総会の決議方法

総会の決議方法

議決権と定足数

定足数とは

1. 総会が成立するための要件を満たしているかどうか

2. 標準管理規約では、議決権総数の過半数を有する組合員の出席が必要とされています     (標準管 理規約47条1項)。この出席者数には、委任状や議決権行使書面を提出した組合員も含まれます。

3.ちなみに区分所有法上は総会の定足数(議事を行いその意思決定をするために必要な最小限度の出席者数)について定めはありません。

議決権とは

1.議決権、総会(集会)において決議に参加できる権利。

2.議決権を有するのは、区分所有者。

3.1人の区分所有者が必ず少なくとも1個の議決権を有することを前提に(区分所有法39条1項)、1戸の住居を数人で共有する場合は、共有者全員で1個の議決権を有するものと考えて議決権を行使する者1人を決めなければなりません(同法40条)。

4.議決権の割合は、各自の共用部分の持分(各自が有する専有部分の床面積の割合)(区分所有法14条)によるのが原則ですが、規約により、別段の定めをすることも可能(区分所有法38条、14条1項)。

5.共用部分の持分の割合が小数点以下の差であるときは、採決の計算の便宜を考えて、住戸1戸あたり1戸の議決権と定めるような、合理的な規定が多いようです。規約で定める場合には、区分所有者間の利害の衡平を図らなくてはなりません(同法30条3項)。議決権の割合について共有持分の割合(専有部分の床面積割合)と異なる基準を採用する場合も衡平の原則に従わなくてはなりません。

6.参考

平成28年改正の標準管理規約のコメントでは、階数(眺望、日照等)や方角(日照等)等による専有部分の価値の違いに基づいて議決権の割合を定めることも考えられるとされました(標準管理規約46条関係コメント③)。タワーマンションなどの高層のマンション等を念頭においているのでしよう。他方で、マンションの新たな管理ルールに関する検討会の議論でも改正コメントにも、管理費等の負担割合について、専有部分の価値に応じて重くするとの言及はありません。専有部分の「価値」に応じて議決権の割合を決めるとする規約は、衡平の原則上問題が出そうです。そもそも、専有部分の価値を誰がどのような基準で決めるのかは大変難しい問題だからです。

議決権の行使方法-書面・代理・電磁的方法

1.組合員は、原則として自ら総会に出席して議決権を行使します。

2.例外的に、代理人に委任して議決権を行使する方法、議決権行使書面を提出して行使する方法があります(区分所有法39条2項)。また、管理規約または総会の決議により、電磁的方法によって議決権を行使することもできます(同条3項)。この電磁的方法とは、電子メールの送信やWebサイトヘの書き込み、CDROMなどメディア媒体の交付などが考えられますが、議決権を有する組合員本人による議決権行使であることの確認につき、慎重に行う必要があるでしょう。具体的には、パスワードの設定や電子署名の措置などが考えられます。さらに、総会を開催せずに決議を行う方法も認められています。組合貝全員の承諾がある場合に採用できる方法で、書面または電磁的方法による決議(書面決議。区分所有法45条1項、標準管理規約50条1項)と、一定の事項について、組合員全員の書面または電磁的方法による合意(全員一致)が成立したことで書面決議があったものとする場合(区分所有法45条2項、標準管理規約50条2項)です。

3.参考

平成28年の標準管理規約改正で、代理人の資格を、組合員の配偶者(事実婚を含む)または1親等の親族か、組合員と同居する親族、その他の組合員に制限しています。規約で代理人の資格を制限することは許されますが、1親等の親族に限定する合理的な理由はないと思われます。

決議事項と決議要件

1 総会の決議要件には、普通決議と特別決議の2種類があります。このうち、特別決議が必要とされる事項については、すべて総会の決議によって定められなければならず、これをたとえば規約によって定めるとすることはできません。

2 普通決議事項については、規約により総会決議以外の方法によって決するものとすることができる事項があります(区分所有法39条1項。〔表1〕※1)。

表1 区分所有法に定める普通決議事項と特別決議事項

種類 必要定数 決議事項 備考
普通決議

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

規約に別段の定めのない限り過半数 (変更および保存行為を除く)共用部分の管理(18条1項本文) 1
(変更および保存行為を除く)区分所有者の共有に属する敷地または附属施設の管理(21条、18条1項本文) 1
管理者の選任・解任(25条1項) 1
管理者に対する訴訟追行権の授権(26条4項) 3
管理者がいない場合の規約、議事録、書面・電磁的方法によるけつぎに係る書面・電磁的記録の保管者の選任(33条1項但し書、42条5項、45条4項) 3
議長の選任(41条) 1
管理組合法人の理事および監事の選任・解任(49条8項、50条4項、25条1項) 1
理事が数人ある場合の代表理事の選任または共同代表の定め(49条5項) 3
管理組合法人の事務(52条1項本文) 2
5分の4 共同利益に反する行為の禁止等の請求の訴訟提起(57条2条・4項) 4
4分の3 区分所有法57条ないし60条の訴訟追行につき、管理者等に対する訴訟追行権の授権(57条3項・4項、58条4項、59条2項、60条2項) 4
団地内の建物の建替え承認(69条1項・7項) 1
5分の4 小規模一部滅失の場合の復旧(61条3項) 7
1 管理規約に定めるところにより、総会決議以外の方法(たとえば理事会決議)で決めることができる。
2 特別決議にて決議すべき事項及び区分所有法57条2項に定める事項以外の事項については、管理規約に定めるところにより、総会決意以外の方法(たとえば理事会決議)で決めることができる。
3 管理規約自体により定めることも可能である。
4 必ず集会の快適によらなければならない。

議事録の作成

1 総会が終了したら議事録を作成します。議事録は総会の議長が作成しなければならず(区分所有法42条1項)、議事の経過の要領とその結果を記載します(同条2項)。そのうえで、議長および出席した組合員のうち2名が署名押印します(同条3項)。これは、議事録に記載された内容の正確性を担保するためです。標準管理規約にも同様の内容が定められています(標準管理規約49条)。

2 総会で決議された内容は、区分所有者全員がこれに従わなくてはなりません。議事録の重要性に鑑み、議長が議事録の作成を懈怠したり、虚偽の内容を記録したりした場合には、20万円以下の過料に処せられます(区分所有法71条3号)。また、議事録を保管しなかった場合も20万円以下の過料に処せられます(同法71条1号、42条5項、33条1項)。

総会決議と「特別の影響」を受ける者の承諾

区分所有法31条1項の趣旨

区分所有法31条1項は、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特段の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と規定しています。
区分所有法は、規約において区分所有建物の管理や使用に関する区分所有者相互間の事項について定めることとしており(区分所有法30条1項)、その範囲は区分所有建物の管理全般に及ぶ広いものです。そして、このように広い規約について、多数決で少数者の権利が制限されたり、否定されたりすることになることから、それによって「特別の影響」が及ぶこととなる者について、不当な権利の侵害とならないように、規約の設定等においてその者の承諾を必要とすることで区分所有者間の利益の調整を図ったものです。
区分所有法31条1頂では、規約の設定・変更・廃止の場合について定められていますが、総会決議によって一部の区分所有者の権利に特別の影響が及ぶ場合も上記の趣旨は同様に妥当するものですから、この場合にも区分所有法31条1頂が類推適用されると考えられています(最高裁平成10年10月30日判決(民集52巻7号1604頁))。

判断の仕組み

1 このような規定の趣旨・目的から、区分所有法31条1項にいう「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合」をいうとされてぃます(前掲・最高裁平成10年10月30日判決)。
規約改正の内容が「一部の」区分所有者の権利に影響を及ぼす場合に、当該区分所有者の承諾を要するとされていることから、その影響が区分所有者全体に一律に及ぶ場合には個々の区分所有者の承諾は必要でないとされています。この基準で決着がつけられたとされている裁判で問題になった事案を分析すると、その裁判所の判断においては、先に述べた比較衡量を経た実態に応じた判断によっていると考えるべきものもあり、結局はその事案ごとに規約改正の必要性や合理性、個々の区分所有者の不利益の程度や内容、従前からの経緯など、事案に即し個別的・具体的な判断がなされているといえます。
すなわち、

①規約の設定、変更などの必要性および合理性という区分所有者全体の利益と、

②その規約の設定、変更などによって当該一部の区分所有者が被る不利益とを比較したうえで、

③当該マンションに即した具体的な区分所有関係の実態に照らして、一部区分所有者の受ける不利益が受忍限度を超えるものといえるかどうか

が判断されるのです。単純に多数者の利益(決議等に賛成した側)と少数者の不利益(決議等に反対した側)とを比較するだけで結論を導くのではないということです。これらの比較衡量をしたうえで、さらに当該マンションにおいて従前とられてきた措置の内容・経緯、問題となる決議等に至った背景、理由、代替措置の有無やその内容といった具体的な区分所有関係の実態・内容を詳細に検討したうえで、「特別の影響」といえるかどうかが判断されます。

 

裁判例の紹介

専用使用権の変更・廃止

専用使用権の使用料の増額については、増額の必要性および合理性が認められ、かつ増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当と認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきであり、「特別の影響」に該当しないとされています(前掲。最高裁平成10年10月30日判決)。その判断においては、増額された使用料が社会通念上相当なものかどうか、また、社会通念上相当とされる増額幅はどのくらいか、については、分譲当初の対価やマンション本体価格との関係、近隣相場との関係、使用期間、対象となる専用使用部分の維持管理費用など、諸般の事情を総合的に考慮するとされています。
一方、専用使用部分を消滅させる決議については、専用使用権者の権利自体を奪うものであることから、一般的に「特別の影響」があるとされる傾向にあり、有償化決議については、有償化の必要性や合理性が認められ、設定使用料が社会通念上相当であるとされる場合には、受忍限度内とされる傾向にあります(最高裁平成10年11月20日判決(判タ991号121頁)、東京高裁平成11年7月27日判決(判タ1037号168頁)など)。

専有部分の使用目的(用途)の制限など

例えば、規約上、専用使用部分の用途について店舗などの事業用途も認めていた(複合用途型)場合に、住居専用の用途制限に規約を変更しようとする場合、店舗の営業を認める時間について従前よりも短くする規定に規約変更する場合などが考えられます。
このような規約変更では、規制されることとなる行為の内容や性質、当該マンションにおける従来の専有部分の利用目的や利用実態、規制(規約変更)により一部の区分所有者が受ける不利益の具体的な内容や程度、他の区分所有者が受ける利益の具体的な内容や程度といった諸般の事情を総合的に考慮して「特別の影響」の有無が判断されています。
具体的には、

①動物の飼育を一律に禁止する内容の規約変更について、盲導犬などの動物の存在が飼い主の日常生活そのものに不可欠な意味を有する場合はともかく、一般的なペットの飼育がそのような意味はないことから「特別な影響」を受ける場合にあたらないとされた事案(東京高裁平成6年8月4日判決判タ855号301項))や、

②店舗部分の営業時間を午前10時から午後10時までに制限した総会決議について、当該マンションの構造(4階から12階までが居住用であり住民の生活環境維持の要請が強い)や飲食店も含めた通常の店舗営業形態からしてこの制限に合理性があるなどとして、「特別の影響」を及ぼすことを否定した事案(東京高裁平成15年12月4日判決(判時1860号66頁))、

③いわゆるリゾート地に存在するマンションについて、不定期に保養施設として使用する範囲を超えて使用することを原則的に禁止する規約改正がなされたことについて、所有者がその所有物を本来の用方に従って使用収益することは所有権の本質的内容であることを指摘し、当該規約改正以前から生活の本拠として居住してきた区分所有者に「特別の影響」を及ぽすものとした事案(東京高裁平成21年9月24日判決(判タ1319号145頁))などがあります。

専有部分の共有部分への変更

専有部分という区分所有者自身の所有権の対象物について共有部分に変更するという内容であることから、一般的には、「特別の影響」を及ぼすものとされる傾向です。ただし、決議等の必要性や合理性、その決議の理由、区分所有者が受ける不利益の内容や程度などに照らして受忍限度内とされる場合には「特別の影響」が否定される場合もあります。
事案としては、

①旧規約においてはバルコニーを専有部分としていたものを共用部分とする規約改正について、建物の安全確保、美観の維持・向上の観点からの必要性・合理性があり、他方で、共用部分とされても専用使用権の設定により区分所有者が受ける不利益が格別のものとはならないことをもつて、「特別の影響」なしとした事案(東京地裁昭和61年9月25日判決(判時1240号88頁))がある一方、

②バルコニーや階段部分について規約共用部分とした規約改正について、バルコニーや階段部分を専有部分とすることが必ずしも当該マンションの美観の維持・向上を害するといえないのに対し、共用部分とすることによる区分所有者の不利益は小さくないとして「特別の影響」を及ぼすとした事案(東京地裁平成19年7月26日判決)もあります。

管理費等の費用負担の変更

規約変更等によりー部の区分所有者に不利益が生じる場合ではあっても、その変更に必要性・合理性が認められ、かつ、不利益の程度が軽微なものであったり、改正前の状況こそが不合理なものであると認められたりする場合には、その不利益は受忍すべきものとして「特別な影響」が否定される傾向です。
事案としては、

①一部の区分所有者が負担するとされていた管理費が他の区分所有者の負担と比較して著しく低廉であった場合にこれを是正する規約改正について、専有部分の面積に応じた金額を設定することに合理性があることや従前の金額設定が不合理であることを指摘して「特別の影響」を否定したもの(東京地裁平成5年3月30日判決(判時1461号72頁))や、

②非居住組合員について、管理費に加えて住民活動協力金という名目で新たに経済的に負担すべきという内容の規約改正につき、当該マンションの規模の大きさからして保守管理や住環境維持に管理組合活動や組合員の協力が不可欠である一方で、非居住組合員の専有部分が多数に及んでおり、これらの者が組合活動の負担なく良好な環境の維持という利益を享受する関係となっていること、規約変更により非居住組合員が負担することとなる金額は居住組合員の負担に比して約15%増加するにとどまること、非居住組合員の大部分が当該規約改正を受け入れていることを指摘して、「特別の影響」に該当しないとした事案(最高裁平成22年1月26日判決(民集233号9頁・判夕1317号137頁))

などがあります。

総会決議の効力

規約および総会決議の効力

管理規約および総会決議は、区分所有者の特定承継人に対してもその効カが及びます(区分所有法46条1項)。また、専有部分の占有者は、建物、敷地、附属施設の使用方法について、区分所有者と同一の義務を負っています(同条2頂)。
これらの規定に関しては、標準管理規約においても、同内容の規定が置かれています(標準管理規約5条1項、2項)。

総会の議決の有効期間

総会の議決について、有効期間に一律の基準はありません。議決がなされた後に、何らかの理由でその内容に従った具体的な履行がされていない場合、当該決議については一定期間に限定して効力が認められることが明記されていたり、決議の趣旨からその効力が一定期間に限られるものであることが明白であるといった場合を除き、期間の経過のみを理由としてその効力が当然に無効とされるものではありません。そのため、未履行の決議についてその内容に従った措置を講じるか、すでに効力を失ったものとしてあらためて総会で議決すべきか等、当該決議の趣旨や内容から判断することとなります。

総会決議の無効

管理組合の総会は、区分所有法34条以下に定める招集・決議に関する規定に則っていなければならないものですが、その手続に瑕疵があった場合の決議の効力については、特に明文の定めはありません。
この点については、総会決議の手続に瑕疵がある場合は、原則として当該決議は無効と考えられます。一方で、外形上いったん有効なものとしてなされた決議について、事後にその効力を否定する場合は、やはり安定したマンション管理運営にとっては支障があるといえます。そのような観点から、その瑕疵が極めて軽微な程度にとどまるものであって、かっ、決議の結果に当該瑕疵が影響を及ばさないことが明白であるような場合には、例外的に当該決議を有効とすべきものといえます。
具体的には、瑕疵の内容や程度、瑕疵に至った経緯、決議の具体的内容や重要性といった諸般の要素を勘案してその有効性が判断されます。裁判例では、

①総会において旧管理規約を廃止して新規約を制定する決議がなされたものの、総会に先立ち、あらかじめ旧規約廃止、新規約制定を議題とする旨の通知がなく、議案の要領の通知も欠いていた事案で、「召集手続の瑕疵は決して軽微なものとはいえないとして決議を無効としたもの(東京地裁昭和62年4月10日判決(判時1266号49頁))や、

②理事選任決議や規約変更決議について、総会において理事に選任され、その後理事の互選により理事長となった者が、当該総会において、代理人と称する区分所有者でない多数の者を出席させて威圧的な言動をした事実などから理事選任決議を無効とし、また、翌年の総会における規約変更決議は、無効な決議によって選任された理事長が招集したものであり、区分所有法35条5項が定める議案の要領の通知もなく、特別決議の要件も充足していないことを認定したうえで、「招集権限のない者によって招集された総会であり、区分所有法所定の事項等をあらかじめ通知せず、特別多数決議の要件も満たさない規約変更決議を行うなど瑕疵が著しい」として決議を不存在と判断したもの(東京地裁平成13年2月20日判決(判タ1136号181頁))

等があります。

 

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