裁判例㉓【高松高判平26・6・19判時2236号101頁】

X2は、仲介業者にYの仲介により、売主A(個人)から居住用建物を建築する目的で本件土地を購入する契約を締結し、X1とX2に所有権移転登記した。契約締結後、Yの担当者甲は残代金決済の数日前に同業者と本件土地について話す中で本件土地が、”訳あり物件”であるかもしれないと認識し、甲及び乙において確認したところ、20年以上前に本件土地上の建物で自殺事故があったことを知った。甲は、20年以上前の出来事であり建物が取り壊され、その後土地売却が繰り返されていることなどから、Xらに説明しなかった。契約書では売主の瑕疵担保責任は排除されていた。Xは、Yに対し、不法行為(説明義務違反)を理由に損害賠償請求した。第1審はXらの請求を一部認容し、Xらが控訴、Yが附帯控訴したが、控訴審はいずれも棄却した。

 裁判所は、調査義務違反の有無について、「宅建業者は、売買の仲介にあたり、売買当事者の判断に重要な影響を及ぼす事実について説明義務を負う(宅建業法47条1号ニ)。したがって、説明義務を果たす前提として、一定の範囲内で調査義務を負う」。「対象物件が事故物件か否か、より具体的には、過去に自殺等の事故があった物件か否かは、その性質上、対象物件の外形からは認識し得ない事柄である。また、このような自殺等の事故は、通常の物件においてよく見受けられるというようなものではない。対象物件上で自殺があったというのは、極めて稀な事態でもある。したがって、売買の仲介にあたる宅建業者としては、対象物件の隠れた事故物件性については、その存在を疑うべき事情があれば、独自に調査してその調査結果を説明すべき義務を負うが、そうでない場合には、独自に調査をすべき義務までは負うものではない」。説明義務違反の有無について、「本件土地上で過去に自殺があったとの事実は、本件売買契約を締結するか否かの判断に影響を及ぼす事実であるとともに、締結してしまった売買契約につき、その効力を解除等によって争うか否かの判断に重要な影響を及ぼす事実でもあるといえる。したがって、宅建業者として本件売買を仲介したYとしては、本件売買契約締結後であっても、このような重要な事実を認識するに至った以上、代金決済や引渡手続が完了してしまう前に、これを売買当事者であるX1に説明すべき義務があったといえる(宅建業法47条1号ニ)」。「Y担当者である甲及び乙は、自殺されており、本件土地が相当以前から更地となっていたことなどから、本件土地上で過去に自殺事故があったらしいとの事実をX1に説明しなければならない理由はないと考え、これをしなかった。したがって、Yは、Xらに対し、この説明義務違反(不法行為)と相当因果関係のある損害を賠償すべき責任を負う」。Xらは「マイホーム建築目的で土地の取得を希望する者が、本件建物内での自殺の事実が近隣住民の記憶に残っている状況下において、他の物件があるにもかかわらずあえて本件土地を選択して取得を希望することは考えにくい以上、Yが本件土地上で過去に自殺があったとの事実を認識していた場合には、これをXらに説明する義務を負う」。Yが売買契約締結に先立ち事故物件の調査義務を負うかについて「本件売買契約が小さな子供を含む家族のマイホームを建築する目的であったとしても、対象物件が自殺等の事故物件であることは極めて稀な事態であることからすれば、事故物件性の存在を疑うべき事情がない場合にまで、売買の仲介に当たる宅建業者に事故物件であるかを調査すべき義務があると認めることはできない。なお、Xらは隣人に確認すれば容易に事故物件であることを確認できたことを指摘するが、この点は調査義務の有無を左右する事情には当たらない」とした。