土地建物売買契約書

※1

 売主と買主は、以下のとおり、下記の土地(以下「本件土地」という。)及び下記の建物(以下「本件建物」といい、本件建物及び本件土地を総称して「本件物件」という。)に関し、本件物件を買主の自宅居住用に供する目的1で売買契約を締結する。

(売買の目的物)

第1条 売主はその所有する本件物件を買主に売り渡し、買主はこれを買い受けた。

(売買代金)

第2条 本件物件の売買代金は、土地については1平方メートルにつき金○○○円の割合で実測面積(登記簿上の表示による。)に基づいて算出した金○○○○円、建物については金○○○○円、総合計金○○○○円とする。

2 実測面積が登記簿上の面積より少ないときは、この契約締結後1年以内に限り、買主は売主に対し、1平方メートル当たり金○○○円の割合で、直ちに売買代金の減額を請求することができる2

(手付)

第3条 買主は本契約締結と同時に売主に対し手付金として金○○○円を支払、売主はこれを受領する。この手付金は解約手付とするが、売買代金支払のときはその一部に充当する。

2 買主が売主に支払済の手付金を放棄して、又は売主は買主に受領済の本条第1項の手付金の倍額を現実に支払うことにより、それぞれ本契約を解除することができる3

3 前項による解除は、相手方が本契約の履行に着手したときはすることができないものとする。

(売買代金の支払時期・方法)

第4条 買主は売主に対し、売買代金を202×年○月〇日までに現金又は預金小切手をもって支払う。

(所有権等の移転の時期)

第5条 本件物件の所有権は、買主が売主に対し売買代金全額を支払、売主がこれを受領したときに売主から買主に移転する。

(引渡)

第6条 売主は買主に対し、本件物件を202×年○月〇日4に引き渡す。

(抵当権等の抹消)

第7条 売主は、第5条の所有権移転時期までにその責任と負担において本件物件上に存する抵当権、質権、借地権その他の買主の完全な所有権を妨げる一切の負担を除去・抹消する。

(所有権移転登記等)

第8条 売主は買主に対し、売買代金全額の受領と同時に本件物件について、買主の名義に所有権移転登記手続きをする。

2 前項の登記申請に要する費用は買主の負担とする。ただし、本件物件に関する所有権等の登記名義人の住所・氏名の変更登記を要する場合の費用は売主の負担とする。

(公租公課等の負担)

第9条 本件物件にかかる公租公課その他賦課金及び負担金は、本件物件の引渡しの日をもって区分し、202×年1月1日からその日までの分は売主の負担とし、翌日以降の分は買主の負担とする。

(危険負担-引渡完了前の減失・毀損)

第10条 本契約締結後、第6条による本件物件の引渡完了前に、売主又は買主のいずれの責めに帰することができない事由により本件物件の全部または一部が流失、陥没その他により減失または毀損したとき、あるいは公用徴収、建築制限、道路編入等の負担が課せられたときは、その損失は売主の負担とし、買主は売買代金の減額または原状回復のために生じる損害の賠償を請求することができるものとする5

2 前項に定める減失または毀損によって買主が本契約締結の目的を達成することができないときは、買主は本契約を解除することができる。この場合は、売主はすでに受け取った手付金を買主に返還しなければならない6

(契約内容不適合責任)

第11条 買主は売主に対し、本件物件に下記(1)ないし(4)の欠陥があるなど、本件物件が本契約の内容に適合しないもの(以下「契約内容不適合」という。)であった場合、相当の期間を定めて当該契約内容不適合の修補等、履行の追完を催告し、その期間内に履行がないときは、買主はその不適合に対応する代金額は当事者間の協議により決定するが、協議がまとまらない場合には、契約内容不適合がなければ本件物件が有したであろう価値に対して、本件物件の実際の価値との間で成立する比率に従って代金額を減額するものとする⁷。

  (1) 雨漏り

  (2) シロアリの害

  (3) 建物構造上主要な部位の木部の腐蝕

  (4) 給排水管(敷地内埋設給排水管を含む)の故障

   なお、買主は売主に対し、本件物件について、前記当該契約内容不適合を発見したと

きは、速やかにその契約内容不適合を通知して、修復に急を要する場合を除き売主に立

ち会う機会を与えなければならない。

2 買主は売主に対し、第1項の契約内容不適合により、本契約を締結した目的が達せられないときは、本契約を解除することができる8

3 売主は買主に対し、第1項ないし第3項に基づく責任を引渡完了日から3か月以内に限り負う9

4 売主は買主に対し、本契約締結時に第1項の契約内容不適合の存在を知らなくても本条の責任を負うが、買主が本契約締結時に第1項の契約内容不適合の存在を知っていたときは、売主は本条の責任を負わない。

(契約違反による解除・違約金)

第12条 売主又は買主は、その相手方が本契約に違反し、期限を定めた履行の催告に応じない場合には、本契約を解除し、違約金として金○○○円の支払を相手方に請求できるものとする10。ただし、債務の不履行が、天災、暴動、戦争、動乱、テロ行為、同盟罷業等の争議行為、交通機関の事故その他の不可抗力により生じた場合には損害賠償債務は負わない。11

2 前項の場合において、売主が違約したものであるときは、すでに受け取った手付金は買主に返還し、買主が違約したものであるときは、売主は、すでに受け取った手付金をもって売主に支払うべき違約金に充当することができるものとする。

(管轄裁判所の合意)

第13条 本契約に関する管轄裁判所は、本件物件所在地を管轄する裁判所を売主・買主合意の管轄裁判所とする。

(規定外事項の協議義務)

第14条 本契約書に定めのない事項については民法その他関係法規及び不動産取引の慣行に従い、売主、買主互いに誠意をもって協議する。

(反社会勢力の排除条項)

第15条 売主及び買主は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。12

 ① 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずるもの又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。

 ② 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)

が反社会的勢力ではないこと。

 ③ 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。

 ④ 本物件の引渡及び売買代金の全額の支払のいずれもが終了するまでの間に、自らまたは第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと。

  ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為

  イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為

2 売主又は買主の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。

 ア 前項①または②の確約に反する申告をしたことが判明した場合

 イ 前項③の確約に反し契約をしたことが判明した場合

 ウ 前項④の確約に反した行為をした場合

3 買主は、売主に対し、自ら又は第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動拠点に供しないことを確約する。

4 売主は、買主が前項に反した行為をした場合には、何らかの催告を要せずして、本契約を解除することができる。

5 第2項又は前項の規定によりこの契約が解除された場合、解除された者は、その相手方に対し、損害賠償額の予定として売買代金の20%相当額を支払うものとする。

6 第2項又は第4項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、解除により生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。

7 第2項又は第4項の規定によりこの契約が解除された場合の解除及び違約金については、第2項、第4項、第5項及び前項の規定によるものとし、第12条第1項は適用しない。

8 買主が第3項の規定に違反し、本件物件を反社会的勢力の事務所その他の活動拠点に供したと認められる場合において、売主が第4項の規定により本契約を解除するときは、買主は売主に対し、第5項の違約金に加え、売買代金の80%相当額の違約罰を制裁金として支払う。

(物件の表示)

  土 地

  所在 横浜市○○区××町○丁目

  地番 ○○番○○

  地目 宅地

  地積 ○○○.○○平方メートル

  建 物

  所在 横浜市○○区××町○丁目○○番○○

  家屋番号 ○○番○○

  種  類 居宅

  構  造 木造スレート葺2階建

  床面積  1階 ○○.○○平方メートル

       2階 ○○.○○平方メートル

202×年△月△日

1  改正民法では、履行不能か否かを判断する際(改正民法412条の2第1項)、また、損

害賠償請求権の成否を検討するにあたり、債務者の「責めに帰することができない事由」(免責事由)の有無を判断する際(改正民法415条)、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」が参照されますが、これは、契約の趣旨や目的を考慮すると言い換えることができます。

 また、改正民法では、債務不履行をした債務者に仮に催告をしても「契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」は、債権者は無催告解除をすることができるとされています(改正民法542条1項5号)。

 このように、改正民法の下では、契約の目的が重要な意味を持ちますので、契約書に契約の目的を記載しておくことは有益だと考えられます。

2  改正民法563条1項を受けて、代金減額請求権の条項を明文で置きました。改正民法563条では、履行の追完の催告が必要となりそうですが、実測面積が少ない場合に追完の催告をしても意味がないので、本条では直ちに減額請求できるとしています。

なお、改正民法563条1項で代金減額請求権が明文化された以上、むしろ契約書では、改正民法を前提とした売買契約書2条2項のように、代金減額請求を(例えば期間制限等により)封じる条項が設けられることが多くなるかもしれません。

3  改正民法557条1項を参考に、手付解除に関する条項を置きました。

もっとも、改正民法557条1項は、改正前民法のもとでの判例を明文化したものですから、同趣旨の条項が改正前民法下の契約書に置かれていたことも多かったため、今回の民法改正によって運用が大きく変わるわけではありません。

4  ここの日付は、第4条と合わせるのがよいと思われます。

5  改正民法536条1項は、反対給付の履行拒絶権を定めただけで、それだけでは法律関係は明らかになりません。そこで、改正民法567条1項の趣旨を受けて、目的物の引渡し前の減失・毀損については債務者である売主が危険を負担する旨の規定を置くのが良いでしょう。もっとも同趣旨の規定は、改正前民法の下でも置かれていたことが多かったものといえます。

6  改正民法542条1項によれば、改正前民法では危険負担のみが問題となる場面(=債務者に責めに帰すべき事由が認められない場面)でも無催告解除ができる場合があります。本条はこのことを明らかにした規定ですが、同趣旨の条項は、改正前民法の下でも置かれていたことがありました。

7  改正民法563条1項を参考に代金減額請求権の条項を置いています。減額する代金額について「相対的評価方法」を採用している。代金減額割合の算定基準時は、契約時が、望ましいものとされている。なお、目的物評価のために鑑定を要する場合の費用については、代金減額請求は実質的には契約の改定の性質を有することから、契約の費用(改正民法第588条)として、売主と買主とで折半するのが妥当と考えられている。

8  改正民法564条、542条1項。

9  改正民法566条によれば、買主の契約内容不適合責任を追及する権利は、買主が引き渡された目的物の契約内容不適合を知った時から1年以内に売主に通知をすれば保全されることになっていますが、本条項ではその期間を短期間(「引渡完了日から3か月以内」)に制限しています。

10  改正民法541条を条文化しました。

11  改正民法415条1項によれば、債務者は、債務不履行が「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるとき」には、損害賠償債務を負いません。本条項は、その趣旨を明確にするため、債務不履行が不可抗力による場合の免責を規定しています。

12  いわゆる暴力団排除条項については、同条項に違反しても契約が錯誤により取り消される可能性は高くないと考えられますので(改正民法95条1項2号)、改正前民法下と同様に本条項を置く必要があるといえます。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

事務所概要
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