共有物分割請求による共有不動産・共同名義不動産の高額売却

共有物分割請求をして、共有不動産・共同名義不動産(★)(cf.例えば2世帯の区分所有建物等)を売却する方法が考えられます。

これから詳しく解説します。

★共有不動産は全員の同意がないと売却できません

2人以上で所有している不動産を共有不動産ないしは共同名義の不動産といいます。この不動産を売却するには所有者となっている人全員の同意が必要です。1人が売りたいと思っていても他の共有者が売るのに反対していると売れないことになります。

確かに「持分権」や共同名義のうちの1つのみを売ることはできます。

たとえ共有になっている不動産で、かつ他の共有者が反対して売却できない場合でも、その人が持っている権利(持分権といいます)や共同名義のうちの1つのみを売却することはできます。

しかし安値でしか売却できませんし、転売も難しいことから通常は「身内」か例えば暴利を狙うような「スジの悪い者」にしか売れません。

1人で所有している人は不動産を自由に使用したり賃貸して賃料収入を上げたり売却して代金を得たりも自由にすることができますが、不動産を自由に使える権利を1とみた場合に、2人以上で所有している場合はいわば「割合」で所有権を持っていることになります。

例えば2人で所有していてその権利が平等と決めた場合は2分の1ずつの権利を持っていることになります。2人だからといって2分の1ずつとは限らず、3分の2と3分の1というように様々な割合の権利のこともあります。

このように共有の時に割合で持っている権利を持分権といいます。この持分権は共有者1人1人が単独で処分することも認められているので、他の共有者の同意がなくても売却することができます。

しかし、持分権を買ったとしてもその不動産には他の共有者がいるので自由に使うことができません。まして売ることもできません。共有になっている不動産には様々な制約があるので買い手を探すのも難しいです。また買い手が見つかったとしても上記のとおり安値でしか買い取ってもらえません。上記のような様々なデメリットから、仮に2分の1の持分権を、不動産の時価の2分の1の価格で買い取ってくれる業者はまずいません。

ところが、共有物分割請求をすると共有不動産・共同名義の不動産を、いわば「全部まとめて売却する」ことになるため、売却可能性は広がりますし、その金額も高額となるのです。

このように共有不動産・共同名義の不動産は全員の同意がないと売却できないので共有者のうち1人でも売却に反対すると売却できません。

また共有者が持っている持分権は売ることができても、安値でしか買い取ってもらえないという点で共有不動産・共同名義の不動産は非常にやっかいなものではあります。

しかし、このようなやっかいな共有不動産・共同名義の不動産であっても時価ないし時価に近い金額で、少なくとも持分だけの売却とか、共有状態を解消しないままでの売却とかよりははるかに高額で売却する方法があります。それが共有物分割請求(★★)というものです。

★★共有物分割請求とは

共有物分割請求というのは、共有になっている不動産などの物の状態を共有でなくすための権利です。この権利は非常に強い権利であり、裁判所もよほどの事がない限りはこの権利を認める(=最低限、共有物の分割まではする。内容は次の①~③にように色々あるが、最後は(形式)競売になる)判断をします。

共有でなくす方法としては、具体的には①物理的に1人1人が所有する不動産に分ける(「現物分割」といいます)というのと、②共有者の1人が不動産を取得し他の共有者が代金を受け取る方法(「代償分割」といいます)、③不動産を売却して売却代金を持分の割合で分配する方法(「換価分割」といいます)があります。

物理的に分ける「現物分割」が原則とはなっていますが、都市部では不動産の多くが建物とその敷地であることから建物を物理的に分けることは不可能です。そのため現物分割はあまり行われていません。そうすると代償分割か換価分割しかないのですが、話し合いが付かなければ裁判所は代償分割の要件を満たすかを検討し満たさなければ競売を命じる判決を下すことになります。

代償分割は他の共有者に持分を売却するもので、競売は第三者に売却するものですので、どちらであっても共有不動産が売却されることになります。

なお共有物分割請求の手続については別途、説明させて頂きます。

 共有物分割請求はまず話し合い(示談交渉)を申し入れることから始まります。相手に共有物分割請求の内容を理解してもらい、感情的な対立も少なければ話し合いがまとまることもあります。

しかし弁護士のところに相談に来られる方の場合、既に話し合いは十分してきたものの、まとまらないために来た方が多いです。そのため、弁護士の下に持ち込まれる共有物分割請求のうち約50%は訴訟になっています。

訴訟になるというと、裁判所に出頭して(証人)尋問等をされて証人席とかで答えなければいけないのかとか長引くのではないかという不安をお持ちの方もおられますが、尋問まで行われることは殆どありません。

また基本的には共有をどうやってなくすのかを決めるだけ裁判ですので普通はそれほど長期化しません。

さらに、話し合い(示談交渉)と訴訟の、ちょうど中間的な手続きとして「(民事)調停」を申し立てる、という手もあります。これだと、調停委員や調停官(裁判官)といった、中立公正な立場の方々からの助言等も頂けるため、解決に向けて動き出すことも少なくありません。

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投稿者プロフィール

弁護士 鈴木軌士
弁護士・宅地建物取引主任者。神奈川県にて25年以上の弁護士経験を持ち、特に不動産分野に注力している。これまでの不動産関連の相談は2000件を超え、豊富な経験と知識で依頼者にとって最良の結果を上げている。

事務所概要
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