老朽化した建物の解体を代執行によって解体した事例

 

老朽化した建物の解体を代執行によって解体した事例

●事実の概要

 
 近隣住民らは、20年以上空き家の状態である建物について、当該建物が著しく老朽化し建築材が周辺住民へ飛散するおそれがあること、道路に面しているため通行車両や歩行者などに被害が及ぶおそれがあること等を理由として、解体に向けた要望を大仙市長に対して行った。
 この要望に応じて、大仙市長は、条例9条に基づき勧告を行った。義務者がこれに従わなかったため、大仙市長は、条例12条に基づき解体の命令を発した。これに対し、義務者は資力不足を理由に履行を拒否したため、当該空き家を代執行により解体したものである。
 

●実施主体

 

 大仙市

 

●義務者

 本件建物の所有者

 

●対象物件

 場所:秋田県大仙市
 構造、用途、規模:木造2階建て 住居 96.72㎡

 

 

●命令の原因となった法令違反

 大仙市空き家等の適正管理に関する条例4条
 (適正管理業務違反)

 

●実施時期

 平成25年

 

●代執行に要した費用および回収状況

 892,500円(未回収)

 

●刑事告発等

 特になし

 

●本件代執行の特徴

  本件では、対象となった空き家が不動産登記簿上未登記であったため、条例上の管理義務者を特定することが困難な事案であった。空き家という性格上、こうした事案は少なくないと思われる。
  このため、本件では、条例に定めはないが、条例上、管理義務者であることを明確にするため、過去に当該空き家を住居として使用していた者を空き家の管理義務者とすべく、当該空き家について所有者であることを自認する旨の書面(財産確認書)を提出させている。また、本件では、代執行をするに当たり、義務者から代執行を受忍する旨の同意書も徴しているようである。このような書面を徴することは、本件条例上も行政代執行法上も必要とはされていない。こうした対応を行った実務上の意図としては、将来におけるトラブルが発生する可能性を少しでも低くしたいということからであろう。
  さらに、空き家の解体の代執行に当たって、当該空き家の敷地内の動産等の扱いが問題となったようである。そこで、大仙市長は、義務者に対して、空き家の敷地内の財産の処分に異議がない旨の同意書を提出させている。このような対応は、代執行を効率的に行ううえでの「実務上の知恵」といえよう。
 

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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