親族間で共有になっている自宅の土地の持ち分と自宅近くで貸地としている底地の等価交換に成功した事例(ただし交換差金の支払いあり)

第1 依頼内容と結果

近郊住宅地に少し広め(200坪程度)の土地付き一戸建ての自宅、自宅傍に定期借地権の設定された土地、合計で300~400坪程度を有している佐藤様(仮名)から、自宅の土地および自宅傍の貸地のそれぞれを共有している親族の高橋さん(仮名)がいますが、その親族との間の共有物分割ないし交換の示談交渉をしてもらいたいという相談を受けました。

佐藤様曰く自分達の祖父母の代から所有している土地でありますが、自分達の父母の代で遺産分割によって、現在は親族の間で自宅の土地も借地の底地もそれぞれ共有になってしまっており、固定資産税や都市計画税および地代の清算が毎年面倒であること、そもそも自分達の好きなタイミングで売却等を考えようにも共有であるとそれができないために共有関係を解消したいとの相談がありました。

最初の相談の際から、自宅の土地建物登記簿謄本、公図、地積測量図、現況測量図、建物図面、定期借地権設定契約書、地代の入金履歴、借地の測量図、借地底地の土地登記簿謄本および借地上建物の建物登記簿謄本等をお持ちいただき、相談に乗りました。共有持分割合を確認したところ、自宅の土地については、佐藤様が65%、高橋さんが35%であり、定期借地の底地については、佐藤様が30%、高橋さん70%の各持分割合であることが分かりました。権利関係が確認できたところで、当職は佐藤様と解決策を検討しました。

佐藤様からの要請では、佐藤様も高橋さんも、相手方の持分すなわち自宅部分あるいは底地部分の相手方の持分について、お金を出して買い取るところまでの現金の準備は双方ともに難しいとの話でした。そのため、現金支出が極力少なくて済む等価交換を佐藤様と高橋さんの間で行なうことを提案しました。具体的には、佐藤様の自宅であるため、佐藤様の自宅の下の土地の高橋さん所有持分である35%と借地の底地部分の佐藤様持分30%を交換できないかというお話でした。

第2 ご相談内容(事案背景),解決方法,費用と時間と得られた利益

当職も佐藤様も最終的には等価交換の方法が最も相応しいと考え、それを選択することにしました。ところが問題は、それぞれの持分の価格の評価です。最終的には両方の土地について、不動産会社に簡易査定を行なうことに加え、両方の土地について不動産鑑定士に不動産の鑑定評価をさせました。その鑑定評価書の価格が基準になったものの、本件には次のような複雑な問題点がありました。

1 佐藤様自宅の土地に建っている(自宅)建物は100%佐藤様名義になっているものの、その建物が存在することにより、高橋さん名義の35%の持分部分が減額されるのかされないのか(されるとすれば、幾ら減額になるのか。ただし、佐藤様から土地の持分権者である高橋さんへの地代の支払いはない。一方、固定資産税・土地計画税については、自宅ということもあり、土地分も建物分も佐藤様が全額負担している。)

2 自宅近くの借地の底地は(定期)借地権が設定されているため、更地価格から通常60%前後減額されることがあり得るが、たまたま借地が定期借地権であったため、定期借地権が設定されていることによる底地の減額について、何を根拠にどの程度の減額を考えるのか。

3 その借地権の設定時に宅地造成工事が絡み、その造成費用を佐藤様が支出しているが、その支出部分について、今回の等価交換において清算することはできないか。

4  各借地人から借地権設定契約時に敷金および保証金を佐藤様側が預かっているが、等価交換にあたり、賃貸人として預かり敷金・保証金について、どう清算するか。

5  借地については従前から、持分割合である佐藤様30%、高橋さん70%の割合で、地代と固定資産税・都市計画税を、それぞれ割合に応じて清算をしてきたが、代が変わった数年前からその清算もなされていなかったため、今回の等価交換の際に未清算の分を清算したい。

 

第3 依頼者の支払った弁護士費用と時間,およびそれにより得られた利益

 

上記1~5の各問題点についても、交渉の中で、各着地点を探り佐藤様のご意思を尊重する内容で解決に導くことができました。但し、上記各共有持分を価額評価した結果、佐藤様が取得する分の方が若干(1000~2000万円程度)高いということが判明したので、その分佐藤様は高橋さんに交換差金(1000~2000万円程度)をお支払しました。そして、本件の解決により、佐藤様は自分の自宅の土地部分の高橋さん持分部分35%を取得できたことによって、自宅が100%自身の所有地になるという利益を得ました。かつ、借地の底地については、自身が所有していた30%の持分を適正な価格で高橋さんに処分することと同じ結果を得ることができました。

時間については、上記の1~5のような複雑な問題点が絡んでいたため、高橋さん側にも弁護士が就いて交渉が比較的スムーズに進んだ面はあったものの、交渉にはそれなりの時間(6ヶ月~10ヶ月程度)がかかりました。

弁護士費用については、概算で、取得できた自宅の下の土地の35%の持分と処分できた借地の底地の各30%の持分が経済的利益となり、それを基準に算定した着手金と報酬金を(併せて上記経済的利益の約15%程度)を頂きました。いずれにせよ、上記の佐藤様が得られた経済的利益に鑑みますと、上記金額(上記利益の15%程度)は決して高くはないものと思料されます。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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