民泊のルールや問題

1   「民泊」の基礎知識(「民泊」って何?)

  •  住宅宿泊のこと。その名のとおり、住居として使用されている(いた)建物に利用者(宿泊者)を宿泊させること。
  •  特徴:ホテルや旅館ではなく「住居」であること。それ故、規制が緩やかな面と、反対に厳しい面とがある。
  •  民泊に対する3つの規制:①旅館業法による規制…従来から存在。ホテルや旅館の代わりに「住居」を使うだけ。住居専用地域等での営業が問題に。②国家戦略特別区域法(特区民泊)による規制…最低滞在日数の制限等あり。③住宅宿泊事業法(新法)による規制…届出制で柔軟に事業ができるようにした。

2 3つの規制の関係について

  •   旅館業法による規制

(特徴)① 原則として住居専用地域では行うことができない(建築基準法別表第二)。

→住居専用地域にある住宅その他の建物を利用して旅館業の民泊を行うことはできない。

② 特区民泊にあるような最低滞在日数の制限や、住宅宿泊事業のような年間宿泊提供日数の上限はない。→宿泊「日数」による規制が嫌なら旅館業を!! 

③ 当該不動産を「民泊専用」で運用すること(ex.民泊専用マンション等)も可能に。⇔住居専用地域ではできないのが原則

※旅館業と不動産業の違い

  •  国家戦略特別区域法(特区民泊)による規制

(特徴)① 行える区域が限定されている。→平成30年6月1日現在、東京都大田区、大阪府(34市町村)、大阪市、北九州市、新潟市、及び千葉市のみが認定を受けて対象区域に。

    ② 各自治体において、自治体内で特区民泊が行える区域を更に限定している。

     →これら自治体の限定された区域以外では、そもそも特区民泊の選択肢はない。

    ③ 宿泊客の最低滞在日数が2泊3日とされている。→1泊2日の滞在のための利用は不可。←厳密には「(2泊)3日から(9泊)10日までの範囲内において自治体の条例で定める期間以上」とされているが(国家戦略特別区域法施行令第13条第2号)、現在認定委託を受けている上記区域はいずれも条例で下限の2泊3日を定めている。

    ④ 当該不動産を「民泊専用」で運用すること(ex.民泊専用マンション等)も可能に。⇔国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業の認定を受けた自治体で、かつ、各自治体が指定した区域でしかできない。

  •  住宅宿泊事業法による規制

(特徴)① 年間宿泊提供日数が180日(条例で更に短期とされている場合もある)に限定されていることが最大の特徴。Cf.180日=人(ないしグループ)を「実際に」「有償で」「宿泊させた」日数。→複数の人ないしグループでも、実際の宿泊日数のみ算入。無償利用は算入されない。募集していた日数や賃貸した日数等は加算されない。Cf.「1年間」は4月1日正午~翌年4月1日正午で区切られる。

     Cf.住宅宿泊事業者ごとではなく、届出住宅ごとに算定する。→届出住宅が譲渡等されたこと等により事業者が変更した場合には前主とで通算する。→前主等の期間の宿泊実績を都道府県等に確認する必要あり(ガイドライン1-1.(2)①)。

    ② 住居専用地域で民泊事業を行うこともできる。←「住宅」を利用することが制度の前提なので。⇔但し、条例で制限されている場合もある。

    ③ 家主居住型と同不在型の2タイプあるが、不在型(但し、居住型でも居室数が5を超える場合や(住宅宿泊事業者の)「不在時」(ガイドライン2-2.(7)③))における住宅宿泊管理業者に対する管理業務等の委託が義務付けられている(同法11条1項1号、同2号、規則9条2項)。

    ④ 「住宅」=事業(人を宿泊させるものまたは人を入居させるものを除く)の用に供されていないもの、との縛りあり(同法2条1項2号、規則2条)。→スペース・倉庫貸し事業や飲食事業のような、宿泊業や賃貸業以外はダメ。

    ⑤ 「住宅」=台所、浴室(シャワーのみも可(同法2条1項1号、規則1条、ガイドライン1-1.(1)①))、便所(和式も可(ガイドライン1-1.(1)①))、洗面設備が必要(ユニットバスでも可(同法2条1項1号、規則1条、ガイドライン1-1.(1)①))。

    ⑥ 「住宅」=A 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、B 従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋、C 随時その所有者、賃借人、または転借人の居住の用に供されている家屋のいずれかに該当する必要あり(同法2条1項2号、規則2条)。→居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは上記のいずれにも該当しないため、ダメ(ガイドライン1-1.(1)②)。

    ⑦ 届出にあたっての事前説明は、不要だが望ましい(ガイドライン2-1.(1)④)。

    ⑧ 住宅宿泊事業(A)と住宅宿泊管理業(B)と住宅宿泊仲介業(C)の3類型の事業を定義。各事業者への監督は(A)都道府県知事等(への届出が要件)(同法3条)、(B)国土交通大臣(の登録が要件)(同法22条)、(C)観光庁長官(の登録が要件)(同法46条)。監督当局間で情報共有が。

(B)は受託業者1者であることが必要。この1者から、清掃や警備等管理業務の1部を別業者が再受託することは可。但し、全部の再委託はダメで、かつ、再委託については原則委託者である住宅宿泊事業者の同意が必要(法35条)。この場合の再委託先は住宅宿泊管理業者である必要はないが、法25条各号(同条11号を除く)の登録拒否要件に該当しない事業者であることが望ましい。かつ再委託期間中は、住宅宿泊管理業者が責任をもって再委託先の指導監督を行うことが必要(ガイドライン3-2.(12)③)。

    ⑨ 住宅宿泊事業者(または受託宿泊管理事業者)は、外国人観光客である宿泊者に対し、外国語を用いて、届出住宅の設備の使用方法に関する案内等を行う必要がある(法7条、国交省規則2条)。この「外国語」は宿泊予約の時点で、日本語以外の言語として提示した言語を言う(ガイドライン2-2.(3)①)。→必ずしもゲストの母国語で案内する必要はない。宿泊予約の時点で、外国人のゲストが日本語を指定した場合には、外国語で情報を提供する必要はない(ガイドライン2-2.(3)①)。なお、ここでの「使用方法に関する案内等」は、そのままゲストに対する「騒音や周辺環境への悪影響の防止に関する説明の方法」にも該当する(法9条、規則8条、ガイドライン2-2.(5)⑤、2-2(3)①)。

    ⑩ 外国人観光客に対する情報提供の具体的方法としては、(仮に家主同居型でも口頭では足りず)書面を居室に備え付けることによる他、タブレット端末への表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊中、必要に応じて閲覧できる方法によることが望ましい(法7条、国交省規則2条、ガイドライン2-2.(3)①)。特に災害時等の通報連絡先は、緊急時に速やかに確認できるものを備え付けておく必要あり(ガイドライン2-2.(3)①)。なお、ここでの「情報提供の具体的方法」は、そのままゲストに対する「騒音や周辺環境への悪影響の防止に関する説明の方法」にも該当する(法9条、規則8条1項、ガイドライン2-2.(5)①)。

    ⑪ 住宅宿泊事業者(または受託宿泊管理事業者)は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情および問い合わせについては、(たとえ宿泊者が滞在していない間も)適切かつ迅速にこれに対応しなければならない(法10条)。かつ「深夜早朝を問わず、常時、応対または電話により対応することが求められている(ガイドライン2-2.(6)①)。

    ⑫ 住宅宿泊事業者(または受託宿泊管理事業者)は、上記苦情及び問い合わせ等への対応については、必要に応じて速やかに現地へ赴くこととし、苦情等があってから現地に赴くまでの時間は30分以内(但し、交通手段の状況等により現地に赴くまでに時間を要することが想定される場合は60分以内)が目安(法10条、ガイドライン3-1.(7)、3-2.(13))。これが出来ない場合には、当該届出住宅について「住宅宿泊管理業務を適切に実施するための必要な体制が整備されていると認められない者」に該当し(法25条1項11号、国交省規則9条2号)、登録が拒否されたり登録が取り消されたりする可能性がある(法43条1項1号)。

    ⑬ 住宅宿泊事業に起因して発生したゴミは、廃棄物処理法に従い「事業活動に伴って生じた廃棄物」として住宅宿泊事業者(または受託宿泊管理業者)が責任をもって処理しなければならない(ガイドライン2-2.(5)③)。→住宅宿泊事業者(同上)は、ゲストに対しゴミの処理に関し配慮すべき事項を説明する義務がある(法9条、規則8条2項2号)。→ex.マンション等のゴミ捨て場等にゴミを捨ててはいけないこと、届出住宅内の適切な場所にゴミを捨てること、当該市区町村における廃棄物の分別方法等に沿って住宅宿泊事業者等の指定した方法により捨てるべきであること等を説明する必要あり(ガイドライン2-2.(5)③)。

    ⑭ 住宅宿泊業者(または受託宿泊管理業者)は、宿泊行為の「開始までに」、宿泊者それぞれについて本人確認を行う必要がある(法8条1項、規則7条1項、ガイドライン2-2.(4)①)。本人確認の方法は、必ずしも対面による方法でなくてもよく、一定の条件を充たす場合には、届出住宅等に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等による方法等も認められている(ex.民泊専用の本人確認のサービス等)。長期滞在の場合には、チェックイン時に本人確認を行っていない者が届出住宅に宿泊するようなことがないように、定期的な清掃等の際に不審な者が滞在していないかや滞在者が所在不明になっていないか等を確認することが望ましいものとされ、特に宿泊契約が7日以上の場合には定期的な面会等により確認を行う必要があるものとされている(法8条1項、規則7条1項、ガイドライン2-2.(4)③)。

    ⑮ 宿泊者名簿には、宿泊グループの代表者だけでなくゲスト全員を記載することが必要(法8条1項、規則7条3項、ガイドライン2-2.(4)②)。

    ⑯ 住宅宿泊事業者は、届出住宅の門扉、玄関に、標識を掲げる義務があるが、マンション等共同住宅の場合には、個別の住戸に加え共用エントランス、集合ポストその他「公衆が認識し易い箇所」へ簡素な標識(標識の一部を集合ポスト等の掲示が可能なスペースに合わせて掲示する等)を掲示することが望ましい(法13条、ガイドライン2-2.(8)①)。

    ⑰ 住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊管理業者の責任の下で、住宅宿泊事業者から委託を受けた住宅宿泊管理業務に従事する者に、従業者証明書を携帯させる義務があり、住宅宿泊管理業者自身の従業員だけでなく、住宅宿泊管理業者から住宅宿泊管理業務の一部の再委託を受ける者にも、従業者証明書を携帯させる必要がある(法37条、国交省規則18条)。⇔内部管理事務のみに従事する者や、直接届出住宅に立ち入る者でもなく、ゲストや住宅宿泊事業者と業務上接する者でもない者に、従業者証明書を携帯させる義務はない(ガイドライン3-2.(14))が、携帯させることが望ましいとは規定されている(同ガイドライン)。

    ⑱ 住宅宿泊仲介業者は、届出住宅における宿泊サービスの提供等に関して代理して契約締結等する行為を有償で(=報酬を得て)行う事業を行うが、これは旅行業の登録を受けなくても住宅宿泊仲介業の登録を受ければできる(法2条8項、9項)。しかし、住宅宿泊事業法の定める民泊以外(ex.旅館業の民泊や特区民泊等)の仲介も併せて事業として行う場合は、旅行業(※)の登録を受けなければならない。

      ※旅行者や宿泊サービスを提供する者のため、宿泊サービスの提供またはその提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、または(旅行者のために)取次をする行為を有償で行う事業→旅行業法の登録を受けなければ行うことができない(旅行業法2条1項3号、4号、3条)。

    ⑲ 日本国外の事業者が日本国外でのみ宿泊サービスの提供またはその提供を受けることについての代理、媒介または取次に従事し事業を遂行している場合は旅行業法の適用の範囲外→当該事業者は旅行業の登録を受けなくてもよい。⇔住宅宿泊事業法は、上記日本国外の事業者にも適用される。→日本国外で住宅宿泊仲介業を行う者も同業の登録を受けることが必要→日本国外の事業者が日本国外でだけ事業を遂行する場合(ex.日本国外のサーバーでウェブサイトを運営し、日本の旅行者が当該ウェブサイトにアクセスして宿泊の申込等を行う場合も含む)にも住宅宿泊仲介業の登録を受けなければならない可能性がある。

    ⑳ 住宅宿泊仲介業者は、日本語及び英語で、住宅宿泊仲介約款を策定することとされている(法55条1項、ガイドライン4-2.①)。→外国人の利用者が想定されない場合でも日本語だけでなく、英語の宿泊約款も策定する必要あり。

      Cf.民泊仲介サイト=一時的な宿泊を主とする施設(ex.マンスリーやウィークリーマンション等)と混在させて表示させることは適切ではないため、別サイトにおいて管理することが望ましい(ガイドライン4-5.③)。

      Cf.住宅宿泊仲介業者への禁止事項等の具体例

      a 故意または重過失により、宿泊者に対し、法令に違反する行為を行うことをあっせんし、またはその行為を行うことに関し便宜を供与すること(法58条1号、ガイドライン4-5.①)=ex.「麻薬、銃器、盗品等の禁制品の取引あっせんまたは便宜の供与」や「違法賭博行為のあっせんまたは便宜供与」等

      b 故意または重過失により、住宅宿泊事業法に基づく届出、旅館業の許可または特区民泊の認定等を受けていない物件について、仲介サイトに掲載する行為(法58条3号、ガイドライン4-5.③)

      c 故意または重過失により、旅行業または住宅宿泊仲介業の登録を受けていない業者の仲介サイトに届出住宅を掲載する行為=「宿泊者に対し、法令に違反するサービスの提供を受けることをあっせんし、またはその提供を受けることに関し便宜を供与すること(法58条2号、ガイドライン4-5.②)」

  • ※イベント民泊

※「①年数回程度(1回あたり2~3日程度)のイベント開催時であって、②宿泊施設の不足が見込まれることにより、③開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの」について➡「旅館業」に該当しないものとして取り扱い、自宅提供者において旅館業の許可なく宿泊サービスを提供するもの(イベント民泊ガイドライン(平成28年4月1日観光庁観光産業課及び厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部生活衛生課事務連絡))。←「業」に該たらないと考えられている(平成27年7月1日厚生労働省健康局生活衛生課事務連絡「規制改革実施計画への対応について」及び同年9月1日同事務連絡「「規制改革実施計画(平成27年6月30日閣議決定)」に基づくイベント開催時の旅館業法上の取扱いについて」)⇔但し、あくまで一時的なイベントに対応する限定的な場面でのみ行われるものでり、「民泊」を行うための一般的な制度としての位置付けは困難。

3 民泊を巡るトラブル①(条例等住民ルールによる規制との関係等)

条例上は、宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させた日数の上限を1年間で180日

よりも短い期間とすることができ、そのような条例が各都道府県等で制定されている。

(1) 条例による制限の概略

(2) 「ゼロ日規制」等について

(3) 実際の条例の内容について

4 民泊を巡るトラブル②(マンション管理規約(組合)との関係等)

質問:当マンション管理組合はマンション内での民泊を禁止する規定を管理規約に設けています。しかし密かに民泊を行っている区分所有者または占有者(賃借人等)が居るとの噂があります。このような場合、管理組合としては、

A 迅速にどのような対応をしたらよいのでしょうか?また

B 管理組合から口頭や書面で注意し、民泊の禁止を要請したにもかかわらず依然として民泊を継続している場合、どのような対応をしたらよいのでしょうか?

回答:A 規約または使用細則等管理組合の内規で、規約に反する用途での使用が疑われた場合には、それを確認する手続を規定しておき、管理組合が合法的に用途制限違反の確認ができるようにしておくことが考えられます。例えば、

a 「理事長またはその指定を受けた者は、専有部分に関し、規約において禁止されている用途での使用の有無について確認する必要が出たときは、当該専有部分の区分所有者または占有者に対し、書面で、当該用途制限違反の有無を質問し、併せてその回答の根拠となる資料の提出を求めることができる。この場合、当該区分所有者または占有者は速やかに、当該質問に書面で回答するとともに、求められた資料の提出をしなければならない。」や

b 「理事長またはその指定を受けた者は、前項に基づく区分所有者または占有者からの回答、当該専有部分に出入りする者の様相、当該専有部分の周囲の専有部分の区分所有者または占有者からの聴取結果、周囲から見渡せる当該専有部分の状況、地方自治体・行政当局・警察等の機関からの照会または情報提供、民泊プラットフォーマーのウェブサイト等から入手された情報等から、当該専有部分における規約において禁止されている用途での使用が合理的に疑われる場合には、当該専有部分に立ち入り、必要な調査を行うことができる。この場合、区分所有者または占有者は、正当な理由がなければこれを拒否できない。」や

c 「消防設備の設置、標識の設置、不特定多数の者への鍵の貸与または暗唱番号の通知、民泊プラットフォーマーのウェブサイト上への当該物件の掲載等は一切を禁じる。」等。

B 管理組合からの要請が受け入れられない以上、必要に応じて内容証明郵便等により書面での要請をすることが考えられます。例えば

a (マンション標準)管理規約上の措置=区分所有者または占有者が、法令、規約

または使用細則等に違反したときは、理事長は、その是正等のため必要な勧告または指示もしくは警告を行うことができる(標準管理規約67条1項)。それでも継続→理事長は更に、行為の差止、排除または原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を行うことができる。また、敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金または不当利得による返還金の請求または受領に関し、区分所有者のために訴訟その他法的措置を執ることができる(同条3項)。これらを理事会の決議のみで行うこともできる。なお、これら訴訟提起を行う場合には、理事長は、被告に対し、違約金としての弁護士費用及び差止め等のための諸費用の請求もできる(同条4項)。

b 法令上の措置=民泊による用途制限違反行為が、建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為(区分所有法6条1項)またはそのおそれのある行為と認められれば、区分所有法57条から59条に規定する措置(※)を行うことができる。民泊による用途制限違反行為があるだけでは足りず、区分所有者の共同の利益に反するかそのおそれがあると認められる必要あり。Cf.「共同の利益に反する行為」か否か=「当該行為の必要性の程度、これによって他の区分所有者が被る不利益の態様、程度等の諸事情を比較考慮して決すべきものである」(東京高判昭和53年2月27日(下民集31巻5~8号658頁))→具体的には、民泊を行う頻度、目的・態様、宿泊者の利用により周囲に及ぼす悪影響の有無・程度、管理組合と当該区分所有者または占有者との間の交渉の経緯及びその後の経過等を総合的に判断する。

※区分所有法57条の措置(違法行為の停止等の請求)

 その行為を停止し、その行為の結果を除去し、またはその行為を予防するために必要な措置を執ることを請求できる。具体的には、民泊行為をやめさせ、標識等を取り外し、消防用設備の設置を差し止め、民泊プラットフォーマーのウェブサイトから当該物件を削除すること等を請求できる。→これを訴訟によって請求することもできる。

※区分所有法58・59条の措置(専有部分の使用禁止・競売請求)

 上記57条の措置によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難なときは、相当の期間の当該区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。更に、他の方法によっては上記障害を除去して区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、当該区分所有者の専有部分等の競売を請求できる。→これは訴訟によって請求しなければならない。+管理組合総会での特別決議及び当該区分所有者に対する弁明の機会を与えることが必要。⇔これらの措置はいずれも違反行為者への重大な権利制限となるので、要件は厳しく、通常の民泊を行っているだけで認められることは多くない。

c 行政上の措置=報告徴収や立入検査、業務改善命令、法令違反(区分所有者の共

同の利益に反する行為の禁止(区分所有法6条1項)の違反等も含む)等あれば業務停止命令、許認可の取消処分等を求めて管理組合は管轄の都道府県等や保健所等に通報を。

d 各区分所有者の措置=区分所有権もしくは共用部分共有持分権または人格権に基 づいて義務違反者に対し、その行為の停止、結果の除去、予防するために必要な措置を講ずることの請求が可能。+区分所有者に損害が生じたときは、不法行為に基づく損害賠償請求も可能。

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投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

事務所概要
弁護士法人 タウン&シティ法律事務所
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