民泊に関する資料

1 民泊を行う三つの制度

① 旅館業法

(1) 概要

(旅館・ホテル営業)

・施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの

・宿泊する場所を多人数で共有する構造および設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のもの

 (2) 対象地域

    全国

  (3)  所管省庁

    厚生労働省→保健所

 (4)  許認可等

       都道府県知事等の許可

 (5) 住居専用地域での営業

    原則不可

(6) 営業日数の制限

   制限なし

(7) 宿泊者名簿の作成・保存義務

   あり

・氏名、住所、職業、旅券番号等

(8) 玄関帳場の設置義務(構造基準)

(旅館・ホテル営業)

 あり

 ・代替機能がある設備を設ければ不要

(簡易宿泊営業)

 なし

 ・条例で義務付けられている場合あり

(9) 最低床面積の確保

(旅館・ホテル営業)

 ・7㎡(寝台を置く客室にあっては9㎡)/室(内法)

(簡易宿泊営業)

 ・客室の延床面積33㎡/室(内法)

  ・ただし、宿泊者数10人未満の場合は、3.3㎡/人

(10) 衛生措置

   換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置

(11) 非常用照明等の安全確保の措置義務

   あり

(12) 消防用設備等の設置

   あり

(13) 近隣住民とのトラブル防止措置

   規定なし

(14) 不在時の管理業者への委託業務

   規定なし

(15) 行政処分権限

   ・報告徴収

・立ち入り検査等

・措置命令等

・業務停止命令

・許可取消し

② 国家戦略特別区域法(特区民泊)

(1) 概要

    一定の要件を満たす特区内の施設を、賃貸借契約に基づき条例で定めた期間以上、旅客に使用させるもの

 (2) 対象地域

    国家戦略特別区域指定地域

  (3)  所管省庁

    内閣府(厚生労働省)

 (4)  許認可等

       都道府県知事等の認定

 (5) 住居専用地域での営業

    可能

    ・認定を行う自治体ごとに、制限している場合あり

(6) 営業日数の制限

   2泊3日以上の滞在が条件

   ・下限日数は条例により定める(現在は、いずれも2泊3日)

   ・年間営業日日数の上限は設けていない

(7) 宿泊者名簿の作成・保存義務

   あり

・氏名、住所、職業、旅券番号等

(8) 玄関帳場の設置義務(構造基準)

 なし

 ・氏名、住所等は賃貸借契約書で担保

(9) 最低床面積の確保

      原則25㎡/室(壁芯)

   ・自治体の判断で変更可能

 (10) 衛生措置

   ・換気、採光、照明、防湿、清潔等の設置

   ・使用の開始時に清潔な居室の提供

(11) 非常用照明等の安全確保の措置義務

   あり

   ・6泊7日以上の滞在期間の施設の場合は不要

(12) 消防用設備等の設置

   あり

(13) 近隣住民とのトラブル防止措置

   規定あり

   ・近隣住民への適切な説明

   ・苦情および問合せに適切に対応するための体制および周知方法、その他連絡先の確保

・滞在者への注意事項説明

(14) 不在時の管理業者への委託業務

   規定なし

(15) 行政処分権限

   ・報告徴収

・立ち入り検査については、認定の取消事由への該当性判断を目的とするものであれば、条例により規定可能

・事情認定取消し

③ 住宅宿泊事業法

(1) 概要

    ・住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、有償かつ反復継続するもの

    ・「家主居住型」と「家主不在型」に区別した上で規制(「家主不在型」の場合、

行政庁の登録を受けた「住宅宿泊管理業者」に管理を委託する必要がある等)

 (2) 対象地域

    全国

  (3)  所管省庁

    国土交通省

    厚生労働省

    観光庁

 (4)  許認可等

       都道府県知事等への届出

 (5) 住居専用地域での営業

    可能

    ・条例により制限されている場合あり

(6) 営業日数の制限

   年間提供日数180日以内

   ・条例でさらに実施期間を短縮する制限が可能

(7) 宿泊者名簿の作成・保存義務

   あり

・氏名、住所、職業、旅券番号等

(8) 玄関帳場の設置義務(構造基準)

 なし

 ・氏名、住所等は宿泊サービス提供契約書で担保

(9) 最低床面積の確保

      3.3㎡/人(内法)

   ・自治体の判断で変更可能

 (10) 衛生措置

   ・換気、除湿、清潔等の設置

   ・定期的な清掃等

(11) 非常用照明等の安全確保の措置義務

   あり

   ・家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要

(12) 消防用設備等の設置

   あり

   ・家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要

(13) 近隣住民とのトラブル防止措置

   規定あり

   ・宿泊者への注意事項説明(説明義務)

   ・苦情対応の義務

・「標識」の提示(提示義務)

(14) 不在時の管理業者への委託業務

   規定あり

(15) 行政処分権限

   ・定期報告義務

   ・報告徴収

   ・立入検査

   ・業務改善命令

   ・業務停止命令

   ・業務廃止命令

2 旅館業法に該当する条件

① 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生管理上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること。

② 施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業しているものであること。

3 旅館業と不動産賃貸業の関係

4 旅館業の許可が必要な場合

① 宿泊料の徴収の有無

  【宿泊料】

  ・名称にかかわらず、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費など

  ・時間単位で利用させる場合を含む

② 社会性の有無

  【社会性があると判断される例】

  ・不特定の者を宿泊させる場合

  ・広告等により広く一般に募集を行っている場合 など

③ 継続反復性の有無

  【継続反復性があると判断される例】

  ・宿泊募集を継続的に行っている場合

  ・曜日限定、季節営業など、営業日を限定した場合であっても繰り返し行っている場

  合など

④  生活の本拠か否か

  【生活の本拠ではないと考えられる例】

  ・使用期間が1カ月未満(ウイークリーマンション等)

  ・使用期間が1カ月以上であっても、部屋の清掃や寝具類の提供等を施設提供者が行う場合(下宿など) など

5 主な構造設備の基準

① 旅館・ホテル営業

(1) 客室の延床面積

   ・7㎡(寝台を置く客室にあっては9㎡)以上

(2) 階層式寝台

    特になし

(3)  玄関、玄関帳場もしくはフロントまたはこれに類する設備(以下「玄関帳場等」といいます)

     ・玄関帳場等は、玄関から簡易に見えるよう宿泊者が通過する場所に位置し、囲い等により宿泊者の出入りを容易に見ることができない構造設備でないこと

   ・玄関帳場等は、事務を執るのに適した広さを有し、相対する宿泊者と従事者が直接面接できる構造であること

・玄関帳場に類する設備として従業者が常時待機し、来客の都度、玄関に出て客に対応する構造の部屋を玄関に付設することができること

・モーテル等特定の用途がある施設においては、玄関帳場等として、施設への入口、または宿泊しようとする者が当該施設を利用しようとするときに必ず通過する通路に面して、その者と面接に適する規模と構造がある設備(例えば管理棟)を設けることができること

・ただし、次のいずれにも該当するときは、不要

 ① 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること(緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね、10分程度で職員等が駆け付けることができる体制を想定しているものであること)

     ② 営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や出入りの状況の確認を常時鮮明な画像により実施すること

     ③ 鍵の受渡しを適切に行う事

(4)  換気、採光、照明、防湿および排水の設備

   適当な設備

(5)  入浴設備

   ・宿泊者の需要を満たすことができる規模

   ・共同浴室を設ける場合は、原則として男女別に分け、各1カ所以上備え付けること

   ・当該施設に近接して公衆浴場がある等に入浴に支障をきたさないと認められる場合

は不要

(6) 洗面設備

     宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模

(7) 便所

   ・適当な数および構造設備

   ・共同便所を設ける場合は、男子用、女子用の別に分けて、適当な数を備え付ける

こと

(8) その他

    都道府県等が条例で定める基準

② 簡易宿所

(1) 客室の延床面積

   ・33㎡以上

   ・ただし、簡易宿所営業の許可の申請にあたって宿泊者の数を10人未満とする場合には、3.3㎡に当該宿泊者の数を乗じて得た面積以上

(2) 階層式寝台

    上段と下段の間隔はおおむね1m以上

(3)  玄関帳場等

     ・適当な規模(努力義務)

   ・ただし、次のいずれにも該当するときは、不要

 i 代替する機能を持つ設備を設けることその他善良の風俗の保持を図るため

の措置が講じられていること

      ii 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整

備されていること(緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要

する状況に対し、その求めに応じて、通常おおむね10分程度で職員等が駆

け付けることができる体制をとることが望ましい)

 (4)  換気、採光、証明、防湿および排水の設備

   適当な設備

(5)  入浴設備

   ・宿泊者の需要を満たすことができる規模

   ・共同浴室を設ける場合は、原則として男女別に分け、各1カ所以上備え付けること

   ・当該施設に近接して公衆浴場がある等に入浴に支障をきたさないと認められる場合

は不要

(6) 洗面設備

     宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模

(7) 便所

   ・適当な数および構造設備

   ・共同便所を設ける場合は、男子用、女子用の別に分けて、適当な数を備え付けること

(8) その他

    都道府県等が条例で定める基準

6 旅館・ホテル営業の構造設備基準の改正

① 最低客室の廃止

  最低客室数(ホテル営業:10室、旅館営業:5室)の基準が廃止されました。

② 洋室の構造設備の要件の廃止

  洋室の構造設備の要件(寝具は洋式であること、出入口・窓に鍵をかけることができること、客室と他の客室等との境が壁造りであること)が廃止されました

③ 1客室の最低床面積の緩和

  1客室の最低床面積(ホテル営業:洋式客室9㎡以上、旅館営業:和室客室7㎡以上

が、7㎡(寝台を置く客室にあっては9㎡以上)となりました。

④ 玄関帳場等の基準の緩和

  以下の要件をいずれも満たし、宿泊者の安全や利便性の確保ができる場合には、玄関帳場等を設置しなくてもよくなりました。

 ・事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること(緊急時に対応できる体制については、宿泊者の緊急を要する状況に対し、その求めに応じて、おおむね10分程度で職員等が駆け付けることができる体制を想定しているものであること)

・営業者自らが設置したビデオカメラ等により、宿泊者の本人確認や出入りの状況の確認を受容時鮮明な画像により実施すること     

 ・カギの受渡しを適切に行うこと

⑤ 暖房の設備基準の廃止

  ホテル営業の施設における暖房の設置要件が廃止されました

⑥ 便所の設備基準の緩和

  適当な数の便所があればよいこととされました

7 外国人滞在施設経営事業(特区民泊)実施地域

(1) 東京都大田区 

   ・「ホテル・旅館」の建築が可能な地域(第1種居住地域にあっては3,000㎡以下)

(2) 大阪府(34市町村)

  ・市街化区域のうち工業専用地域を除く全地域(6市町)

   ・市街化区域のうち「ホテル・旅館」の建築が可能な地域(第1種居住地域にあっては3,000㎡以下)

(3) 大阪府

  ・「ホテル・旅館」の建築が可能な地域(第1種居住地域にあっては3,000㎡以下)

 (4) 北九州市

   ・低層住居専用地域

   ・市街化調整区域

 (5) 新潟市  

   ・市街化調整区域

 (6) 千葉市

   ・住居専用地域

   ・市街化調整区域

8 主な特区民泊の構造設備の基準

(1)  客室の延床面積

  ・1居室25㎡(壁芯)以上

  ・ただし、都道府県知事等が、外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合はこの限りではない。

※例えば、大阪府では、滞在者の数を8人未満とする施設にあっては、居室の滞在者の1人当たりの床面積が3.3㎡以上であればよいとされています(国家戦略特区域外国人滞在施設経営事業の特定認定に係る審査基準および特定認定の取消に係る処分基準)

 (2) 階層式寝台

   上段と下段の間隔はおおむね1m以上

 (3) 必要な設備

   ・適度な換気、採光、照明、防湿、排水、暖房および冷房の設置

   ・台所、浴室、便所および洗面台の設置

   ・寝具、テーブル、いす、収納家具、調理のために必要な器具または設備及び清掃のために必要な器具

9  マンション管理規約上、住宅宿泊事業の民泊および特区民泊の両方について可否を明らかにする場合の規定例

(1) パターン①(両方を許容する場合)

   区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

 区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用することができる。

  (2) パターン②(両方を禁止する場合)

     区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

 区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用してはならない。

    (3) パターン③(両方を使用細則に委ねる場合)

   区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

 区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

10 条例における区域および期間の設定のイメージ

(1)-1 考慮要素

    静穏な環境の維持および防犯の観点から学校・保育所等の近隣地域において、住宅宿泊事業を実施することにより、学校・保育所等の運営に支障をきたすほどに、現状では保たれているその生活環境が悪化するおそれのある場合

  (1)-2   区域及び期間の設定イメージ

      区域:当該施設周辺の一定の地域

      期間:月曜日から金曜日まで(学校の長期休暇は除く)

 (2)-1  考慮要素

静穏な環境を求める住民が多く滞在する別荘地において、住宅宿泊事業を実施

することにより、現状では保たれているその生活環境が悪化するおそれのある場合

  (2)-2   区域及び期間の設定イメージ

      区域:別荘地内

      期間:別荘地の繁忙期となる時期

 (3)-1  考慮要素

      狭隘な山間部等にあり、道路事情も良好でない集落において、住宅宿泊事業を実施することにより、道路等の混雑や渋滞を悪化させ、日常生活を営むことに支障が生じ、生活環境を損なう恐れがある場合

 (3)-2   区域及び期間の設定イメージ

      区域:当該集落地域

      期間:紅葉時期等例年道路渋滞等が発生する時期

      ※駐車場がない、あるいは、公共交通が著しく不足している等の事情がある場合には、都市部でも同様の考え方により地域・区間を定めることはあり得る。

11 届出を行う者が法人である場合と個人である場合の共通の添付書類

(1) 住宅の登記事項証明 

 (2) 住宅が「入居者の募集が行われている家屋」に該当する場合は、入居者募集の広告その他それを証する書類

   当該募集の広告紙面の写し、賃貸不動産情報サイトの掲載情報の写し、募集広告の写し、募集の写真その他の入居者の募集が行われていることを証明する書類のことです。なお、賃貸(入居者)の募集をしていることについては、都道府県知事等が必要に応じて報告徴収により確認することがあるものとされています。

 (3) 「随時その所有者、賃借人または転借人に居住の用に供されている家屋」に該当する場合は、それを証明する書類

   届出住宅周辺における商店で日用品を購入したレシートや届出住宅と自宅の間の公共交通機関の往復の領収書の写し、高速道の領収書の写し等

 (4) 住宅の図面(各設備の位置、間取りおよび入口、階、居室・宿泊室・宿泊者の使用に供する部分の床面積)

   必要事項が明確に記載されていれば、手書きの図面であっても差し支えありませんが、以下の事項の記載が必ず必要となります。

  ① 台所、浴室、便所および洗面設備の位置

  ② 住宅の間取りおよび出入口

  ③ 各階の別

  ④ 居室、宿泊室、宿泊者の使用に供される部分(宿泊室を除きます)のそれぞれの床面積

  ⑤ 非常用照明器具の位置、その他安全のための措置内容等、安全の確保のための措置の実施内容について明示

 (5) 賃借人の場合、賃貸人が承諾したことを証する書類

   特定の書式は定められておらず、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」の転貸承諾書(例)

等をもとに適宜修正して活用するものとされています。

 (6) 転借人の場合、賃貸人および転貸人が承諾したことを証する書類

   特定の書式は定められておらず、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」の転貸承諾書(例)

等をもとに適宜修正して活用するものとされています。

 (7) 区分所有の建物の場合、規約の写し

 (8) 規約に住宅宿泊事業を営むことについて定めがない場合は、管理組合に禁止する意思がないことを証する書類

規約の写しおよび管理組合に禁止する意思がないことを証する書類については、以下のフローに沿って添付書類を確認する必要があります。

① マンション管理規約の専用部分の用途に関する規約の写し(該当者全員)

  ①において、住宅宿泊事業を許容する旨の規定となっている場合は、追加の書類は不要とされています。

  ①において、住宅宿泊事業について定めがない場合においては、次の書類を添付する必要があります。 

  ② 届出時点で、住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書、または2017年6月19日以降の総会および理事会の議事録等。

 (9) 住宅宿泊管理業務を委託する場合は、管理業者から交付された書面の写し住宅宿泊管理業者と締結する管理受託契約の書面の写しを指します。

 (10) 欠格事由に該当しないことを誓約する書面

    誓約書(法人)様式(ガイドライン様式A)または誓約書(個人)様式(ガイドライン様式B)を用いる必要があります。

 (11) 消防法令適合通知書

    住宅宿泊事業を行うにあたっては、消防法令に適合している必要があり、それを担保するため、住宅宿泊事業の届出の前に消防署等から消防法令適合通知書を取得させ、それを添付書類とすることが求められています(平成29年12月26日消防庁予防課長通知「住宅宿泊事業の届出に伴う消防法令適合通知書の交付について」)。もっとも、自治体によっては地域の実情に応じて、他の方法により確認することも認められているので、添付の要否は事前に都道府県知事等に確認する必要があります。なお、消防法令において必要となる措置については、届出住宅を管轄する消防署等に確認することが必要です。

12 届出を行う者が法人である場合特有の添付書類

(1) 定款または寄付行為

  商号、事業目的、役員数、任期および主たる営業所または事務所の所在地が登記事項証明書の内容と一致しているものであって、現在効力があるものを提出する必要があります。外国人法人の場合には、日本国政府の承認した外国政府または権限のある国際機関の発行した書類その他これに準じるもので、商号、事業目的、役員数、任期および主たる営業所または事務所の所在地の記載のあるものを提出するものとされています。

 (2) 登記事項証明書

   外国法人においては、日本国政府の承認した外国政府または権限のある国際機関の発行した書類その他これに準じるもので、法人名、事業目的、代表者名、役員数、任期および主たる営業所または事務所の所在地の記載があるものを提出する必要があります。他に届出の添付書類として記載している同種の書類について同様です。

 (3) 役員が、成年被後見人および被保佐人に該当しない旨の後見等登記事項証明書

   外国籍の役員においては、一つ下に記載の証明書と重複するため、提出は不要です。

 (4) 役員が、成年被後見人および被保佐人とみなされる者ならびに破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書

  外国籍の役員においては、日本国政府の承認した外国政府または権限のある国際機関の発行した書類その他これに準じるもので、成年被後見人および被保佐人ならびに破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者と同様に取り扱われている者に該当しない旨を証明する書類とします。当該書類が存在しない場合は、成年被後見人および被保佐人ならびに破産開始の決定を受けて復権を得ない者に相当するものに該当しない者であることを公証人又は公的機関等が証明した書類を提出するものとされています。

13 届出を行う者が個人である場合特有の添付書類

 ① 成年被後見人および被保佐人に該当しない旨の後見等登記事項証明書

 ② 成年被後見人および被保佐人とみなされる者ならびに破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書

 ③ 未成年者で、その法定代理人が法人である場合は、その法定代理人の登記事項証明書

14 住宅宿泊事業者の欠格事由

 ① 成年被後見人または被保佐人

 ② 破産開始の決定を受けて復権を得ない者

 ③ 住宅宿泊事業の廃止を命ぜられ、その命令の日から3年経過しない者(当該命令をされた者が法人である場合にあっては、当該命令の日前30日以内に当該法人の役員であった者で当該命令の日から3年を経過しないものを含みます)

 ④ 禁錮以上の刑に処せられ、またはこの法律もしくは旅館業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過しない者

 ⑤ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員または同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」といいます)

 ⑥ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で法定代理人(法定代理人が法人である場合にあっては、その役員を含みます)が上記①から⑤までのいずれかに該当するもの

 ⑦ 法人であって、その役員のうちに上記①から⑤までのいずれかに該当する者があるもの

 ⑧ 暴力団員等がその事業活動を支配する者

15 宿泊者に対する説明事項

 ① 騒音の防止のために配慮すべき事項

   大声での会話を控えること、深夜に窓を閉めること、バルコニー等野外での宴会を開かないこと、届出住宅内は楽器を使用しないこと、届出住宅およびその周辺地域の生活環境に応じた適切な内容を説明する必要があります。

 ② ごみの処理に関し配慮すべき事項

   宿泊者が届出住宅内で排出したごみについて、当該市町村における廃棄物の分別方法等に沿って、住宅宿泊事業者等の指定した方法(届出住宅内の適切な場所にごみを捨てること等を含みます)により捨てるべきであること等を説明する必要があります。

   なお、住宅宿泊事業に起因して発生したごみの取扱いは、廃棄物処理法に従い、事業活動に伴って生じた廃棄物として宿泊事業者が責任をもって処理しなければなりません。

 ③ 火災防止のために配慮すべき事項

   ガスコンロの使用のための元栓の開閉方法およびその際の注意事項、初期消火のための消火器の使用方法、避難経路、通報措置等、届出住宅およびその周辺地域の生活環境に応じた適切な内容を説明する必要があります。

 ④ その他届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項

   性風俗サービスを届出住宅内で利用しないこと等、過去の苦情内容を踏まえ、届出住宅の利用にあたって特に注意すべき事項も説明する必要があります。苦情が多発しているにもかかわらず、宿泊者への説明において何等の対応を講じない場合には、業務改善命令等の対象となるものとされています。

16 マンション標準管理規約における住宅宿泊事業に関する規定例

 ① 住宅宿泊事業を可能とする場合

   区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

   (管理組合が事業開始を把握するための規定を設ける場合)区分所有者は、その専有部分において住宅宿泊事業法第2条第3項の住宅宿泊事業を実施することを内容とする、同法第3条第1項の届出を行った場合は、遅滞なく、その旨を管理組合に届け出なければならない。

 ② 住宅宿泊事業を禁止とする場合

   区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。

   (その前段階の広告掲載等をも禁止する旨を明確にする場合)区分所有者は、前2項に違反する用途で使用することを内容とする広告の掲載その他の募集または勧誘を行ってはならない。

 ③ 住宅宿泊事業の可否を使用細則に委任する場合

   区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。

 ④ 家主居住型の住宅宿泊事業のみ可能とする場合

   区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項第2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合または同じ建物内にある場合に限る)に使用することができる。

 ⑤ 家主同居型(家主居住型のうち、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用している専有部分において宿泊させる場合)に限り可能とする場合

   区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業(同法第11条第1項第2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合に限る)に使用することができる。

17 住宅宿泊事業者の保護に欠ける行為

 ① 住宅宿泊事業者に迷惑を覚えさせるような時間に電話または訪問により勧誘する行為

   「迷惑を覚えさせるような時間」については、相手方となる家主の職業や生活習慣等に応じ個別に判断されますが、一般的には、相手方から承諾を得ている場合を除き、特段の理由が無く、午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘または訪問勧誘を行うことは、「迷惑を覚えさせるような時間」の勧誘に該当するものとされています。

 ② 住宅宿泊事業者が契約の締結または更新を行わない意思を示したにもかかわらず執拗に勧誘する行為

 ③ 届出住宅の所在地その他の事情を勘案して、住宅宿泊業務の適切な実施を確保できないことが明らかであるにもかかわらず、当該住宅宿泊管理業務に係る管理受託契約を締結する行為

   「住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できないことが明らかであるにもかかわらず、当該住宅宿泊管理業務に係る管理受託契約を締結する行為」とは、住宅宿泊管理業者の営業所または事務所の所在地、これらの営業所または事務所における人員体制、住宅宿泊管理業務の再委託を行う場合の再委託先の事業者の業務体制、届出住宅周辺の交通事情等により、住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できないことが明らかである場合とされています。住宅宿泊管理業者が管理受託契約を締結の勧誘をするにあたっては、住宅宿泊管理業務の適切な実施を確保できることを明らかにするため、届出住宅へすみやかに駆けつけることが可能な体制を有していることを住宅宿泊事業者に示しながら行うことが望ましいものとされています。

18 管理受託契約の契約締結前の説明事項

 ① 住宅宿泊管理業者の商号、名称または氏名ならびに登録年月日および登録番号

 ② 住宅宿泊事業の対象となる届出住宅

   届出住宅の所在地および物件の名称、部屋番号、委託の対象となる部分及び維持保全の対象となる付属設備について説明する必要があります。

 ③ 住宅宿泊管理業務の内容および実施方法

   届出住宅の維持保全および住宅宿泊管理業法第5条から第10項までの規定による業務の内容について、届出住宅の状況等に応じて回数や頻度を明示して可能な限り具体的に説明する必要があります。また住宅宿泊事業法第7条から第9条までの規定による業務については、説明等の方法について対面による等、具体的方法を明示することが望ましいものとされています。これらのほか、緊急時の連絡対応等の方法についても明示されることが望ましいものとされています。住宅宿泊事業者が届出住宅の管理に関する十分な知識や経験を有している場合であっても、説明や書面の交付を省略することはできません。

 ④ 報酬ならびにその支払いの時期および方法

   報酬の支払い時期および支払い方法についても明示する必要があります。報酬とは、別に要する費用として、住宅宿泊管理業者が委託業務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費や、委託業務の実施のために要した届出住宅に設置・配置する備品その他届出住宅を住宅宿泊事業の用に供するために必要な物品等の購入に要した費用についても想定されるため、それらの費用の負担方法、支払時期および支払方法についても明示することが望ましいものとされています。

 ⑤ 住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する事項 

   住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者の承諾を得た上で、住宅宿泊管理業務の一部を第三者に再委託することができることを事前に説明する必要があります。また、再委託先は、住宅宿泊管理業者の業務実施体制に大きく影響するものであることから、再委託予定者を事前に明らかにする必要があり、再委託先を変更する度に書面または電磁的方法により住宅宿泊事業者に知らせる必要があります。再委託先を一方的に変更する可能性がある場合には、その旨を併せて事前に説明する必要があります。

 ⑥ 責任および免責に関する事項

   責任および免責については、責任の所在の明確化を図る観点から、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者の責任の所在について事前に説明しておく必要があります。損害賠償請求に至った場合にはトラブルに発展することが予見されることから、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が事前に協議を行ったうえで賠償責任保険に加入する等の措置をとることが望ましいものとされています。また、再委託事業者が住宅宿泊管理業者から委託された住宅宿泊管理業務を行う上での過失等によって生じた住宅宿泊管理業者または届出住宅の宿泊者の損害については、住宅宿泊管理業者が責任を負うことが一般的であると考えられますが、最終的には住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が締結する管理受託契約を踏まえて取り決めることが望ましいものとされています。   

 ⑦ 契約期間に関する事項

   契約の始期、終期および期間を説明する必要があります。

 ⑧ 契約の更新および解除に関する事項

   住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者間における契約の更新の方法について事前に説明する必要があります。住宅宿泊事業者または住宅宿泊管理業者が、契約に定める義務に関してその本旨に従った履行をしない場合には、その相手方は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、契約を解除することができる旨を事前に説明することが望ましいものとされています。

19 住宅宿泊管理受託標準契約書における受託業務の範囲

 (1) 宿泊者等への対応に関する業務

   ① 宿泊者への届出住宅の鍵の受渡し

   ② 本人確認、宿泊者名簿の作成、管理および備付け

   ③ 未チェックイン時の報告

   ④ 騒音の防止のために配慮すべき事項その他届出住宅の周辺地域(同一建物内を含む。以下同じ)の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項について宿泊者への説明

   ⑤ 届出住宅の周辺地域の住民からの苦情および問合せについての対応

   ⑥ 宿泊者による届出住宅への毀損など有害行為に対する措置

   ⑦ 長期滞在者への対応

   ⑧ 宿泊者からの届出住宅の鍵の返却確認

   ⑨ チェックアウト後の届出住宅の状況確認(破損、忘れ物等確認を含む。)

  (2) 清掃・衛生業務

   ① 届出住宅の日常清掃業務

   ② 寝具・衛生用品の洗濯および設置

   ③ 備品の管理および補充

  (3) 住宅・設備管理および安全確保業務

   ① 届出住宅および設置の維持・管理

   ② 非常用照明器具の設置、点検、避難経路の表示その他災害発生時の避難体制の確立と宿泊者に対する非難支援

   ③ 外国語を用いて、火災、地震、その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内

   ④ 宿泊者からの建物、設備に対する苦情等への対応

   ⑤ 諸官公庁等への届出事務の代行

20 住宅宿泊仲介業者

 ① 住宅宿泊仲介業者約款の策定・届出

 ② 住宅宿泊仲介業者に関する料金の公示等の義務

 ③ 不当な勧誘等の禁止義務

 ④ 違法行為のあっせん等禁止義務 

 ⑤ 住宅宿泊仲介契約の締結前の書面の交付義務

 ⑥ 標識の刑事義務

 ⑦ 住宅宿泊仲介業者から官公庁への報告義務

21 標準住宅宿泊仲介業者約款の留意事項(平成30年4月13日観光産業課長通知「標準住宅宿泊仲介業約款の公示及び留意事項について」)。

 ① 電子承諾通知(第2条第5項)

   「電子承諾通知」とは、契約の申込に対する承諾の通知であって、住宅宿泊仲介業者の使用するコンピュータ等と宿泊者が使用するコンピュータ等と接続する電気通信回線を通じて送信する方法により行うものをいい、「宿泊者があらかじめ指定する電子メールアドレスに電子メールを送付する方法」が例示されています。

   この他、例えば、住宅宿泊仲介業者が宿泊者の使用する電子計算機の画面上に契約の申込に対して承諾する旨を表示させる方法もあります。

 ② 取消手続料金(第13条第2項)住宅宿泊仲介業者の責任(第22条)

   次に掲げる消費者契約(消費者と事業者で締結される契約)の条項については、消費者契約法の規定により無効とされます。

   契約解除の際に消費者に過大な取消料、違約料を課す条項のうち、平均的損害賠償額を超える部分

   事業者の故意または重過失による債務不履行または不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部または全部を免除する条項

22 住宅宿泊仲介契約の締結前の説明および書面交付事項

 ① 住宅宿泊仲介業者の商号、名称または氏名ならびに登録年月日および登録番号

 ② 住宅宿泊事業者の商号、名称、または氏名および届出番号

 ③ 宿泊者が宿泊する届出住宅(宿泊者が正確に届出住宅の位置を把握できる情報)

   「届出住宅」とは、宿泊者が宿泊を予定している届出住宅の住所および届出住宅までの道順を示した経路、届出住宅の位置を示した地図または届出住宅の外観がわかる写真その他の宿泊者が正確に届出住宅の位置を把握できる情報となります。

 ④ 宿泊者が住宅宿泊仲介業者に支払うべき対価および報酬ならびにこれらの支払いの時期および方法

   「対価」とは、宿泊者が支払う合計金額、「報酬」とは、「対価」のうち住宅宿泊仲介業者が受け取る金額のこととなります。

 ⑤ 上記対価によって提供を受けることができる宿泊サービスの内容

   「サービスの内容」とは、居室の面積、アメニティーの設置状況等の届出施設において提供されるサービスの内容です。

 ⑥ 契約の申込方法および契約の成立に関する事項

 ⑦ 責任および免責に関する事項

 ⑧ 契約の変更及び解除に関する事項

 ⑨ 宿泊者の資格を定める場合においては、その旨および当該資格

   「宿泊者の資格を定める場合にあっては、その旨および当該資格」とは、性別、国籍その他の住宅宿泊事業者が定める宿泊者の要件です。

 ⑩ 宿泊者が宿泊する届出住宅の所在地を勘案して、宿泊者が取得することが望ましい安全および衛生に関する情報がある場合においては、その旨および当該情報

   行政庁等が地域における安全性等について特別に発信している情報がある場合においては、当該情報を提供する必要があります。

23 住宅宿泊事業の基本的な枠組み

24 管理受託契約の締結の流れ

民泊のルールや問題はこちら

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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