所有者と特定するための具体策

Ⅲ 同措置法が適用されるための要件

各種用語

1 本特措法上の「空家等」とは?
「建築物またはこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)をいう(同法2条1項)。但し、国または地方公共団体が所有し、または管理するものを除く(同項但書)。
2 同法上の「特定空家等」とは?
適切な管理が行われていない結果、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす「特定空家等」とされるのは次のような状態に至っているものを指す(同条2項)。
 そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
 または著しく衛生上有害となるおそれのある状態
 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
 その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
にあると認められる空家等。
 

基本的指針

3 本特措法に併せて国土交通省と総務省により出された「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」(平成27年2月26日総務省告示・国土交通省告示第1号)
この告示により、年間を通して居住実態がないなど「空き家」の判断基準や所有者特定のための具体的手段の事例を提示。
一言で言えば「居住していないことが常態化している」のが空き家。
具体的には…
A 居住していないことの基準:建築物の状況や管理の程度、人の出入りの有無、電気・ガス・水道の使用状況、所有者の登記や住民票の内容、所有者の主張等から客観的に判断される。
B 常態化の基準:年間を通して使用されていないこと等から判断される。
C 所有者を特定する方法:不動産登記や住民票、戸籍謄本などの利用、固定資産課税台帳(従来は目的外使用として認められていなかったが必要な限度において利用できることになった)の利用も可能に(特措法10条「固定資産税の課税のために利用する目的で保有する空家等の所有者に関する情報の内部利用について」)
D 処分に悩む所有者からの相談や、近隣住民の苦情に応えられる仕組みの整備も提案した。
 

ガイドライン

4 重要な判断基準については、国からガイドライン(特定空家等の是正措置に関するガイドライン)が明らかにされている(cf.特措法14条14項「国土交通大臣及び総務大臣は、特定空家等に対する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができる。」同条15項「(同条の)前各項(=特定空家等に対する各措置)に定めるもののほか、特定空家等に対する措置に関し必要な事項は、国土交通省令・総務省令で定める。」)。
…ガイドライン上の主な判断の目安の具体例(同ガイドラインより)
  例1 部材の破損や基礎の不同沈下等による建築物の著しい傾斜、基礎と土台の破損・変形・腐朽等、建築物の構造耐力上主要な部分の損傷、屋根や外壁等の脱落・飛散のおそれ、擁壁の老朽化等(ex.建物の傾きが20分の1を超える(高さ3mなら屋根のズレが横に15㎝を超える状態)、トタン屋根が落ちそう、ベランダが傾いている、などが見て判るetc.)
  例2 立木の腐朽・倒壊・枝折れ、立木が建物を覆うほど茂っている。道路にはみ出した枝が通行を妨げるetc. 
  例3 建築物が破損し石綿が飛散する可能性、浄化槽の破損による臭気の発生、ゴミの放置や不法投棄による臭気の発生やネズミ、ハエ、蚊が発生(し、近隣住民の日常生活に支障がある)etc.
  例4 景観法に基づき策定した景観計画や都市計画に著しく適合しない状態になっている、屋根や外壁が外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている、多数の窓ガラスが割れたまま放置されているetc.
  例5 動物が棲み付くことによる周辺への影響(ex.土台にシロアリの被害があるetc.)、不特定の者が容易に侵入できるetc.
  →更に詳しく具体例を知りたい方は、「『特定空家等に対する措置』に関する適切な実施を図るために必要な指針」で国土交通省のHP内の検索を。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。
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