裁判例⑤【津地判平26・3・6判時2229号50頁】

宅地分譲業者Y1(宅建業者)は、Y2の市長からランド開発区域の宅地造成事業につき開発行為の許可を受け、Xに対し、造成後の本件土地を売却し、ZがXとの請負契約に基づき建物を建築した。その後、本件土地の西側道路を中心に最大深度約3mの陥没が発生し建物が傾きXは転居を余儀なくされた。Xは、Y2に対し国家賠償請求、Y1に対し、債務不履行(説明義務違反)に基づく損害賠償請求をした。原審はYらに対する請求を一部認容し、Yらが控訴した。控訴審はY2に対する敗訴部分を取消しXの請求を棄却した(名古屋高判平27・11・27WL)。

  裁判所は、「宅建業者は、宅地又は建物の売買に当たり、その相手方等に対し、取引主任者をして、少なくとも宅建業法35条1項各号に掲げる重要事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならず、都市計画法第29条1項及び2項に基づく制限はこの重要事項に含まれている(宅建業法35条1項2号、同法施行令3条1項1号)。したがって、宅建業者は、宅地の売買の相手方等に対し、当該宅地について開発行為をしようとする場合に開発許可を受ける必要がある場合に該当するか否かについて書面をもって説明するとともに、既に開発許可を受けている場合には、その開発許可の内容についても同様に説明すべき義務がある」。本件開発許可には、「都市計画法32条の規定により協議された事項について遅滞なく行うこと、すなわちランド開発区域が磨き砂の採掘跡地をであり、地盤に問題があり得るため、Y1が責任をもって空調調査及び安全対策を実施する等を定めた許可条件が付されていた。かかる開発許可の条件は、開発許可の内容を構成するものであるから、宅建業法35条1項2号に定める重要事項に該当する」。Y1は、Xに対して、本件土地に関する重要事項の説明に際し、本件開発許可条件を明らかにしその許可証を説明資料として添付していたが許可条件の示された許可証の別紙を示していなかった。したがって、「Y1は、宅建業者として、Xに対し、取引主任者をして、都市計画法29条1項に基づく制限として、本件開発許可に付された許可条件について何らの説明もさせず、書面も示さなかったものと認められ、説明義務に違反した」とし、XのY1に対する請求を一部容認した。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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