裁判例⑱【大阪地判平20・5・20判タ1291号279頁】

買主Xは、「本件建物に居住する目的で本件[売買]契約を締結することとしたのであるから、その前提として、本件建物が居住に適した性状、機能を備えているか否かを判断する必要があるところ、[仲介業者である]Y代表者も、Xの上記目的を認識していたのであるから、本件建物の物理的瑕疵によってその目的が実現できない可能性を示唆する情報を認識している場合には、Xに対し、積極的にその旨を告知すべき業務上の一般的注意義務を負う(なお、そのような認識に欠ける場合には、宅建業者が建物の物理的瑕疵の存否を調査する専門家ではない以上、そうした点について調査義務まで負うわけではない。)」。「Y代表者は、本件建物の見学において、雨漏り箇所が複数あると認識し、白アリらしき虫の死骸を発見し、白アリ被害について多少懸念を抱いており、1階和室以外に、玄関左右の端、浴槽、収納部分の角にも腐食があると認識していた上、柱にガムテープが貼られるなどしていることも認識していたというのであるから、白アリ被害や柱の腐食等の存在により、本件建物が居住に適した性状、機能を十分に備えていないのではないかと疑いを抱く契機が十分に存在したと認められる。さらに、本件建物にはA[所有者]の妹が居住しており、A自身は、平成7年1月以降、本件建物に全く行っていなかったというのであり、Y代表者もそのことを知っていたと推認されるから、Aによる本件建物の状況説明が現状を正確に反映していないことを疑う余地も存在した。以上の諸事情を考慮すると、Y代表者は、Xに対し、白アリらしき虫の死骸を発見したこと、1階和室以外にも腐食部分があること、雨漏りの箇所が複数あることなどを説明し、Xにさらなる調査を尽くすよう促す業務上の一般的注意義務を負っていたというべきであるが、実際には、そのような注意義務を尽くさなかった」とし、Xの請求を一部認容した。


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