裁判例③【東京地判平21・4・13WL】

買主Xらは、工房件居宅(約100㎡)を新築するため、仲介業者Y2の仲介により売主業者Y1から本件土地を購入した。重要事項説明書の「法令に基づく制限の概要」欄に「第2種高度地区」と記載されていたが、同規制の内容を具体的に説明した書類は含まれていなかった。本件土地の周辺は第2種高度地区に指定され建築物の高さが制限され、建ぺい率80%であるため、1フロア当たり床面積は最大で24.416㎡しか確保できず、延床面積100㎡程度の建物を建築するには4階建とするほかなく3階部分の一部が斜線制限の影響を受け延100㎡程度の建物を建築することは法的に不可能であった。Xらは、Yらに対し説明義務違反を理由に損害賠償請求した。

  裁判所は、①仲介業者の説明義務違反について、「宅建業者は、媒介に係る売買等の当事者に対し、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限に関する事項の概要等の重要事項を説明する義務を負う(宅建業法35条1項)。また、不動産媒介契約は、民事仲立であり民法上の準委任契約に該当するところ、媒介業者は、媒介契約に基づき、委任者に対し、契約の本旨に従い、善良なる管理者の注意義務を負う(民法第656条、644条)。宅建業法は、取締規定であり、宅建業者とXらとの間の契約を直接規制するものではないが、同法が、業務に対する規制によって宅地建物の取引の公正の確保を達成するだけでなく、購入者などの利益の保護を目的としている事(同法1条)、宅建業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならないと規定していること(同法31条)を考えあわせると、宅建業法上の重要事項説明義務は、媒介契約における善良なる管理者の注意義務の内実をなすというべきである。Y2は、XらとY1との間の本件各不動産の売買契約を媒介するに当たり、宅建業者として、本件売買契約に基づき、本件土地に関する法的規制を説明する義務を負う。そして、Y1がXらから本件土地の延べ床面積100㎡の建物を新築する予定であると告げられていたという具体的事情の下においては、上記債務の内容には、単に存在する法的規制の種類、名称等を告げるのみでなく、本件土地に課せられた法的規制の具体的内容の説明を通じて、Xらの希望に沿う建物が建築できないことをも説明することが含まれる」としてY2の債務不履行を認定した。②売主業者の説明義務違反について「宅建業者は、宅地建物の売買の売主となる場合、買主となろうとする者に対し、宅建業法35条1項各号に規定された重要事項について説明義務を負い、同義務は、当該売買を宅建業者が媒介した場合でも、免除されないと解される(同法35条1項本文参照)」、「Y1は、売買契約の売主として、信義に従い誠実にどう契約上の債務を行わなければならないところ(民法1条2項)、前記のとおり、宅建業法は、宅建業者が取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならないと規定しているから(宅建業法31条)、宅建業法上の重要事項説明義務は、売買契約上の付随義務の内実をなす」とし、Y1が、本件売買契約に付随する説明義務に違反した債務不履行を認め、Xの請求を一部認容した。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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