裁判例⑳【東京地判平24・8・29WL】

本件土地1及び2には昭和49年2月建築の木造2階建共同住宅が建っており、Aが昭和52年11月にこれを購入した。本件土地3及び地上の共同建物(旧建物)はBが所有していたところ、平成15年10月、旧建物の一室で変死体が発見され同居人が殺害容疑で逮捕され、当時の新聞に報じられた。Cは、アパートを建築するため妻が代表者の宅建業者Y1の名義で平成17年11月に本件土地1及び2並びに共同住宅を購入し平成18年2月に本件土地3及び旧建物を購入した。Cが本件土地3及び旧建物を購入する際、重要事項説明書には本件殺人事件に関する記載はなかった。Cはアパート新築のために旧建物を取り壊したが、妻からアパート経営に反対され、仲介業者Y2の仲介により平成19年9月、本件各土地をXに売り渡した。Xは、建物を新築したが、平成22年8月、担保不動産競売開始決定により第三者が落札し所有権を失った。Xが仲介業者に本件土地の任意売却を依頼したところ、旧建物で本件殺人事件があったことを知った。XはYらに対し不法行為を理由に損害賠償請求をした。

  裁判所は、Yらについて、旧建物において本件殺人事件が起きたことを知っていたということはできないとした上で、Y2について、「一般に、土地売買の仲介業者が、売買契約締結当時、その約1年前に建物が取り壊されて更地になっている場合には、特段の事情がない限り、取り壊された共同住宅において、過去数年間に何らかの事故が発生していたか否かについてまで調査すべきであるとはいえず、本件媒介契約ないし本件売買契約において、仲介業者であるY2がこのような調査義務を負うべき特段の事情があったことを窺わせる事情は見当たらない」とし、Xの請求を棄却した。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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