オーナーが知るべき特別特措法について

Ⅱ 同措置法の立法の経緯・目的等

1 立法の経緯

平成26年11月19日に成立(平成26年11月27日法律第127号)
平成27年2月26日(後記の【立入調査権】【命令】関係等一部は5月26日)に施行(平成27年2月20日政令第50号)
 

2 立法の目的

我が国の少子高齢化に伴い都市部か地方か関係なく「空き家」が増加しているが、特に、所有者が判らない、または判明した所有者が空き家を放置し続ける等し適切に対処しない等のため、この「空き家」が最終的には朽廃・崩落の危険があったり、人の気配がないことから放火や不法侵入の対象となったりと社会問題化してきた。これに対して、自治体が適切に対処できるよう法的な裏付けをしたのが本特措法。
 

3 関連法令等

特に重要なのは、上記特措法中で定義付けられる「特定空家等」と判断された場合には「固定資産税等の住宅用地特例」の対象から除外することが平成27年度税制改正大綱に明記されていること。
これは、住宅などの敷地として利用されている土地は固定資産税が課税標準額の6分の1~3分の1、都市計画税が3分の1~3分の2に軽減される措置が従前からあるため、特に地価が高い地域では、空き家かつ相当な古家になっても解体等せずに存続させてきた(要するに節税のためには「更地」にはしない、ということ)ため、問題のある「空き家」の存続を助長してきたことからの措置。

 

後述のとおり、本特措法により、「特定空家等」に認定された場合には、最も強硬な手段による場合、最後は行政代執行により、問題空家は解体・除却されることになる。
しかし、このような強制除却にまで至らなくても、空家が存続する段階から、建物が存在しても上記の節税措置が使えないことになれば、少なくとも節税のために空家を存続させておく理由はなくなるので、任意での解体・除却→更地となっていくことが期待される。

 

しかも、更地となった上で(上記「特定空家等」の場合には更地となる前から)、固定資産税等に関する上記節税対策は使えないことになり、かつ、「空家」または「更地」ということで所有者は通常、物件からの賃料等の経済的利益も何ら得ることはない以上、これまで以上に、更地(もしくは上記「特定空家等」の場合には空家の建物付土地)を売却・処分しようと考える所有者が圧倒的に増えることが予想される。
これにより、特に、土地の供給がそれ程多くはない、地価が高い優良な住宅地ほど、(現状では空家といえども、建物が少なくとも一度は建築されているのであるから)比較的程度のよい土地の供給が進む可能性は高いものと思われる。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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