管理会社様向け滞納問題の解決策について

  1. 1.当事務所について
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    2. (1)管理会社様向け滞納問題の解決策について
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      2. 1   管理費が時効にかかって消滅してしまった場合
        管理会社は、管理費の徴収代行業務も行い、滞納している区分所有者に対しては、手紙を出すなどして請求をしています。他方、最終的に訴訟などの法的手続をとるのは、管理組合が総会や理事会で決議をして行うこととなります。
        管理費の消減時効は5年間とされていますが(最高裁平成16年4月23日判決(民集58巻4号959頁))、管理会社が就任しているにもかかわらず、管理費が消減時効の期間を徒過し、結果的に回収できなかった場合、その責任を管理会社に求めることはできるのでしょうか。
        この場合、管理会社の義務違反があるのかが問題になりますので、管理会社が管理組合に対して、契約上、いかなる義務を負っているかを検討する必要があります。
        ここで、マンション標準管理委託契約書を参考に検討すると、同契約書によれば、管理会社が行うことは管理組合に対して報告をすること、滞納してからの数ヶ月間、電話などの方法で支払いの催促をすることとされており、上記によっても滞納が解消されない場合には、管理会社の業務は終了し、以降は管理組合が滞納の解消のための方策をとっていくことになるとされています(同契約書3条1号、別表第1・1(2)②)。上記契約内容からすると、5年の時効期間を徒過しないようにするためには、管理組合が対処する必要があるのであって、管理会社がそもそも何も報告をしていなかったために管理組合が滞納の事実を認識していなかったというような場合を除けば、基本的に管理会社がこれに対して責任を負うことはないといえそうです。
        この点、東京地裁平成18年7月12日判決は、管理委託契約書において、滞納に関して管理会社が負っている業務内容が督促等の通常業務に限られ、長期滞納者等の扱いについて無償で補助する旨の義務までは認められないとして、管理組合の管理会社に対する請求を棄却しています。

 

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
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