(不動産の)共有「持分」の現金化について

共有持分を現金化する方法としては

・共有持分を他の共有者に買い取ってもらう!

・共有不動産を共同売却する!

・共有物分割請求訴訟で競売を命じる判決をもらう等して競売手続を執る!

の3つの方法があります。

共有持分を他の共有者に買い取ってもらう方法についての詳しい内容は別途説明させて頂きます。

共有不動産を共同売却する方法についての詳しい内容は別途説明させて頂きます。

競売を命じる判決をもらう等して競売手続を執る方法についての詳しい内容は別途説明させて頂きます。

 (不動産の)共有部分の現金化

①共有持分を他の共有者に買い取ってもらう!

共有持分を現金化する方法として、この方法が一番多く用いられています。

当事者間で持分売買をするだけなので不動産仲介業者に仲介手数料(通常売買代金の3%+6万円)を支払わずに済むというメリットもあります。

ただし、仮に協議もまとまらないために共有物分割請求訴訟を提起しても、相手方に対して持分を買い取ることを請求したり、持分を買い取るよう命じる判決を求めることはできないと解釈されています。

確かに「全面的価格賠償」といって、共有者の1人が他の共有者の持分を取得し、他の共有者に代償金を支払うことを命じる判決を下すことは要件を満たせばできるものと解釈されています。しかし、この全面的価格賠償というのは持分取得を希望する共有者が「全面的価格賠償」をすることを求めた場合に初めて認められるものです。持分取得を希望しない人に対して持分を買い取れと命じることはできません。これは「全面的価格賠償」を命じた最高裁判例について最高裁調査官の判例解説で「全面的価格賠償を希望しない者に、共有物を取得させ、持分の価格を賠償させるのは相当ではない」と記載されていることからも明らかです。

それでは、どうすれば他の共有者に持分を買い取ってもらえるでしょうか?共有物分割請求訴訟ではあくまで不動産全体(「持分」だけではありません)の競売を命じる判決を求めます。これに対し、相手方は不動産(全体)を失いたくないと考えているなら、「持分」を買い取るしかありません。そのような状況に追い込むことによって、初めて、「持分」を買い取ってもらえる可能性が高まるのです。

このように、相手方が不動産を残すことを希望していて、代償金の支払能力があれば 持分を買い取ってもらうことが可能になるのです。

②共有不動産を共同売却する!

この方法で共有持分を現金化することもありますが、この共同売却にはいろいろと難しい問題があります。

1つ目は、共有者間で紛争が続いている場合には共有者の間での信頼関係が無くなっていることが多く、そのために細かい点での争いから共同売却を進めることができないことがあるという点が挙げられます。

2つ目は共同売却そのものの合意ができても、共有者の中に少しでも高額で売りたいという人がいたりすると、その人の意見に引きづられて高額での売り出しをかけることになりますが、高額過ぎて買い手がつかないなどの理由から中々共同売却が進まないことがあるという点が挙げられます。

3つ目は不動産仲介業者に仲介を依頼することになりますが、それぞれの共有者が親しい業者に仲介を依頼したいと言い出すと、仲介業者の選定について調整が難航することもあるという点が挙げられます。

上記主として3つの難しい点はあるのですが、これに対する対応としては、何が何でも「共同売却」するなどと「共同売却」をすることに格別こだわるのではなく、この方法が使えなければ競売をすることも選択肢として示しながら無理難題を言う共有者を説き伏せていくべきものと思われます。

ちなみに、裁判所が共同売却を命じる判決を下すことはありません。売却で共有関係を精算するのが相当と判断した場合に下す判決は競売を命じる判決となります。

③共有物分割請求訴訟で競売を命じる判決をもらって競売手続をとる!

持分を他の共有者に買い取ってもらうことができず、共同売却もできない場合に持分を現金化するには、競売を命じる判決をもらって競売手続を執る方法を採るしかありません。

競売だと価格が下落すると心配される方もおられますが、その点については別途説明させて頂きます。

他の共有者が居住していると競売価格が下落するのではないかと心配される方もおられますが、競売での買受人には競売物件の居住者に対して、引渡命令の発令を受け思いのほかて簡単に強制手続により立ち退かせる方法が用意されています。このため他の共有者が居住 していることのみによって売却価格が下落することは通常はありません。

逆に不動産仲介業者の方からは、特に最近は、(結果的に応札者らによる「競り買い」になるため)競売の方が高く売れるので、「全面的価格賠償」ではなくて競売でお金に換えることができないかという相談をよく受けます。 但し、「全面的価格賠償」についても、要件を満たしさえすれば裁判所は認めます。競売を命じる判決は、「全面的価格賠償」も「現物分割」もできない場合に認める最終手段となっているので、「全面的価格賠償」ができる場合には競売を命じる判決を下してもらうことはできません。

投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

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