空き家の除却に土地収用法を活用する場合


[公共事業等が入った場合に利用可能な手続き]

⑴ 概 要

土地収用法第3条に該当する事業において、土地、建物の所有者が所在不明又は氏名等全く不明の場合、①事業認定、②収用委員会への裁決申請、不明裁決を経て、③起業者自ら又は市町村による代行により建物を撤去することができる。

 

⑵ 申請者

起業者(収用法第3条各号に該当する事業を行う者 例:市町村、社会福祉法人等)

 

⑶ 収用法第3条各号に該当する主な事業

市町村道、学校、公民館、保育園、特別養護老人ホーム等社会福祉施設、市町村が設置する公園、広場等

 

⑷ 効 果

建物の収用が認められた場合、起業者は建物の撤去ができる。建物の収用が認められない場合、起業者は市町村長に代行の請求を行う。市町村長は、代執行手続きを経ることなく、直ちに代行して建物の撤去ができる。

土地収用法による事業認定申請(市町村、社会福祉法人等)



申請に必要な書類(主なもの)

①事業認定申請書 ②事業計画書 ③起業地及び事業計画を表示する図面

④事業説明会等実施した状況のわかる書類 ⑤その他事業の必要性を示す書類等

※事業により必要となる書類等が異なるため、事前の相談が必須となる。

事前相談から正式申請まで3~4か月ほどかかっているのが一般的である。


県(県土利用政策課):受理・審査

必要期間 1ヵ月から1ヵ月半

事業認定告示(収用法第16条)

⑹ 裁決申請

① 事業認定告示日から1年以内に県収用委員会に裁決申請(権利取得裁決)を、4年以内に裁決の申出(明渡裁決)を行うこと(収用法第 39 条・第 29 条第2項)

② 明渡裁決の申出の際に建物の移転料が価値を超える場合には、建物の収用を請求すること(収用法第 79 条:移転料多額の場合の収用請求)



収用裁決申請及び明渡裁決の申立て(収用法第 39 条・第 47 条の3)

収用裁決申請に必要な書類(主なもの)

①裁決申請書 ②事業計画書及び起業地及び事業計画を表示する図面 ③市町村

別に収用する土地の地番、地目、面積、関係人、補償金の見積り、権利を取得す時期を記載した書類 ④土地調書等

明渡裁決の申立てに必要な書類(主なもの)①明渡裁決の申出書 ②市町村別に土地の地番、地目、土地にある物件の種類及

び数量、関係人、損失補償金の見積もり、物件の移転時期を記載した書類 ④土地調書等

県収用委員会 受理・開始決定・審理

通常 申請から裁決まで6か月程度必要

 裁 決 


補償金の支払い(所有者不明により法務局へ供託)収用法第 79 条による建物の収用が認められた場合


起業者による建物撤去のうえ、事業施行

収用法第 79 条による建物の収用の請求ができなった又は認められなかった場合    

起業者から市町村長に代行請求

⑼ 請求に必要な書類 ①所有者の所在不明又は全く不明 であることを証明する資料

市町村長の代行による建物撤去のうえ、事業者による事業施行

⑽ 補足説明
◯ 事業認定(約6か月)、収用裁決(約6か月以上)、補償金供託及び代行(市
町村)まで年単位の期間が必要であり、事務量も相当量となり費用も高額とな
る。
◯ 通常は、事業認定を受けた後、起業者が裁判所に不在者財産管理人の選定を
申立てて、不在者財産管理制度により手続きを進めるのが一般的である。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
事務所概要
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