横浜市の近郊農家における遺産分割・調停・審判申し立て事件において農業を継いで30年以上農作業等を行ってきた長男に対する寄与分的割合を認定してもらえた結果、農地は全て上記長男が取得できた上で、他の兄弟への代償金額が比較的低額に抑えられることに成功した事例

横浜市の近郊農家における遺産分割・調停・審判申し立て事件において農業を継いで30年以上農作業等を行ってきた長男に対する寄与分的割合を認定してもらえた結果、農地は全て上記長男が取得できた上で、他の兄弟への代償金額が比較的低額に抑えられることに成功した事例

 

第1 依頼内容と結果

横浜市近郊に比較的大規模な農地(少なくとも3万坪以上)を有する専業農家でかつ土地所有者である平井様(仮名)より次のような相談を受けました。平井様のお父様がお亡くなりになり、平井様には弟と妹がいるため、亡くなったお父様の相続人は3人おりました。兄弟が3人なので、法定相続人も3人になるが、平井様のご希望としては、農地を全て相続したいというものでした。弟と妹に幾ばくかの相続代償金を支払うつもりはあるとのことでした。妹は、他家に嫁いでいたこともあり、ほどほどの代償金額であれば応じる旨があるとのことを主張してくれていました。

ところが、弟はお父様の生前から特に金銭面においてお父様他に迷惑をかけており、平井様とも折が合わず、妹のように賛同してくれませんでした。しかも弟は農業をやっていないにも関わらず、「農地を相続したい」などと全く現実的でない主張をしてきたことから、上記各相続人との遺産分割をまとめてくれないかと依頼がきました。

最初の相談の頃から、当事務所の基本的な方針ではありますが、兄弟間の関係がここまで悪化した原因を詳しくお聞きしました。すると、生前に弟は二度ほど事業に失敗しており、多額な借金を抱えており、それをお父様が始末してくれたこと、生前に弟と妹の生活を心配したお父様から、通常の一軒家を立てられるほどの土地(50坪程度)をそれぞれ生前贈与されていたこと、妹は持病を抱えており、その治療費はお父様が負担してきたこと等々の事情をお聞きできました。

長男の平井様は、自身が農業を継いでからは農業一筋で真面目にやってきたこと、この点はお父様も非常に評価してくれたこともあり、本来ならば生前にお父様が農地を全て平井様に「相続させる」という遺書を残してくれても良かったこと、しかしお父様は農業以外のことにも手を出してしまっており、平井様との親子関係があまり上手くいっていなかったことが原因で農業一筋の平井様とはあまり仲が良くなく、かつお父様自身は農業自体があまりお好きではなかったという事情もあり、むしろ上記のとおり何度も事業に失敗しても弟の方を可愛がっていたという事情を聞きました。

このような事情があったため、通常ならば生前に農地を全て平井様へ譲渡(贈与等)または(遺言等で)相続させるというところになるところ、遺言書は存在していませんでした。ただ、幸いなことに弟があまりにも不甲斐なかったため、弟に財産を残すという遺言書も残していませんでした。当職は上記のような事情を聞き、以下のようなアドバイスをしました。

1 遺言書が存在していない以上、遺産分割の話にならざるを得ないこと。

2 遺産分割において、平井様の取り分(相続分)を増やして、弟及び妹の取り分を減らす方法として、寄与分の主張というものが考えられること。

3 同じく平井様の取り分を増やして、弟及び妹の取り分を減らす方法として、生前にお父様から弟及び妹が生前贈与を受けた50坪の土地、2回ほど事業に失敗して借金を後始末してもらった弟の分、それから入院治療費を全てお父様が持ってくれたという妹の分について、各生前贈与が認められ、生前贈与の分は「特別受益」として、計算上、弟及び妹に渡すべき相続分を減らすこと。

その上で、示談交渉での解決は非常に難しそうだったことから、遺産分割の調停を家庭裁判所に申し立てました。調停期日は数十回にも及び、調停の係属期間は相当の長期間に及びました。分けるべき遺産に分割困難な農地が入っていたこと、農地以外にも自宅駐車場・貸地・その他不動産が多数あったこと、上記寄与分、特別受益を巡って、調停委員や裁判官の判断を仰がなければいけなくなったこと等が時間や手間がかかった大きな理由でした。

それでも調停手続きで2年弱、審判手続きで半年~1年弱の期間で、最後は裁判官から審判を頂くことになりました。審判前の裁判官からの質問の時点で、下される審判の内容は大方予想はできていましたが、その予想の通り、次のような結果を得ることができました。

1 平井様の一番のこだわりであった農地は全て平井様が取得できる。

2 自宅用宅地、駐車場、貸地、その他の不動産も全て平井様が取得できる。

3 1及び2の代償金として、弟と妹のそれぞれに約2500万円ほどを(審判確定後)半年以内に支払う。

上記のような内容でした。2の農地以外の不動産については、1の農地を平井様が全て取得できることとのバランスや整合性に鑑みてのことだったと思われます。3の代償金額については、平井様が取得できたのが3万坪を超える農地であったこと、農地以外の不動産も全て取得できたことを鑑みれば、平井様が取得する土地の価格に鑑みても非常に低い金額で済ませることができました。その理由は言うまでもなく、上記の平井様側からの寄与分の主張、弟や妹に生前渡った分の特別受益の主張が功を奏したことに他なりません。

第2 ご相談内容(事案背景),解決方法,費用と時間と得られた利益

第1で述べましたが、本件は遺産分割にあたり、農業を継いで農業に専念してきた長男の家業への貢献を認めた反面、お父様から生前に様々な援助を受けていた弟や妹の相続分を減らすことに成功した事案ということになります。そのような意味では、寄与分の申し立て、特別受益の主張という方法をとったことは非常に効果的であったと思われます。

時間と手間は上記の通り総計3年ほど費やしましたが、遺産の規模が大きかったこと、個別に検討すべき具体的な遺産内容も多岐に渡ったこと、上記の寄与分、特別受益を巡って、相手方(弟)側が認めず反論してきたため、それに対して、調停委員や裁判官の意見を聞かなければならなかったこと、農地の評価を農地に強い税理士に相談の上、価格を圧縮できたが、その評価のための時間を若干費やしたこと等々が原因です。得られた成果が上記成果だったことに鑑みれば、3年程を家庭裁判所で費やした点は仕方なかったものと思われます。

第3 依頼者の支払った弁護士費用と時間,およびそれにより得られた利益

また、弁護士費用は上記のように時間を要したことから低額ということにはいきませんでしたが、特に平井様が取得できた農地の評価は少なめに評価してあげられたため、弁護士費用も総額で1000万円は超えずに済みました。

得られた経済的利益は、農地全てと農地以外のその他の不動産全てと上記の代償金計5000万円の差額を踏まえると、数億円以上の利益になりました。

依頼者が得られた利益が上記のとおり数億円以上の利益だったことを考えると、1000万円程度の費用はむしろ非常に安く済んだものと考えられます。

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