裁判例⑯【東京高判平13・12・26判タ1115号185頁】

買主Xらは建売業者Aから建売住宅を仲介業者Y(担当者甲)の仲介により購入したが、軟弱地盤のため地盤が沈下し建物に床の高低差の発生など著しい不具合が生じた。XらはA、Yに対し説明義務違反を理由に損害賠償請求した。

   裁判所は、「不動産の仲介業務を依頼された者が、買主に対して負うべき説明・告知義務の内容及び本件において[Yの担当者]が本件各土地が軟弱地盤であることについて説明、告知義務を負う」ことは原判決のとおりである。「なお付言すれば、宅建業者は、宅建業法上、土地建物の購入者等の利益の保護のために(同法1条)、取引の関係者に対し信義誠実を旨とし業務を行う責務を負っているものであり、(31条)、同法35条は、重要事項の説明義務を規定している。そして同条が、『少なくとも』同条に掲げられた事項について、宅地建物取引主任者に説明させるべきものとしていることに照らせば、同条に規定された重要事項は、買主保護のために最低限の事項を定めたものに過ぎないと解される。そうすると、宅建業者は、信義則上、同条に規定された事項は勿論、買主が売買契約を締結するかどうかを決定付けるような重要な事項について知り得た事実については、これを買主に説明・告知する義務を負い、この義務に反して当該事実を告知せず、又は不実のことを告げたような場合には、これによって損害を受けた買主に対して、損害賠償の責めに任ずるものと解するのが相当である」。Yにおいて本件各土地が「軟弱地盤であることを認識していたというためには、報告書に記載されたような地質についての詳細な分布までを正確に認識していなければならないと解すべきものではなく、水分が多くて軟弱であり、沈下を起こしやすい地盤というほどの意味を認識していれば足りる」とし、Yの説明義務違反を認め、Yの控訴を棄却した。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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