現状の空き家問題

「空き家」だと、火事・倒壊や窃盗など、災害や犯罪の恐れが高くなったり、いわゆる「ゴミ屋敷」のように近隣に多大な迷惑をかけるケースが多く存在した。
このような場合に存在する、法律上の問題点には、以下のような点があった(現行法上での問題点)。

1 所有者が誰か確定できない場合

行方不明者の場合→不在者財産管理人の選任を裁判所に申し立てる。→「管理」をすべき者だけは確定する。
生死が不明な者の場合→失踪宣告を裁判所に申し立てる。→宣告が出されれば「死亡」と看做され相続開始。
死亡は明らかな者の場合→戸籍等から死亡が明らかであれば相続開始:cf.年齢だけ明らかな場合に、死亡と看做してくれるのか(②の失踪宣告まで必要なのか)?
相続人が不明な場合→相続財産管理人の選任を裁判所に申し立てる。→「管理」をすべき者だけは確定する。

2 所有者が「誰か」は判るが、連絡の取りようがない場合

意思表示をする場合には、意思表示の公示送達(※)を、訴状を送るなら訴状の公示送達(※)を活用する。
※公示送達…裁判所の掲示板に掲示し一定期間が経過した場合には到達したものと看做される制度。

3 所有者は判り連絡は付くが、所有の範囲や対象が判らない場合

建物・土地の所有範囲プロパーの問題。但し、「空き家」だと事実関係の確認が継続居住の場合に比べて圧倒的に難しいことから、「占有継続」事実の有無(※)等の主張・立証が困難な場合も。
※「占有継続」事実の有無…所有権の時効取得の可否を巡って問題に。自身が所有者でないことを知っていれば(悪意)20年、知っていなければ(善意)10年間の占有継続で所有権を時効取得できる。
cf.共有物件の場合→一部共有者が判明している場合、その者だけできる行為(保存)」行為)なのか、共有者間の持分の過半数が必要な行為(管理行為)なのか、共有者全員の合意が必要な行為(処分行為)なのか、で解決法が異なる。

 

 ⇒このように、従来の法律に基づく処理では解決までに時間・手間・費用を要することに。→そこで、もっと端的に「空き家」の現状(物理的状態)に着目した対処ができないか、という趣旨・目的から立法されたのが本特別措置法(以下では「本特措法」という)である。但し、本特措法での行為主体は主に自治体を想定しているので、民間人同士の場面にどこまで活用の余地があるのかについては、自治体の認定等行為の判断基準の定立及びそれに対する市民側からの働きかけ等、今後の事例の集積を待つほかない。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
事務所概要
弁護士法人 タウン&シティ法律事務所
神奈川県横浜市中区日本大通14
KN日本大通ビル
(旧横浜三井物産ビル)2階
関内駅から徒歩5分
日本大通りから徒歩1分
民法改正開催延期(日時未定)横浜市開港記念会館7号室