立退きを求められた時、弁護士に相談すべき理由とは?

土地や建物からの立退きを地主・大家(以下「賃貸人」といいます)から求められた場合、賃貸人の主張を鵜呑みにしてはいけません。借地借家法では、賃貸人の側から、契約の更新を拒否する場合は、正当事由が必要であるとしています(借地契約では、建物所有目的の場合ですが)。

つまり、賃貸人は、借地契約の契約期間が満了した場合でも「正当な理由」がなければ契約の更新を拒否して、立退きを求めることができません。立退きを余儀なくされる借地権者等賃借人に対して一定の金銭的補償をしなければ、「正当な理由」を認めないとするのが多くの判例です。このようなルールがあるため、賃貸人から、「正当な理由」があるとして立退きを求めるためには、借地権等賃借人に対する金銭的補償(立退料)の支払が必要になってきます。

借地権者等賃借人としては、立退き請求をされたら必ず一度持ち帰り、弁護士に相談しながら対応を検討しましょう。立退き請求を受けた場合の対処法や、弁護士に相談すべき理由などについて、弁護士が解説します。

立退き請求されたら、こうすべき(してはいけない)

土地・建物からの立退きを求められた場合、(特に立退料等金銭の関係及び明渡時期等についての)諸条件を書面で提示することを求め、かつ、必ず持ち帰って検討を行いましょう。決してその場で即座に立退き合意書に署名・押印したり、相手の要求をそのまま受け入てはいけません。

(1)すべきこと①|立退き条件を書面で提示するよう求める。

立退きを求める賃貸人は、立退きの時期・立退料などの条件を口頭で伝えてくる場合もあります。

しかし、口頭での条件提示は、後に当事者間で認識に食い違いが発生する可能性が高く、トラブルの原因になります。立退き条件は必ず書面で提示してもらうようにしましょう。

(2)すべきこと②|持ち帰って弁護士に相談することを求める。

相手から書面による条件を示されたら、持ち帰って冷静に検討することが大切です。立退きには借地借家法上の問題があるため、弁護士からアドバイスを受けた上で対応を検討することをお勧めします。

(3)してはいけないこと①|その場で即座に立退き合意書等の書面に署名・押印してしまう。

賃貸人から立退き合意書の案文を提示され、その場で署名・押印することを求められるかもしれません。しかし、賃貸人に言われるがまま署名・押印しては絶対にいけません。合意が成立すると、適正な立退料が獲得できなくても、土地・建物からの立退きを強いられる可能性が高いからです。

立退き合意書の案文を提示されても、その場での署名・押印は拒否し、必ず持ち帰って内容を検討しましょう。

(4)してはいけないこと②|相手の要求をそのまま受け入れる。

賃貸人は、借地人・借家人側の落ち度を指摘したり、不当に低額な立退料を提示したりするなど、一方的な要求を行ってくるかもしれません。しかし、賃貸人の要求に法的に正当性があるとは限りません。より有利な条件で立退きを実現するために、法的にも「理不尽な」提案をしてくるケースも非常に多いです。

そのため、賃貸人の要求を受け入れることなく、法的な観点から、あくまでも冷静に検討を行うことが大切になります。

立退きを求められたら一刻も早く弁護士に相談すべきである

賃貸人による土地・建物からの立退き要求を受けた場合、以下の理由から早急に弁護士へ相談することをお勧めします。

(1)借地借家法が守られているのかの検討をする必要性

借地借家法が守られているのかの検討が必要です。また同法以外にも民法その他に基づく法的アドバイスが役立ちます。借地借家法では、借地人・借家人の権利を強力に保護しています。たとえ契約期間が満了するタイミングであっても、借地借家法によって契約の更新を拒絶できるケースは狭く限定されています。

そのため、賃貸人から立退き請求を受けた場合には、借地借家法等の法律の保護を受けられるかどうかを法的に検討することが必要です。弁護士は、具体的な事実に借地借家法等の法律を適用し、法的に妥当な落としどころについてアドバイスします。物件からの立退きを受け入れるかどうか、立ち退くとしても立退料をどの程度請求し、受領するべきかを判断する際に、弁護士のアドバイスが役立ちます。

(2)立退料などの交渉を一任することが可能

賃貸人との立退きに関する交渉を、借地人・借家人が自分で行うのは非常に大変です。賃貸人の一方的な要求に惑わされてしまう恐れもあるので、自身での交渉はお勧めできません。

弁護士は、借地人・借家人の代理人として、賃貸人との交渉を全面的にお引き受けいたします。交渉に伴う労力や精神的な負担を軽減しつつ、法的に筋の通った主張を行うことで、借地人・借家人側に有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

(3)弁護士以外による立退き交渉の代理は違法

不動産業者や不動産コンサルタントを名乗る業者が、借地人・借家人の代わりに立退き交渉を行う旨を宣伝していることがあるようです。しかし、弁護士以外の者が立退き交渉を有償で代理することは、弁護士法第72条に違反する非弁行為であり、違法です。

非弁行為を働く業者に立退き交渉を任せてしまうと、違法行為に加担するばかりでなく、借地人・借家人にとって不利な条件で立退きを強いられてしまう可能性があります。そのため、立退き交渉の代理は必ず弁護士へご依頼ください。

立退き請求拒否できる可能性

賃貸人による土地・建物からの立退き請求は、法律上は正当な理由がなく、拒否できる場合が多くあります。

(1)賃貸借契約期間中の立退き請求は原則不可である

借地契約・借家契約の契約期間が残っている場合、期間途中で立退きに応じる必要は全くありません。賃借人側が債務不履行解除の要件を満たす場合を除けば、所有者側が契約を一方的に終了させることはできないからです。賃貸人と賃借人の双方が賃貸借契約の合意解約に応じることは考えられますが、その場合には相応の立退料を請求すべきですし、賃貸人側も支払うべきでしょう。

(2)更新拒絶、解約申入による立退き請求には「正当の事由」が必要である

契約期間満了の時点において、賃貸人等の側から借地契約・借家契約の更新を拒絶するには「正当な事由」が必要です(借地借家法第6条、第28条)。更新拒絶の正当な事由があるかどうかを判断する際には、以下の要素が考慮されます。

① 当事者双方が物件の使用を必要とする事情
② 契約に関する従前の経過
③ 物件の利用状況
④ 物件の現況(築年数や朽廃の有無等)
⑤ 立退料支払の有無  など

実務上、賃貸人による立退き請求が認められるのは、所有者が物件を使用する必要性が借地人・借家人を上回っており、かつ適正額の立退料が支払われた場合にほぼ限られています。立退料の適正額はケース・バイ・ケースですが、土地であれば借地権価格と同程度、建物であれば賃料の数年分など、高額が認められることもあります。

もし賃貸人から期間満了による契約更新拒絶を主張された場合、適正な立退料の支払いと引き換えでなければ立ち退かないと明確に意思表示すべきです。

立退料を請求できないケース

以下のいずれかに該当する場合には、借地人・借家人は賃貸人に対して立退料を請求できません。立退料を請求できない事態に、想定に反してならないように、注意深く対応を行ってください。

(1)立退料を受け取らないことを合意した(していた)場合

借地契約・借家契約の解約について合意が成立すると、合意に従った条件で物件から立ち退かなければなりません(合意解約による立退き。)もし立退料をゼロとする旨の合意が成立していれば、原則として立退料を請求できなくなってしまうので要注意です。

ただし、賃貸人にだまされたり、脅されたりして解約に同意した場合には、解約の意思表示を取り消すことができます(民法第96条第1項)。万が一、不本意な形で解約に同意してしまった場合には、早急に弁護士までご相談ください。

(2)賃貸借契約を債務不履行により解除された場合

借地人・借家人が、賃料滞納や無断転貸など契約上の義務に違反した場合、賃貸人は債務不履行に基づき、借地契約・借家契約を解除できます。契約を債務不履行により解除された場合、契約の終了に関する借地借家法に基づく保護を受けることができず、立退料の支払等は一切を受けられなくなってしまうので注意が必要です。

但し、よく検討すれば債務不履行解除の要件(特に「信頼関係の破壊」の要件)を充たしていないケースも多いので、賃貸人から債務不履行解除を主張された場合は、一度弁護士までご相談ください。

(3)定期借地契約・定期借家契約の期間が満了した場合

「定期借地契約」「定期借家契約」とは、契約の更新がない借地契約・借家契約です(借地借家法第22条、第38条)。定期借地契約・定期借家契約は更新がないため、借地借家法上の「正当の事由」に関する保護規定が適用されず、期間満了によって契約は終了します。その際には、賃貸人の借地・借家人に対する立退料の支払い義務も発生しません。

定期借地・定期借家として契約を締結すると、基本的に後からその内容を覆すことはできません。そのため、土地や建物を借りる前の段階で、契約内容をよく確認する必要があります。契約書の読み方等、分からないことが少しでもある場合には、弁護士へのご相談をおすすめいたします。

まとめ

賃貸人から土地・建物の明渡し(立退き)を求められた場合、所有者側の要求を鵜呑みにして合意書に署名・押印してはいけません。立退き要求自体を拒否できることも多く、また仮に立退きを受け入れる場合には高額の立退料を請求できる可能性もありますので、必ず一度持ち帰って、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめいたします。

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