効力のある遺言書とは

効力のある遺言書とは

 

1 遺言の有効・無効
 

 
(1) 遺言の方式①自筆証書遺言→登記のためには、家裁での遺言書検認手続が必要。注:遺言書検認手続は、遺言書の有効・無効を判断するための手続ではなく、外観及び要式を確認して記録に残すための手続。②公正証書遺言→公証人による施設・病院等への出張も可。③秘密証書遺言→(要件)遺言者は、公証人1人及び証人2人以上の面前に封書を提出して、それが自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述しなければならない(民法970条1項3号)。→結局は公証人が必要なため、実務的には、②によることが多く、③はほとんど使われず。
 
(2) 遺言の無効①方式を欠く遺言②遺言無能力者の遺言(民法961条、963条)③公序良俗・強行法規に反する遺言は無効④錯誤(民法95条)無効も。→錯誤の有無は遺言書によってのみ判断する他ないから、稀にしか生じ得ないだろうし、錯誤の存否の認定は極めて困難。
 
(3) 方式について問題となった諸判例→当然、ほとんどが自筆証書遺言の場合。
日付の誤記:自筆証書遺言に記載された日付が真実の作成日と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない(最判昭52.11.21家裁月報30-4-91)。
吉日遺言:自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書は、民法968条1項にいう日付の記載をかくものとして無効である(最判昭54.5.31民集33-4-445)。
氏名:民法968条にいう氏名の自署とは遺言者が何人であるかにつき疑いのない程度の表示があれば足り、必ずしも氏名を併記する必要はない(大判大4.7.3民録21-1176)。
英文遺言の押印:遺言者の署名が存するが押印を欠く英文の自筆遺言証書につき、遺言者が帰化した人であることなどの事情を考え、有効とした事例(最判昭49.12.24民集28-10-2152)
封印:遺言書本文を入れた封筒の封じ目にされた押印をもって、民法968条1項の押印の要件に欠けるところはない(最判平6.6.24家裁月報47-3-60)。
指印:自筆証書遺言における押印は、指印をもって足りる(最判平1.2.16民集43-2-45)。
カーボン紙:遺言の全文、日付及び氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載することも、自書の方法として許されないものではない(最判平成5.10.19判時1477-52)。
添え手:自筆証書遺言につき他人の添え手による補助を受けた場合は、遺言者が自書能力を有し、遺言者が他人の支えを借りただけであり、かつ、他人の意思が介入した形跡がない場合に限り、自書の要件を充たすものとして有効である(最判昭62.10.8民集41-7-1471)。
数葉にわたる遺書:自筆遺言書は、数葉にわたるときでも1通の遺言書として作成されているときは、その日付・署名・捺印は一葉にされるをもって足りる(最判昭36.6.22民集15-6-1622)。
誤記訂正:自筆証書遺言における証書の記載自体から見て明らかな誤記の訂正については、民法968条2項所定の方式の違背があっても、遺言の効力に影響を及ぼさない(最判昭56.12.18民集35-9-1337)。
 
(4) 無効の場合の効果:遺言が無効であれば、有効を前提に事後なされた全ての法律行為は無効となり、登記も抹消されて(共同)相続人の下に戻されることになる。
 
(5) 無効を争う方法:争いとなれば遺言無効確認請求訴訟を提起することになる。
遺言者生存中の遺言無効確認:遺言者の生前における遺言無効確認の訴えは、将来問題となる法律関係の不成立ないし不存在の確認を求めるもので不適法である(最判昭31.10.4民集10-10-1229)。
遺言者が心神喪失常況中の遺言無効確認:遺言者が心神喪失常況にあって、回復の見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消または変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても、遺言者生存中の遺言無効確認の訴えは不適法である(最判平成11.6.11判時1685-36)。