相続財産の行方を決める相続人について
相続財産の行方を決める相続人について
第3 不動産と相続
3 相続人不存在
(1) 制度:相続人のあることが明らかでないとき→相続財産は法人となる(民法951条)。
☆ 全財産の包括受遺者:遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、民法951条にいう「相続人のあることが明らかでないとき」には該たらない(最判平9.9.12民集51-8-3887)。
(2) 事後の処理:家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない(民法952条1項)。→相続債権者及び受遺者への弁済(民法957条)→相続人の捜索の公告(民法958条)→権利を主張する者の有無(民法958条の2)→特別縁故者に対する相続財産の分与:上記権利を主張する者がいない場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部または一部を与えることができる(民法958条の3第1項)。前項の請求は、民法958条の期間の満了後3ヶ月以内にしなければならない(同条2項)。
A 「その他被相続人と特別の縁故があった者」:「その他被相続人と特別の縁故があった者」とは、民法958条の3に例示する生計を同じくしていた者、療養看護に努めた者に該当する者に準ずる程度に被相続人との間に具体的かつ現実的な精神的・物質的に密接な交渉のあった者で、相続財産をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に特別の関係にあった者をいう(大阪高決昭46.5.18家裁月報24-5-47)。
B 民法255条(共有者死亡の場合の持分の(他の共有者への)帰属)との優先関係:共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、上記財産分与がされないときに、同法255条により他の共有者に帰属する(最判平成1.11.24民集43-10-1220)。
C 遺言の無効確認:特別縁故者として相続財産の分与を受ける権利は、審判により形成される権利にすぎず、遺言の無効確認を求める法律上の利益を有するとはいえない(最判平6.10.13判時1558-27)。
→残余財産の国庫への帰属:民法958条の3により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する(民法959条)。
☆ 国庫への帰属時期:相続人不存在の場合において、特別縁故者に分与されなかった相続財産は、相続財産管理人がこれを国庫に引き継いだ時に国庫に帰属し、相続財産全部の引継ぎが完了するまでは、相続財産法人は消滅せず、相続財産管理人の代理権も引継未了の相続財産につき存続する(最判昭50.10.24民集29-9-1483)。
投稿者プロフィール
- 弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
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