消費税増税と借家関係

1.消費税が課税される借家関係

(1) 住宅を貸す場合
 ■ 原則:非課税。
    例外:住宅でも1ヶ月未満の貸付や別荘の家賃は課税対象に。
 ■ 家賃=礼金、更新料、敷金及び保証金等で返還しない部分、住宅部分 にかかる共益費等も含まれる。
 
(2) 非住宅を貸す場合
 ■ 原則:課税。
    例外:特になし。
 ■ 事務所や店舗等の貸付は、貸主が個人で(不動産賃貸業以外には)
  非事業者でも、賃貸すること自体が「不動産賃貸業」という事業と
       判断される。

2.5%→8%消費税アップを交渉にどう生かすか?

(1) 原則:便乗値上げは許されない。
例外1)事業全体で適正な転嫁をしている場合…
当該事業者が事業全体として税率変更に見合った適正な転嫁をしていれば便乗値上げには該たらない。
例外2)免税事業者が仕入価格に含まれる税額を転嫁する場合…
免税事業者であっても、その仕入価格には消費税が含まれていることから、これに相当する額を価格に転嫁することは便乗値上げに該たらない
 
(2) 家賃の値上げ交渉にどう繋げるか?
  ■ 住宅の家賃は、消費税は非課税。
 ■ 事務所や店舗等の家賃に限定されるが、例えば、5%→8%への3%の値上げの際に、適正家賃までの値上げ要求を盛り込むのも一つの方法。
値上げ要求の例

「今回、4月1日からの消費税アップに伴い、家賃にかかる消費税も8%にアップすることになりました。
(本来ならば消費税8%込で○○○○円になるところ)
ところで、本件家賃については従前より相場よりもかなり低額で頂いて参りました。
つきましては、今回の消費税アップを機にという訳ではありませんが、今後の家賃を(消費税込で例えば10%を加えた)○○○○円とさせて頂きたく存じます。」など。
→これは、実質的には2%の値上げに他ならない。しかし、上記(1)例外1の場合には便乗値上げにはならず。
あとは、この実質的な2%の値上げが適正か否か、後述する賃料増額請求が認められるかの問題に。
(3) 問題のある借家人の立退にどう繋げるか?
■ 上記(1)例外1の活用を考える
例えば、同じような借家人が多数いる場合に、問題のある借家人にだけ消費税の値上げ分を集中させるような転嫁の仕方もあり得るかもしれない。
⇒鉄道会社の運賃等と異なり、借家契約における家賃は月額である等、各金額も大きく、各契約の個別性・独立性も高いことから、一概には採れる方法ではないものと思料される。例えば時間や日にち単位でのレンタルルーム等の場合にのみ使える発想ではないか?
 
■ 消費税の値上げとリンクさせるか否かには関係なく、やはり、後述する賃料増額請求等をぶつけることを考えてみる。
 
■ 問題ある借家人対策としては、更に、①解除②正当事由を伴う解約申入または更新拒絶により借家契約を終了させて立退を求めることが考えられる。具体的方法等は借地の場合も併せて後述する。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
事務所概要
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