管理会社をめぐる問題【管理会社向けコンテンツ】

1 自主管理方式と管理委託方式

管理組合は、「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」を行う団体ですが、その業務の内容は、共用部分等の保全、保守、清掃、修繕、長期修繕計画の作成と実施、予算・決算の作成、出納などの会計業務、管理費等の徴収、滞納管理費等に対する措置、広報や渉外業務等々
(標準管理規約32条参照)です。

以上のマンション管理を行う方式には、自主管理方式と管理委託方式があります。管理会社に委託するのではなく、管理組合とそれぞれの業者が直接契約する方式を自主管理方式と呼びます(すべてを管理組合で独力実施する場合は、今ではあまりみられませんが、一般的に自力管理方式と呼びます)。

一部を管理会社に委託する場合は、管理委託方式のうち部分委託(一部委託)と呼びます。また、すべてを管理会社に委託する場合は、管理委託方式のうち全部委託と呼びます。

現在では、ほとんどのマンションで管理委託方式を採用しています。信頼関係を保ちながら管理組合の組織と運営できる管理会社との共同作業で、所有者や居住者が安心してマンション生活を送ることができるようにすることが重要です。

2 管理会社の選定と管理委託契約

(1) 管理会社の選定

管理会社は、大手だから大丈夫、安心だと即信用されるということはありません。管理会社が評価される際に、会社の規模や資本金の大きさ、管理戸数も目安にはなりますが、中堅企業でも実績があり、誠実さで信頼されている会社もあります。大手でも、当該会社で採用している管理方法にこだわり、管理組合の意見に間く耳をもたず、不評を買う会社があります。一概に大手だからよいということではありません。また、管理委託費の金額も安いほうがよいということで管理会社を選択してみたら、対応が悪かったという事例もあります。

それでは、どのようなことに着目して管理会社は選ばれるのでしょうか。国土交通省のマンション管理業登録会社であることは当然として、ここでは、簡単にポイントをご紹介します。

(2) 選定基準

(A) 管理業務への適切なアドバイス

理事会がマンション管理の素人集団であるとすれば、管理会社は頼れるマンション管理のプロであるはずです。理事会からの相談に適切に助言できる役割を期待されます。これが十分にできない会社が意外に多いのが実態なので、管理会社の選定のみならず、担当者の力量が見極められます。

(B) 収納口座が管理会社名義ではない

法的には、収納口座は、管理組合理事長名ではなく、管理会社名義でもか構いません。しかし、管理組合の大切な財産の保全のために、管理会社のいいなりにならず、すべての口座は管理組合理事長名義にすることをお勧めします。口座名義を管理会社名義とした場合、もし管理会社が倒産でもしたら、その預金が管理会社の財産なのか管理組合の財産なのかで紛争となってしまうこともあり得ます。

(C) 大規模修繕工事を自社で請け負わない

大規模修繕工事は、10年~15年に1回行う、大切な修繕工事です。多額の金額がかかり、積立金の取崩しを行います。日頃は、管理委託費を安くして、その分、大規模修繕工事を受注することで取り返そうとする管理会社が残念ながら一部存在します。大規模修繕工事の公正な相見積りを行う上でも、管理会社は大規模修繕工事を行わないことを会社理念とする姿勢が求められます。

(D) 緊急時や小さな補修修繕に対応する能力

水漏れなどの緊急時にその原因まで突き止める総合的な判断能力がある会社に存在感があります。不具合を未然に防ぐ対策や方法などを紹介できることも重要です。また、小さな補修修繕に機敏に対応する構えが大切です。

(E) 瑕疵問題で管理組合をサポート

管理組合と売主との間においては、マンション建築の瑕疵問題に関する交渉は大きな課題です。この際、管理組合側に立ち、しっかリアドバイスできるかどうかが試金石になります。売主と同じ系列の管理会社で、売買時に存在していた瑕疵を十分調査しない場合、大規模修繕工事の際に管理組合側の負担で修繕することになりかねません。そうならない配慮が管理会社には必要です。

(3) 管理委託契約書

管理会社との間でよくトラブルになるのが、管理組合が期待している業務を実施してくれないというものです。しかし、その期待が過度であり、管理会社が行う業務として管理委託契約書に明記されていないこともあります。また、管理会社が理事長からパワーハラスメントに近い嫌がらせを受けることがあります。管理組合と管理会社に適度の緊張感がありつつ、良好な関係が築かれたとき、そのマンションは「よい管理状況」といえるでしょう。その視点からも、肝となるのは、管理委託契約書であるといえます。

管理委託契約書は、少なくとも更新時期ごとに見直しましょう。マンション標準管理委託契約書には、一般的なことしか書かれていませんので、専門家と相談しながら内容を深めるようにしましょう。

なお、マンション標準管理委託契約書は、それまで標準的な管理委託契約書指針として「中高層共同住宅標準管理委託契約書」(昭和57年)があり、その後平成15年4月に「マンション標準管理委託契約書」として改訂され、また、平成22年5月1日より、財産の分別管理等に関する改正マンション管理適正化法施行規則が施行されたことで、さらに改訂され、現在に至っています。

管理会社の変更

新築マンションを購入した場合、すでに管理会社が決まっていることがほとんどです。その管理会社に問題があるときは、管理会社の変更が検討されることになります。

ただし、管理会社の変更が考えられる前に、管理組合と話し合って改善を求めることが重要ですし、管理委託契約の内容を修正して管理会社の業務内容を具体的に明確にするなどの措置も有効です。また、せっかく管理会社が変更されても以前と実態は変わらなかったなどということのないように、変更先は十分に調査検討の上、契約が締結されるべきです。管理委託費の値段の安さだけで査定するのではなく、担当者の力量や経験、会社のバックアップ体制、小回りがきくかどうかなどがポイントとされています。会社の規模や資本金の大小よりも管理組合の立場に立って運営を進める、という管理会社の姿勢の方が大切にされます。前記2(1)の管理会社が選定される際の基準を参考にしてください。

(4)管理会社の変更手続

管理会社の変更は、以下に示すとおり、管理会社の法的地位(管理業務の法的根拠)によって手続が異なってきます。新規に契約を締結する場合は、マンション管理適正化法が適用され、同法により説明会の実施などの手続が定められています。

(A) 管理委託契約を締結している場合

管理委託契約書に契約期間の定めがあれば、期間満了により終了します。さらに、委託契約には解約申入れについての規定があるのが通常ですから、その規定に基づき解約される可能性もあります。管理会社の債務不履行があるときは、契約の解除、損害賠償請求も可能です。ただし、管理会社の義務が明確に規定されていないときは、債務不履行があるかどうかが争点となります。

(B) 管理者である場合

原始規約で、管理会社を管理者と定めているケースもあります。この場合は、総会で解任される可能性があります。管理会社に不正な行為があれば、個々の区分所有者にその解任を裁判所に請求される可能性があります(区分所有法25条1項。2項)。

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