管理組合の資金面も含めた運営方法

        1. 1.管理組合の資金面も含めた運営方法
          1.  
          2. (1)管理費
          3.  
          4. 一般に、共用部分、敷地、附属施設の維持管理費用や管理組合の運営費用など、管理組合がするマンションの管理全般に使われる費用
            ※(区分所有法は定義を定めていません。但し区分所有法19条は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と定めており、区分所有者である限り、当然に管理費支払義務を負うことになります。)
            管理費の総額は、1年間に発生する管理委託費、保険料、電気代、ガス代等の合算金額です。それを専有部分の床面積の割合に応じて月額に計算したものが、一般的な部屋別月額管理費となります。

            1.  
            2. 1 管理費等滞納者への対応
              マンションの適切な管理のためには、区分所有者から、管理費等(管理費や修繕積立金)がしっかりと支払われていることがとても重要です。しかし、マンションというのは長年にわたって存続するため、その間、高齢や、病気、失業等で状況が変わることにより、区分所有者が管理費箸を支払うことができないということが発生することがあります。また、マンションの管理方法などに不満を抱いた区分所有者が管理費等の支払いを拒むこともあるかもしれません。
              このような状況は、「管理不全マンション」と言われかねないため、早期かつ適切に対応する必要性がとても高いといえます。

              1.  
              2. 1.管理費等の性質
                1. (1)時効
                  管理費等の消滅時効は、5年間と考えられています(最高裁平成16年4月23日判決(民集58巻4号959頁))。ですので、管理組合としては、管理費等が時効消滅しないように適切に管理する必要があります。
                  時効を中断するためには、裁判上の請求や差押えをしたり、滞納者に債務を承認してもらう必要があります。
                  たまに、「うちは定期的に通知文を送って請求しているから大丈夫」と言っている管理組合の方がいますが、こういった裁判外での催告は、そこから6カ月以内に裁判上の請求などをして初めて時効の中断の効力を生じることになります(民法153条)。通知文だけでは時効消減を防ぐことはできませんので、注意が必要です。
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                3. (2)特定承継人への請求
                  1.  
                  2. 1 請求できる範囲
                    区分所有法上、規約に基づく債務については、マンションの特定承継人(買い受けた人など)にも請求できることになります(同法8条)。特定承継人から滞納管理費等を支払ってもらうことができるため、滞納問題に対処することが可能となります。
                    特定承継人に対して請求できる範囲として、一括受給している場合の電気料金や水道料金などまでを請求できるかという問題があります。名古屋高裁平成25年2月22日判決(判時2188号62頁)などは、一括受給する必要性を考慮し、特定承継人への請求を認めています。もっとも、必要性がある場合などに限定されますので、注意が必要です。
                    駐車料金については、契約に基づき発生するものであるため、当然には特定承継人に請求できないとする考えが多いようですが、管理規約で規定している場合には特定承継人に滞納駐車料金を請求できるとする考えもありますので(上記名古屋高裁判決も、管理規約に駐車場料金についての規定がある事案において、駐車料金の特定承継人への請求を認めています)、管理組合としてはそのような対応が望ましいといえるでしよう。
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                  4. 2 特定承継人となる者
                    特定承継人とは、マンションを直接買い受けた者だけではなく、競売により取得した者や譲渡担保権者も含まれます(前者につき東京地裁平成9年6月26日判決(判時1634号94頁)、後者につき、東京地裁平成6年3月29日判決(判時1521号80頁))。
                    また、滞納者から買い受け、これを転売した後の中間取得者(たとえば、転売して利益を上げる不動産業者など)も、近時の裁判例では、特定承継人にあたるとされています(大阪地裁平成21年3月12日判決判夕1326号275頁イキなど)。管理組合としては、区分所有者が変更した場合には、組合員名簿が適切に更新されるように徹底したり、登記事項証明書を取得するなどして、区分所有者が誰であるかを確認しておくとよいでしよう。
                4.  
                5. (3)賃借人への請求
                6.  
                7. 滞納管理費等を賃借人に請求できるかですが、これはできないと考えられます(東京地裁平成16年5月31日判決)。
                  もっとも、後で述べる強制執行として、滞納者の賃借人に対する賃料支払請求権を差し押さえることにより、賃借人から滞納管理費等を回収するということは可能と考えられます。
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                9. (4)自分が使う共有部分ではない(一部共有部分である)として管理費等の支払いを拒むことが出来るか
                  例えば、1階の区分所有者は、通常はエレベーターを利用していませんので、その分の管理費等の支払いを拒むことが考えられます。
                  しかし、一部共用部分となるためには、これが一部の区分所有者のみの共用であることが明白であることが必要であるとされており、エレベーターはこれにあたらないと考えられます。そして、全体の共用部分である以上、それにかかる管理費等の支払いをする義務を免れることはできないとして、管理費等の支払義務を争った主張を否定した判決があります(東京高裁昭和59年11月29日判決(判夕566号155頁))。
              3.  
              4. 2. 滞納者への対応方法
              5. 滞納者への対応方法としては、以下に記載するような法的措置が考えられます。しかし、これらはいずれも期間や費用がかかります。ですので、まずは、管理組合としては、滞納者との間でよく話合いの機会をもち、滞納の理由を確認するとともに、支払いを促すことが重要です。
                また、時間が経過すればするほど、対応が困難になってしまいますので、滞納額が少ない早期の段階で対処することが必要です。

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                2. (1) 任意の話し合い
                  滞納者には早期に対応することが望ましいので、まずは、管理組合として、話合いの機会をもつなどして、滞納の理由を確認することがよいでしよう。
                  例えば、滞納の理由が、管理に対する不満などであれば、これについてしっかりと説明をすることで、滞納が解消するかもしれませんし、「自分は1階の区分所有者なので、全体に関する管理費等は支払う義務がない」などと主張するのであれば、法律的な説明をすることで対応できるかもしれません。
                  支払う意思はあるが、現在事情があり支払えないというのであれば、分割払いなどの対応策を検討してもよいでしよう。
                  しかし、話合いを拒否したり、話合いをしても支払う意思がないような場合には、後記(イ)のような措置を検討する必要があるでしよう。
                3.  
                4. (2 )訴訟などの法的措置
                  滞納者に対して行うことができる法的措置としては、以下のようなものがあります。

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                  2. 1 支払い督促
                  3.  
                  4. 裁判所に行くことなく、書面審理だけで滞納組合員に支払督促を出してもらうことができます。支払督促は判決と同じ効力がありますので、強制執行をすることもできます。この方法は、費用も安く、簡単に利用することができます。もっとも、滞納組合員が支払督促に異議を出した場合には通常訴訟の手続に移行することになってしまいますので、注意が必要です。
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                  6. 2 少額訴訟
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                  8. 少額(60万円まで)の請求をする場合に利用することができる制度です。原則として1回の期日で審理を終え、判決を出してもらうことができますし、通常訴訟よりも費用を抑えることができます。
                    支払督促だと異議が出されることが予想される場合には、この少額訴訟を利用することを検討してもよいでしよう。
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                  10. 3 訴訟
                  11.  
                  12. 一般的に知られている裁判のことです。
                    前記①②の2つに比べて、時間と費用がかかりますが、滞納金が多額である、支払督促を出しても異議が出されそうというときは、最初から通常訴訟を提起した方がよい場合もあるでしよう。
                    なお、組合員が今後も支払いをしないと思われる場合、滞納分だけではなく、今後発生する管理費等の支払いも命じさせることができる場合があり(将来給付の訴え)、滞納者への対応には有効な場合があります。
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                  14. 4 強制執行

                  15. ①②③の3つの方法の方法により判決など(債務名義といいます)を取得すると、滞納者の財産の差押えをすることができ、これにより管理費等を回収することができます。
                    もっとも、滞納者の財産を把握していないと強制執行により回収することができません。たとえば、勤務先や預金口座の支店名までを把握している必要があります。また、マンション自体を競売にかけることも可能ですが、マンションに抵当権が設定されていたり、税金の滞納があって、売却金額がこれらに満たないような場合には、競売自体を進めることができません(剰余主義、民事執行法63条)。
                    現実には、以上のような問題から回収ができないという事態が少なくありません。
                    なお、平成28年改正標準管理規約および同コメントの別添3資料「滞納管理費等回収のための管理組合による措置に係るフローチャート」には、管理組合が「金融資産については、滞納者の同意書を携行し、銀行等から情報を得るように努める」、「不動産については、……課税当局の固定資産税台帳を調査するように努める」との記載がなされていますが、疑間です。滞納している区分所有者から「同意書」をとることはまず現実的とは思えません。仮に「同意書」を得たとしても、それだけで金融機関や課税当局が個人の資産内容という究極のプライバシーを簡単に他人に開示するとは思えません。
                    ちなみに、弁護士法23条の2は、弁護士が職務上の必要性がある場合に各自の所属する弁護士会を通じて、官公庁や企業などに対して一定の事項の照会を求める制度を規定していますが、金融機関に対する個人の預金口座の情報照会については、ようやく昨年(平成28年)から今年初めにかけて、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などの限られた銀行について、東京、大阪などの一部の弁護士会からの照会を受け付ける運用が始まったばかりです。その場合も、対象は債権差押命令申立事件に限られ、債務名義のあることが必要となります。
                5.  
                  1. 5 先取特権による競売

                  2. マンションの管理費等については先取特権というものが認められており(区分所有法7条)、上記①~③の手続をすることなく、マンションを競売することができます。
                    しかし、この場合も、上記の剰余主義が適用されるため、必ずしも実効的とはいいにくいと思われます。なお、抵当権が設定されているかは登記事項証明書を見れば確認できます。
                  3.  
                  4. 6 配当要求
                    前記④と⑤は管理組合自身が競売を申し立てて競売を進めることになりますが、他の債権者が競売を申し立てている場合には、配当要求の手続をすることにより、この競売手続で配当を受けられることがあります。
                6.  
                7.  
                8. (3 ) 59条競売
                9. 以上のような方策が功を奏しない場合、その人の所有建物を区分所有法59条に基づいて競売にかけることが可能です。
                  区分所有法59条は、「区分所有者の共同の利益に反する行為」がある場合、マンションを競売できる旨規定しており、管理費の滞納もこれにあたると考えられているため、滞納額が大きくなった場合には、競売にかけることも選択肢になり得ます。
                  いくら滞納があれば競売が認められる程度となるのかということには明確な基準はありませんので、実際に訴訟にするかどうかの決断は難しいですが、この方法によれば、滞納者自体を当該マンションから排除することができ、滞納問題を根本的に解決することもできるため、最終手段としては検討に値するものと考えられます。
                  また、59条競売が認められるためには、「他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」という要件を満たす必要があります。たとえば、マンションを競売にかけたものの、無剰余取消しされてしまった場合などが考えられますが、実際に競売にかけなくても、登記記録上抵当権が設定されていることなどの事情があれば、このような要件を満たすこともあります。
                  詳細は事案によりますので、59条競売を進める場合には、専門家に相談するとよいでしよう。
                  なお、競売を認める判決が出された後に組合員が部屋を他人に売ってしまうとそのマンションを競売することはできなくなってしまいます(最高裁平成23年10月11日判決(民集238号1頁))ので、判決が認められた場合には迅速な対応が必要になります。また、これを回避するために、59条競売を求める裁判を申し立てる前に、所有者を変更しないように仮処分を申し立てるということも考えられますが、最高裁は、これもできないとしました(最高裁平成28年3月18日決定(民集70巻3号937頁))。ですので、59条競売をしようとする場合には、判決後すぐに競売をできるようにするしか、現状では対抗策はないといえるでしよう。
                10.  
                11. (4)58条による使用禁止
                12. 区分所有法58条は、共同の利益に反する行為をしている場合、専有部分の使用禁止を請求できるとしています。上記のとおり、管理費等の滞納は共同の利益に反する行為といえますので、本条により専有部分の使用禁止を求めるということが考えられます。
                  しかし、専有部分の使用を禁上したからといって、滞納の解消には直結しないということから、裁判所は、現状においてはこれを認めていません(大阪高裁平成14年5月16日判決判夕1109号253頁))。
                  最高裁判所の判例ではなく、結論が変わる可能性もありますが、現状においては上記の実務となっていますので、管理組合としては、他の方法を検討することになると考えられます。
                13.  
                14. (5)水道・電気等の供給停止
                  管理組合が水道や電気の料金を集金しているような場合、滞納者に対する水道や電気等の供給を停止することで、事実上、支払いを促そうとすることが考えられます。
                  しかし、福岡地裁小倉支部平成9年5月7日判決など、供給停止をしたことが区分所有者の平穏な生活を侵害するものであるなどとして、不法行為であるとして管理組合に損害賠償を命じた裁判例があります。
                  水道や電気が生活において不可欠なものであることからすれば、管理費等を滞納している人がいるとしても、これらを停止する措置を講じることは、基本的には避けたほうがよいでしょう。
                15.  
                16. (6)氏名公表
                17. 管理費等を滞納している人の氏名などを公表することで、事実上、支払いを促そうという管理組合がしばしばありますが、これがプライバシー権の侵害や名誉毀損であるとして、管理組合に対して慰謝料の請求を求めることが考えられます。
                  東京地裁平成11年12月24日判決判時1712号159頁)は、管理組合が、事前に支払いの意思があるのであれば公表を控える旨を伝え、管理費等を一部でも支払っていれば氏名を削除する措置を講じていたなどの点を考慮し、立看板の設置による氏名の公表は不法行為にはあたらないとしました。
                  しかし、個人情報の取扱いについて議論のある現在においてもこれと全く同じように考えられるとは限らないことなどからすれば、管理組合としては、安易な氏名の公表は差し控えたほうがよいでしょう。少なくとも、規約において管理費等の回収に関して規定するに際して氏名の公表に関するルールを定め、実際に公表をするにしても、事前に通知をし、対処の機会を設けておくなどをしておく必要があるといえるでしょう。
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              6. 3. 法的措置を執る場合の注意点
                1.  
                2. (1)決議
                  前記2で述べた法的措置を講じる場合には、その旨の決議を経る必要があります。基本的には総会決議によることになりますが、標準管理規約54条7号、60条4項のような規定がある場合には、理事会決議で足りると考えられます。
                  裁判所において手続をする際には、適切な内部手続をとっている資料として、管理規約のほか、これらの決議に関する議事録の提出を求められることが一般的です
                3.  
                4. (2)遅延損害金
                  滞納者に対しては、遅延損害金を請求することができます。
                  管理規約に遅延損害金の規定がある場合には、それに基づく利率の遅廷損害金を請求することになります(たとえば、標準管理規約60条2項は規定において利率を決めることとしています)が、規約に定めがない場合には年5%の割合となります。
                  また、遅延損害金は、各支払期日の翌日からとなりますので、法的措置を講じる場合には、各支払期日の翌月からの遅延損害金を請求するようにしておく必要があります。
                5.  
                6. (3)弁護士費用
                7. 法的措置を講じる場合には、弁護士に費用を支出して依頼することがあります。この弁護士費用については、管理規約に規定することで、滞納者に請求することができます。
                  たとえば、標準管理規約60条2項のように「違約金として」弁護士費用を負担させるにようにしておくとよいでしよう。この場合、実際に支払った弁護士費用を滞納者に請求できると考えられます(東京高裁平成26年4月16日判決判時2226号26頁))。上記のような管理規約の内容にしていない場合には、弁護士費用を負担しても、これを滞納者に請求することができなくなってしまいます。
            3.  
            4.  
            5. 2  管理会社のところで述べている通り、滞納に関して管理会社が負っている業務内容は督促等の通常業務に限られることから、管理組合としては管理費の滞納に関して管理会社が契約上どこまでしてくれるのかをしっかりと確認するとともに、管理会社に任せきりにせず、管理委託契約書の内容を踏まえ、管理組合として滞納の解消のために行うべきことをしっかりと行う必要があるといえます。
          5.  
          6. (2)修繕積立金
          7.  
          8. 改正前後の分別管理方式の相違点
            一般社団法人マンション管理業協会の管理費等保証委託契約約款1条によれば、あくまでも「管理費等1か月分の額を限度として」保証するものとされています。分別管理の方法として、翌月末日までに、管理会社の収納口座から管理組合の保管口座に資金移動するということは、収納口座に2カ月分は収納されているため、全額保証というものではありません(く図2〉参照)。さらにいえば、保証の上限 (が1カ月分ということです。
            修繕積立金は、長期修繕計画書(25年以上の計画書)に基づいて計算された工事金額合計を1年単位に割り、さらに専有部分の床面積の割合に応じて月額に計算したものが一般的な部屋別月額修繕積立金となります。
            ※(区分所有法は定義を定めていません。但し区分所有法19条は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収受する」と定めており、区分所有者である限り、当然に管理費支払義務を負うことになります。)
          9.  
          10. (3)管理費等の区分けと使いみち
          11.  
          12. 管理組合の会計(標準管理規約25条)、
            1. 日常の建物の維持管理およびその他日常的な諸経費を賄うための「管理費会計」(委託業務費、損害保険料、公租公課等)
            2. 建物修繕のための計画的・将来的な支出に備えた、いわば貯金のような「修繕積立金会計」(大規模修繕工事費、エレベーター改善費等)
          13.  
          14. (4)管理費等の徴収方法(分別管理方式)
          15.  
          16. マンション管理適正化法施行規則の平成22年改正で、従来あった分別管理方式である原則方式、収納代行方式、支払一任代行方式が廃止され、イ・口・ハ方式に変更されました(〈図2〉参照)。
          17. (図2) 改善前後の分別管理方式の相違点

          18. (5)保証契約
            一般社団法人マンション管理業協会の管理費等保証委託契約約款1条によれば、あくまでも「管理費等1か月分の額を限度として」保証するものとされています。分別管理の方法として、翌月末日までに、管理会社の収納口座から管理組合の保管口座に資金移動するということは、収納口座に2カ月分は収納されているため、全額保証というものではありません(く図2〉参照)。さらにいえば、保証の上限(が1カ月分ということです。管理会社に収納されている管理組合の管理費等について、保証契約があれば、全額が保証されているような錯覚を覚えますが、そうではありません。旧原則方式であれば、収納口座が管理会社名義ではなく、管理組合名義の収納口座であって管理会社が印鑑を保有しないので、そもそも保証契約をする必要もなく、安全な措置といえます。
          19.  
          20. (6)管理費等の定め方

          21. 区分所有法18条1項は、「共用部分の管理に関する事項は、……集会の決議で決する」と定めていますので、管理費は、総会の普通決議で定めることができます。しかし、原始規約で管理費の金額が定められているときは、それを改定するためには、区分所有者の数および議決権の各4分の3以上の賛成が必要となり、管理費の値上げが困難になる状況が見受けられ、このような場合には、管理費の金額はそのままにして、管理費を規約事項としている規定をまずは削除することから始めるのがよいようです。
            区分所有法19条は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収受する」と定めており、管理費の負担割合は、原則として共用部分の持分割合(=専有部分の床面積割合)によります。ただし、規約で別段の定めをすることができます。修繕積立金についても同様に考えられています。
            管理費等の負担の差異がどこまで許容されるかは、当該差異が合理的と評価できるか否か、という観点から総合判断せざるを得ず、許容範囲を数値化することは困難です。しかし、区分所有法19条の趣旨および後述の同法30条3項からすれば、たとえば専有部分の床面積割合による負担とされているにもかかわらず、他と比較して2倍以上の格差がある場合には無効となるものと考えられます。
            なお、専有部分の用途別に管理費等に差を設けることは、合理的な理由があれば2倍以上の格差も有効とした裁判例があります。住居部分と店舗部分では、たとえば、不特定多数の人が出入りするなど共用部分や敷地の利用状況や態様が異なるなどの合理的な理由がある場合には、管理費の負担割合に差を設けることも一般的に許容されています。ちなみに東京地裁昭和58年5月30日判決(判時1094号57頁)は、店舗部分について、住居部分の2倍以上の管理費を定めた規約を有効としています。
            どのくらいの差までが有効となるかはケースによります。ただし、使用頻度の立証となるとなかなか困難な面もあり、判例の傾向としては使用頻度の差は、管理費に差を設ける合理的理由とはならないとする傾向がありそうです(東京高裁昭和59年11月29日判決(判時1139号44頁))。
            また、法人と個人で、管理費に差を設ける総会決議の有効性が争われた事案では、負担能力の差は、合理的な理由とならないとして、法人と個人1.72対1、1.65対1の差異を設けた総会決議を無効としています(東京地裁平成2年7月24日判決(判時1382号83頁))。
            平成14年改正で新設された区分所有法30条3項は、「規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設……につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない」としていますので、今後、事例の集積が待たれるところです。