底地・借地の処分にかかわる法律問題

第0 はじめに

1 借地関係解消の必要性

(1)地主にとって
ア 地代が安い。先代の時のまま地代が上がっていないということがあり,また,賃料増額になかなか借地人も応じず,地主からもその機会がないままずるずると低額の地代しかもらっていないということが多い
イ 今後も地代を増額することは難しい(あくまで交渉によるのが原則であり,長年の付き合いもあり,言い辛い)
ウ 更新のときが一番賃料増額を交渉しやすいが,多くは上げられない。そこで,更新料を高値で請求すると,そもそも更新料は法律上認められているものではなく,法的に支払う義務なんてない,などと突っぱねられてしまうこともある。
エ 建物が老朽化して,やっとそろそろ賃貸借契約も終わりかと思っていたところ,借地人から建物の増改築を申し入れられ,断っても裁判所が許可してしまうことになる。
オ 土地の土砂崩れ,地盤沈下など地主の負担で修繕をしなければならず,地代をもらっていても結局収益が上がらず,貸しているだけ損ということにもなりかねない。そこで,底地だけ売却しようとしても,賃借人のいる土地は需要がなく(よほど収益性があれば別だがまれであろう)更地価格の1/10ということもある。

(2)借地人にとって
ア 建物を建て替えたくても増改築禁止特約があると増改築の承諾料等を積んで承諾してもらうことになる。仮に裁判所に代諾許可の申し立てをしても煩わしいし,承諾料を代わりに払えと命じられることがほとんど。
イ 更新の際に更新料を要求される。
ウ 建物を第三者に譲渡しようとしても,地主の承諾がないと原則として譲渡できない。また,裁判所に譲渡承諾の申立をしても煩わしいし,承諾料を代わりに払えと命じられることもある。
エ 借地権付きの物件では,第三者に売却するにも買い手が見つかりにくく,安くでしか建物を売却できない。

(3)小括
このように,借地関係が継続するよりは早くその関係を解消し,土地を自己のものとして処分したり,現金化する道を選ぶ方が多い。
しかし,借地は生活の基盤をなすものであり,地主と借地人では利益が相反することから,簡単には解消も難しい。

結局は,金銭面での交渉となる。
交渉をうまく運ぶためには,借地関係を解消させるにはどのような方法があるか,その時にどのような法律関係が発生しどのようなメリットデメリットがあるか,について相手に説明をいかにうまくできるかにかかっているといっても過言ではない。
 
特に法律関係に疎い当事者同士ではまとまる話もまとまらないことになりかねない。
そこで,どのような方法があるのか,その際どのような法律関係が発生するのかについて,あらかじめ理解することが必要である。
今回のセミナーでは少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
 
2 整理の方法
(1)地主にとって
ア 賃借権の終了を主張する(第1,第1-2)
イ 底地を第三者に売却する(第2,第3)
ウ 底地を借地人に買い取ってもらう(第2)

(2)借地人にとって
ア 借地を第三者に売却してしまう(第2,第4)
イ 借地を地主に買い取ってもらう(第2)

(3)地主と借地人にとって
いっぺんに第三者に買い取ってもらう(第5)

(4)借地を分割する等価交換
借地を分筆して一部の底地を借地人に譲渡し,他方の借地権を地主に譲渡する方法
(5)借地を分割しない等価交換
ア 地主が別の土地を借地人に譲渡する代わりに借地権を戻してもらう
イ 地主が別の土地を借地人に貸す代わりに借地権を戻してもらう
 
 

第1 賃借権の終了を主張する

1 そもそも賃借権が成立していないとの主張

(1)具体例
その1 親兄弟間で,長年にわたりごくごくわずかの地代しか払ってこなかったような場合でも(地代月額500円等),借地権といえるのか。使用貸借しか成立していないのではないか。
その2 また,社長が親切で自分の土地を使って家を建ててよいと言われ,そこに建物を建てて住んでいる従業員が,相場より安い給料しかもらっていなかった場合,労働力が対価としての性質を持ち賃貸借が成立するのではないか。
その3 固定資産税都市系計画税などの必要経費だけを払っている場合でも,借地権が設定されたと言えるのか。

(2)結論
ポイントは,両者の間で使用収益の合意があるか,そして使用収益の対価を決めていたかいなか,である。
●  その1では,どんなに低額だとしても使用収益の対価として当事者が合意している以上,賃貸借であり,使用貸借ではない。土地を借りている方は借地人としての法的な保護を受けることになる。
こう考えると,親切で安く貸していた方に酷とも考えられるが,その不利益は法的に賃料増額請求などを怠ってきた貸主が負うべきである。
 その2では,労働力がどの程度の金額に換算されるのか,実際に金額を提示して使用収益の対価としていたわけではないので,借地権は成立しない。すなわち,黙示の賃貸借契約が成立していたという主張は認められない。
この場合,黙示の使用貸借契約が成立していると考えるべきであろう。
 その3では,たとえその額がその1よりも高い場合であっても,賃料の支払とはならない。
それは土地の必要費であり,それを借主が支払っているだけであり,まさに使用貸借に他ならない(使用貸借は通常の必要費を借主が支払うと法律に定められている)。やはり,使用収益の対価を定めたとは言えないので借地権は発生しない。
 
以上より,金額の多寡ではなく,合意の内容が大事だということになる。

借地だと思っていたが,合意の内容を吟味したらそもそも借地権自体が成立していないということもありうる。特に古い契約の場合は賃貸借契約書自体がない場合も多く,安易に借地人といわれるものから「今後何かあるとも思えないが,念のため」と言われ賃貸借契約書なるものを持ってきたときは本当に賃貸借なのかと疑ってかかることは必要と思われる。

賃借権ではなく使用貸借であると主張し,使用貸借の終了を根拠に立退き請求をすることも考え得るのである。
 

2 建物の朽廃による土地賃貸借の終了の主張

(1)具体例
その1 祖父の代の契約で「木造の建物,期間は20年」とされた。その後,更新の合意もせずにその建物に50年住んでいる。建物が老朽化で朽廃状態となった。賃貸借は終了するか。
その2 祖父の代の契約で「木造の建物,期間は20年」とされた。その後,更新の合意をして20年と合意した。さらに二回目も20年と合意した。その建物に50年住んでいる。建物が老朽化で朽廃状態となった。賃貸借は終了するか。
その3 祖父の代の契約で「木造の建物」とされた。その後,更新の合意をしたが期間を定めなかった。その建物に50年住んでいる。建物が老朽化で朽廃状態となった。賃貸借は終了するか。

(2)結論
その1は終了する。
その2は終了しない。
その3は終了する。
 
結局,朽廃があれば必ず終了するのではなく,期間の合意がされていない場合の期間中に朽廃すると終了する。期間の合意がされてしまっていると,その期間中に朽廃しても終了しない。

(3)注意点
結局,地主の側からすると,期間を定めて契約(更新契約)を締結するとその期間の朽廃の終了を主張できなくなってしまう。

そこで,朽廃が近いと思ったら敢えて更新の合意をせずに法定更新にするとか,更新の合意だけして,期間を定めないなどの方策を取る方がよい。
 

3 期間満了による土地賃貸借の終了の主張

(1)期間についての規定のおさらい
ア 旧借地法
●堅固60年 非堅固30年
(但し合意によって堅固30年 非堅固20年まで短縮できる)
●法定更新は堅固30年 非堅固20年
(ちなみにそれより短い合意は合意自体無いものとされる)
イ 借地借家法
●30年
●20年(一回目の更新)→10年(二回目の更新)

(2)建物がない場合
ア 具体例
非堅固建物という契約で30年の期間で賃貸借契約を結んだが,25年後に建物を取り壊し,いずれ建物を建てようとしてそれまでの間,資材置き場として利用していた。
30年が過ぎて期間満了を地主は主張し異議を述べた。
地主に正当事由なく借地契約を終了させることが出来るか。それとも正当事由がない以上法定更新がされてしまうのか。
イ 結論
法定更新の要件
①期間満了時に建物が存在すること
②土地所有者が遅滞なく異議を述べないこと
③土地所有者に自ら土地を使用することを必要とする場合など正当事由がないこと
したがって,建物がない以上法定更新は認められない。
借地権は消滅するので地主は立退きの要求ができる。
もちろん正当事由が必要ないので,立退き料も払う必要がない。
ウ 例外
借地人が,建物が火災で焼失したので,再築をしようとしていたところ,地主が建築禁止の通告をしたり土地明け渡しの調停を申し立てたりしている最中に期間が満了してしまった場合,確かに建物がない。
しかし,地主により再築が妨害されていたような場合にまで更新請求の権利がないとすることは信義に反する。
従って,このような場合には例外的に法定更新が肯定されうる(最判昭和52年3月15日)

(3)建物がある場合
ア 建替えの建物がある場合
(ア)地主の承諾のある建物がある場合
非堅固の建物の借地で30年の合意期間の定めがある場合,25年目で建物を取り壊し新しい非堅固建物を再築した。
地主が再築に承諾していた場合,いつ賃貸借期間が終わるのか。あと5年しかいられないのか。
答え 取り壊してから堅固30年,非堅固20年借地権は存続する(旧借地法7条)。
要件 ①借地権の存続期間満了前に建物が滅失したこと
②借地権の残存期間を超えて存続する建物を建築
③建築について土地所有者が遅滞なく異議を述べないこと
(イ)地主の承諾のない建物がある場合
結論  堅固だろうが非堅固だろうが,再築をされたら即刻異議を出せば,従来の期間で借地契約は終了する。遅滞なく異議を出さないと(ア)と同じく承諾をしたのと同じになってしまう。
遅滞なく異議を出しておいた場合,従来の期間満了で賃貸借契約が終了したとしても,建物買取請求されることはある。しかし,建物付きで土地を売却できるのだから費用は回収ができるので,賃貸借を修了させるメリットの方が大きいはず。

また,増改築禁止特約を締結しておけば債務不履行で解除を認められる場合がある。もっとも信頼関係が破壊したと言えないと解除は認められない。

ただ,この場合も異議を出しておけば従来の期間満了で賃貸借契約は終了すると考える。
また,無断増改築の場合,解除が認められなくても無断で増改築したことには変わりがなく,本来であれば朽廃で消滅したはずの期間満了で賃貸借契約の終了を主張しうると考える。

結局,地主としては取りうるすべての方策を尽くすべきである。

そこで,むやみに承諾をしない。改築をされたら書面ですぐに異議を述べておく。契約書に増改築禁止特約の条項を必ず入れる。増改築禁止特約違反があれば解除を主張しておく(信頼関係破壊が認められなくとも和解金を支払って賃貸借契約を修了させられることが多い。結果として,割安で借地人を追い出し建物付きで売却できる可能性が出てくる)。解除が認められなくても異議を出しておけば従来の期間満了で消滅請求しうるので異議を出しておく。また朽廃の時期を主張して終了させることも可能性がある。

イ 大修繕の建物がある場合
大修繕を行った建物があることで,建物の耐用年数が著しく延長された場合も,旧借地法7条が適用されるか。
争いがあるが,裁判上も適用を肯定したものがある。
そうであれば,大修繕(そもそも何が大修繕か不明だが)があった場合,早急に異議を出しておくに越したことはない。
例えば,増改築に当たるか否か争いになっていた事件で,増改築に当たらないとして債務不履行ではないと主張する借地人がいたとする。地主側としては,もちろん増改築禁止特約違反で解除を主張するが,仮に解除が認められなくても,無断増改築であることから借地法7条の適用があることを視野に入れ異議を出しておき,従来の建物であったなら朽廃で消滅していた時期での終了を主張することも考えられる。

ウ 建替えや大修繕の建物でない,当初からの建物がある場合
(ア)要件
前述した法定更新の要件
①期間満了時に建物が存在すること
②土地所有者が遅滞なく異議を述べないこと
③土地所有者に自ら土地を使用することを必要とする場合など正当事由がないこと
→遅滞なく異議を出して(ここで注意すべきは建物の賃貸借と異なり事前の異議ではダメ。満了後遅滞なく異議を出す),かつ正当事由があれば,たとえ建物があっても終了を主張できる。

(イ)問題点
正当事由とは何か?
①地主側の土地の利用の必要性
例えば,他に住むところがないのか,親の介護のためにその土地を利用するしかないのか
②借地に関する従前の事情
例えば,きちんと地代を支払ってきたか,その土地でどのくらい生活をしてきたか
③土地の利用状況
どのような建物を建て,どのように利用してきたか,借地人自身が利用しているのか
④地主の財産上の給付の申し出
いわゆる立退料をいくら出すのか
を総合的に判断される。

例えば,地主側が息子夫婦に建物を建てさせてやりたいという必要性がある,一方で借地人もその土地で建物を建てて生活している場合はどうなるか。

答え 借地人がその土地で生活している以上,よっぽどの地主側の事情(ほかに住むところがない,介護のために必要だ,地代について支払がないことが多い,立退料を一定程度出す)がない限り正当事由は認められない。

ここで,立退き料の相場っていくらなのと聞かれることがある。
しかし,立退き料は正当事由の補完の意味合いがあり,他の正当事由が大きければ立退き料は少ないという具合に,金額は区々である。
 

第1-2 賃借権の終了は主張できないが効果的な方法(更新料の請求)

→更新料を請求することで地主としては有利に終了させうる?
借地人としては更新料を払っておいた方が後々得?
 

1 そもそも更新料って?

借地期間が終了した場合に,借地契約を更新するにあたって借地人から地主に支払われる金銭をいう
更新料は法的に規定がない。したがって,原則として契約書に更新料の合意の文言がない以上は支払う義務が生じるものではない。

例外的に商慣習ないし事実たる慣習から更新料の支払いを法的に認めた判例がないわけではないが,慣習
を根拠に裁判所が支払いを命ずることはまれである。
したがって,更新料を地主が請求した場合,借地人が入れ知恵で「更新料は法的には支払う義務はないはずだ」と言われることがあるが,それは正しいのである。
 

2 更新料を請求する権利が法的にある場合

契約書に更新料の額を定めたうえで記載がされていることが必要。

その場合は地主としては必ず更新料を請求すること。仮に不払いがあればそれだけでも信頼関係破壊と評価され解除が認められうるし,そこまでは認められなくても更新料不払いが将来一つの原因として,他の債務不履行と合わせ技で信頼関係破壊と認められうる。

そう考えると,法的に信義則違反にならない程度に高額の更新料を前もって決めて契約書を作成しておくとよいかも。
 

3 更新料を請求する権利が法的に無い場合

それでも更新料を要求しておくこと。相手が払わなければ合意更新をしないと主張する。
そうすると,
(1)法定更新になるが朽廃の規定により借地関係が終了したと主張できる。仮に建て替えなどしていたら出来上がるのを待って即座に異議を出す。また,無断増改築の解除の請求をする。その際に更新料も請求をしても払わなかったことを信頼関係破壊の一事由として主張する。建替え前に増改築の承諾を求めてきても応じない。すると裁判で代諾を申し立ててくるであろうが,更新料を請求しても払わないことが承諾料の判断で地主側に有利な事情として判断されうる。

(2)地代の値上げを要求する(賃料増額請求をする)
合法的に賃料の値上げを請求できる
(賃料の値上げは地主としてもそうそう言い出しにくいが,更新料を払わず法定更新になった際にはいつでも値上げを言い出すことが出来るので,圧力をかけやすい。合意更新の際には合意書で定められた賃料をそう簡単に増額請求できないものであり,結局長期間漫然と賃借関係が続くことを許すことになる)
裁判の際に更新料を支払ってくれなかった(受け取ってない)ことを事情の一つとして使え地主に有利に判断されうる

(3)建物増改築の承諾をしない
裁判の際に更新料を支払ってくれなかった(受け取ってない)ことで借地人に圧力を加えることが出来る。もちろん借地人としては裁判所に代諾の申し立てをすることが出来るが,弁護士を雇ったり自分でやるのも煩雑であることから,立退きに応じるきっかけとなる可能性が出てくる。

また,仮に裁判所に申し立てて増改築の許可が出せるとしても,借地人が銀行融資を得る為の地主の承諾書が得られないことになるの借地人としては増改築をあきらめ立退きに応じる可能性が出てくる。
 
 
※地主の承諾書について
借地人が借地上の建物を新築する際に,通常借り入れをするが,債権者は建物に抵当権を付ける。その際に地主の承諾書の提出を借地権者に求めることが多い。借地人としてはその承諾書がないと銀行から融資が得られないのであるから,地主の協力が必要なのである。

その承諾書には
①借地権が抵当権の目的になることを承諾する
②銀行が抵当権を実行した場合は借地権も競落人に移転するが,その借地権の譲渡につきあらかじめ承諾する
③借地人が地代の不払いをしていれば地主が銀行に連絡をすることを承諾する
④借地人の地代不払いにより賃貸借契約を解除しようとするときは予め銀行に連絡をすることを承諾する
の承諾がある。

このうち④は特に大事で,借地を合法的に解除されてしまっては,抵当権の目的である借地権がなくなってしまい銀行にとっては担保目的物が既存してしまうことになる。
そこで,銀行は実務上,借地人に融資をして抵当権を建物に設定するには地主の承諾書を要求している。
 
また,仮に増改築の許可が出て,しかも新しい建物の建築資金を,当該建物に抵当権もつけずに調達できたとしても,借地権の存続期間は地主の承諾のない限り,借地法7条の適用は無く(堅固30年非堅固20年とはならない),従来の期間満了で終了時期が来て,地主は異議を出せる。
 
※増改築許可の裁判と地主の異議について
借地法7条は期間満了前にその期間を超えるような建物を建てた場合,地主が異議を出せば期間満了で賃貸借は終了すると規定する。

では,地主が増改築を承諾せずに借地人が裁判所の代諾許可を取った場合でも地主は異議を出せるか。
この点,せっかく裁判所が代諾許可を出したのに従来の期間で賃貸借が終了しては意味がないともいえる。しかし,増改築禁止特約がなければ増改築は自由であり,その増改築に対抗して地主に異議権が認められている(借地法7条)のに,増改築禁止特約で従来の期間を維持しようとした場合に逆に異議権が認められなくなるのは不合理である。

そこで,裁判所の代諾許可があっても地主の異議権は失われないと考えるのが有力である。
そうだとすると,地主はたとえ裁判所の代諾許可があって増改築がなされても,ひるまず異議を出しておくべきである。
 
(4)借地譲渡承諾,底地買取の際にも更新料を請求しても払ってくれなかったことを圧力として有利な事情として使える
 

4 更新料の相場

更地価格の3%から5%といわれる。但し,地代や借地期間,地代改定の経緯など様々な要素から判断されるので一概には言えない。

重要なのは相場というより,借地関係を修了させたいのか,円満に借地関係を続けたいのかである。当然,借地関係を修了させるには借地人が嫌がる額を請求することが必要になる。
 

第1-3 賃借権の終了は主張できないが効果的な方法(賃料増額請求)

合意書で賃料が定められている場合はなかなか請求しても認められないが,例えば法定更新がなされ従前の条件での地代しか支払われていない場合などには,いつでも賃料増額請求をしてもおかしくない。
しかも増額を求めての訴訟であれば,合意がされているものを変更することは難しいが,法定更新後の増額請求は変更されやすい。

いずれにしても,借地関係を修了させたいのであれば法定更新後の賃料増額請求という請求しやすい時期に,多額の請求をしてみるのも手である。うるさい地主であれば居心地もよくはないはずで,立退きに前向きに応じてくれるかもしれない。

賃貸借契約を終了させることは,それだけ労力のいることなのである。
請求すべきところは請求し,うるさい地主であるぐらいでちょうどいいのである。と思う。
 
※賃料の相場
当然不動産鑑定士の評価によるのが筋であろうが,裁判をするとなると鑑定料だけで50万前後かかるものである。

そこまでして,賃料増額請求訴訟を提起するかということは頭の隅に置いておくべきである。
訴訟を提起せずとも,とりあえずは借地人に交渉を持ちかけるべきである。
賃料は固定資産税都市計画税の3から4倍程度と言われている。

 

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投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
事務所概要
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