遺産の分割方法

遺産の分割方法

 

2 遺産分割

(0) 法定相続分:
配偶者と子→配偶者が2分の1、子らが(全員で)2分の1
配偶者と直系尊属→配偶者が3分の2、直系尊属が(全員で)3分の1
配偶者と兄弟姉妹→配偶者が4分の3、兄弟姉妹が(全員で)4分の1
子、直系尊属または兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、同じ。但し、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1(以上、民法900条)。

 

☆ 非嫡出子の相続分:非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1としたことは、法律婚の尊重と非嫡出子の保護との調整を図ったものであり、合理的理由のない差別とはいえず、憲法14条1項に反するとはいえない(最大決平7.7.5民集49-7-1789)。後に変更済⇒①平成13年7月当時においては、立法府の裁量権を考慮しても、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われており、民法900条4号但書の規定のうち、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分(本件規定)は、憲法14条1項に違反し無効である。②本決定の違憲判断は、平成13年7月から本決定までの間に開始された他の相続につき、本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼさない(最大決平25.9.4民集67-6-1320)。

  
(1) 遺言による相続分の指定:被相続人は、(法定相続分にかかわらず)遺言で、共同相続人の相続分を定め、またはこれを定めることを第三者に委託することができる。但し、被相続人または第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない(民法902条1項)。被相続人が、共同相続人中の一人もしくは数人の相続分のみを定め、またはこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、(法定相続分の規定)により定める(同条2項)。
A 指定相続分と登記:法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人が、遺産中の特定不動産に法定相続分に応じた共同相続登記がされたことを利用して自己の共有持分権を第三者に譲渡し移転登記をしたとしても、第三者は指定相続分に応じた持分を取得するにとどまる(最判平成5.7.19判時1525-61)。
B 指定相続分の遺留分減殺請求:遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には、遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される(最決平24.1.26判時2148-61)。

 

(1) 特別受益:共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、または婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、(法定相続分、指定相続分等の)規定により算定した相続分の中からその遺贈または贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする(民法903条1項)。遺贈または贈与の価額が、相続分の価額に等しく、またはこれを超えるときは、受遺者または受贈者は、その相続分を受けることができない(同条2項)。被相続人が前2項と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する(同条3項)。
 
A 死亡保険金への特別受益の類推適用:養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権または取得した死亡保険金は、民法903条条1項に規定する遺贈または贈与に係わる財産には該たらない。保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生じる不公平が本条の趣旨に照らし到底是認することができないほど著しいと評価すべき特段の事情がある場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となる。特段の事情の有無は、保険金の額、この額の遺産総額に対する比率、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである(最決平16.10.29民集58-7-1979)。
 
B 第二次相続における第一次相続の遺産の分割:相続が開始し遺産分割が未了の間に死亡した相続人が取得した遺産についての共有持分権は、実体上の権利で、第二次相続の遺産として遺産分割の対象となり、第二次共同相続人の中に第二次被相続人から特別受益に該たる贈与を受けた者があるときは、その持ち戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない(最決平17.10.11民集59-8-2243)。
 
C 持戻し免除の遺留分減殺:特別受益に該たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合、当該贈与に係る財産の価額は、遺留分を侵害する限度で、遺留分権利者の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除される(最決平24.1.26判時2148-61)。

 

(2) 寄与分:共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、(法定相続分、指定相続分等の)規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする(民法904条の2第1項)。前項の協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法、及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める(同条2項)。寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない(同条3項)。

 

A 寄与分の認定例①

被相続人の長男及びその妻とともに被相続人の家業である農業を維持してきた長男の長男である代襲相続人について、5割の寄与分を認めた事例(横浜家審平6.7.27家月47-8-72)。

 

B 寄与分の認定例②

(農業従事者の寄与分を労務対価額から算定)(寄与者)花子の寄与分の評価算定について付言すれば、同人の農作業の種類、程度、期間、及び被相続人方の農業規模並びに農業所得などから裁量により合理的に算出した労務対価額(給与相当額)より、その期間における同人の生計費相当額を控除した額が、これに該たると解する(東京高決昭54.2.6判時931号68頁、判タ388号88頁)。

 

C 寄与分の認定例③

申立人は、被相続人の家業である薬局の経営に無報酬またはこれに近い状態で従事したとはいえないが、薬局を会社組織にし、店舗を新築するなどして経営規模を拡大したことが特別の寄与に該たるとして、3000万円(遺産の約3割)の寄与分を認めた事例(福岡家久留米支審平4.9.28家月45-12-74)。

 

D 寄与分の認定例④

被相続人が相続財産である土地について抵当権の実行を受けた際、長男が金銭を提供して実行を免れたことを寄与と認め、扶養義務の履行等その他の寄与と併せて土地価格の1割を寄与分とした事例(東京家審昭49.8.9家月27-6-63)。

 

E 寄与分の認定例⑤

被相続人が創業した株式会社は、実質は個人企業に近く被相続人とは経済的に極めて密着した関係にあったもので、会社への援助と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、被相続人に対する寄与と認める余地があるとして、経営危機にあった会社へ資金提供をした相続人の寄与分を否定した原審判を取消し、20パーセントの寄与分を認めた事例(高松高決平8.10.4家月49-8-53)。

F 寄与分の認定例⑥

被相続人の長男の妻(養女)として、家業の農業に従事するとともに、工員として得た収入をもって被相続人らの生活を支え、被相続人の療養看護に努めた申立人につき、家業従事、扶養、療養看護の各態様ごとに寄与分を算定した上、これを合算して寄与分を評価した事例かつ申立人の受けた生前贈与のうち、寄与に対する実質的対価と認められる部分については生計の資本ではないから、特別受益には該たらないが、その限度で寄与分は請求できない、として寄与分の評価額から生前贈与の価額を控除して寄与分を評価した事例(盛岡家一関支審平4.10.6家月46-1-123)。

G 寄与分の認定例⑦

相続財産を土地上の果樹については相手方たる長男の育成維持についての努力を認め、実質的には同人の所有であるとして遺産評価の対象外とした事例(松山家審昭42.12.22家月20-7-57、判タ233-214)。

 

H 寄与分の認定例⑧

遺産たる宅地建物は、抗告人(長男)が被相続人の死後世帯主として20年余にわたり生活の本拠として居住占有し、その維持管理に寄与してきたことに徴し、同人の居住権ないし使用貸借上の使用借主としての地位を考慮し、その評価額(上記遺産の価額の1割)を同人に取得させ、また、遺産たる農地についても、抗告人が被相続人の跡をつぎ耕作名義人として長年にわたって耕作し、農地買収を免れ得たことに徴すると、同人に上記耕作権に対する報償額(農地の2割)を取得させ、上記評価額をそれぞれ控除した残額をもって分割すべき遺産の価額とするのが相当であるとした事例(大阪高決昭47.9.7家月25-6-128)。

 

I 寄与分の認定例⑨

遺産の一部である土地耕作権は、共同相続人のうち専ら被相続人の長男が被相続人の生前から被相続人と共に土地の耕作を続け、同人の行為によって現在引き続いて存在するもので、他の共同相続人が特に寄与した形跡がないとして、上記耕作権を上記長男の寄与分として取得させ、遺産分割の対象から除外した事例(大阪家審昭50.3.26家月28-3-68)。

 

J 寄与分の認定例⑩

遺産の現物分割の結果、抗告人に不足を生じ相手方が若干取得超過となった事案において、抗告人が被相続人の長男であるにもかかわらず家を出て生計を顧みず抗争的態度をとっていたのにひきかえ、三男である相手方は終始被相続人の農耕作業を手伝い、相続財産の維持増大に多大の寄与貢献をなしたことが認められる等の事情を民法906条にいう「その他一切の事情」としてしんしゃくして、相手方に上記取得超過分に対する調整金の支払を命じなかった事例(広島高岡山支決昭51.11.30家月29-5-68)。

 

K 寄与分の認定例⑪

被相続人は長年地方公務員として勤務し、助役、村長と昇進した者で、その傍ら家業の農業に専従し、長男は、相続開始まで40年以上、学校を中退してまで家業の農業に専従し、農業経営の支柱となったという事案において、被相続人から相当の扶養を受け早くから他出して独立し、被相続人の農業経営に全く関与していない相続人との間には極めて大きな差異があり、長男の寄与を評価しなければならないとした上、しかしながら、長男は農業に専従したとはいえ、相続財産に特段の増加をもたらしたとは認められず、却って農業収入から自己名義の農地も取得しているし、被相続人と同一経理のもとに耕作収益して自己と家族の生活費も長年支弁してきているとして、長男の寄与分を2割とした事例(徳島家審昭和52.3.14家月30-9-86)。

 

L 寄与分の認定例⑫

相続人たる長男が長年無報酬で家業を手伝い遺産たる家屋の購入さらに維持増加に寄与した度合いの大なる事情を考慮し、長男が上記家屋の上に寄与分相当の潜在的持分を有するものと認め、民法250条の趣旨を参酌して持分を2分の1とした事例(大阪家審昭40.9.27家月18-4-98、判タ199-213)。

 

M 寄与分の認定例⑬

高校ないし中学卒業後家業である左官業に従事し、生活費の負担の他は小遣い程度をもらっただけで労働の対価を得ていなかった2名の子にいずれも遺産の約10%の寄与分を認めた事例(東京家審昭61.3.24家月38-11-110)。

 

N 寄与分の認定例⑭

申立人の妻の貢献につき、申立人の補助者または代行者として遺産の維持に特別の寄与がなされたものであると認め、これを申立人の寄与分として考慮して遺産分割をした事例(神戸家豊岡支審平4.12.28家月46-7-57)。

 

O 寄与分の認定例⑮

高齢で衰弱し入退院を繰り返すようになった被相続人の日常の生活はもとより、入退院の付き添いなどその療養看護に努めた長女に300万円の寄与分を認めた事例(広島高決平6.3.8家月47-2-151、判タ870-242)。

 

P 寄与分の認定例⑯

相続人の妻子による被相続人の介助が、相続人の履行補助者的立場にある者の無償の寄与行為として、当該相続人にとって特別の寄与があるものと認められるとした事例(東京家審平12.3.8家月52-8-35)。

 

Q 寄与分の認定例⑰

遺産分割のための寄与分を定める処分の申立てをした事案において、本来は子ら全員で親である被相続人を扶養すべきところを申立人が全面的に引き受け、そのため被相続人は自己の財産を消費しないで遺産として残せたのであるから、申立人にはその本来的義務を超えて負担したものとみなされる部分に対応する寄与の効果を認めるのが相当であるとして寄与分を定めた上、民法903条と904条の2とを同時適用して具体的相続分を算定した事例(大阪家審昭61.1.30家月38-6-28)。
 

R 寄与分の認定例⑱

遺産分割に伴う寄与分を定める処分申立事件について、被相続人所有の土地の売却にあたり、同土地上の家屋の借家人との立退き交渉、同家屋の取壊し及び滅失登記手続、同土地の売買契約の締結等に努力した相続人につき、土地売却価格の増加に対する寄与を認め、寄与の程度を定めるにあたり、不動産仲介人の手数料基準をも考慮した事例(長崎家諫早出審昭62.9.1家月40-8-77)。

 

S 寄与分の認定例⑲

被相続人が遺産不動産に係る訴訟の第一審に敗訴した後、証拠の収集に奔走した相続人の行為は、控訴審において逆転勝訴の結果を得ることに顕著な貢献があり、遺産の維持について特別の寄与があったとして、寄与分を認めた事例(大阪家審平6.11.2家月48-5-75)。

 

T 寄与分の認定例⑳

被相続人の財産形成に相続人が寄与したことが遺産分割にあたって評価されるのは、寄与の程度が相当に高度な場合でなければならないから、被相続人の事業に関して労務を提供した場合、提供した労務にある程度見合った賃金や報酬等の対価が支払われたときは、寄与分と認めることはできないが、支払われた賃金や報酬等が提供した労務の対価として到底十分でないときは、報いられていない残余の部分については寄与分と認められる余地があると解される(大阪高決平2.9.19家月43-2-144)。
 

X 寄与分に関係する決定例①

親が営んでいた商店の営業を実質上その子夫婦に承継させた場合、一種の組合契約をしたと認め、子らが店舗の経営をして得た財産は親が死亡し他に共同相続人がいる場合には、組合の解散に準じ出資の割合に応じ清算すべく、その結果、親の取得分のみを遺産として取り扱うべきものとした事例(東京高決昭51.5.27判時827-58)。

 

Y 寄与分に関係する決定例②

被相続人とともに約7年間農業に専従してきた相続人の遺産の維持増加に対する貢献度について、上記の期間中特に被相続人の財産の増加があったとは認められないこと、却って被相続人からの生前贈与により上記相続人名義の財産が増加しているなどを考えると、既に上記相続人の貢献に対してはこれに報いる措置が講じられているとみられること、また上記相続人が上記期間被相続人とともに農業に専従することによって生活費用の支弁はもちろん、自ら酪農経営を始めその拡張も図り得たことなどを勘案すれば、上記相続人が他の相続人らに比して無駄働きをし、被相続人に不当利得があったものとは認め難く、上記相続人に法定相続分以上に特段のいわゆる寄与分を附加取得させる根拠は認められない(仙台家審昭49.3.30家月27-7-62)。
 

Z 寄与分に関係する決定例③

(寄与の時期)相続人が相続開始後に相続財産を維持しまたは増加させたことに対する貢献は、遺産の分割をするにあたり、いわゆる寄与分として評価すべきものではない(東京高決昭57.3.16家月35-7-55)。

 
(3) 相続分の取戻権:共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる(民法905条1項)。前項の権利は、1ヶ月以内に行使しなければならない(同条2項)。
 

 特定不動産の持分権の譲渡:共同相続人の一人が遺産中の特定不動産について同人の有する共有持分権を第三者に譲り渡した場合については、民法905条を適用または類推適用できない(最判昭53.7.13判時908-41)。

 
(4)遺産分割の効力:遺産の分割は、相続開始の時に遡ってその効力を生じる。但し第三者の権利を害することはできない(民法909条)。
 
A 遺産分割と登記:相続財産中の不動産につき、遺産分割により相続分と異な る権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権 利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができない(最 判昭46.1.26民集25-1-90)。
 
B 相続不動産の賃料債権の帰属:相続開始から遺産分割までの間に遺産である不動産から生じる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は後にされた遺産分割の影響を受けない(最判平成17.9.8民集59-7-1931)。