第8回底地・借地の処分にかかわる法律問題

栗田有介弁護士が2015年2月24日(火)に当事務所が主催する「底地・借地の処分に関わる法律問題と題したセミナーを不動産会社様向けに行います。
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日時 2015年2月24日(火) 18:30~20:30
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会場

横浜市開港記念会館

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講師 栗田有介
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セミナー名 底地・借地の処分に関わる法律問題
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主催 弁護士法人タウン&シティ法律事務所
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詳細 下記参照
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第0 初めに

 

1 借地関係解消の必要性

(1)地主にとって
 
ア) 地代が安い。先代の時のまま地代が上がっていないということがあり、また、賃料増額になかなか借地人も応じず、地主からもその機会がないまま、ずるずると低額の地代しかもらっていないということが多い
 
イ) 今後も地代を増額することは難しい(あくまで交渉によるのが原則であり、長年の付き合いもあり、言い辛い)

ウ) 更新のときが一番賃料増額を交渉しやすいが、多くは上げられない。そこで、更新料を高値で請求すると、「そもそも更新料は法律上認められているものではなく、法的に支払う義務なんてない」などと突っぱねられてしまうこともある。

エ) 建物が老朽化して、やっと、そろそろ賃貸借契約も終わりかと思っていたところ、借地人から建物の増改築を申し入れられ、断っても裁判所が許可してしまうことになる。

オ) 土地の土砂崩れ、地盤沈下など地主の負担で修繕をしなければならず、地代をもらっていても結局収益が上がらず、貸しているだけ損ということにもなりかねない。 

そこで、底地だけ売却しようとしても、賃借人のいる土地は需要がなく(よほど収益性があれば別だが、まれであろう)更地価格の1/10ということもある。

(2)借地人にとって

ア) 建物を建て替えたくても増改築禁止特約があると増改築の承諾料等を積んで承諾してもらうことになる。仮に裁判所に代諾許可の申し立てをしても煩わしいし、承諾料を代わりに払えと命じられることがほとんど。

イ) 更新の際に更新料を要求される。

ウ) 建物を第三者に譲渡しようとしても、地主の承諾がないと原則として譲渡できない。また、裁判所に譲渡承諾の申立をしても煩わしいし、承諾料を代わりに払えと命じられることもある。

エ) 借地権付きの物件では、第三者に売却するにも買い手が見つかりにくく、安くでしか建物を売却できない。

(3)小括

このように、借地関係が継続するよりは、早くその関係を解消し、土地を自己のものとして処分したり、現金化する道を選ぶ方がよい場合もある。

しかし、借地は生活の基盤をなすものであり、地主と借地人では利益が相反することから、簡単には解消も難しい。
結局は、金銭面での交渉となる。

交渉をうまく運ぶためには、「借地関係を解消させるにはどのような方法があるか」「その時にどのような法律関係が発生しどのようなメリットデメリットがあるか」について相手に説明をいかにうまくできるかにかかっているといっても過言ではない。

特に法律関係に疎い当事者同士ではまとまる話もまとまらないことになりかねない。
そこで、どのような方法があるのか、その際どのような法律関係が発生するのかについて、あらかじめ理解することが必要である。

今回のセミナーでは少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
 

2 整理の方法


(1)地主にとって

ア 賃借権の終了を主張する(第1、第1-2)

イ 底地を第三者に売却する(第2、第3)

ウ 底地を借地人に買い取ってもらう(第2)

(2)借地人にとって

ア 借地を第三者に売却してしまう(第2、第4)

イ 借地を地主に買い取ってもらう(第2)

(3)地主と借地人にとっていっぺんに第三者に買い取ってもらう(第5)

(4)借地を分割する等価交換

借地を分筆して一部の底地を借地人に譲渡し、他方の借地権を地主に譲渡する方法

(5)借地を分割しない等価交換

ア 地主が別の土地を借地人に譲渡する代わりに借地権を戻してもらう

イ 地主が別の土地を借地人に貸す代わりに借地権を戻してもらう
 
 

第1 賃借権の終了を主張する

 

1 そもそも賃借権が成立していないとの主張


(1)具体例

その1 親兄弟間で、長年にわたり、ごくごくわずかの地代しか払ってこなかったような場合でも(地代月額500円等)、借地権といえるのか。使用貸借しか成立していないのではないか。

その2 また、社長が親切で自分の土地を使って家を建ててよいと言われ、そこに建物を建てて住んでいる従業員が、相場より安い給料しかもらっていなかった場合、労働力が対価としての性質を持ち賃貸借が成立するのではないか。

その3 固定資産税都市計画税などの必要経費だけを払っている場合でも、借地権が設定されたと言えるのか。

(2)結論
 
ポイントは、両者の間で「使用収益の合意」があるか、そして「使用収益の対価」を決めていたかいなか、である。

●  その1では、どんなに低額だとしても使用収益の対価として当事者が合意している以上、賃貸借であり、使用貸借ではない。土地を借りている方は借地人としての法的な保護を受けることになる。
こう考えると、親切で安く貸していた地主に酷とも考えられるが、その不利益は法的に賃料増額請求などを怠ってきた貸主が負うべきである。

 その2では、労働力がどの程度の金額に換算されるのか、実際に金額を提示して使用収益の対価としていたわけではないので、借地権は成立しない。すなわち、黙示の賃貸借契約が成立していたという主張は認められない。
この場合、黙示の使用貸借契約が成立していると考えるべきであろう。

 その3では、たとえその額がその1よりも高い場合であっても、賃料の支払とはならない。
それは土地の必要費であり、それを借主が支払っているだけであり、まさに使用貸借に他ならない(使用貸借は通常の必要費を借主が支払うと法律に定められている)。やはり、使用収益の対価を定めたとは言えないので借地権は発生しない。
 
以上より、金額の多寡ではなく、合意の内容が大事だということになる。

借地だと思っていたが、合意の内容を吟味したら、そもそも借地権自体が成立していないということもありうる。特に古い契約の場合は賃貸借契約書自体がない場合も多く、安易に借地人といわれるものから「今後何かあるとも思えないが、念のため」と言われ賃貸借契約書なるものを持ってきたときは、本当に賃貸借なのかと疑ってかかることは必要と思われる。

賃借権ではなく使用貸借であると主張し、使用貸借の終了を根拠に立退き請求をすることも考え得るのである。
 

2 建物の朽廃による土地賃貸借の終了の主張


(1)具体例

その1 祖父の代の契約で「木造の建物、期間は20年」とされた。その後、更新の合意もせずにその建物に50年住んでいる。建物が老朽化で朽廃状態となった。賃貸借は終了するか。

その2 祖父の代の契約で「木造の建物、期間は20年」とされた。その後、更新の合意をして20年と合意した。さらに二回目も20年と合意した。その建物に50年住んでいる。建物が老朽化で朽廃状態となった。賃貸借は終了するか。

その3 祖父の代の契約で「木造の建物」とされた。その後、更新の合意をしたが期間を定めなかった。その建物に50年住んでいる。建物が老朽化で朽廃状態となった。賃貸借は終了するか。

(2)結論
 
その1は終了する。
その2は終了しない。
その3は終了する。
 
結局、朽廃があれば必ず終了するのではなく、期間の合意がされていない場合の期間中に朽廃すると終了する。期間の合意がされてしまっていると、その期間中に朽廃しても終了しない。

(3)注意点

結局、地主の側からすると、期間を定めて契約(更新契約)を締結するとその期間の朽廃の終了を主張できなくなってしまう。
そこで、朽廃が近いと思ったら敢えて更新の合意をせずに法定更新にするとか、更新の合意だけして、期間を定めないなどの方策を取る方がよい。
 

3 期間満了による土地賃貸借の終了の主張


(1)期間についての規定のおさらい

ア 旧借地法

●堅固60年 非堅固30年
(但し合意によって堅固30年 非堅固20年まで短縮できる)

●法定更新は堅固30年 非堅固20年
(ちなみにそれより短い合意は合意自体無いものとされる)

イ 借地借家法(平成4年8月1日施行)

●30年

●20年(一回目の更新)→10年(二回目の更新)

(2)建物がない場合

ア 具体例

非堅固建物という契約で30年の期間で賃貸借契約を結んだが、25年後に建物を取り壊し、いずれ建物を建てようとしてそれまでの間、資材置き場として利用していた。
30年が過ぎて期間満了を地主は主張し異議を述べた。
地主に正当事由なく借地契約を終了させることが出来るか。それとも正当事由がない以上法定更新がされてしまうのか。

イ 結論

法定更新の要件

①期間満了時に建物が存在すること

②土地所有者が遅滞なく異議を述べないこと

③土地所有者に自ら土地を使用することを必要とする場合など正当事由がないこと

したがって、建物がない以上法定更新は認められない。借地権は消滅するので地主は立退きの要求ができる。もちろん正当事由が必要ないので、立退き料も払う必要がない。
 
ウ 例外

借地人が、建物が火災で焼失したので、再築をしようとしていたところ、地主が建築禁止の通告をしたり土地明け渡しの調停を申し立てたりしている最中に期間が満了してしまった場合、確かに建物がない。
しかし、地主により再築が妨害されていたような場合にまで更新請求の権利がないとすることは信義に反する。
従って、このような場合には例外的に法定更新が肯定されうる(最判昭和52年3月15日)

(3)建物がある場合

ア 建替えの建物がある場合

(ア)地主の承諾のある建物がある場合

非堅固の建物の借地で30年の合意期間の定めがある場合、25年目で建物を取り壊し新しい非堅固建物を再築した。
地主が再築に承諾していた場合、いつ賃貸借期間が終わるのか。あと5年しかいられないのか。
答え 取り壊してから堅固30年、非堅固20年借地権は存続する(旧借地法7条)。

要件 

①借地権の存続期間満了前に建物が滅失したこと


②借地権の残存期間を超えて存続する建物を建築

③建築について土地所有者が遅滞なく異議を述べないこと

(イ)地主の承諾のない建物がある場合

結論  堅固だろうが非堅固だろうが、再築をされたら即刻異議を出せば、従来の期間で借地契約は終了する。遅滞なく異議を出さないと(ア)と同じく承諾をしたのと同じになってしまう。

遅滞なく異議を出しておいた場合、従来の期間満了で賃貸借契約が終了したとしても、建物買取請求されることはある。しかし、建物付きで土地を売却できるのだから費用は回収ができるので、賃貸借を修了させるメリットの方が大きいはず。
また、増改築禁止特約を締結しておけば債務不履行で解除を認められる場合がある。もっとも信頼関係が破壊したと言えないと解除は認められない。

ただ、この場合も異議を出しておけば従来の期間満了で賃貸借契約は終了すると考える。

また、無断増改築の場合、解除が認められなくても無断で増改築したことには変わりがなく、本来であれば朽廃で消滅したはずの期間満了で賃貸借契約の終了を主張しうると考える。

結局、地主としては取りうるすべての方策を尽くすべきである。

そこで、むやみに承諾をしない。改築をされたら書面ですぐに異議を述べておく。契約書に増改築禁止特約の条項を必ず入れる。増改築禁止特約違反があれば解除を主張しておく(信頼関係破壊が認められなくとも和解金を支払って賃貸借契約を修了させられることが多い。結果として、割安で借地人を追い出し建物付きで売却できる可能性が出てくる)。解除が認められなくても異議を出しておけば従来の期間満了で消滅請求しうるので異議を出しておく。また朽廃の時期を主張して終了させることも可能性がある。

イ 大修繕の建物がある場合

大修繕を行った建物があることで、建物の耐用年数が著しく延長された場合も、旧借地法7条が適用されるか。
争いがあるが、裁判上も適用を肯定したものがある。
そうであれば、大修繕(そもそも何が大修繕か不明だが)があった場合、早急に異議を出しておくに越したことはない。

例えば、増改築に当たるか否か争いになっていた事件で、増改築に当たらないとして債務不履行ではないと主張する借地人がいたとする。地主側としては、もちろん増改築禁止特約違反で解除を主張するが、仮に解除が認められなくても、無断増改築であることから借地法7条の適用があることを視野に入れ異議を出しておき、従来の建物であったなら朽廃で消滅していた時期での終了を主張することも考えられる。

ウ 建替えや大修繕の建物でない、当初からの建物がある場合

(ア)要件

前述した法定更新の要件

①期間満了時に建物が存在すること

②土地所有者が遅滞なく異議を述べないこと

③土地所有者に自ら土地を使用することを必要とする場合など正当事由がないこと
→遅滞なく異議を出して(ここで注意すべきは建物の賃貸借と異なり事前の異議ではダメ。満了後遅滞なく異議を出す)、かつ正当事由があれば、たとえ建物があっても終了を主張できる。

(イ)問題点

正当事由とは何か?

①地主側の土地の利用の必要性
例えば、他に住むところがないのか、親の介護のためにその土地を利用するしかないのか

②借地に関する従前の事情
例えば、きちんと地代を支払ってきたか、その土地でどのくらい生活をしてきたか

③土地の利用状況
どのような建物を建て、どのように利用してきたか、借地人自身が利用しているのか

④地主の財産上の給付の申し出
いわゆる立退料をいくら出すのか

を総合的に判断される。

例えば、地主側が息子夫婦に建物を建てさせてやりたいという必要性がある、一方で借地人もその土地で建物を建てて生活している場合はどうなるか。

答え 借地人がその土地で生活している以上、よっぽどの地主側の事情(ほかに住むところがない、介護のために必要だ、地代について支払がないことが多い、立退料を一定程度出す)がない限り正当事由は認められない。
ここで、立退き料の相場っていくらなのと聞かれることがある。
しかし、立退き料は正当事由の補完の意味合いがあり、他の正当事由が大きければ立退き料は少ないという具合に、金額は区々である。
 

第1-2 賃借権の終了は主張できないが効果的な方法(更新料の請求)
 

 

更新料を請求することで地主としては有利に終了させうる?借地人としては更新料を払っておいた方が後々得?

 
 

1 そもそも更新料って?


借地期間が終了した場合に、借地契約を更新するにあたって借地人から地主に支払われる金銭をいう。

更新料は法的に規定がない。したがって、原則として、契約書に更新料の合意の文言がない以上は、支払う義務が生じない。
例外的に、商慣習ないし事実たる慣習から、更新料の支払いを法的に認めた判例がないわけではないが、慣習を根拠に裁判所が支払いを命ずることはまれである。
 
したがって、更新料を地主が請求した場合、借地人が誰かの入れ知恵で「更新料は法的には支払う義務はないはずだ」と言われることがあるが、それは正しいのである。
 

2 更新料を請求する権利が法的にある場合


契約書に更新料の額を定めたうえで記載がされていることが必要。

その場合は、地主としては必ず更新料を請求すること。仮に不払いがあればそれだけでも信頼関係破壊と評価され解除が認められうるし、そこまでは認められなくても更新料不払いが、将来、一つの原因として、他の債務不履行と合わせ技で信頼関係破壊と認められうる。

そう考えると、法的に信義則違反にならない程度に高額の更新料を前もって決めて契約書を作成しておくとよい。
 

3 更新料を請求する権利が法的に無い場合


たとえ更新料の合意が無くても更新料を要求しておくこと。相手が払わなければ合意更新をしないと主張する。
そうすると、

(1)法定更新になるが、期間を定めていないので、朽廃の規定により借地関係が終了したと主張しうる場面が出てくる。

仮に建て替えなどしていたら、即座に異議を出す。また、無断増改築の解除の請求をする。その際に更新料も請求をしても払わなかったことを信頼関係破壊の一事由として主張する。


建替え前に増改築の承諾を求めてきても応じない。すると裁判で代諾を申し立ててくるであろうが、更新料を請求しても払わないことが承諾料の判断で地主側に有利な事情として判断されうる。

(2)地代の値上げを要求する(賃料増額請求をする)

合法的に賃料の値上げを請求できる。
(賃料の値上げは地主としてもそうそう言い出しにくいが、更新料を払わず法定更新になった際にはいつでも値上げを言い出すことが出来るので、圧力をかけやすい。 合意更新の際には合意書で定められた賃料をそう簡単に増額請求できないものであり、結局長期間漫然と賃借関係が続くことを許すことになる)

賃料増額請求の裁判の際に更新料を支払ってくれなかった(受け取ってない)ことを事情の一つとして使え地主に有利に判断されうる

(3)建物増改築の承諾をしない

裁判の際に更新料を支払ってくれなかった(受け取ってない)ことで借地人に圧力を加えることが出来る。もちろん借地人としては裁判所に代諾の申し立てをすることが出来るが、弁護士を雇ったり自分でやるのも煩雑であることから、立退きに応じるきっかけとなる可能性が出てくる。

また、仮に裁判所に申し立てて増改築の許可が出せるとしても、借地人が銀行融資を得る為の地主の承諾書が得られないことになるので、借地人としては増改築をあきらめ立退きに応じる可能性が出てくる。
 
 
※地主の承諾書について

借地人が借地上の建物を新築する際に、通常借り入れをするが、債権者は建物に抵当権を付ける。その際に銀行は地主の承諾書の提出を借地権者に求めることが多い。借地人としてはその承諾書がないと銀行から融資が得られないのであるから、地主の協力が必要なのである。

その承諾書には

①借地権が抵当権の目的になることを承諾する

②銀行が抵当権を実行した場合は借地権も競落人に移転するが、その借地権の譲渡につきあらかじめ承諾する

③借地人が地代の不払いをしていれば地主が銀行に連絡をすることを承諾する

④借地人の地代不払いにより賃貸借契約を解除しようとするときは予め銀行に連絡をすることを承諾する

の承諾事項がある。

このうち④は特に大事で、借地を合法的に解除されてしまっては、抵当権の目的である借地権がなくなってしまい、銀行にとっては担保目的物が既存してしまうことになる。

そこで、銀行は実務上、借地人に融資をして抵当権を建物に設定するには地主の承諾書を要求している。
 
また、仮に増改築の許可が出て、しかも新しい建物の建築資金を、当該建物に抵当権もつけずに調達できたとしても、借地権の存続期間は地主の承諾のない限り、借地法7条の適用は無く(堅固30年非堅固20年とはならない)、従来の期間満了で終了時期が来て、地主は異議を出せる。
 
※増改築許可の裁判と地主の異議について

借地法7条は期間満了前にその期間を超えるような建物を建てた場合、地主が異議を出せば期間満了で賃貸借は終了すると規定する。

では、地主が増改築を承諾せずに借地人が裁判所の代諾許可を取った場合でも地主は異議を出せるか。

この点、せっかく裁判所が代諾許可を出したのに従来の期間で賃貸借が終了しては意味がないともいえる。しかし、増改築禁止特約がなければ増改築は自由であり、その増改築に対抗して地主に異議権が認められている(借地法7条)のに、増改築禁止特約で従来の期間を維持しようとした地主に逆に異議権が認められなくなるのは不合理である。

そこで、裁判所の代諾許可があっても地主の異議権は失われないと考えるのが有力である。

そうだとすると、地主はたとえ裁判所の代諾許可があって増改築がなされても、ひるまず異議を出しておくべきである。
 
(4)借地譲渡承諾、底地買取の際にも更新料を請求しても払ってくれなかったことを圧力として有利な事情として使える
 

4 更新料の相場


更地価格の3%から5%といわれる。但し、地代や借地期間、地代改定の経緯など様々な要素から判断されるので一概には言えない。

重要なのは相場というより、借地関係を終了させたいのか、円満に借地関係を続けたいのかである。当然、借地関係を終了させるには、借地人が嫌がる額を請求することが必要になる。
 

第1-3 賃借権の終了は主張できないが効果的な方法(賃料増額請求)


合意書で賃料が定められている場合はなかなか請求しても認められないが、例えば法定更新がなされ、従前の条件での地代しか支払われていない場合などには、いつでも賃料増額請求をしてもおかしくない。

しかも増額を求めての訴訟では、もともと合意がされているものを変更することは難しいが、法定更新後の増額請求は変更されやすい。

いずれにしても、借地関係を修了させたいのであれば、法定更新後の賃料増額請求として、多額の請求をしてみるのも手である。

うるさい地主であれば居心地もよくはないはずで、立退きに前向きに応じてくれるかもしれない。

賃貸借契約を終了させることは、それだけ労力のいることなのである。

請求すべきところは請求し、うるさい地主であるぐらいでちょうどいいのである。
 
※賃料の相場

当然不動産鑑定士の評価によるのが筋であろうが、裁判をするとなると鑑定料だけで50万前後かかるものである。
そこまでして、賃料増額請求訴訟を提起するかということは頭の隅に置いておくべきである。
訴訟を提起せずとも、とりあえずは借地人に交渉を持ちかけるべきである。
賃料は固定資産税都市計画税の3から4倍程度と言われている。
 

第2 底地権、借地権の価格

 

1 一般的な調査の仕方


●更地価格=底地権価格+借地権価格

●借地権割合=借地権価格/更地価格(路線価図のA~G 路線価図を見ると上部欄外に詳しい説明がある 税務署のホームページ http://www.rosenka.ntaa.go.jp/)

●一物四価

種類 金額 内容

実勢価格 100% 売買の市場価格
公示価格 90% 国土交通省発表1月1日時点の標準地の価格(よく銀座の○○の土地が云々とニュースであるやつ)。
路線価 70~80% 国税庁が発表するその年の1月1日時点の価格。相続税。贈与税計算の際に評価額の基礎となる。
固定資産税評価額 60~70% 市区町村が算定する3年ごと1月1日時点における価格。固定資産税、不動産取得税の計算の基礎となる。
 

2 流通する場合の価格の実情


●路線価図では借地権割合は10%刻みで、かつ堅固・非堅固を区別していない。

しかし、実際は堅固建物目的での借地権と、非堅固建物借地権では価値が違う。
そこで、堅固建物では+5%~+10%、非堅固建物では-5%ぐらいが借地権割合となる場合が多い。

●しかも、流通する場合にその値段で借地権を買い取ってもらうことが難しいのはご
存じのとおり。

不動産情報でも、安いと思ったら実は土地所有権ではなく借地権であったということはよくある。
消費者は借地権での売買を嫌う傾向があるので(もちろん利回りを考えればむしろお買得の物件も多いが)実際の流通価格は、前述の借地権価格の2/3以下ということも珍しくない。
 

3 底地を借地人に買い取ってもらう


●確かに借地人も借地関係を終了させたいと積極的に思っている場合でないと、なかなか、借地人が底地を買い取ることを承諾しないのが現状。なぜなら、地代が土地価格に比べて非常に低額であることが通常であり、しかも土地を所有すると固定資産税、都市計画税など負担があるので、それを押しても底地を買おうという借地人は少ないからである。

●しかし、何もしないのでは借地関係は終了することはない。

説明をする機会を作って説得をしてみることから始めなくてはならない。

その際には、

借地人に対しては、「将来、借地権付きで建物を売却する際には、借地権の価格が大幅に評価が下がってしまい、低額でしか売れない」ことを説明する。

そうであれば、底地権を買い取ったうえで、土地所有権として建物を売った方が、底地の買い取り以上の利益があることを説明する。
結局、借地人が建物を第三者に売却したいと言い出し、地主の承諾を求めてきた時は、最大のチャンスである。同じことは建替えの希望を出してきたときも言える。

また、たとえ建物を売却する意思がない場合でも、いずれ代替わりで娘婿に借地上の建物を譲ろうとしている借地人がいた場合は、「借地権の譲渡承認等で承諾料がかかること、および土地賃貸借の更新の際に更新料がかかること」を説明し、そうであるなら、前もって底地権を買い取ってもらうように説得することも有効と考える。
 

4 借地権を地主が買い取る


逆に地主がどうしても土地を手放したくない場合は、建物を譲渡しようとしている借地人には、通常の流通価値としての借地権の価値が低いことを説明し、自ら借地権付きの建物を安く買い取ることによって借地関係を終了しうる。

また、借地人が老人で、住んでいる建物を引き継ぐものがいない場合、老朽化した建物自体市場では人気がなく、かつ借地権だけを買い取ってくれることも少ないであろう。

そこで、そういった借地人には、老後の余生を有意義に過ごすために、今、借地権を現金化することを進める。すなわち、地主が借地権と老朽化した建物を買い取ったうえで、建物賃貸借契約を結んで住み続けてもらうという方法がある。

借地権者としては地代を払っていたものが、家賃を払うことになり毎月の出費は大きくなるが、借地権の売却金がいっぺんに入るし、もしもの時に、借地権の相続問題や売却のための地主の承諾など煩わしい問題を後世に残さないで済むというメリットがある。そのことを説明すれば地主としては借地関係を終了させる有効な手段となる。
 

第3 底地を第三者に買い取ってもらうこと


1 借地人の承諾は不要

2 賃貸人たる地位の移転

3 敷金・権利金・保証金の移転

4 未払い賃料債権の移転
 
 

第4 借地権を第三者に売却すること

 

1 地主の承諾が必要


●賃貸借契約が、信頼関係に基づくものであることから、どのような人物が借主となるかに関して地主としては大きな利害関係を持つ。そのために借地権を譲渡するには地主の承諾が必要となる。

多くは、借地上の建物(借地人が自費で建てたもの)を第三者に譲渡するときに法律上当然に借地権も一緒に譲渡されることから、原則、地主の承諾がない限り建物を譲渡できないというケースが考えられる。

●仮に地主の承諾が得られる場合は、承諾料がいくらになるのか、期間更新をしてくれるのか、その際の更新料はいくらになるのか、建物の増改築を承諾してくれるのか、 承諾料はいくらなのか、借地条件の変更の承諾をしてくれるか、その承諾料はいくらかについても、予め明らかにしたうえで売却することが通常である。

なぜなら、買い手としても、地主の様々な承諾が予め得られていないと借地権を買い取ることに消極的となるからである。

●なお、譲渡の承諾をする際は、すでに支払っている権利金を未払い地代などに充当したうえで返還し、新たな借地権者から権利金を受け取ることを条件とすることが多い。
この定めをしないまま借地権の譲渡が行われた後に、旧借地権者から権利金の返還請求をされたら、地主としては支払いを拒むことが出来ないので注意が必要である。 

後から、慌てて新たな賃借人に権利金を請求しても、合意にない以上支払ってくれないという事態になってしまう。

●地主の承諾が得られない場合は、借地権者としては借地非訟手続により裁判所の代諾許可を得なければならない。
したがって、裁判所の許可が出ることを停止条件として借地権の売却の契約を交わさなくてはならない。
通常、裁判に要する期間は6か月から1年かかる。

また、譲渡承諾をしない地主は、当然建替えの承諾や借地条件の変更の承諾もしないのが通常であるから、借地人としては建替えの承諾の申立や、借地条件変更の申立も併合して裁判所に訴訟提起しなければならない。

●これだけでも、地主の承諾がないと借地権を売却するのが困難が伴うのに、更に以下の困難がある。
借地権を買い取って建替えの承諾を裁判所で得られても、銀行から抵当権を建物に設定するのに地主の承諾が必要となる。この承諾は裁判所で代諾ではできない。

また、地主の介入権(借地借家法19条3項 借地人が譲渡承認の申立を裁判所にしたときに地主が自ら借地権を買い取る旨の申し立てをする制度。この申立がされたら原則として地主の介入権が認められ、第三者への譲渡許可は取得できなくなる)を行使されたら、借地権が譲渡できないので、そのことも停止条件とした契約をしなくてはならなくなる

●このように、地主の承諾がないと事実上借地権は譲渡できないことを借地人に説明をして、今のうちに借地権を地主に譲渡して、建物賃貸借に切り替えることを勧めるのが有効な方法かもしれない。
 

2 承諾料の相場


借地権価格の10%前後が相場である(裁判所の譲渡承諾の裁判の際に命じられる財産的給付が、通常借地権の価格の10%前後である)。

もっとも、借地権譲渡の承諾だけでなく、たとえば抵当権の設定の際の承諾を同時にもらう場合等もあるため、上乗せの交渉となることが多い。
 
 

2-2 ちなみに建替えの承諾、借地条件の変更の承諾にかかる承諾料の相場


建替えの承諾料や、借地条件の変更の承諾料は、更地価格の3%から10%といわれている
 

3 承諾に代わる裁判

 

4 介入権について

 

5 譲渡承諾の申立と増改築の許可の申立の併合


 

第5 底地と借地権をいっぺんに第三者に買い取ってもらうこと

 

1 具体例


その1 借地人と地主が協力して、借地と底地を一緒に買い受けてくれる人を探す。

その場合、仲介業者にお願いすることになる。

事前に、借地人と地主間で利益分配、手数料分配、解体費用を出すときは(更地として売却する場合)その費用負担などを決める必要がある。仲介業者を間にして話を取りまとめてもらうことも応じてくれる場合がある。

その2 不動産開発会社(いわゆるデベロッパーが開発する場合)が地主と借地人それぞれに個別に商談を持ちかけ底地と借地権を買い取る方法。

デベロッパーとしてはそれぞれについて有利な条件で購入しようとするため、底地の価格や借地権の価格について秘密にする傾向がある。それはほかの商談に情報が漏れると話がこじれてしまうことがあるからである。また、デベロッパー自体が秘密にされ一般の不動産業者が話を持ちかけてくることも多い。これは有名デベロッパーであると値段を吊り上げられてしまうことがあるので、それを避けるためである。
 

2 注意点


地主にせよ、借地人にせよ、底地の買い取りや借地権の買い取りの話を持ちかけられても、無下に断る必要はない。話次第では借地関係を終了させるよい機会となる可能性がある。

もっとも、契約内容については十分注意が必要である。

すなわち、底地を高く買うと言われても、借地権が購入出来なかったことを解除条件とされることがあるが、そうすると底地を売買契約したが、借地権の決裁がなかなかできず、いつまでも底地の売買の決済もできず、宙ぶらりんの状況に置かれてしまうということがある。

また、地主が多数の土地を借地人に貸している場合に、すべての底地をいっぺんに譲渡できないと、虫食い状態の土地が残ってしまうような状況になりかねない。そうすると土地の価値が大幅に減少してしまう。

そこで、解除条件付きの契約などでは、条件の吟味を十分して、期限を区切ることなどで対応するべきである。

逆に、無条件の買い取りであったり、底地の移転登記と引き換えに金銭が支払われる契約の場合は、借地関係を消滅させるのに有効な場面と言える。
 

第6 借地を分割する等価交換

 

1 具体例


地主が借地を分筆し、一方の底地を借地権者に譲渡し、他方の借地権を地主が譲り受ける。
例えば100坪の土地について更地価格が5000万円だとした場合、借地権割合が60%だとすると、借地権者が有する価値は3000万円、底地の価値は2000万円である。

50対50で等価交換をすると、100坪の土地を60坪と40坪に分筆し、60坪分の底地を借地権者に譲渡し、40坪分の借地権を地主が譲り受ける。

そうすると、結局借地関係が解消され、底地権者と借地権者とで隣同士の土地の所有者となる。あとは所有権として譲渡ができるので借地人としても底地権者としてもメリットがある。
 

2 等価交換の際の税制上の特例


所得税法58条、法人税法50条

土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときには、本来は一部譲渡をした以上、譲渡所得税、法人税が科せられるところだが、交換によって取得した財産を譲渡するまでは、課税が繰り延べられる。
注意すべきは税金が優遇されるのではなく、猶予されるにすぎないこと。

●要件

①交換により譲渡する資産および取得する財産は、商品など持ち続けることを前提とした固定資産でなければならない。従って、商品として譲渡するための土地や建物ではこの特例は使えない。

②交換する資産および取得する財産は互いに同じ種類でなければならない。
借地権と底地はともに土地という同じ種類とされている。
借地権と金との交換などはダメ。

③交換により譲渡する財産は、1年以上所有していたものであること。

④交換により取得する財産は、相手が1年以上所有していたものである必要がある。

⑤交換により取得する財産を譲渡する財産と同じ用途に使用すること。

⑥交換により取得する財産と、譲渡する財産との差額が、これらの財産のち高い方の財産の20%以内であること。
(交換が完全に同じ価格ではなく、高い財産を譲渡したほうに他方から交換差金を授受することもあるが、その価格が上記20%以内なら等価交換の特例が使える。仮に20%を超える差金が生じる場合は、その超える部分は通常の売買と同じなので、等価交換の特例は使えないのが原則である)
 

第7 借地を分割しない等価交換


その1 借地人が借地権を地主に譲渡する代わりに、地主から地主がほかに所有している土地を譲り受ける方法。

その2 借地人が借地権を地主に譲渡する代わりに、地主から地主がほかに所有している借地権を譲り受ける方法。
 

第8 強制執行


●借地関係が終了したとしても、借地人が建物に居座って、出て行かない場合、借地人を追い出して、建物を解体し、更地の状態にして地主に引き渡す手続きが残されている。

●債務名義は(判決)建物収去土地明渡判決である。
ちなみに、借地人が建物に住んでいたとしても、上記判決とは別に建物退去の判決を得る必要はない。建物収去の強制執行を全うするために当然に建物退去をすることも予定されているからである。

●強制執行の申し立て(収去命令の申立)をする際に、代替執行費用支払の申立を裁判所にする。そうすると、裁判所から収去命令と共に代替執行費用の支払の命令も出される。
もっとも、借地人からその費用を取り立てることは事実上難しく、地主負担となることが多い。

●地主としては、代替執行の費用を借地人の代わりに立替え、解体業者を用意して、その解体業者が執行官の立ち会いのもと、解体する。

●解体した木材などは動産として執行費用などのために差し押さえて処分代金を回収することもできるし、無価値である場合は借地権者の同意なく破棄することもできる。
 

第9 まとめ


なるべく地主の視点から話をしてきましたが、借地人としても地主のことを知れば何に注意すべきかがわかるはず。
地主としては、できることはすべてするつもりで借地権者と交渉をすることが重要である。

結局、いい地主であり続けたいという気持ちは理解できるが、借地関係を終了するにはうるさい地主でなければならない。

賃料の増額も、借地権の譲渡承諾をしないこと、更新料を請求すること、増改築の承諾をむやみにしないこと、更新をする場合でもむやみに長い期間を定めないこと、などなど、こうしてみると大変なことばかりであるが、そのために専門家がいるのである。

一度、街の不動産屋さんや弁護士に相談してみることから始まることもあると思います。何もしないと、借地人の有利にことは進みます。
 

以 上

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