「ザ・空家への対策!!」 (空家等対策の推進に関する特別措置法等について)

 

空家等対策の推進に関する特別措置法について

代表弁護士鈴木が2015年7月28日(火)に「ザ・空家への対策!!~空家等対策の推進に関する特別措置法等について~」と題したセミナーを行いました。

 

___________________________________________________________________
日時 2015年7月28日() 18:30~20:00
___________________________________________________________________
会場

開港記念会館

___________________________________________________________________

講師 鈴木 軌士
___________________________________________________________________
セミナー名
ザ・空家への対策!!
~空家等対策の推進に関する特別措置法等について~
___________________________________________________________________
主催 弁護士法人タウン&シティ法律事務所
___________________________________________________________________
 
詳細 下記参照
___________________________________________________________________
 

講義内容に関して、要点を簡潔にまとめたものをコチラにご用意いたしました。ご参照ください。

 

【はじめに】従前の対応

⇒これまでも、「空き家」で困るケースは多々あった。

「空き家」だと、火事・倒壊や窃盗など、災害や犯罪の恐れが高くなったり、いわゆる「ゴミ屋敷」のように近隣に多大な迷惑をかけるケースが多く存在した。

このような場合に存在する、法律上の問題点には、以下のような点があった(現行法上での問題点)。

 

(1)所有者が誰か確定できない場合

①行方不明者の場合→不在者財産管理人の選任を裁判所に申し立てる。→「管理」をすべき者だけは確定する。

②生死が不明な者の場合→失踪宣告を裁判所に申し立てる。→宣告が出されれば「死亡」と看做され相続開始。

③死亡は明らかな者の場合→戸籍等から死亡が明らかであれば相続開始:cf.年齢だけ明らかな場合に、死亡と看做してくれるのか(②の失踪宣告まで必要なのか)?

④相続人が不明な場合→相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てる。→「管理」をすべき者だけは確定する。

 

(2) 所有者が「誰か」は判るが、連絡の取りようがない場合

⇒意思表示をする場合には、意思表示の公示送達(※)を、訴状を送るなら訴状の公示送達(※)を活用する。

※公示送達…裁判所の掲示板に掲示し一定期間が経過した場合には到達したものと看做される制度。

 

(3)所有者は判り連絡は付くが、所有の範囲や対象が判らない場合

→建物・土地の所有範囲プロパーの問題。但し、「空き家」だと事実関係の確認が継続居住の場合に比べて圧倒的に難しいことから、「占有継続」事実の有無(※)等の主張・立証が困難な場合も。

 

※「占有継続」事実の有無…所有権の時効取得の可否を巡って問題に。自身が所有者でないことを知っていれば(悪意)20年、知っていなければ(善意)10年間の占有継続で所有権を時効取得できる。

cf.共有物件の場合→一部共有者が判明している場合、その者だけできる行為(保存)」行為)なのか、共有者間の持分の過半数が必要な行為(管理行為)なのか、共有者全員の合意が必要な行為(処分行為)なのか、で解決法が異なる。

 

⇒このように、従来の法律に基づく処理では解決までに時間・手間・費用を要することに。

→そこで、もっと端的に「空き家」の現状(物理的状態)に着目した対処ができないか、という趣旨・目的から立法されたのが本特別措置法(以下では「本特措法」という)である。

 

但し、本特措法での行為主体は主に自治体を想定しているので、民間人同士の場面にどこまで活用の余地があるのかについては、自治体の認定等行為の判断基準の定立及びそれに対する市民側からの働きかけ等、今後の事例の集積を待つほかない。

 

1.立法の経緯

平成26年11月19日に成立(平成26年11月27日法律第127号)

平成27年2月26日(後記の【立入調査権】【命令】関係等一部は5月26日)に施行(平成27年2月20日政令第50号)

 

2.立法目的

我が国の少子高齢化に伴い都市部か地方か関係なく「空き家」が増加しているが、特に、所有者が判らない、または判明した所有者が空き家を放置し続ける等し適切に対処しない等のため、この「空き家」が最終的には朽廃・崩落の危険があったり、人の気配がないことから放火や不法侵入の対象となったりと社会問題化してきた。

これに対して、自治体が適切に対処できるよう法的な裏付けをしたのが本特措法。

 

3.関連法令等

特に重要なのは、上記特措法中で定義付けられる「特定空家等」と判断された場合には「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から除外することが平成27年度税制改正大綱に明記されていること。

これは、住宅などの敷地として利用されている土地は固定資産税が課税標準額の6分の1~3分の1、都市計画税が3分の1~3分の2に軽減される措置が従前からあるため、特に地価が高い地域では、空き家かつ相当な古家になっても解体等せずに存続させてきた(要するに節税のためには「更地」にはしない、ということ)ため、問題のある「空き家」の存続を助長してきたことからの措置。

後述のとおり、本特措法により、「特定空家等」に認定された場合には、最も強硬な手段による場合、最後は行政代執行により、問題空家は解体・除却されることになる。

しかし、このような強制除却にまで至らなくても、空家が存続する段階から、建物が存在しても上記の節税措置が使えないことになれば、少なくとも節税のために空家を存続させておく理由はなくなるので、任意での解体・除却→更地となっていくことが期待される。

しかも、更地となった上で(上記「特定空家等」の場合には更地となる前から)、固定資産税等に関する上記節税対策は使えないことになり、かつ、「空家」または「更地」ということで所有者は通常、物件からの賃料等の経済的利益も何ら得ることはない以上、これまで以上に、更地(もしくは上記「特定空家等」の場合には空家の建物付土地)を売却・処分しようと考える所有者が圧倒的に増えることが予想される。

これにより、特に、土地の供給がそれ程多くはない、地価が高い優良な住宅地ほど、(現状では空家といえども、建物が少なくとも一度は建築されているのであるから)比較的程度のよい土地の供給が進む可能性は高いものと思われる。

 

4.適用されるための要件

(1)本特措法上の「空家等」とは?

「建築物またはこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)をいう(同法2条1項)。但し、国または地方公共団体が所有し、または管理するものを除く(同項但書)。

(2)同法上の「特定空家等」とは?

適切な管理が行われていない結果、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす「特定空家等」とされるのは次のような状態に至っているものを指す(同条2項)。

 

①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

②または著しく衛生上有害となるおそれのある状態

③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態

④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

にあると認められる空家等。

(3)本特措法に併せて国土交通省と総務省により「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」(平成27年2月26日総務省告示・国土交通省告示第1号)を告示。これにより、年間を通して居住実態がないなど「空き家」の判断基準や所有者特定のための具体的手段の事例を提示。

一言で言えば「居住していないことが常態化している」のが空き家。

 

具体的には…

A 居住していないことの基準:建築物の状況や管理の程度、人の出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況、所有者の登記や住民票の内容、所有者の主張等から客観的に判断される。

B 常態化の基準:年間を通して使用されていないこと等から判断される。

C 所有者を特定する方法:不動産登記や住民票、戸籍謄本などの利用、固定資産課税台帳(従来は目的外使用として認められていなかったが必要な限度において利用できることになった)の利用も可能に(特措法10条「固定資産税の課税のために利用する目的で保有する空家等の所有者に関する情報の内部利用について」)

D 処分に悩む所有者からの相談や、近隣住民の苦情に応えられる仕組みの整備も提案した。

(4) 重要な判断基準については、国からガイドライン(特定空家等の是正措置に関するガイドライン)が明らかにされている(cf.特措法14条14項「国土交通大臣及び総務大臣は、特定空家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。」同条15項「(同条の)前各項(=特定空家等に対する各措置)に定めるもののほか、特定空家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。」)。

…ガイドライン上の主な判断の目安の具体例(同ガイドラインより)

【例1 部材の破損や基礎の不同沈下等による建築物の著しい傾斜、基礎と土台の破損・変形・腐朽等、建築物の構造耐力上主要な部分の損傷、屋根や外壁等の脱落・飛散のおそれ、擁壁の老朽化等(ex.建物の傾きが20分の1を超える(高さ3mなら屋根のズレが横に15㎝を超える状態)、トタン屋根が落ちそう、ベランダが傾いている、などが見て判るetc.)】

 

【例2 立木の腐朽・倒壊・枝折れ、立木が建物を覆うほど茂っている。道路にはみ出した枝が通行を妨げるetc. 】

 

【例3 建築物が破損し石綿が飛散する可能性、浄化槽の破損による臭気の発生、ゴミの放置や不法投棄による臭気の発生やネズミ、ハエ、蚊が発生(し、近隣住民の日常生活に支障がある)etc.】

 

【例4 景観法に基づき策定した景観計画や都市計画に著しく適合しない状態になっている、屋根や外壁が外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている、多数の窓ガラスが割れたまま放置されているetc.】


【例5 動物が棲み付くことによる周辺への影響(ex.土台にシロアリの被害があるetc.)、不特定の者が容易に侵入できるetc.】

→更に詳しく具体例を知りたい方は、「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針」で国土交通省のHP内の検索を。

 

5.適用された場合の効果

 

(1)空家等の所有者または管理者の責務→周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努める(同法3条)。

 

(2)市町村の責務→空家等対策計画(※1)の作成及びこれに基づく空家等に関する対策の実施その他の空家等に関する必要な措置を適切に講ずるよう努める(同法4条)。

※1市町村は、その区域内で空家等に関する対策を総合的かつ計画的に実施するため、基本指針に即して、空家等に関する対策についての計画(=空家等対策計画)を定めることができる(6条1項)。

 

 

同計画では以下を定める(同条2項)

————————————————————————————–

①空家等に関する対策の対象とする地区及び対象とする空家等の種類その他の空家等に関する対策に関する基本的な方針

②計画期間

③空家等の調査に関する事項

④所有者等による空家等の適切な管理の促進に関する事項

⑤空家等及び除却した空家等に係る跡地(以下「空家等の跡地」という)の活用の促進に関する事項

⑥特定空家等に対する措置(特措法14条1項の規定による助言もしくは指導、同条2項の規定による勧告、同条3項の規定による命令または同条9項もしくは10項の規定による代執行をいう。以下同じ)その他の特定空家等への対処に関する事項

⑦住民等からの空家等に関する相談への対応に関する事項

⑧空家等に関する対策の実施体制に関する事項

⑨その他空家等に関する対策の実施に関し必要な事項

————————————————————————————-

 

市町村の空家等対策計画の公表義務(同条3項)

市町村の都道府県知事に対する援助要求→空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関し、情報の提供、技術的な助言その他必要な援助を求めることができる(同条4項)。→これに対応した都道府県の援助義務(同法8条)

市町村が組織する協議会→空家等対策計画の作成及び変更並びに実施に関する協議を行う(同法7条)

 

(3)個人宅への立入調査も可能に→市町村長は、当該市町村の区域内にある空家等の所在及び当該空家等の所有者等を把握するための調査その他空家等に関し特措法施行のために必要な調査を行うことができる(同法9条1項)。

 

【立入調査権】

市町村長は、14条1項から3項までの規定(除却等必要な措置をとるよう助言・指導(1項)、勧告(2項)、勧告に係る措置の命令(3項))の施行に必要な限度において、当該職員またはその委任した者に、空家等と認められる場所に立ち入って調査をさせることができる(同条2項)。なお、立入の5日前までの所有者等に対する通知義務(同条3項)、立入る者の身分証等の携帯・提示義務(同条4項)、立入調査権の犯罪捜査のためとの解釈の禁止(同条5項)が定められている。

 

《立入調査の拒否等に対する制裁》→立入調査を拒み、妨げ、または忌避した者は20万円以下の過料(同法16条2項)

 

(4)「特定空家等」に対する措置

 

A【助言・指導】

→市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家の除却・修繕・立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態または著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。2項も同じ)をとるよう助言または指導できる(同法14条1項)。

B【勧告】

→市町村長は、14条1項の助言または指導をした場合、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言または指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却・修繕・立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる(同条2項)。

C【命令】

→市町村長は、2項の勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる(同条3項)。この場合の、措置義務者への手続保障がある(①意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与える義務(同条4項)②意見書の提出に代わる公開による意見の聴取請求権(同5項)③出頭を求めて公開による意見聴取の実施義務(同6項)④聴取期日等の期日の3日前までの通知・公告義務(同7項)⑤意見聴取時に証人を出席させたり自己に有利な証拠を提出できる権利(同8項))。

 

《命令の公示義務》

→市町村長は、3項の命令をした場合、標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない(同条11項)。→11項の標識は、3項の命令に係る特定空家等に設置できる。この場合、当該特定空家等の所有者等は、当該標識の設置を拒み、または妨げてはならない(同条12項)。

 

《命令の行政手続法の不適用》

→3項の命令は、行政手続法(平成5年法律第88号)第三章(12条及び14条を除く)の規定は適用しない(同条13項)。

 

《命令違反に対する制裁》

→命令違反者は50万円以下の過料(同法16条1項)

 

D【行政代執行】

→市長村長は、3項により必要な措置を命じた場合、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、または履行しても同項の期限までに完了する見込がないときは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の定めに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、または第三者をしてこれをさせることができる(同条9項)。

 

E【措置義務者を確定できない場合の代執行】

→3項により必要な措置を命じようとする場合、過失がなくてその措置を命ぜられる者を確知できないときは、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、またはその命じた者もしくは委任した者に行わせることができる。この場合の、措置義務者への手続保障がある(相当の期限を定めてのその措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長またはその命じた者もしくは委任した者がその措置を行うべき旨を予め公告する義務)(同条10項)。

 

6.「空家」の活用法等について

(1)データベースの整備等

→市町村は、空家等(宅建業者等が販売や賃貸目的で所有・管理するもの(周辺の生活環境に適切な管理が条件)は除く)に関するデータベースの整備その他空家等に関する正確な情報を把握するための措置を講ずるよう努める(法11条)。

 

(2)所有者等による適切な管理の促進

→市町村は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、これらの者に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努める(同法12条)。

 

(3)空家等及び空家等の跡地の活用等

→市町村は、空家等及び空家等の跡地(土地の販売・賃貸業者が販売や賃貸目的で所有・管理するものは除く(上記と同条件))に関する情報の提供その他これらの活用のために必要な対策を講ずるよう努める(同法13条)。

 

(4)その他(上記国土交通省等による基本的指針中の例示より)

 

①所有者の意向を聞き取りながら、適切な管理方法や専門業者情報などを紹介することも必要とする。

②例えば空き家データベースの情報を宅地建物取引業者などを通じて公開し、購入や賃貸を検討する人に広く提供する。

③市区町村が空き家を修繕して地域の交流スペースなどに利用する。 

 

7.施行後の検討

 

同法施行後5年経過した場合、同法施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、同法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる(附則2項)。

 

8.施行後の現実の動き等について

(1)一般社団法人空き家管理士協会(東京都港区)が実施・認定する「空き家管理士」の資格試験で新しい試験制度を導入(全国賃貸住宅新聞2015.7.20号(写を参照))

 

(2)小田急不動産(東京都新宿区)が世田谷区内の「世田谷代田駅」から「喜多見駅」にある約7万5000戸の持ち家を対象にした個別訪問のコンサルティングを6月から開始。小田急電鉄、小田急不動産、小田急ハウジングなどグループ各社から従業員約300名を動員(賃貸住宅新聞2015.6.1号(写を参照)) 

 

 

新着情報の最新記事