共有物分割請求の「濫用」

共有物分割請求権は、共有物を失いたくないと共有者が考えていても裁判所から競売を命じる判決が出されてしまうと共有物を失うことになるという意味では、非常に強力な権利です。

このため、訴訟が提起された場合に共有物分割請求が「権利濫用」だと主張されて争われる可能性もあります。

 民法の1条3項で「権利の濫用は、これを許さない。」という条文があります。

共有物分割請求を濫用だと主張して争う人はこの民法1条3項を根拠に争うのですが、「権利濫用」という主張を認めて共有物分割請求が棄却された事例(内容の分類的には下記①~⑤等を参照)もあります。

 ①例えば別居中の夫が妻が居住する夫婦共有名義の不動産について行った共有物分割請求が権利濫用として棄却された判決は多いものと思われます(大阪高裁平成17年6月9日判決、東京地裁平成17年10月28日判決、東京高裁平成26年8月21日判決)。

これ以外に権利濫用として、共有物分割請求が棄却された裁判例としては、②原告主張の現物分割の方法では分割後の土地にまつわる権利関係が不安定になることが懸念されることを理由とするもの(東京地裁平成17年2月24日)や、③成年被後見状態にある人が建物から出なければいけなくなり生活費や医療費を賄うことが困難になるなど一方的に不利益を及ぼすことを理由とするもの(東京地裁平成19年1月17日判決)や、④共有物分割請求の対象土地が共有者らの所有にかかる隣接地から公道へ至るための共用通路であることを理由とするもの(福岡高裁平成19年1月25日判決)や、⑤相手が建物に居住し公的年金と賃料収入で生計を維持し余生を送ることが当然の前提となっていたことを理由とするもの(東京地裁平成25年7月25日判決)などがあります。

これとは逆に濫用と主張されながら濫用の主張を認めなかった裁判例も数多くありますが、濫用と認めて共有物分割請求を棄却した裁判例は少なからず存在しますのでこの点の最低限の注意は必要です。

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