夫婦間の共有不動産の共有物分割請求

不動産が共有になっている理由としては、相続によって共有になっている事例の他に夫婦で不動産を共同購入したために共有になっている事例があります。

 夫婦間で共同購入した不動産であっても、購入後に夫婦間の仲が悪くなり別居状態になったため、共有関係を解消したいと考えている方もおられるかと思います。

 夫婦間の共有財産の共有状態を解消させる方法としては離婚の財産分与の手続によるのが原則です。

これが裁判所の調停などを通じた離婚であればこの手続の中で共有問題が解決されます。

ところが大多数の離婚は裁判所の離婚調停などではなく協議離婚によるものですので、共有状態が解消されないままのケースも多いです。

 このような場合に共有物分割請求が認められるかが問題となります。

 この問題について、夫婦の間で共有になっている不動産の共有状態を解消するためには、離婚の際の財産分与の手続をとるべきであり、共有物分割をすべきではないとする考えがあります。

このような考えに立って共有物分割請求を認めなかった下級審の裁判例もあります。

 しかし、夫婦共有財産については、遺産共有の場合と違って、財産分与手続では分配の割合が具体的な数値で予め定められているものでないこと、夫婦共有財産にあたるか否か(=各自の特有財産であるか否かということ)を確定する手段がないことから共有物分割請求自体を認めないと不都合を生じるという理由から共有物分割請求を行うこと自体を否定すべきでないとする考えが多数です。

裁判例でも夫婦共有財産について共有物分割請求を行うこと自体は認めているのが多数です。

 ただし夫婦共有財産について(例えば離婚の各種手続とは別個に)共有物分割請求を認めると相手方に著しく酷になるという事情があるとき(例:妻子が居住中の自宅不動産について、例えば共同売却や競売を進めるような形で共有分割手続を強硬に進めてしまおうとする場合等)には「権利濫用」として請求が認められない可能性もありますので注意が必要です。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。