不動産が関与する相続について

不動産が遺産となっている相続問題は揉めやすいです。  

不動産は価値が高く、現預金とは違って分けることが難しい財産です。

また、「売ってお金に変えたい」と考える相続人も居住中等から「残したい」と考える相続人もいて、話し合いをまとめるのが難しいです。

不動産を「売りたい」と考えている方へ

「売りたい」と考えているが他の相続人に反対されて困っている方のために、遺産分割は「協議」(=交渉)にてまとめることができなければ、次に、家庭裁判所での「調停」を申し立てる(申し立てられる)ことになります。そしてこの調停を成立させることができなければ「審判」という同じく家裁での手続きにより裁判官が遺産分割の方法を決めることになりますが、この方法の一つとして競売をして換価することを命じる審判があります。

競売で不動産を処分して代金を分けるというものです。あくまでも誰かが不動産を取得して他の相続人が代償金を取得するという代償分割や、不動産を現物で分けるという現物分割をすることができない時に最後に採られる分割方法です。

 そして、上記審判まで至らない調停中でも、売却を希望する相続人から、この競売の審判を求めることによって、不動産を残したいと考えている相続人からは、「適切な代償金を払って不動産を取得したい」という申出がされる可能性は非常に高くなります。結局、結果的にはこの「残したい」と希望する相続人に不動産を売るのと同じようなことになります。

不動産を「残したい」と考えている方へ

不動産を残したいが、他の相続人から競売にすることまで求められて困っているという方もおられると思います。

放置すれば競売を命じる審判が出される可能性はありますが、適切に対処すれば上記のとおり代償金を支払うことと引換に不動産を取得することができ、結果、競売にはならずに不動産を残して解決することも可能です。

 ただし、特に相続人のうちの1人が取得する場合は、不動産価額の評価が問題になります。

 例えば、不動産を1人の相続人が取得し、他の相続人が代償金を取得するという代償分割で解決した場合は、代償金額を計算するために不動産価額を評価する必要があります。

この不動産の評価というのは結構、難しい問題です。

ちなみに、不動産の評価方法としては、

①公示価格(公に出されている金額の中では最も「時価」に近い)

②路線価(上記公示価格の80%程度)

③固定資産評価額(上記公示価格の70%程度)

の3つがありますが、代償金額計算のためには上記のどれも直接には使えません。

あくまでも不動産の時価で計算することになります。その場合には、上記の3つは、あくまでも参考になるにすぎません。

 不動産の時価を計算するために最適な方法は不動産鑑定士による鑑定評価額となりますが、鑑定費用の問題があったり、一方当事者が依頼した不動産鑑定士の鑑定評価額がそのまま不動産評価額として採用されにくいといった問題があることから、実際には対立当事者が不動産業者の査定書を出し合って、その中身を検討しながら当事者の合意で不動産の価額を決めるというケースが殆どです。

弁護士法人タウン&シティ法律事務所代表弁護士鈴木に不動産(相続)問題を依頼した場合

 弁護士鈴木は平成8年から24年間(令和2(2020)年現在)の弁護士経験を有しており、多数の不動産相続問題を解決してきました。

また、特に、不動産相続において問題となり易い、不動産を「売りたい」人と「残したい」人の争いというのは共有物分割請求でもよく見られますが、共有物分割請求の案件も多数取り扱ってきました。

 不動産価額の評価が問題になった案件も多数経験しており、比較的難しい案件でも事件の「落とし所」を即座に見抜き、依頼者にとってご満足のできる結果を得て好評を得ております。

 なお、相続人の方の中には下記のような悩みや希望を持たれる方もおられると思います。

「遺産が不動産しかありません。」

「遺産不動産に住んでいる相続人から不動産の売却も代償金の支払いも拒絶されました。」

「いっそのこと共有者間の共有物分割請求で不動産相続問題を解決したい」

「不動産しか遺産がない場合でも遺留分減殺請求を行使して遺留分相当分を『金銭で』得たい」

 このような場合には、遺産分割(調停・審判)及び共有物分割請求(調停・訴訟)を利用することによって、不動産相続についての上記の悩みでも解決することはできます。

遺留分と遺留分減殺請求

遺留分とは、相続財産の一定の割合を受け継ぐことを兄弟姉妹以外の相続人に保障する制度です。

 亡くなった人は遺言や生前贈与で自由に財産処分できるのが原則です。

しかし、相続には遺族の生活保障や財産形成に貢献した人に対する清算という意味もあるので、財産処分を全て亡くなった人の意思に委ねてしまうと、遺族の保護が図れないという不都合が生じます。

この亡くなった人の財産処分自由の原則を認めつつ、遺族の保護も図るために遺留分という制度を定めて、相続財産の一定割合を兄弟姉妹以外の相続人に保障することにしたものです。

 ただし相続財産の一定割合の保障といっても、何もしないのに当然に保障されるというものではありません。

生前贈与や遺言によって法律で保障された一定割合すら確保できない状態になった時に、一定割合を確保されなかった相続人は、生前贈与や遺言で財産を取得した者(=遺留分の侵害者)に対して、法律で定められた一定割合の範囲で財産の取り戻しを請求できるという形で保障されています。この財産の取戻しを請求することを遺留分侵害額の請求といいます。

 例えば、被相続人が遺言や生前贈与で、全財産を特定の子供だけに譲るというものであった場合に、遺言や生前贈与で財産を譲り受けなかった他の子供は遺留分の範囲で財産の取戻しを請求できます。なお、この取戻し請求は一定の期間内(※)にすることを求められています。

各相続人の遺留分として定められているのは、以下の通りです。

① 法定相続人が両親祖父母(直系尊属)のみの場合:遺産の3分の1

② 上記以外の場合:遺産の2分の1

※ただし兄弟姉妹には遺留分は認められません

※同順位の相続人が複数いる場合は人数に応じて頭割りとなります。

・遺言書が出てきたが、自分の遺留分すらもらえない(=侵害された)内容になっているがどうしたらいいのか?

・遺留分侵害額の請求を行いたいが、誰に対して、どのような請求をしたらよいのか?

このような場合は、是非、弁護士にご相談ください。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
事務所概要
弁護士法人 タウン&シティ法律事務所
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