場の空きが多くなり、維持管理費用が不足する状況が出 てきています。全面的な修繕の際は、現状どおりで更新する以外に、駐車装
置を撤去して平面式駐車場に変更することも考えられます。仮に、余った駐 車区画をマンション外の所有者に貸し出す場合、その方法によっては課税対
象となる場合があります。詳しくは、第3章IV2をご参照ください。

・建物を長持ちさせ資産を維持していくために行う計画修繕工事 ・通常は足場を架けて行う、複数のまとまった工事
・長期修繕計画では12年周期が多い(実質10 ~ 15年) ・対象は共用部分で、費用は修繕積立金を用いて行う工事(管理規約で
修繕積立金の取り崩しの規定がある)。ただし、昨今は、給水管更生工 事など施工上合理性があったり、劣化により他室に影響を及ぼす箇所
の工事の場合は、総会決議を経て、専有部分を含む場合もある。

なお、建築基準法の中で工事の種類として以下の定義がされています。 O 建築:建築物の新築、増築、改築、移転 (2)
大規模の修繕:建築物の主要構造部を含む過半の修繕

3 大規模の模様替:建築物の主要構造部を含む過半の模様替 しかし、本章で述べている一般的に「大規模修繕工事」と呼ばれる工事は、
過半の主要構造部を含まない修繕のため、上記のいずれにもあてはまりませ

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2 大規模修繕工事までの流れ

大規模修繕工事は、思い立ったらすぐに取りかかれるわけではなく、いろ

9 問題が発生して行う工事を対処修繕といい、問題発生前に予防的に行う工事を計画修繕といい

**

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第4章 共用部分の維持管理

IV 大規模修繕工事の進め方

いろと準備が必要になり、主な流れは「表15) のとおりとなります。 多くの組合員に周知するように心がけることがポイントです。

(1) 準備段階 (A) 大規模修繕工事専門の委員会を立ち上げる

すべてを管理会社に任せてしまうマンションが多い中、自分たちの資産で すので自分たちで劣化状況を把握し考えることが必要です。その準備として、

理事会が中心となって取り組むことも可能ですが、期ごとにメンバーが替わ

る理事会では検討から工事完了まで2年程度はかかる大規模修繕を継続的に

効率よく高水準でまとめ上げることはできません。そこで、大規模修繕工事 専門の委員会を立ち上げて、複数年にまたがる検討を固定メンバーで行うよ
うにしましょう。

委員会メンバー構成のポイントは、以下のとおりです。

・メンバーを公募する。希望者がいない場合は、理事や役員の経験者、

公平な意見を出せる方などに声をかける。必ずしも専門家である必要

vt teve

・理事との兼任者を入れておくことで、理事会との連携も保つことが容

易になる。 ・老若男女揃うのが望ましい。いろいろな参加者がいると意見が広がる。

特に常時在宅している方の意見は重要。

(表15] 大規模修繕工事までの流れ

・大規模修繕工事専門委員会の設立

・パートナー決定(専門家の活用方法) (1) 準備段階

・大規模修繕工事の検討開始を告げる総会決議 ・調査までのスケジュール検討

・不具合・劣化部分の調査(パイロット調査) (2) 建物調査診断」・組合員意識調査、居住者による不具合箇所聴き取り(アン

(2~3カ月) | ケート)

・調査結果報告会の開催 ・工事までのスケジュール、工事時期の検討

・組合員要望聴き取り (3) 修繕計画立案 |・工事範囲と修繕方法検討

(3~4カ月) |・予算検討

・工事仕様書作成 ・工事範囲説明会の実施 ・公募条件検討 ・公募(専門新聞、WEB)

・見積発注会社選定(第1次選定) (4) 工事会社選定

・見積発注 (3~4カ月)

・選定会議開催(第2次選定) ・ヒアリング(第3次選定) ・工事会社および予算の承認総会の実施

・工事実施状況の把握 (5) エ 事

・色決め等の検討

専門委員会は、理事会の諮問機関と位置づけられます。専門委員会から答 申された審議結果が理事会で快く追認される組織づくりが必要です。 (B)
専門家(パートナー)への依頼方式を決める。

適正な補修箇所や価格を知るなど、工事にあたっては専門的な知識が必要 なため、委員会だけで検討するのは無理があります。専門家であるパートナー
を活用しましょう。

パートナーには大きく分けて2つの方式があり、それぞれ特徴があります (表16] 参照)。

できるだけ管理組合側の手間をかけたくない場合は責任施工方式(大抵の 場合、管理会社に委託している場合が多い)を選択するのに対し、工事の内容
をきちんと把握し、費用も安く済ませたい場合は設計監理方式を選択します。 「責任施工方式はすべてお任せになるため、高額な工事費用になる可能性が
あります。また、第三者チェックがないため、作業や品質が甘くなることも

考えられます。

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第4章 共用部分の維持管理

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(表16] パートナー方式比較

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責任施工方式

設計管理方式 安心できそうな工事会社や管理 設計事務所や管理会社に、建物診

会社に建物診断・補修計画・工事 断・補修計画・工事会社選定・監 概 要 |の施工をすべて委託する。 理を委託する。

工事会社選定は公募を行い、見積

合わせを行う。 パートナー|工事会社または管理会社 設計事務所

・管理組合の手間がかからない。|・第三者による工事の厳正な品 ・設計管理費用がかからない。 | 質チェックが入る。

・工事費用のコストダウンが図 xu vyt

13. ・何を行っているのかが透明に

et.

・建築士資格者がかかわる。 ・内容が管理会社の思惑でどの|・設計管理費用が発生する。た

ようにも進められる。

「だし、工事費は安くなるため、 ・競争がないため工事価格は割| トータルとしては安くつく。

高になる。

・打合せが多くなる。 デメリット

・第三者がいないため品質

チェックが甘くなる。 ・工事品質や状況などが管理組

合から見えにくい。

計監理者としてふさわしいパートナーの選定をお勧めします。

(C) 設計監理方式のパートナーの選び方

前記1で述べたように、「大規模修繕工事」は建築基準法上で定義されるエ 事ではないため、計画を立てるのにあたって有資格者は必要ありません。し
かし、修繕工事における必要知識は、新築時の知識だけではなく、その劣化

状況から改修方法を判断するなど、新築時の知識+aが求められます。した がって、最低でも有資格者が携わる必要性があることから「建築士」が行う
べきと考えますし、その中でも同じ理由により改修工事の経験の豊かな建築

士である必要があります。

「新築設計」しか行っていない建築士の場合、「新築設計」と「改修設計」の 違いすら知らずに携わってしまっている場合もありますので、建築士であれ
ば誰でもよいわけではありません。注意が必要です。

建築士を選ぶ場合、建築士の所属する「設計事務所」に依頼します。 間違えやすい設計事務所の選び方として、以下のようなものがあります。 1
工事会社を選定するのと同じ方法で選定してしまう(例:管理組合側 から劣化調査診断や補修箇所の項目、作業数(人工)を指定して、単価のみを
入れてもらう形式をとる) →どのような方法で建物診断や補修設計を行うのかは専門家でないと判

断できません。中途半端な情報で項目や作業数を指定すると、無駄な項 目が入ったり、足りないものが生じてしまいます。足場を立てないと実

施できない調査が入っていた例もあります。 (2) 市販本に記載されている改修方法や経験の少ないマンション管理士の

助言などにより、選定を試みようとする(例:上記の条件をもとに、金 額や会社の規模で判断する)
→パートナーの差は個人の素質・能力に最も現れます。1の方法だと必 然的に業務費用や会社の規模で判断することになり、個人の素質・能力
は二の次、三の次になります。金額は一般組合員への選定理由として説 明しやすいですが、パートナーの業務費用の差は工事金額の差に比べれ

これに対し、設計監理方式は、管理組合とパートナーが協力し合って進め るため、納得と安心が得られやすく、「オーダーメイド」に例えられます。こ
の方式を採用することで、見積金額を第三者の目で審査することになります ので、結果的に工事費が安く済むことにもつながります。充実した結果が得
られやすい方式といえます。

大規模修繕工事は、建物を長く使い続けるための大切な工事です。工事が 終了した後のフォローやアフター点検、補修なども重要です。

工事前、工事中、工事後の管理組合のさまざまな負担を軽減するため、設

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第4章 共用部分の維持管理

V 大規模修繕工事の進め方

ばわずかでしかなく、バックマージンを受け取っているパートナーがい ることも覚えておく必要があります(国土交通省「設計コンサルタントを

活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通
知)」(平成29年1月27日)(http://www.mlit.go.jp/common/001170196.pdf> 参照)。

また、会社規模が大きいほど、経験豊富な技術者は多くの物件を並行 して見ることになるため、実質の個別の現場担当者は経験の浅い技術者 になりがちです。
マンションの改修設計に携わる設計事務所が増えてきたのは、新築工事が 減り、逆に改修工事が増えて「仕事になる」と思われるようになった近年です。
それまでは、マンションの改修工事の質や工事費用に疑問をもち、管理組合 の利益を守るためや工事の質の向上のために力を注いできた熱意のある設計
事務所のみが携わってきたという歴史があります。それらのほとんどは、規 模の小さな設計事務所であることを考えると、パートナー選定の際に規模の
大きな事務所に限定すると、こういった経験・技術や熱意をもった設計事務

所が除外されてしまうことになるので、大変もったいないことになります。 一見、技術者の差は見えにくいですが、実際にはかなりの差があることを
知っておいてほしいと思います。

選定する場合は以下の点を重視するとよいでしょう。

・管理組合がわかりやすいように説明ができる(コミュニケショーンがと

りやすい、組合の意見に真摯に耳を傾けてくれる)人 ・管理組合に対しても、中立的な意見を言ってくれる人(何でも言うこ

とを聞く人は要注意) 2 業務費用にとらわれない ・パートナーに支払う委託業務費用は、工事費に比べればごくわずかな

費用。パートナーによって今後の工事費用が変動することを考えれば、 上記のの基準で選定することのほうがパートナーの費用の大小より大
切。100万円程度の費用を削って数千万円損することのないよう熟慮 53. ・設計事務所の業務報酬は、国土交通省の告示で算定基準が規定されて

いる。これは、直接人件費(作業量に技術者の力量に応じた報酬額を掛 けた金額)に経費・技術料を加算したもので、本来はそれほど差が出
るものではない。しかし、その金額に比較して2分の1や3分の1と いった極端に安い金額で提示される場合は注意が必要。
・委託業務費用が安い場合、マンションを管理している管理会社や決定

した工事会社から紹介料やバックマージンなどを受ける場合が見受け られる。このような費用の授受は公平な判断や工事会社への指示力を
妨げるし、管理組合を単なる「客」としか見ていないことになる。場 合によっては出来レースを組まれる場合もある。
・委託業務費用が安い場合、契約前には経験豊富な建築士が来ていても、

契約後は経験の少ない担当者だけになる場合がある。 のヒアリング(面接)の実施 ・コミュニケーションがとりやすいかは直接会って話をする必要があ

る。必ずヒアリングを行って確かめる。 ・実際の実務を行う担当者がヒアリングに参加するよう要請する。
・資料について、多額の費用がかかっていたり、まだ決まっていない先 の設計内容まで網羅したりする資料の作成は、業務費用から考えると

0 会社や団体の規模等ではなく担当者で選ぶ ・専門家として信頼できる人 ・マンション改修に対する経験や実績が豊富な人
・特定の業者や企業とかかわりをもたない第三者であることを約束でき

る人、そのようにして管理組合の利益を守れる人 ・建築技術だけではなく、資金計画や借入れなどの資金面にも配慮でき

・区分所有法や規約など管理組合運営に関する知識も備えている人

・工事会社へはもちろん、管理会社へもきちんと意見が言える人

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第4章 共用部分の維持管理

IV 大規模修繕工事の進め方

難しいのが実態。そのような資料を提出できるのは、実務に対して営」 業の比率が高い会社。 ・担当者がかかわった管理組合の方の話を聞いてみる。

画面をご覧ください。 最新情報の詳細は、弊社n –

(A) 不具合・劣化部分の調査

(a) 資料の準備 調査に先立ち、以下にあげた資料を準備し、パートナーに提供する必要が ありますので、前もって準備をしておくとよいでしょう。

・建物概要(下記書類に記載されていない内容を記載したもの一売主、設

計者、施工者、管理会社、完成引渡日などの情報) ・新築時の建物の図面(竣工図書) ・新築時からこれまでの修繕・改修履歴

・各種検査報告書

パートナーの質が悪かった場合、そのパートナーを選定した執行部(理事 会や専門委員会)の責任が問われることを恐れたり、それによる工事品質が
悪かった場合は資産価値に影響することを恐れて、パートナーの質に関して なかなか表立って明確な評価が出てくることは少ないのが現状です。しかし、

悪質なパートナーはリピーターが少ないことで判断ができます。 「したがって、リピーターや紹介が多い建築士や、大規模修繕工事を実施し
た他の管理組合が紹介する建築士はよいパートナーとしての1つの基準とな りますし、実際にお付き合いしてみた印象を聞いてみることをお勧めします。

また、決定する前に、担当予定の建築士に有償でもかまわないので、修繕 についての講習会を開いてもらうと勉強になるだけでなく、その建築士の力

量や知識を判断する材料にもなります。

信頼できるよいパートナーにめぐり会えると、大規模修繕だけでなく、そ の先まで長い付き合いが可能です。かかりつけのお医者さんのように携わっ
てもらえるパートナーを選びましょう。

(D) 総会の実施

この時期の総会において、以下を決議しておく必要があります。 0 大規模修繕工事を近々実施すること(正確な日程は決めなくてかまわな

11) 2 パートナーとの契約(どこにいくらで発注するか)

(2) 建物調査診断 今後のロードマップ(進め方やスケジュール)はパートナーが作ります。こ
れに基づいて大規模修繕工事まで進めていきますが、その最初の作業が建物

劣化診断調査になります。

なお、竣工図書はいろいろな工事で利用するため、やぶけたり、印刷がか すれてきたりします。早めにデジタル化(スキャニング)しておくことをお勧 めします。

(b) 組合員意識調査、居住者による不具合箇所聴き取り(アンケート) 調査前には、居住者・区分所有者にアンケートを行うのが一般的です。こ
のアンケート項目には、居住者が把握している不具合内容と大規模修繕工事 に対する質問や要望事項などを入れますが、通常はパートナーがひな型を作

成し、管理組合と内容を吟味したうえで行います。

(c) 調査箇所 調査部位や方法の適正さは主にパートナーが判断することになりますが、
外壁など高所の調査は足場がないとできないこと、調査用足場をかけると費 用が膨大になること、工事が始まればあらためてすべてを調査することにな
ることから、部位によっては部分調査によって劣化傾向をみることになりま す。そのため、このあとに工事数量を積算しますが、胴体補修など調査では
数量が確定できない箇所は、調査結果から想定数量を割り出し、工事開始後 に増減精算を行う「精算工事」として扱うことが一般的です。

調査箇所・方法は、一般的には(表17] の部分で行います。

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第4章 共用部分の維持管理

行います。また、工事の実施時期は劣化状態や資金面などから想定し、最終 的には、工事範囲や社会情勢なども加味するなどして決定するのが望ましい

方法ですが、工事実施までの途中には必ず総会の開催もあるため、通常は調

(表17] 主な調査箇所

・共用部分のうち、手が届く専用使用されていない箇所すべて(屋上・

屋根・外壁・共用廊下・エントランス周り・機械室・ごみ置き場・

駐車場・駐輪場など) ・専用使用されている共用部分(主にバルコニー)の一部(全住戸の BA

1/10程度) ・主に目視調査で幅体・仕上・防水等の劣化具合を確認 ・機械調査(破壊調査)にて、既存仕上材付着力(塗装面・タイル面)、

コンクリート中性化、シーリング材質の試験を実施 第1回目の大規模修繕工事ではほとんど行う必要はありませんが、新
築時の工事瑕疵が気になる場合は調査を行う場合もあります。 ・メーターボックス内・一部の住戸のパイプスペース内の配管類、水

槽類、機械・機器・器具類 ・給排水衛生設備の外観 B

・電気関係の外観 ・消防設備の外観 ・配管経路、材質を確認 ・築年数が経っている場合、設備配管類の抜管(配管を切り取って内

部を確認する)や内視鏡による劣化状況を検査

査診断後、工事業者選定の総会決議まで6カ月から8カ月が必要になります。 十分な期間を確保して的確に進めるようにしましょう。

(A) 工事範囲検討

調査結果に基づき、工事範囲を決めていきます。その内容は、パートナー からの提案に、管理組合からの要望を加えたものがベースとなります。管理
組合の要望は、調査前のアンケートも活用しますが、調査結果から提案され た補修内容が、修繕委員会や理事会だけでは判断できなかった場合など、マ
ンションの状況によってはあらためてアンケートをとることも必要です。し かし、多くの内容を盛り込みすぎると工事費がかさんでしまうため、調査結
果と予算をもとにパートナーに工事範囲と工事費予算書を作ってもらい、優 先順位とどの項目を実施すればどの程度の費用になるかを検討し決めていき

5.

○「予算書」の内容 ・工事範囲や内容を網羅した見積書形式の書類 ・パートナーが数量を積算し、標準単価を掛けて出す

(B) 調査結果報告会の開催 パートナーより調査結果報告書が提出されたら、専門委員会にて報告を受
けます。その後、一般居住者へ向けた報告会を開催して、建物の状況を広く

知ってもらいましょう。多くの人に状況を知ってもらうことで、この先の居 住者の協力態勢など、進め方がスムーズになります。

できれば、パートナーに建物を案内してもらい、居住者自ら不具合部分を 見ておくことでより理解が深まります。

(3) 修繕計画立案 工事範囲、予算、工期と時期を盛り込んだ修繕計画を立案し、最終的には
区分所有者へ工事範囲の説明会を実施することをめざしますが、そのために は、理事会(または専門委員会)とパートナーとの打合せを1カ月に1回程度

・金額から工事範囲の検討が容易になる ・工事会社にはこの予算書をベースに、金額を伏せ、項目と数量のみの

資料として提出することにより、競争見積りの際に項目や数量が共通 となり、金額のみの差になる

なお、大規模修繕工事の基本方針(目的)を明確にしておくと実施項目の 選択によれが少なくなります。ある古いマンションでは、資産価値の減少を
抑えることを大目的とし、「近隣新築マンションに見劣りしない建物にする」 とのスローガンを掲げ、エントランスの改修や耐震工事までも実施しました。

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第4章 共用部分の維持管理

IV 大規模修繕工事の進め方

説明資料は、総会同様に前もって全戸配布しておくとよいでしょう。

なお、工事範囲に共用部分の区画または用途が変わる工事が含まれる場合、 説明会ではなく総会が必要となりますのでご注意ください。 (E)
仕様書の作成(実施設計)

設計監理方式の場合、見積りを工事業者に発注する前に標準見積書式と標 準仕様書をパートナーに作ってもらいます。標準見積書式には予算書から価
格を抜いた、工事項目と数量のみとします。これらによって、複数の施工会 社から提出される工事見積書が、同じ工事内容・同じ数量の見積りとなり、
単に金額だけの比較ができるようになります。

○「仕様書」の内容 ・工事会社に対する指示書

・工事の内容・工法・設計図、居住者対応などが具体的に記載された書

その結果、中古売買価格が2割以上上昇したという例もあります。

(B) 工事費予算の検討

工事範囲を決めるには、負担可能な予算を把握しておく必要があります。 予算を決めるにあたっては、長期修繕計画をもとに出費可能な額を出してお
くことが望ましい方法ですが、長期修繕計画書自体がずさんな場合も多いた め、1度パートナーにチェックしてもらいましょう。ただし、あまりにずさ
んな場合は長期修繕計画書自体を作り直す必要があり、別途費用が発生しま 5. 「この検討結果によって、修繕積立金を今後増額する必要があることが発覚
する場合も少なくありません。 「すべてを手持ち資金で賄えることが望ましいですが、必要な工事ができな
い場合、一時金の徴収や借入れを検討せざるを得ない場合もあります。特に、 一時金は支払えない住戸も出てくることが想定されるため、非常にハードル
の高い方法です。一方で、借入れはうまく使うと修繕積立金の増額を抑える ことができる場合も多く、また本書執筆時点(平成29年2月1日)では、独立
行政法人住宅金融支援機構の借入金利は10年以内の償還期間の場合0.69%と 非常に低く、担保の必要もないため、一考されることをお勧めします。 (C)
工事期間(工期と時期)

工事規模をもとにどのくらいの工期が必要なのかを判断します。また、エ 事内容によっては季節(気温や湿度)の影響を受けますし、劣化状態や資金面
も考慮する必要がありますので、パートナーの助言をもとに適切な工事開始

時期を検討します。 (D) 工事範囲説明会の実施

ある程度工事箇所・基本方針ができた段階で、区分所有者への説明会を開 催し、理解を得てもらうとともに意見を集約します。そのときも大規模修繕
工事の基本方針があると理解が得られやすく、質疑応答も容易になります。

・使用する材料や工法が明示されているため、工事会社間で品質が統一

され、見積り時の差がなくなる ・見積条件(支払条件、保証内容、アフターサービス内容等)も記載

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(4) 施工業者の選定 責任施工方式だと調査診断を行う前から、設計監理方式だと修繕計画立案 後に、複数の業者から工事見積りをとり、1社を選びます。
「1社だけに依頼する方法もありますが、競争原理が働かないこと、工事費 用が適正かどうかが判断できないことなどから、一般的には工事費が高くな
ることが考えられ、よほどよい工事を適正な価格で請け負うことが約束され ない限りはお勧めできません。

(A) 工事会社のリストアップ

以下の方法で見積りを依頼する工事会社をリストアップします。 0 公募(専門新聞やインターネットでの募集)

10 別途、公益財団法人マンション管理センターの保証が必要です。

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第4章 共用部分の維持管理

IV 大規模修繕工事の進め方

(2) 紹介(居住者や知人、パートナーや管理会社)

・工事実績経歴書

・直近3年間の財務諸表 ・法人税納税証明書 ・経営事項審査結果通知書

・帝国データバンク企業情報

専門新聞の代表的なものには「建通新聞」「マンション管理新聞」等があり ますが、無償で掲載してもらえます。インターネットで募集できるサイトも
複数ありますが、無料で掲載してもらえるサイトと手数料が必要となるサイ トがありますので、よく調べるかパートナーに相談しましょう。

(B) 公募条件検討

公募においては闇雲に募集するのではなく、いくつかの条件を付けます。 修繕工事は実績が非常に重要で、新築工事とは大きく異なる以下のような力

量が求められます。

○工事会社に求められる力量 ・劣化具合から元々の施工状況を推察する ・一部分の状況から建物全体の注意点を把握する ・推察から施工方法を考慮する
・人が住んでいる状態での工事のため、監督や職人が居住者にしっかり

対応できる

(C) 公募の注意点

公募を行う限り厳正な審査が必要になります。応募会社間で話合いが起き れば談合になりますし、管理会社や管理組合理事・委員に対して紹介料を出
すことも考えられます。そのため、組合内での約束事や、情報が他所に漏れ ないような工夫が必要となります。特に、管理会社はいかようにも操作がで
きる立場ですので(多くの管理会社は行わないと信じていますが)、釘を刺して おくか、心配事を減らすためにもあえて情報は流さないことも選択肢の1つ
です。もちろん、管理会社にお手伝い願うことも可能ですが、上記のことは

念頭に置いておく必要があります。

よくある失敗として、組合員向け広報誌に候補となる工事会社名や予算、 見積金額などを記載して、それを掲示板に貼り出していることがあります。
情報が筒抜けになりますので注意が必要です。

(D) 見積発注会社選定(第1次選定)

修繕工事は施工会社として経験値が必要となります。そのため、工事費以 外の部分を考慮した選定も非常に重要になってきます。

これらのため、最低限の実績を公募条件に入れることが重要となります。 また、工事中の契約履行能力、完成後の工事保証(アフターサービスの範囲)
のことを考えると、倒産しない会社を選定する必要もあります。そのため、 財務諸表や課税証明書の添付などを行うのが一般的ですが、公募条件・添付
資料は建物の規模や工事範囲によって変わってきますし、規模にそぐわない 高いハードルは工事費の高騰にもつながるため、パートナーと相談のうえで 決めます。

○第1次選定

・リストアップした工事会社の比較表はパートナーが作る ・第1次選定では会社規模・内容で、6~8社程度にふるいをかける

○公募提出書類の例 ・会社案内 ・会社経歴書

できるだけ多くの会社から見積りをとることで工事費が安くなる可能性が あると思われがちですが、工事会社にとっても見積りの作成は大変な作業で

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第4章 共用部分の維持管理

IV 大規模修繕工事の進め方

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あり、受注できる可能性が低いと辞退される場合もあります。また、見積り をまとめる立場のパートナーの作業が増えるのはもちろんのこと、その精査・

把握・対応にかかる管理組合の時間的負担も増大するため、お勧めできませ ん。また、見積りを依頼しその額が仮に安く出たとしても、この会社には頼
みたくないという場合(評判がよくない、資料の不備が多いなど)も候補からは ずします。

(E) 見積発注

第1次選定で残った会社に見積りを発注します。 そのための資料として、パートナーは以下のものを工事会社に渡します。 1 見積要項書

標準見積内訳書式 3 標準仕様書

4 建物図面 見積要項書とは、見積りについての条件を記載したもので、建物の概要を はじめ、見積書の提出方法や提出日、工事日程や工事費の支払方法等を記載
したものになります。

発注するときは「見積現場説明会」をマンションで実施し、パートナーが 工事内容や条件等を説明します。管理組合の立会いは必ずしも必要ではあり
ません。以前は一堂に会して説明会を行っていましたが、談合等の件を考慮 して、少数ずつか、1社ずつで説明会を行う場合も増えてきました。

発注後は内容について質疑応答がありますが、これもパートナーが集約し、 公平を期すため全社に同じ回答を行います。

(F) 見積提出

見積要項書に提出する資料の内容が記載されますが、代表的な提出書類と

4 施工提案書(施工方針、工事管理体制、提案項目等) 6 現場代理人予定者の経歴書 6 工事履行継承保証人(予定)の会社概要 7 使用予定材料カタログ
また、見積提出資料は通常2通同じものを提出してもらいますが、受取方 法に以下の方法があります。

0 2通とも封印のうえ、管理組合が受取り・開封確認し、うち1通をパ |ートナーに渡す。

2 管理組合とパートナーのそれぞれに1通ずつ同日に渡す(郵送) パートナーもいわばいろいろな操作ができてしまう立場ですので、少しで
もその不安をなくそうとした場合は0になりますが、信頼できるパートナー を選んでいる場合は2の選択でかまわないでしょう。

(G) ヒアリング会社選定(第2次選定)

見積りが提出されたら、ヒアリングを行う会社を選定します。 実績が必要となるのは、会社だけではなく現場担当者(監督)となる「現場
代理人」にも必要になります。そのため、最終的にはヒアリング(面接)を行っ て決定します。ヒアリングは複数の日にまたがると印象がかなり変わってし
まうため、原則1日で行います。また1社1時間から1.5時間かけることに なるため、1日でできるのは3、4社となります。そのため、見積りを提出
してきた会社を絞り込む必要があります。

基本的には、第1次選定で通った会社であればどこに発注してもかまわな いはずですので、見積額の安い順に決めることになりますが、異常な安値を
付けてきた場合や、間違いが甚だしい会社の場合は一考する必要があります。 また、談合の可能性がある場合は(慣れたパートナーであれば見抜けます)、白
紙に戻す場合もあります。 (H) ヒアリング(第3次選定)

業者選定作業の山場となります。ほぼ1日をかけて、工事会社のプレゼン テーションを聞き、質疑応答を行います。ヒアリングには、予定している現

して以下のものがあげられます。

1 工事見積書 2 概略工程表 (3) 仮設計画書

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IV 大規模修繕工事の進め方

第4章 共用部分の維持管理

場代理人には必ず出席してもらいます。なお、ヒアリングの実施はもちろん 管理組合(または専門委員会)が主体ですが、パートナーの質問が重要になる
でしょう。

ヒアリングでは以下の点を注視してください。

0 会社本体

@ # 6 工事に対する姿勢 © アフターサービスの取組み方 2 工事体制

(2) バックアップ体制

6 品質管理方法 © 危機管理体制 3 現場代理人

a コミュニケーション能力 6 経験値 © 工事の理解度

指導力 特に、現場代理人のコミュニケーション能力は非常に重要となります。ど んなによい会社でも、現場代理人が悪ければよい工事はできない一方で、小
さな名も知られていない会社でも、よい現場代理人が就けばよい工事になり ます。そのためには、現場代理人と居住者とのコミュニケーションが非常に
大切になります。居住者の立場で考えるためには、雑談の中で居住者から意 見を引き出したり、工事上のお願いを確実に伝えたりすることが重要になっ
たりします。

よって、見積金額の差が5%程度(規模による)までであれば、よい現場代 理人を選んだほうが結果的に満足する工事になる場合が多いと思われます
が、その差にもよりますので、パートナーに助言を受けてください。

ヒアリング後、できれば当日中に内定作業を行うことをお勧めします。

まずは出席者で感想を述べ合い、話合いで決める場合もあれば、点数制に して決める場合もあります。どうしても決まらない場合や、より交渉が必要
と判断された場合には、再度ヒアリング(この場合は交渉や打合せの形態にな

る)を行う場合もあります。 「内定したときには、その業者はもちろん、落選した業者へも連絡を入れま す。パートナーが代行して連絡することが多いです。

(I) 工事会社および予算の承認総会の実施

工事会社が内定したら、総会の準備に取りかかります。議案書の作成はパー トナーに依頼するとよいでしょう。

工事会社の内定に至ったこれまでの経緯と、工事会社の概要・見積金額を 提示し、工事会社への発注承認をとりますが、同時に大規模修繕工事の予算
の承認もとります。これは、工事中に費用が変動する精算工事が含まれてい るためで、見積金額で総会承認を得てしまうと、1円でもこの金額をオーバー
した場合、再度総会承認が必要になるためです。工事会社の見積金額にパー トナーの工事監理費用を加え、工事見積金額の5%程度を「予備費」として
加えた金額を大規模修繕工事の予算額(上限)として、また予備費の使途に ついては理事会に一任してもらうことも併記して承認をとります。

○総会議案書に記載しておく内容 ・ここに至るまでの経緯 ・工事の実施内容(すでに説明会を開催している場合は概略)
・工事予算額と収支に問題がないことの説明

・借入れを行う場合は借入先とその償還予定 ・工事を発注する工事会社の概要と契約金額

(5) 工事の実施 (A) 請負契約の締結

工事契約には、以下の書類を添付することが一般的です。

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第4章 共用部分の維持管理

IN 大規模修繕工事の進め方

0 工事請負契約書(鑑ほか) (2) 工事請負契約約款

3 見積要項書 0 標準仕様書 6 質疑回答書 (6) 工事見積書

7 工程表 1と2は「民間(旧四会)連合協定 マンション修繕工事 工事契約書」を 使用する場合がほとんどです。
「3~6はパートナーが作成した資料です。6とのは請負者(工事会社)から

前記(4)の(E)~(G)で提出される書類です。 これらを確認し、工事着工前に契約を行います。 (B) 工事説明会の実施

工事が始まる2週間~1ヵ月前に居住者(賃貸居住者も含む)に対して、エ 事中の注意点などを説明する「工事説明会」を実施します。工事は居住者が
住んでいる中で行われます。騒音・振動・臭い・埃などは、少なくすること はできてもなくすことはできません。また、ベランダの片づけ、洗濯物の制
限といった生活に密接に絡むことも必至のため、それらの協力も必要となり

* .

そのため、こういった説明会を実施しますが、できるだけ多くの居住者に 参加してもらえるよう、住戸数の多いマンションでは複数回実施したり、小
学生以下のお子様に対しての説明会を実施したりといった配慮を行うことも 必要です。なお、説明資料は工事会社が作り、管理組合およびパートナーが
事前に確認し、全居住者・所有者に配布します。

(C) 近隣あいさつ

新築工事とは異なり、振動や騒音は少ないもののゼロではありません。ま た、足場の設置解体のときは大型車も通ります。そのため、近隣へのあいさ
つが必要になります。

一般的には、境界に面する建物、前面道路が通学路になっている小中学校、 近くの幼稚園・保育園、町会長といったところにあいさつに回りますが、特
に問題となりそうなところを除いて、工事会社のみであいさつに向かいます。 事前にどこに回るか、リストや地図を提出してもらい、確認しましょう。ま
た、あいさつ実施の際に、あいさつした相手がどのような相手で、どのよう な会話がなされたかの報告を受けておきましょう。後に問題が生じたときの

参考になります。 (D) 工事の実施

(a) 検 査 工事が始まってからは、仕様書どおりに施工されているか、工程表どおり
に進んでいるか、特別な問題点はないかといったことをチェックし、打ち合 わせる必要が生じます。設計監理方式の場合は、パートナーが工事内容や進

捗状況などを確認・検査し、管理組合へ報告しますが、これを「監理業務」 といいます(「管理」とは異なります)。よい仕様書があっても、この監理が適
正に行われないと絵に描いた餅になってしまうため、パートナー(=「監理 者」)はこれを厳しく行わなければなりません。

「(b) 定例会議の実施

月に1、2回、管理組合・監理者・工事会社の三者が集まる合同会議が開 かれます。この場で話し合われる主な内容は以下のとおりです。

○主な会議の内容

・工事進捗状況報告

・居住者からの要望・指摘事項報告

・精算工事の対応方法 ・追加工事の対応方法

・各所の色決め ・その他問題点の対応 ほか

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第4章 共用部分の維持管理

V 大規模修繕工事の進め方

○長期修繕計画書を見直す理由 ・大きな費用が動いた後であること ・補修した工事内容から、建物独自の劣化進行度合いがわかること(「こ

の建物はタイルの浮きが多い」といったような特徴) など

なお、工事中最低1回(通常、足 [写真29] 管理組合による足場解体前 場解体直前)は、足場に登って確認 することが一般的です。マンション
を外側から見る機会はめったにな いので、監理者や工事会社に同行し て外から建物を確認してみましょ

う。その後に管理組合が検査するの は竣工検査の時になります。

(C) 竣工検査と完成引渡し 工事の終了は2つあり、「竣工」と「完成引渡し」です。「竣工」は、工事会
社が完成しましたと発注者に申し入れた日で、これに基づいて発注者の竣工 検査が執り行われます。「完成引渡し」とは、竣工検査後に必要な手直しが終
わって再検査に合格し、借りていた鍵の返却その他工事に関係するものがす べて引き上げられた状態を示します。

一般的にいわれる「工期」とは「竣工」までを表し、「竣工から1カ月以内 に引渡しを行う」等の文面が契約書に記載されます。

(d) 竣工図書 完成引渡し後、この工事の実施結果として「竣工図書」が工事会社より渡
されます。この中には保証書や、工事中に行われた打合せ議事録、下地補修 箇所を示した図面、工事写真等が綴られ、工事の記録として残ります。次回
の大規模修繕工事までの間に活用されるため、大切に保管しましょう。もし

渡されなかった場合は必ず請求してください。パートナーが作成した仕様書 にも、この竣工図書に含める内容が記載されているのが通常です。

専門委員になった方は、工事の終わる頃には建物についての知識がそれな りに付いていると思われるので、この長期修繕計画の見直しまで担当するこ
とをお勧めします。

(2) アフターサービス実施確認 一般的には、大規模修繕工事には瑕疵保証が設けられており、その内容は
工事請負契約書や引渡し時の竣工図書の中に記載されています。それは、た とえば屋上防水の漏水保証が一番長く10年間保証されるのに対し、廊下や
バルコニーの防水保証が5年間だったり、外壁塗装が7年間だったり、鉄部 塗装が2年間しか保証されなかったりと、工事内容ごとに決められています。

工事会社はアフターサービスとして、上記保証に基づく自主点検を行いま すが、多くの場合、この実施年や要領も工事請負契約書や竣工図書に記載さ
れています。一般的に、実施年度は各種工事の保証が切れる年度に行われる ことが多く、上記の例の場合ですと工事実施後2年目にすべての工事箇所に
ついて、5年目には鉄部塗装を除く工事箇所について、7年目には外壁塗装 と屋上防水について、10年目には屋上防水のみを点検することになります。
「これらは工事請負契約の項目であるため、管理組合が何も言わなくても工 事会社は実施しなければなりませんが、現状は残念ながらすべては実施され
ていない状況です。そのため、期限が来るたびに、工事会社から連絡がない 場合は管理組合側から申し入れる必要があります。管理組合理事が変わって
も、この引継ぎを忘れないようにすると同時に、管理会社にこの連絡および 確認の実施を依頼しておくことも必要です。

3 工事終了後に行うこと

(1) 長期修繕計画の見直し 工事が終われば終了と思われがちですが、この時点で「長期修繕計画書」
の見直しを行っておきましょう。理由は以下のとおりです。

なお、定期点検実施の際に工事監理を行ったパートナーに同行してもらう

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第4章 共用部分の維持管理

と、より一層厳しい目で点検が実施されますし、発生した不具合が瑕疵に相 当するかどうかの判断や工事会社への交渉も補助してもらえるため安心です。

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日常生活におけるトラブルの対処

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