賃料が支払えないため、賃借していた建物を明渡した後、未払い賃料を請求された事案
ご相談内容
依頼者の保坂さん(仮名)は、10年以上家賃を支払わずにいたところ、ついに大家から建物明渡の調停を起こされました。保坂さんにも様々な言い分があり、話し合いによる解決が図れないため、調停は不調に終わり、その後、訴訟を提起されたので、私たちに相談に来ました。
保坂さんには、賃貸借期間中、大家が建物の修繕義務を果たしてこなかったという不満がありました。
また、当時、保坂さんは仕事が見つからず収入もありませんでした。
解決内容
私たちは、訴訟の中で、まず保坂さんが自発的に建物を退去しており、明渡義務は消滅していることを主張しました。
そして、大家は過去10年分の未払い家賃を請求してきましたが、家賃5年を超える分については時効により消滅していることを主張しました。また、建物の写真を示し、建物が老朽化しているにも関わらず大家が修繕義務を果たしていないことも主張しました。
最終的には、私たちの主張の一部も認められ、支払う金額は請求額の10分の1以下になりました。
支払額がここまで減少した原因としては、連帯保証人が賃料の一部を支払い、一部和解が成立していたこと、保坂さんに支払い能力がなく高額な請求が認められた場合、破産せざるを得なくなることも考慮されました。
本件のように未払い家賃を請求された場合、家賃の時効期間は大家または借家人が商人の場合、5年間なので、時効消滅している期間の家賃も請求されえいないか注意が必要です。
また、本件のような訴訟を起こされた際に、どうせ支払わなくてはいけないと諦めてしまい、訴訟を無視するなどした場合には、本来支払われなくてもいいかもしれない金額のまま判決が出てしまうこともあります。
債権者側も債務者の資力については考慮してくれる場合もあるので、訴訟になった場合にも弁護士等の専門家に依頼することにより請求額を大幅に減額してもらえた上で和解となるケースもあります。また、本件の依頼者は法テラス経由の依頼者だったので、弁護士費用の負担も比較的少ないケースでした。
投稿者プロフィール
-
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を残している。
最新の投稿
- 2024.02.07解決事例同居する娘の暴力等に悩む両親からの依頼で娘を家から立ち退かせた事例
- 2023.08.30解決事例借地人からの依頼で借地権を地主に、相場よりもかなり高額で買い取ってもらうことに成功した事例
- 2023.08.01解決事例家賃を滞納した賃借人を退去させ、未払いの賃料、原状回復費用も回収できた事例
- 2023.07.05新着情報業務委託報酬等請求訴訟を訴訟上の和解で解決した事例
解決事例の最新記事
- 同居する娘の暴力等に悩む両親からの依頼で娘を家から立ち退かせた事例
- 借地人からの依頼で借地権を地主に、相場よりもかなり高額で買い取ってもらうことに成功した事例
- 家賃を滞納した賃借人を退去させ、未払いの賃料、原状回復費用も回収できた事例
- 業務委託報酬等請求訴訟を訴訟上の和解で解決した事例
- 夫婦の離婚に伴い、夫婦共有不動産の妻の単独取得に成功した事例を追加いたしました
- 離婚と不動産に関する解決事例を追加いたしました
- 共有者の1名が売却に反対していた更地(共有)を共同売却した事例
- 共有の賃貸アパート1棟の競売(落札)による共同売却に成功した事例
- 遺産分割協議では、持分を現金で取得することを拒絶されたが、共有物分割請求をすることで持分を現金で取得できた事例
- 共有不動産を担保にした借入金で持分を時価で買い取ってもらった事例
- 高齢の依頼者がリバースモーゲージで不動産担保ローンを組んで持分を買い取った事例
- 高齢の父親が居住する共有の分譲マンションで父親に持分を買い取ってもらった事例
- 持分を担保とした融資を受けた後に、共有不動産を共同売却した事例
- 持分買取業者の共有物分割請求訴訟に対して居住者による持分買取の和解を成立させた事例
- 相手方からの賃料請求を断念させた事例
- 不動産競売によって、業者の査定よりも高額で落札されて、その結果、より有利な条件で共有持分売却ができた事例
- 不動産競売によって、業者の査定よりも高額で落札されて、その結果、より有利な条件で共有持分売却ができた事例
- 複数の共有の賃貸不動産の持分を時価で買い取ってもらい、未分配だった賃料も回収した事例
- 神奈川県内にアパート(木造アパート20部屋×4棟)を所有するオーナー様からの相談事例
- 医院としてテナントを賃貸していたビルのオーバーが賃借人(医療法人)から賃料の減額請求をされたが、要求されていた減額幅70%を10%強だけ防げた事例
- 親族間で共有になっている自宅の土地の持ち分と自宅近くで貸地としている底地の等価交換に成功した事例(ただし交換差金の支払いあり)
- 建物を貸していた相手が家賃を支払わなくなったため退去を求めた事案
- 建物の一室で事業を行っていた依頼者が明渡を求められた事案で、調停・訴訟の中で立退料を求め、明渡の猶予期間と立退料の支払が認められた事例
- 家賃を滞納した賃貸人を退去させ、未払いの賃料、修繕費も回収できた事例
- 親族間で共有になっている自宅の土地の持ち分と自宅近くで貸地としている底地の等価交換に成功した事例(ただし交換差金の支払いあり)
- 横浜市の近郊農家における遺産分割・調停・審判申し立て事件において農業を継いで30年以上農作業等を行ってきた長男に対する寄与分的割合を認定してもらえた結果、農地は全て上記長男が取得できた上で、他の兄弟への代償金額が比較的低額に抑えられることに成功した事例
- 兄と弟の間の遺産分割、調停を行い、長男の妻が夫の父の介護をした分を父に対する寄与分と見てくれたこと、弟に生前特別受益が若干あったことから、全体的には兄が遺産の65%程度、弟が35%程度を取得する形で遺産分割調停が成立した事例
- 借地契約書に増改築禁止特約が存在していたにも関わらず、地主に無断で比較的大規模な内装リフォームを行ってしまい、地主から増改築禁止特約違反で借地契約の解除を求められたが、解除は認められず、借地から退去することと引き換えに相場以上の立退料をもらえた事例
- 借地人から借地権(および建物)を買い取り、期限付きで借地人を退去させることができた事例