不動産セミナー(第1回) 「『重要事項説明書』の極意」を開催しました

第1 重要事項説明義務について

セミナー当日の資料を共有いたします。ご覧ください。

1 (宅建業者の)重要事項説明義務とは?

 宅建業者(売主業者、代理業者、仲介業者)は、買主に対し、取得しようとしている宅地建物に関し、その売買契約が成立するまでの間に宅地建物取引士(旧宅地建物取引主任者)をして、少なくとも宅建業法35条1項1号から14号に掲げる事項(法定重説事項※1)を記載した書面(=重要事項説明書)を交付して説明させなければならない。

 

☆重要事項=買主にとって当該契約を締結するか否かの判断または意思決定のために重大な影響を及ぼすもの。→宅建業者以外の(※2)買主に対しては(※3)等しく説明しなければならない。

※1 「少なくとも~」との文言及び規制の趣旨→限定列挙でなく例示列挙(裁判例①裁判例②)。

 

☆買主から売買仲介の委託を受けているかどうかにかかわらず買主に対し重要事項の説明義務を負う。→売主から売却仲介を受託した仲介業者も、買主に対し重要事項説明義務を負う。但し、実務上は買主だけでなく売主に対しても重要事項説明書の交付・説明がなされている。

※2 重要事項説明の対象となる買主には宅建業者も含まれるが、平成28年の宅建業法改正により、宅建業者である買主に対しては、重要事項説明書の交付はこれまでどおり義務だが、説明は省略可能に(改正法35条6項。平成29年4月1日施行)。

※3 宅建業者自らが賃貸人として賃貸業を営んでも賃借人に対し重要事項説明書の交付・説明義務、37条書面の交付義務は負わない。←賃貸人が宅地建物を賃貸する行為は、宅建業法2条2号にいう「宅地建物取引業」に該当しないから、賃貸業は宅建業法による業務規制の対象ではないため。

☆故意による重要な事実の不告知・不実告知の禁止との違い

 宅建業法47条1号=宅建業者が、業務に関し、故意に重要な事項を告げず、不実の事項を告げることを禁止し、違反したときは業務停止処分の対象に止まらず、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられ、またはこれを併科される(法65条2項2号、79条の2)。

  • 対象:「宅建業者の相手方等」であり、売主・賃貸人を含むので法35条の対象よりも広い。
  • 時期:法35条のように売買等契約締結前に限らず、契約締結後に宅建業者が知った重要な事実の不告知・不実告知も禁止する。←47条1号A「(売買など)契約の締結について勧誘するに際して」B「(売買などの)契約の申込の撤回もしくは解除を妨げるため」C「宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため」
  • 事項:「宅地若しくは建物の所在、規模、形質、現在若しくは将来の利用の制限、環境、交通等の利便、代金、借賃等の対価の額若しくは支払い方法その他の取引条件又は当該宅建業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であって、宅建業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」(法47条1号イないしニ中、特にニ)
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2 重要事項説明義務違反の効果

  •  宅建業法=宅建業者の業務を規制対象とする事業者規制法(公法)であって、宅建業者とその取引の相手方(買主・借主、委託者等)との売買・賃貸借契約や仲介契約について直接規律するもの(私法)ではない。→宅建業者は、宅建業法の義務規定や禁止規定を遵守して適正に宅地建物取引業を行うべき。→そこで次の(2)へ。
  •  宅建法上の重要事項説明義務も、(私法上は)(例えば仲介契約において)信義則上負うべき附随義務の一環→売主業者の買主に対する業務上の注意義務、仲介業者の委託者に対する説明義務などの善管注意義務、仲介業者の第三者に対する業務上の注意義務の内容の検討材料に、宅建業法31条、35条、47条1号等が定める義務や禁止事項が判断基準の一つとなる。→宅建業者の民事上の注意義務違反を根拠付ける指標に(裁判例③)。
  •  重要事項等説明義務の前提として同調査義務も認められることに。
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  •  仲介業者が説明すべき事項や説明の程度は、個々の売買、仲介取引において以下の各要素に照らして判断されるべき。
    • 宅建業法の規定に違反した事実、規定の趣旨に違反した事実
    • 契約目的(居住用・事業用建物に供するか、転売目的か)
    • 売買の目的物(居宅、事務所、商業施設、賃貸物件等)
    • 仲介委託の趣旨(売却仲介、買受仲介)
    • 当事者の属性(消費者・事業者・宅建業者か、取引経験の有無、取引の知識)
    • 契約締結や取引価格の決定に影響を与えたか
    • 現地案内、現地での説明内容、提供をした資料
    • 売買契約書における免責特約、現状引渡等特約の有無・趣旨 
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3 (重要事項等)説明義務の類型

 (基本)

  •  取引物件の所有者(取引当事者の同一性)、代理権限、売買・賃貸借等の処分権限を有するか等権原に関する事項
  •  取引物件の同一性に関する事項
  •  取引物件に設定された抵当権等の有無に関する事項
  •  取引物件の法令上の制限に関する事項

(個別(確認)事項)

A 売買取引の経過事実、売買契約書・重要事項説明書、物件資料等に照らし、買主がどのような目的で不動産を買い受けたか(購入目的)

B 仲介業者が買主の購入目的、購入後の利用形態等を認識していたか

C 買主は、いつ、どのようなきっかけで取引物件を知ったのか

D 買主は、誰から、どのような物件資料を受け取ったか

E 現場案内した仲介業者の担当者は誰か、宅地建物取引士か

F 重要事項説明書はいつ受け取ったのか、同説明書に補足資料として全部事項証明書が添付されていたか

G 重要事項説明をした宅地建物取引士と現地案内した営業担当者とは同じか、違う場合には意思疎通はきちんと出来ていたか

H 取引物件の現況は居住用建物か事業用物件か

I 事業用物件の場合、その建物は何に利用されていたか

 

  • 取引物件・権利関係に関する説明義務

宅建業法:仲介業者が買主に説明すべき重要事項

 

 売買の目的物である「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあっては、その名称)」(1号)

  • 「登記された権利の種類」=所有権、抵当権等の他、仮登記、仮処分、差押等
  • 「権利の内容」=登記目的、登記受付年月日、登記原因等
    • 調査方法:登記所で全部事項証明書(建物登記簿謄本等)を入手等→「甲区」欄に誰が所有者として登記されているか、差押・仮処分・仮差押等の登記がなされていないか、「乙区」欄に抵当権等の登記が設定されていないかを事前に調査→その結果を重要事項説明書の「登記記録に記録された事項」欄の「所有権に係る権利に関する事項」、「所有権以外の権利に関する事項」に記載し買主に説明する。
    • 調査時期:最新(極力、重・説作成日の当日。なお、決済前の調査として、契約日及び決済の当日にも確認するべき)の全部事項証明書を入手→取引物件の権利関係を調査する→調査を怠り権利関係の変動を看過すると仲介業者の調査義務違反となる(裁判例④)。
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  • 法令上の制限に関する説明義務
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宅建業法:仲介業者が買主に説明すべき重要事項

 宅建業者(売主業者、代理業者、仲介業者)が「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で……政令で定めるものに関する事項の概要」、政令である施行令3条1項各号に掲げる都市計画法、建築基準法等の法令上の制限について調査し、その結果を買主に対し説明すべき義務を定める(2号)。=これらは例示であり限定列挙ではない。→宅建業者は、買主の購入目的に支障があるとか利用目的を達成できないような建築制限、土地利用制限等の法令上の制限がないかどうかを調査し、その結果を買主に適切に説明しなければならない(裁判例⑤)。

 

☆調査の対象

  • 法律だけでなく政令=例えば建築基準法施行令等
  • 建築基準法40条に基づく条例=例えばがけ条例のような委任条例
  • 宅地開発行政の分野における開発指導要綱等の行政指導をも含む。
    • 調査方法:関係法令に関する事務を所掌する市役所、都道府県庁、土木事務所等に出向いて問い合わせ、照会することにより法令上の制限やその制限内容に関する情報を容易に入手することができる。
    • 法令上の制限に関する裁判例:宅建業法施行令3条1項各号に掲げられていない法律の規定について、宅建業者が調査・説明義務を負うとしたものがある(裁判例⑥ないし裁判例⑬)。
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    • 用途変更手続の要否に関する説明義務

用途変更手続に関する建築基準法87条1項(6条1項準用)は、上記の宅建業法施行令3条1項2号には掲げられていないが、上記のとおり宅建業法35条は例示列挙→同法施行令に掲げられている事項もまた例示列挙→同法35条1項2号や施行令3条1項2号は建築基準法87条1項、6条1項の規定を説明すべき事項から殊更除外するものではない&用途変更に関する建築規制を受けることについて、仲介業者から事前に説明を受けていれば、買主は、当該不動産の購入を断念したか、売買価格の減額を求めるだろうから、用途変更に関する建築規制の存在やその内容は買主が売買契約を締結するか否かの判断や意思決定に影響を及ぼす重要事項に該たる。→用途変更手続に関する規定は、宅建業者が買主に対し説明すべき「法令に基づく制限」に含まれる。⇒仲介業者は、買主が従前「事務所・倉庫」として利用されていた建物を店舗に利用する目的で買い受けることを認識しているときは市役所の建築指導課等の所轄機関に問い合せてA 用途変更に当たるかどうか

B 用途変更手続きが必要かどうか、を確認し、

C 用途変更手続のためには用途変更工事が必要になること、について買主に適切に説明すべき(※)。

 

 ※但し、仲介業者は宅地建物取引の専門家ではあっても、建築に関する専門家ではない。→買主に対し、どの程度の費用を要するかについて具体的に説明することまではもちろん不要。「用途変更手続に伴う工事」については、買主が建設業者や建築士等に相談して、不動産を買い受けるか否かの判断を検討するように促す等の助言をすべき。→このような助言があれば、買主は建設業者、建築士等に相談して、どの程度の規模の店舗に用途変更するのか、どのような規模の用途変更工事が必要となるのか、その費用はどの位かについて具体的に検討を行う機会を得ることが可能に。→買主は検討の結果、用途変更手続の要否、用途変更工事の内容・規模・費用等を考慮して、本件建物の購入を断念するという判断も可能に。

 

  Cf.賃貸の仲介において、賃借人の利用目的を仲介業者が認識し、その目的を達成するには建築基準法上の用途変更の確認申請が必要なのに、これを買主に説明しなかった仲介業者について説明義務違反による損害賠償責任を認めた例がある(裁判例⑭)。

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  • 瑕疵に関する説明義務

ア 瑕疵の存在についての調査・説明義務

 瑕疵の存在=買主にとって当該売買契約を締結するか否かの判断や意思決定に影響を与える事項に該たる。仲介業者は、売買の目的物について現地見分するにあたり、通常の注意をもって現状を目視により観察し、その範囲で買主に説明すれば足り、これを超えて瑕疵の存否や内容についてまで調査・説明すべき義務を負わない(千葉地裁松戸支判平成6年8月25日判時1543号149頁、大阪高判平成7年11月21日判タ915号118頁等)←仲介業者は建築士・不動産鑑定士と異なり、取引物件の物的状態の調査・検査能力や鑑定能力を備えている訳ではないから(大阪地判平成20年5月20日判タ1291号279頁)。⇔仲介業者が取引物件における瑕疵の存在を認識したり、瑕疵の存在の可能性を推認できるような事実を認識していれば、瑕疵の存在またはその可能性について説明する義務を負う。←買主にとって契約締結に影響を与える重要な事実に該当するため。また、仲介業者が瑕疵の存在を認識しながら、これを買主に告げなかった場合、宅建業法47条1号ニの「故意に事実を告げず」に該当する。→買主から具体的に瑕疵の存否について質問や問い合わせがあった事項については、仲介業者は速やかに売主に照会等をして、その結果を買主に報告・説明すべき義務を負う。⇔例えば上記照会の際に、仮に売主が事実に反した内容を回答したとしても、仲介業者において特に疑念を抱くものでない限り、買主にそのまま報告すれば足りる。

イ 物件状況等報告書による報告

 宅建業法35条=瑕疵の存否について重要事項説明義務の対象事項とはしていない。 ⇔瑕疵に関する紛争が多いことに鑑み、取引実務では、売主が「物件状況等報告書」 を売買契約時に買主に交付する。同報告書には、売買の目的物の瑕疵やその近隣での 自殺・殺傷事件等の心理的影響があると思われる事実を記載すべき欄がある。→仲介 業者が買主から事故物件ではないかどうかとの質問や照会を受けた場合、売主に対し、 買主の質問を伝達し、売主の回答をそのまま買主に報告すべき義務を負う。⇔例えば、 上記質問や照会の有無に関わらず、売主が事実に反した内容を記載し買主に提出した 場合、特段の事情(上記同様「仲介業者において特に疑念を抱くもの」)がない限り、 仲介業者はこれを再調査・確認すべき義務を負うものではない。

ウ 電気設備・消防用設備に関する調査・説明義務

 宅建業法35条1項は、飲用水、電気及びガスの供給並びに給水施設の整備状況を説明すべき事項とする(4号)。事業用建物の売買仲介において、電気設備・消防用設備に関する仲介業者の調査・説明義務の有無が争点となった事案あり(裁判例⑮)。

 エ  瑕疵に関する裁判例

  • 仲介業者が瑕疵の存在を認識している場合→これを買主に説明すべき義務を負い、履行しなければ、瑕疵についての調査・説明義務違反を認められる(裁判例⑯裁判例⑱裁判例⑲)。
  • 仲介業者が通常の注意を払えば認識できた場合にこれを怠った場合→調査・説明義務違反を認められる(裁判例⑰裁判例⑱裁判例⑲)。
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  • 事故物件に関する説明義務

売買の目的物が自殺・殺人等の事件・事故の現場となった履歴があること=一般に嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的瑕疵に該たる。→買主が売買の目的物を買い受ける契約を締結するかどうかの判断や意思決定に影響を及ぼす重要事項に該たる。→仲介業者は、売主から自殺の事実を告げられたり、物件調査に際して当該物件の周辺に居住する者から自殺の事実を聞かされたときは、売主にこれを確認して買主に説明すべき義務を負う。⇔一般的に仲介契約について「事故物件性のない物件の契約成立に尽力する合意が前提として含まれている」とまでは言えない。=仲介業者の調査・説明義務は仲介業者が瑕疵の存在を認識し、または認識できる場合に限定すべき←仲介業者が売主に対し事件や事故の有無を照会するとしても、売主が取得した以前の所有者まで遡って仲介業者に調査義務を負わせるのは調査の困難性やプライバシーに関わることだけに酷に過ぎる←(理由)A心理的瑕疵は目視で把握できるものではない。(理由)B「事故物件性」といっても物質的瑕疵と異なり多種多様であり、主観的な要素も強く、かつ時の経過や所有者の変転を経て「事故物件性」が薄れていくという特殊性がある。(理由)C仲介業者は、取引物件の瑕疵の存否を調査する能力も調査のための法的な手段も確保されておらず、心理的瑕疵は過去に発生した事件や事故に関する事項であることから当該物件の現地確認・調査では瑕疵の存否が判らないものがほとんどであり「事故物件性が疑われる事情の有無を問わず」調査義務を課す根拠はない。

 

心理的瑕疵について仲介業者の説明義務違反を認めた裁判例(裁判例㉑裁判例㉒裁判例㉓(※1))

同否定した裁判例(裁判例⑳(※2)、東京地判平成18年7月27日WL、東京地判平成22年3月8日WL、東京地判平成26年8月7日WL)

※1 「売買契約締結後、残代金支払義務の履行期までに契約の効力を解除等によって争うか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実を認識した場合には、履行期までに買主等にこれを説明すべき義務を負う」旨を判示。

※2 「売買の目的物の現況が更地(青空駐車場等)であった場合、仲介業者は以前に解体された建物が事故物件かどうかまで調査する義務は負わない」旨を判示。

 

☆仲介業者から事情聴取する場合の注意点

① どのような経緯で仲介取引に関与したか

② 売主・仲介業者から現地案内を受けたか、その時の様子(空き家かどうか)、売主・仲介業者からどのような説明を受けたか

  • 買主はどのような目的で購入しようとしたのか
  • 事前に売主または仲介業者に事故や事件の有無を質問したか、これに対する売主の反応や回答(どのように説明したか、言わなかったか等)
  • 売主に物件状況等報告書の作成を依頼したか、自殺等の有無の記載は誰がどのような表現で記載したか(売主が自ら作成したのか、仲介業者が代わって作成したのであればなぜか)、売買契約締結時に記載内容を売主に直接確認したか

⑥いつ、どのような経過で、誰から事故や事件があったことを知らされたのか

⑦仲介業者が売主や売主側の仲介業者に事故物件であるかを問い合わせたときに売主は事故や事件があったことを知っていたのか

⑧事故物件であることが判明した後、売主と仲介業者は事前に事故事件であることを告げなかった理由をどのように説明したか

 

☆宅建業者の秘密保持義務との関係について

 宅建業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない(宅建業法45条=秘密保持義務)。→心理的瑕疵に関する事項は、家族の自殺や殺人事件等、売主が他者に知られたくない事項であることが多い→この秘密保持義務と宅建業者の説明義務・不実不告知等(同法35条、47条1号)との関係が問題に。⇔自殺や殺人事件があった事実が目的物の「心理的瑕疵」に該たることは確定された裁判例→仲介業者が上記のような事実を売主から打ち明けられた場合には、当該事実を伏せたまま売買することは、仮に瑕疵担保免責条項が設けられていた(中古物件等の)売買等だったとしても、「知りながら告げなかった事実」(民法572条)として、免責されないことを売主に説明し、事故物件であることを開示した上で売却することを助言すべき→売主が上記のような事実を他者に知られたくないと望んでいるからといって、仲介業者が買主にこれを告げずに売買契約を締結させることは、後日、買主が売主に対し瑕疵担責任に基づく損害賠償請求をしたり解除を主張して争ってくることが十分に予測され、却って依頼者である売主の利益を損なうことになる。⇒売主と仲介業者は、買主に対し「説明義務違反」という共通の義務違反に基づいて損害を与えることから、売主と仲介業者の各損害賠償義務は不真正連帯債務の関係に立つ。かつ、仲介業者の行為は、宅建業法47条1項に定める「故意に事実を告げず」に該当する→刑事責任の追及もあり得る!!

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  • 仲介業者の((買主等の)委託者等に対する)助言義務

その業務に関する専門性が高いことから、仲介業者は、売主または買主から売却または購入の仲介の依頼を受けた場合、仲介契約の本旨に従い、善良な管理者としての注意義務を負い、委託者が不測の損害を被らないように取引に関して適切な助言、指導をすべき義務を負う。→特に、買主が売買契約を締結するか否かの判断や意思決定に影響を及ぼす事項(=いわゆる重要事項。住宅ローン特約(※1)や買換特約(※2)も含む)に関する情報を的確に調査し、その結果を買主に提供し、これを説明するだけでなく、特には助言、指導すべき義務を負う。⇒これらの義務に違反して委託者に損害を与えた場合には、仲介業者は委託者に対して債務不履行責任または不法行為責任として損害賠償義務を負う。

 

※1 仲介業者は、買主が融資(通常は住宅ローン)を利用することを前提に売買契約を締結しようとしていることを認識し、または認識できる場合、①買主が金融機関の融資を利用するかどうか②融資を利用するのであればローン特約に関する概要を説明し、ローン特約を設ける方法があることを助言し、買主が売買契約書にローン特約を設けることを希望するか、どのようなローン特約を設けるか等ローン特約について買主の意思を確認しておく義務を負う。

 

※2 買換について、現実の取引においては、売却と購入の売買契約を同時並行で締結し、代金支払・引渡時期を同日にすることが多い。裁判例㉔の仲介業者のように、依頼者から、新物件の購入仲介の委託を受けながら、他方で旧物件の売却仲介を受託することも多い。→☆仲介業者は、成約に関心はあっても取引上のリスクに対する意識が薄く、契約当事者は取引経験がないため取引上のリスクを想定していないことが多い。→上記のように購入仲介と売却仲介を同時に受託する仲介業者は新物件の購入目的・代金の調達方法、旧物件の売却目的・代金に加えて各売買契約の進捗状況を十分に把握できる。⇒仲介業者は、旧物件を他に売却できるか否かが確実でない状況においては、依頼者に対して取引上のリスクを回避できる条項を設けるよう助言する必要がある。→例えば旧物件を売却できなかったり、手付解除等により売却代金を受領できない場合には、新物件購入のための売買契約を無条件で解除できる旨の特約(=いわゆる買換特約)を付する等、リスク回避の方法を助言・指導し、同特約の記載を確保しておくべき。→要するに、①依頼者が損害を被るおそれが大きい取引であることが②不動産取引の専門家である仲介業者にとって容易に判断できる場合に、③仲介業者が取引上のリスクを説明したり助言や指導を怠ると→仲介業者の「助言義務違反」として依頼者の被った損害を賠償すべき責任を負わされることもある、ということ(裁判例㉔)。

 

第2 具体的事例(裁判例)

①ないし㉔について、各所にて言及済み。