医院としてテナントを賃貸していたビルのオーバーが賃借人(医療法人)から賃料の減額請求をされたが、要求されていた減額幅70%を10%強だけ防げた事例

医院としてテナントを賃貸していたビルのオーバーが賃借人(医療法人)から賃料の減額請求をされたが、要求されていた減額幅70%を10%強だけ防げた事案

第1 依頼内容と結果

・物件は横浜市所在

・賃貸人はビルのオーナーから兄弟で相続した相続人2人

・賃借人は医療法人(医師)

・賃借の当初、既存物件の増改築を巡って諸々の経緯があったが、賃料月額100万円で合意

・ところが、増築後の免責前提で賃料を設定したにも関わらず、増築前の登記面積だけを根拠に70%もの減額を求めてきた

・もともと増改築の登記が入っていなかったのは、元の賃貸人が増改築登記を入れて、その結果区分所有建物になってしまうことや増改築費用を賃借人が出したことを根拠に賃貸物件の中に賃借人の共有名義が入ってしまうことを非常に嫌がったからであった

・そのため、登記は増改築前のまま残存

・残念ながら交渉ではお互いの主張があまりにも乖離していたので、交渉ではまとまらず、賃料減額請求の民事調停→訴訟

・原審判決10%弱の減額で済んだ

・減額理由はほとんど周辺賃貸事例との比較等を根拠としたもののみ

・相手方が原審判決を不服として控訴

・控訴審で賃料の減額の幅は10%強とすること、その他の付帯条件(法定更新の場合の更新料支払い有無の義務・法定更新の場合の保証金償却期間の方針の肯否・                  )で和解が成立

・成立した和解の内容は主として70%の減額幅が10%強のみ認められたもの

・従前家賃が100万から90万弱になった

第2 ご相談内容(事案背景),解決方法,費用・時間と得られた利益

1 ご相談内容

・本件は賃料の減額請求という事案であったが、紛争の実態は増改築の際の費用負担と増改築した建物の所有権の帰属等を賃貸借契約の本質部分からの争点も含めたものであった

・当職は賃貸人の立場であったが、賃借人が本人ないしは代理人の減額請求の幅、その論拠があまりにも根拠薄弱だったが、それは上記の増改築の費用負担等を巡っての紛争の蒸し返し的な側面が強かった

・そのため、賃貸人側の対応とすれば、一貫して一定程度以上の増額に応じないという解決策

・そういう態度でいたところ交渉決裂→調停不成立

 

2 解決方法

・交渉決裂時から見ると、交渉で半年程度

・調停で半年から一年程度

・訴訟が原審で一年程度

・控訴審で半年から一年程度 を要した

・賃借人側が応じないために紛争が長引き、その分、時間、手間、それに応じた弁護士等の費用も多くかかることになった

・ただ、最後まで賃貸人の態度を一貫したことで、求められた減額幅70%を10%程度という合理的な範囲に留めることができた

・賃借人側からの言いがかり的な減額幅を相場的な減額幅に押しとどめられた成果は大きい

 

3 依頼者の支払った弁護士費用と時間,およびそれにより得られた利益

・今回の件で、時間や得られた利益は先述の通り

・弁護士費用は7年分で見るのが通常

・紛争の対象となった経済的利益は100万×70%×12ヶ月×7年分

 (着手金はこの経済的利益の5%程度)

・賃貸人に与えることができた利益は70万-10万円=60万円

 60万円×70%×12ヶ月×7年分 (着手金はこの経済的利益の10%程度)

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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