建物の一室で事業を行っていた依頼者が明渡を求められた事案で、調停・訴訟の中で立退料を求め、明渡の猶予期間と立退料の支払が認められた事例

ご相談内容

依頼者の野口さん(仮名)は、10年以上にわたりビルの一室を借りて会社を経営してきましたが、賃貸人である会社から建物が老朽化していることを理由に明け渡しを求められ、当事務所に相談に来ました。

 

野口さんには最終的には明渡すことはやむを得ないとしても、急には立ち退くことは出来ないとの、かつ立退料を支払って欲しいとの要望がありました。
 

解決内容

私たちに依頼があった時点で既に調停が申し立てられておりましたので、調停の中で明渡に応じる前提として代替の不動産を探してもらうことと、立退料の提示を求めました。

 

しかし、調停の中では不動産の紹介はあったものの、野口さんが今後新たに会社を移転する場所として適切と思うような物件はなく、立退料についても提案はありませんでした。結局、調停は不調となり、しばらくして賃貸人より訴訟が提起されましたので、引き続き私たちが受任しました。

 

訴訟の中では賃貸人も立退料を提案してきましたが、不十分な金額だったので、私たちは立退料算出のための主張を行いました。立退料の算出にあたって、賃貸物件の価値(借家権価格)、移転した場合の営業上の損失額、実際に移転した場合に掛かる費用等について客観的な資料を提出するなどして具体的に主張しました。
最終的には、双方が主張を尽くし、裁判官の意見も考慮した上で約1500万円の立退料が認められました
この金額は訴訟の当初賃貸人が提案してきた金額の約3倍の金額でした。また、明渡時期も和解成立から半年後に設定されました。
 
建物明渡を求められた場合、賃借人(特に借家人)の側は自分にどのような権利があるのか分からないまま不当に安い立退料で立退いてしまうケースもあるかと思います。
 
しかし、任意に立退いてしまうことにより、本来獲得出来るはずの立退料が得られない場合もあります。また、本件では私たちが受任してから明渡までに2年間掛かっており、結果的に明渡までの猶予期間が得られたことになります。
きちんと家賃を支払っている限りは、賃借人には借りている不動産を使用収益する権利が認められているので、たとえ最終的には明渡しても構わないと考えていたとしても簡単には応じないことにより、明渡までの猶予期間や比較的高額の立退料を得ることも出来ます。
 
まずは、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
事務所概要
弁護士法人 タウン&シティ法律事務所
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