裁判例㉔【東京地判平24・10・12WL】

Xは、仲介業者Y1(担当者甲)に対し、平成21年7月12日、X所有の自宅(土地建物)の売却仲介を委託する(専属専任媒介契約、媒介価額5850万円)一方で、Y1に対し、母親の介護に適した建物を建築するために自宅の売却代金を新たな宅地の購入代金に充てたいとの話をして購入物件の紹介を依頼した(一般媒介契約、媒介価額5850万円)。Y1は、XにY2所有の本件土地を紹介し、10月22日、本件土地の買受け仲介を受託し(代金4980万円)、自宅売却の媒介価額を5980万円に変更した。XとY2は、12月10日、本件売買契約を締結し(代金4750万円)、Xは、Y2に手付金を交付し、Y1に仲介報酬を支払った。Xが残代金を支払わなかったため、Y2は、契約解除し手付を没収した。売買契約書には、自宅が残代金の決済日までに売却されることを停止条件とする旨、あるいは自宅が残代金の決済日までに売却されないことを解除条件とする旨の特約(本件特約)の記載がなされていない。Xは、Y1に対し債務不履行または不法行為(注意義務違反)に基づく損害賠償請求、Y2に対し錯誤無効を理由に不当利得返還請求、Y2は、Xに対し、不当訴訟を理由に損害賠償請求をした。

  裁判所は、本件売買契約締結当時、Xは、Y1に対し、「自宅についての売買契約が成立することを条件に、本件土地売買の仲介依頼をしていた」ことを認定し、Y1は、「仲介業者として、顧客であるXの上記依頼内容に反する売買契約を成立させないよう注意すべき義務があるのに、その義務を怠ってXの上記依頼内容に反する内容で本件売買契約を成立させ、もってXに損害を与えた」とし、Y1のXに対する債務不履行責任を認めた。甲は、Y1の従業員として、上記義務に違反して本件売買契約を成立させ、もってXに侵害を与えているとし、Y1のXに対する使用者責任に基づく損害賠償責任を認めた。XがY1に交付した仲介報酬、Y2に交付した手付金を損害として認め、Y2に対する錯誤無効の主張を排斥しXの請求を棄却し、Y2のXに対する請求を棄却した。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

事務所概要
弁護士法人 タウン&シティ法律事務所
神奈川県横浜市中区日本大通14
KN日本大通ビル
(旧横浜三井物産ビル)2階
関内駅から徒歩5分
日本大通りから徒歩1分
民法改正開催延期(日時未定)横浜市開港記念会館7号室